“芽が出る”人を見極める目と信頼感で。「全体像を捉える」マネジメント術
田中が部長を務めるマネージドサービス事業グループのプラットフォームソリューション本部は、インフラの設計構築をメインに手がけています。
「本部のメインミッションは、クラウド、ネットワーク、セキュリティを含めたインフラの設計・構築です。金額が大きい大型案件のインフラ部分の設計構築です。私の部署は仮想化基盤、OS、ミドルウェアといったインフラ部分を担当しています。情報系の基盤では、監視、バックアップ、資産管理、セキュリティ周りなどの機能系が多いですね。
メインのお客さまは公共系で、官公庁や自治体などを対象としています。近年、業界全体でクラウド化が進んでいるのに伴って、当部署でも7割がオンプレミスの作業、3割程度がクラウドの作業へと移ってきています」
部署の規模は社員50名ほどで、課長職が5名います。
「実際のプロジェクト遂行では基本的にチームで臨むことが多く、社員だけでなく協力会社のメンバーも加わります。小規模なものは3人程度、30名規模で作る大型プロジェクトでは4〜5名でチームを編成し、OSや仮想化、監視、セキュリティなどに分けて各チームにリーダーを立てる構成で臨みます。職場の風通しは良い方だと思っています。
本来はエスカレーションルートがあるのですが、状況によっては直接私に相談が来たりすることもあります。コミュニケーションは取りやすい環境だと思います」
2025年から課長から部長へとなった田中。現在はプロジェクトには入らず、マネジメントがメイン業務となっています。
「週に1回メンバーからの報告を受けて、進捗状況や課題を聞きアドバイスを伝えることがメイン業務です。また、担当する2つの課の業績をまとめて部として月に1回報告する業務も行っています。課長時代は、プロジェクトマネージャーとして協力会社や社員メンバーの選定を行っていました。
その際、私が重視していたのはスキルよりもやる気や学ぶ意欲です。スキルがあってもやる気がないとずっと変わらないまま。プロジェクトは1年程度の期間があり、やる気がある人なら4月から始まって9月くらいには芽が出てくるので、気概を重視してメンバーを選んでいました」
仕事をする上で田中が最も大切にしているのは、全体像を見ることです。
「局所的に見ないで、まず全体をふかんして見ることを大切にしています。物事を与えられた時に全体像を理解した上で、その中の自分がやる部分を見ていくという流れです。時間はかかりますが、なぜこういう依頼があるのか、これは何なのかを理解しておく。その上で、自分に与えられた仕事を遂行していく姿勢をどんな業務においても大事にしています。
また、部長になり、素早いレスポンスをすることをより大切にしています。メールやチャット、電話など連絡手段がたくさんある中で必ず何かしらは返すようにし、質問には対応方針を明示します。また、スピードも重視しており、問題を早めに解決することも心がけています」
異色の経歴から築いた16年のキャリア。失敗から学んだ俯瞰力と判断軸
娯楽業界勤務から飛び込みの営業、IT企業への勤務という異色の経歴を経て日立システムズエンジニアリングサービスへと入社した田中。そこから16年にわたるキャリアの中でとくに印象深いのは、自分で作ったシステムがリリース時にうまく動かなかったことだと振り返ります。
「ヒアリングが不十分だったために、最終的にリリースした時にうまく動かなかったんです。リリースしてしまった以上はシステムを止めるわけにはいきません。データベース系のシステムで、うまく登録されないデータがログに出ていたので始発で現場に行き、ログを確認しながら手動でデータを登録する作業を行いました。
お客さまが日中システムを使っているため、原因調査は定時後。終電を超えることはなかったものの、23時半ぐらいまで調査を続ける日々が続きました。どこがうまく機能していないかが分からず、原因を突き止めるまで調査に2週間ほど時間がかかり、お客さまにも迷惑をおかけする状況が続き、その期間は本当につらかったです」
さらに、プロジェクトマネージャーとして担当した案件でも、大きな失敗を経験したと言います。
「プロジェクトリーダーと管轄チームを分けて担当していたのですが、自分が直接関わっていないチームでデータの不一致という問題が発生したのです。データの不一致が発生するとお客さまのデータが欠損してしまうため、お客さまが更新したデータを調査して、データが一致した状態でお客様さまにお渡ししましたが、その後も1カ月ほど毎日いろいろな比較資料を作成する必要がありました。
失敗した原因は、第三者目線で見れば誰でも気づくような内容でした。いくら理由があって関わりを分けたとはいえ、重要なポイントだけは自分でも把握しておく必要があると痛感しました。たとえ他のリーダーが経験を持っていたとしても、信頼して任せる部分と、自ら確認すべき部分のバランスが大切なのだと学びました」
この経験から、田中の行動は大きく変化しました。
「設計の細かい部分などは後で修正してもリカバーできますが、データ移行など重要な要素は見逃すとリスクが大きいと気づきました。そういった重要ポイントをしっかり見ることができるのであれば、むしろ細かい部分は一旦捨ててもいいとさえ思います。仕事を進める上で、どのポイントが重要なのかを考え、重要な部分にはしっかりと比重を置くことを心がけるようになりました。
