2024年に開始された探究創造プログラム「Minerva(ミネルヴァ)」。ワイガヤとフィールドワークを通じて未知の価値観に出合いながら、Hondaが世の中に提供すべき新たな価値を探究するプログラムです。1期生として参加した佐々木 優太と吉田 圭佑、このプログラムを企画した依田 未希と吉田 和史に、Minervaのめざすもの、Minervaを通して得た価値観、これからの展望を聞きました。
ワイガヤとフィールドワークで価値観をぶつけ合い、新価値を創出し続けられる土壌を作る
▲Minervaを企画・運営する人材開発課の依田 未希と吉田 和史
自動車業界が100年に一度の変革期と言われるなか、現状を「第二の創業期」と位置付けているHonda。社会から期待される存在であるために、さまざまな驚きや感動を創出し続けなければなりません。
時代や社会の変化に適合した方法でHondaらしい企業風土や文化を築いていくにはどうしたらいいのか。これまでの考え方に固執することなく、未知の領域へと踏み出す営みが必要ではないか──そんな問いから生まれたのが、探究創造プログラム「Minerva」です。
依田:新しい価値を創るアプローチはいろいろありますが、Minervaが注目したのは、これまで数々のイノベーションを生み出してきたHondaの「ワイガヤ」文化です。
ワイガヤは、個人の価値観をぶつけ合い、新たな価値観に昇華させる場です。ただ、「現在Hondaで行われているワイガヤは、必ずしも質の高いものばかりではないのではないか」という仮説から、ワイガヤのあり方を探究・模索し、再構築と進化を試みようと考えたのです。
イノベーションの源泉となるワイガヤとは、「強い個の共鳴を通じた相互主観性の構築」が行われる場。そのようなワイガヤを実現するためには、五感を伴う経験と、それをもとにした暗黙知、つまり自分の強い想いや考えが必要です。Minervaのプログラムには、その考え方が表れています。
▲フィールドワークとワイガヤを繰り返すことで、「強い個の共鳴による相互主観性の構築」を体現する
吉田(和):Minervaは、「知る」「闘う」「創る」という3ステップで構成しており、質の高い暗黙知を獲得するためのフィールドワークと、暗黙知をぶつけ合う場としてのワイガヤをプログラム内で実践してもらいます。
依田:暗黙知や自分の価値観を問われても、それを示すことはなかなか難しいですよね。けれど、暗黙知がなければワイガヤをする土俵にも立てません。
そこで、自分とはまったく違う価値観や文化に触れ、自分自身と向き合うことで自分の軸や大切にしたいものをあぶり出すため、日常の業務では想像もつかない“飛び地”でのフィールドワークが設定されています。
フィールドワークで手にした感性や磨かれた価値観を持ち寄り、ワイガヤでぶつけ合うことで新しい価値観に昇華する。これを繰り返すことで、新価値を創出し続けられる土壌づくりをめざしていきます。
2024年5月にスタートした第1期Minerva には、55名が参加。「“自由な移動の喜び”を定義し、自由に表現せよ」というテーマに対して、13チームに分かれ、社外のパートナーと共に答えを探究しました。
依田:Minervaの醍醐味でもあり難しいところは、ゴールが決まっていないこと。私たち事務局やパートナーさまも含めて全員が探究者ですから、誰1人として先はわからないし、正解もない。登り方を模索し、時には迷走しながら、一歩一歩進んでいくしかないのです。登り切るまでどんな景色が待っているかわからないワクワクと不安が交差する半年間でした」
何をするのかわからないからおもしろい。キャリアへの悩みが参加のきっかけ
▲Minerva1期生の吉田 圭佑(左)と佐々木 優太(右)。揃いのTシャツは7月に実施したイベントに合わせて作ったもの
1期生として参加した佐々木は、2018年にHondaにキャリア入社。前職の鉄鋼メーカーで品質管理業務を担当したことを機に、一般に広く使われる製品の品質管理に挑戦したいとHondaに転職しました。今回Minervaに応募したのは、「何をするのかわからないおもしろさがあったから」だと話します。
佐々木:募集要項を読んでもよくわからないけれど、第一印象で「おもしろそうだな」と思いました。これまでたくさんの研修を受けてきましたが、正直、私自身は物足りなさも感じていました。だけど、Minervaは何が学べるかがわからない。自主的に何かをつかみにいかなければいけないことに、好奇心が湧きました。