失敗はできればしたくないものですが、失敗を通して学べることが多々あります。私は、この経験を通して先にも述べた『全体をふかんしながらポイントを押さえること』という仕事の価値観を持つようになりました」
成果は自分の外にある──課長から部長となって変わった、責任とやりがいのかたち
田中が担当メンバーからユニットリーダー、技師、主任技師を経て課長職への昇格につながったのは、入社から約14年目。金融系企業からの大型案件での働きぶりが評価されました。
「自治体系のパッケージ導入の業務を2〜3年経験した後、大きな金融案件を担当することになりました。そして、十数件の案件をプロジェクトマネージャーとして完遂していく中で課長職に昇進したのです。
課長職になると、プロジェクトマネジメントに加えてピープルマネジメントと業績管理という新たな役割が加わります。そんな中、公共事業を中心に運良く仕事が重なり、部署全体で大きな成果を上げた時期がありました。
受注による売上だけでなく、一人が複数の案件を担当することで損益面でも大幅に黒字化。日立グループ内の案件受注が多い中で一般のお客さまからの受注にも成功し、エンドユーザーの方と直接会話しながらプロジェクトを進められたことで、今後の軸となる人財の育成にもつながりました」
マネジメントでとくに意識したのは、案件の取捨選択と人財配置だと言います。
「本来であれば十分な利益を生み出していたので新規案件を受ける必要はなかったのですが、今後の教育につながると考え、30代中盤の今後を担う人財にプロジェクトマネージャーを任せました。その案件自体も成功し、来年にはまたそのお客さまから案件をいただけることが決まりました。案件と、それをリードする人財の見極めという部分でマネジメントがうまく功を奏したと思っています」
2025年に部長職になってからは、やりがいの感じ方にも変化が生まれました。
「これまでは、自分が仕事で成果を上げること、会社として利益を生み出すことにやりがいを感じていましたが、今は自分の部署にいる部員たちが成果を上げられた時に喜びを感じます。とくに、自分が示した方針に沿って成果を上げたり、期待以上に結果を出してくれる人がいるとうれしく思います。
自分の仕事は、投げ出すことなく最後まで責任を持ってやり遂げる。その言葉をモットーに、部長職としてメンバーの一人ひとりの成長を支援し、チーム全体の成果につなげていくことに大きなやりがいを感じています」
あるべきリーダーの姿とは。視座の高さと人に前向きな姿勢がキャリアアップの第一歩
日立システムズエンジニアリングサービスの魅力について、田中はグループ会社であることの強みを強調します。
「グループ会社なのである程度仕事がもらえるということもありますが、何かチャレンジしたいという時にも、日立製作所などがすでにチャレンジしている内容だったりするので、ナレッジを共有することができます。既存の仕事に安定して取り組める一方、新しいことを取り組む上でもバックボーンを持っているというところが大きな魅力です」
今後のビジョンについては、グループ全体の方針として掲げられているインソース化に沿い、インフラ設計構築という自分たちの強みを生かしながら日立グループ内での仕事を完結させていくことをめざしています。
「今後の流れの中でクラウドや生成AIなどを活用して新しい分野も取り入れていくというところはありますが、ベースとしてはインフラ設計構築の部分を変わらずにやっていきます。
また、チャレンジとしてセキュリティ分野に力を入れていきたいと思っています。昨年、いくつかのセキュリティ関連企業とパートナー契約を結び、製品を販売代理店として扱える土台を構築しました。
今後は販路を拡大するとともに、日立グループ内のセキュリティベンダーとしての知名度も上げていきたいです」
そんな部署で活躍するために必要なスキルについて、2つの側面で語ります。
「ベースとなるところは全体を通して押さえておく必要があります。OSや仮想化、クラウド、監視、セキュリティなど、結局はすべてがシステムと関連しているからです。それら個々の概念がどういうものかという大枠を全般的に押さえることが重要です。
また、与えられたことをチャンスだと思える意識も必要です。人に渡してしまうと、せっかくの学ぶ機会を失ってしまうことになるので、極力自分で最後までやりきる責任感を持って臨むことも大事だと思います」
最後に、田中はキャリア採用入社者に対して、周囲とのコミュニケーションを重視する姿勢を求めています。
「新卒入社の社員は、入社後にインフラ設計構築を経験して4〜5年でチームリーダー、そしてプロジェクトマネージャーをめざしていきますが、キャリア採用入社の場合は、同業界出身者であればチームリーダーに近いポジションでスタートして、数年でプロジェクトマネージャーになるケースもあります。
そんな中で、仕事だけでなく、周囲の人に対しても前向きに接することができる方がいると、チームとしても円滑に機能し、それが巡って個人の成長にもつながっていくと考えています。そして、そこから管理職になるには、日頃の成果や取り組みを適切に共有し、意欲を示していくことが大切だと考えています。
そして、細かいところばかり目を向けていても視座は高くならないので、物事を大局的に捉えて未来を見据えることを意識してキャリアを形成していくと良いのではないかと思います」
※ 記載内容は2025年12月時点のものです