同じく1期生の吉田(圭)は、2022年に新卒で入社。入社の決め手は、「Hondaなら、普通の会社員にはなりたくないという想いをかなえられそうだ」と感じたことでした。
入社後は、四輪の純正用品を扱うホンダアクセスで市場品質領域を担当。Minervaを知った時は「衝動が走った」と言います。
吉田(圭) :「“自由な移動の喜び”を定義する」という、とても抽象的なテーマに惹かれたと同時に、それを半年にわたってフィールドワークも交えながら探究できる。「こんな大掛かりなことができるんだ」とワクワクしました。
当時、もともと描いていた自分の在りたい姿と現状にギャップを感じていたんです。これからのキャリアを考える上でも、視野を広げられるのではないか、何かをつかめるのではないかと、藁にもすがる思いで応募しました。
佐々木と吉田(圭)が参加したのは、「『生きること』にとって移動はどのような価値を持つのか」という問いを探究するコース。さまざまな拠点に勤務するメンバーと定期的に集まり、時には鹿の狩猟をするという“飛び地”でのフィールドワークを経験しながら、移動の価値を探究していきました。
佐々木:事務局から示されたのは、顔合わせとフィールドワーク2回、そして中間発表と最終発表のスケジュールだけ。あとはチームで自由に活動するんです。私たちのチームは、多い時は週に1回ほど対面で集まりながら、どうやってこの問いの答えを表現するかを考えました。
吉田(圭):振り返ってみると、何度も顔を合わせてお互いの価値観を知りながら活動できたことが良かったですよね。
価値観が違う人と取り組むから自分の幅が広がる。Minervaで得た変化
▲フィールドワークの様子。 “飛び地”での経験で感性や価値観を磨く
職種も勤務地も異なるメンバーの人となりを理解し、狩猟などの非日常を体験しながら自分の本質とも向き合う。そんな経験を通して、新たな価値観や変化を得たと話します。
吉田(圭):まず、罠を仕掛けて鹿を捕獲し、さばき、いただくという経験自体が衝撃的でした。さらに、その感想がそれぞれで全然違うことにも驚きました。
たとえば、同じように「かわいそう」と感じたとしても、鳴き声が悲しかったと話す人もいれば、肉を食べる葛藤があったと言う人もいる。一方で、最初の感想が「お肉がおいしかった」という人もいて。「なんで皆こんなに考え方が違うんだろう。早く答えにたどり着きたいのに、どうなるのだろう」と思いました。
でも、活動を重ねていくうちにお互いの考えの本質的な部分が見えて、認識が合ってくるんです。それは考えが一致するということではなく、フィルターを通さずに相手の考えが見えるようになって、その考えも正しいと感じるようになるということです。お互いの考えや距離感をグッと縮められた瞬間は印象的でしたね。
佐々木:他の人になりきって質問に答えるワークショップなどもあったのですが、自分がどのような考え方をしているかを伝えることで本質に触れ合うことができました。私はとてもドライな人だと捉えられていたのですが、「そんなことないよ」と。背景を開示していないだけなんですよね。いまだに本当の自分はわかっていないのですが、これまでより開示しやすくなったと感じます。
また、一連の活動を通して、わからないことや知らないことをポジティブに楽しめることが良かったです。「お互いを知ること自体を楽しめばいい」という発想の転換ができました。
人と一緒に取り組むことが楽しいと思えるようになりましたし、考え方や価値観が違う人と取り組む方が自分の幅が広がりますよね。これまでも積極的なタイプでしたが、さらに積極性が増しました。
吉田(圭):私も同じです。わからないことに手探りで挑戦したことで、「とりあえずやってみよう」と、より行動派になったと思います。
何かに挑戦したい。Minervaは、その想いを集めて化学反応を起こす場
Minervaを通じて、新しい自分やさまざまな価値観に出合ったふたり。仕事でも仕事以外の活動でも、新たな挑戦が始まっています。
吉田(圭):所属しているのは品質保証の部署なのですが、社内の取り組みがきっかけで今は事業開発にも携わっています。Minervaの活動をしたことで、「自分は新しいものを生み出していくことがやりたかったのかもしれない」と気がついたんです。いろいろな人に出会ったことで、キャリアを考える方向性が見えてきました。
佐々木:Minervaで生まれたつながりがきっかけで、静岡県でワイガヤイベントを実施しました。そこで他の完成車メーカーの方と意気投合して、「静岡を盛り上げるために一緒に何かやろう」とプロジェクトを立ち上げたのです。
2025年7月にはオープンイノベーションのイベントで子ども向けのワークショップを実施しました。今は、モビリティ企業のものづくりの知見を活かして静岡の地域課題を解決するプロジェクトを動かしています。
▲静岡でのイベントの様子。他完成車メーカーとのコラボレーションで子どもたちにものづくり体験の場を提供
第1期の最終発表は、2024年10月にイベント「 から、 へ。展 - Hondaと考える自由な移動の喜び -」として実施。社内外から多くの反響がありました。
依田:社内のメンバーからは、「プログラム参加者の熱量に触れて、Hondaってこういう人や熱量であふれているべきだよな、とあらためて思った」「どうなるかわからないけれどやってやろう、というHondaらしさを感じた」といった声をもらいました。
また、平日にもかかわらず2日間でのべ800名が来場、うち7割が社外の方で、来場者と真剣な対話が生まれる空間となりました。事務局として、それを目の当たりにできてとてもうれしかったですし、あの景色は一生忘れられません。
社外に開いたことは次への一歩につながったと思っています。ありがたいことに、会場に足を運んでくださった方々と新たな探究活動へ踏み出したメンバーもいます。それぞれがMinervaを通じて得たことを次につなげて、社内外でアクションしてくれていることがうれしいです」
佐々木:「何かに挑戦したい」という想いは皆が持っていて、それが出会ったことで化学反応が生まれたのだと思います。Minervaは、その想いを集める場だったのかもしれません。
探究の文化が根付き、伝播する。その“うねり”がHondaを進化させると信じて
皆で模索しながら自分たちなりの答えにたどり着いた第1期の活動を振り返り、「事務局も参加者も同じ探究者として一緒に作り上げていくのが他の研修との違い」と話す人材開発課のふたり。第2期以降のMinervaに向けて、たしかな手応えを得ています。
吉田(和):自分自身の変化が新たな挑戦につながり、仕事にも返ってくる。1期生がそれを体現してくれているからこそ、探究の文化がしっかり根付き、伝播していけるようにしていくことが、2期目以降の私たち事務局の使命です。
依田:Minervaを通じて紡いだ関係性が途絶えることなく、変化しながらもつながり続け、社会に貢献できるものになっていきたいと思っています。これからもMinervaを起点にさまざまなコトが生まれていったら、そんなにうれしいことはありませんし、その実現に向けて探究し続けていきます。
積極性を増してチャレンジの幅を広げている佐々木と、事業開発という新たな業務に挑戦している吉田(圭)は、その活動をさらに広げていきたいと意気込みます。
佐々木:今動いている静岡のプロジェクトを、持続的な活動にしていきたいと考えています。コラボしている企業の方からも地域の方からも期待していただいているので、ベンチャーや新しいマネジメント組織を作ることも視野に入れながら、より価値ある活動へと進化させていきます。
吉田(圭):私は、世の中に本当に求められているサービスを作って、良い影響を与えていきたいと思っています。モビリティに限らず、「Hondaって、わかっているよね」と思ってもらえるサービスを生み出したい。
そして、Minervaのような“うねり”をどんどん広げていきたい。時にはぶつかることもありますが、皆で一緒に取り組むことはワクワクするんですよね。会社全体が今以上にそういった雰囲気になれば、Hondaはもっと変わっていくと思いますし、仕事ももっと楽しくなると思います。
正解のない問いを探究し続けることは、未知とぶつかり、自分が揺らぐこと──その探究で表出した「強い個(=暗黙知)」が、Hondaの価値観を揺さぶり、さらに進化させます。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです
Hondaにおける能力開発の考え方はこちら▶︎
https://www.honda-jobs.com/environment/training/
