バリューセリングへのこだわり──経験不足を支えたのはチームのスペシャリストたち
──2018年、DELLのストレージを拡販する新しい営業組織ができ、そこに入社したのがキャリアの始まりですよね。営業未経験の状態からどのように経験を積んでこられたのでしょうか?
木鋪 「ストレージ専門のインサイドセールス部隊は当時、売り方もアプローチ戦略も何も決まっていないという状況でした。グローバルな大企業なのに驚きましたね(笑)。しかし、マニュアル化されていない分、新人が自由に考えてイニシアティブを取っていける環境でした。限られたリソースの中で、効率の良いアプローチを意識しました。ダイレクトセールス以外に、ディストリビューターやパートナー会社と組むなど、さまざまな手段で売上最大化を図りました。ストレージは、旧EMCジャパンの中でも歴史ある製品のひとつ。現場一筋30年歴という営業担当と協業する機会も多く、ベテランの方々の視点やアドバイスが20代の自分にとってとても新鮮でした」
──顧客接点を深く持ちたいと考ていた木鋪さんにとって、特定製品の専門チームであること、いわゆる営業ではなく、インサイドセールスであることに対して、どう感じていましたか?
木鋪 「営業経験も技術知識もなかったので、まずはインサイドセールスからキャリアをスタートさせて良かったと感じています。移動時間が発生しない分、技術知識のインプットに時間を充てられました。また、ひとつの製品に特化することで、その特定製品の知識が自分の強みにもなります。営業として、自分の引き出しが増え、強みが磨かれていきました。
当社のストレージ製品は、競合製品と比べて本当に優位性が高いんです。どんな要求でも実現させられるほど、ポートフォリオの幅が広く、風呂敷を広げて提案しても大丈夫、といっても過言ではありません。信頼できる製品を売ることで、営業未経験の自分の自信にもつながりました。製品に対する安心感や期待は、営業職のやりがいにも直結しますね」
──クラウドが主流になっている2022年現在、ハードウェアを営業することにジレンマはなかったですか?
木鋪 「確かにクラウドサービスはトレンドですが、『ハードウェアなくしてシステムは成り立たない』とお客様からよく言われます。ハードウェアベンダーはこれからも欠かせない存在だと感じます」
──製品専門の営業では、いわゆるモノ売りになってしまいませんか?
木鋪 「もちろん、“モノ”の話は最終的には出てきますよ。しかし、モノ自体が重視されると価格勝負が中心となって話も膨らみませんし、それでは売れません。私たちが行うのはバリューセリング。営業の介在価値が問われるんです。要望そのもの以外に、お客様はどんな課題を抱えているかを常に意識しています。
商談では、技術トレンド、海外の導入事例、他社事例を示しながら提案スコープを広げていきます。最近だと、バックアップやランサムウェア関連が課題に挙がることが多いですね。アディショナル提案を持ってお客様とディスカッションすることで、仮に他社より高価格だったとしても、必要な提案(ソリューション)だと認められ、選んでいただけます」
──大手国内製造メーカーなど、日本を代表する大手企業を担当していたと聞いていますが、提案先のカウンターパートも高い専門性を持つ情報部門の方々で、苦労はありませんでしたか?
木鋪 「ソリューションを描くのは、営業ひとりではありません。社内にはさまざまなロールの人たちがいます。営業組織を大きく分けると、お客様に対峙する営業(アカウントエグゼクティブ)と、特定製品を担当する営業のふたつがあり、それぞれの組織内に外勤営業とインサイドセールスが存在します。
さらに、製品スペシャリストやプリセールス、サポートエンジニアから最適なメンバーを集め、案件ごとにチームを組成します。経験不足や技術的にわからないことはスペシャリストに力を借りながら、チームで進めていきました。案件ごとにチームメンバーが変化したり、あるいはグローバルの方針で組織が変更されたりと、常に変化が起こる環境です。柔軟性が求められますが、飽き性の自分にとっては、かえってそれが楽しみとなり、いつも新鮮な気持ちで働けています」
インサイドセールスから外勤営業、フルポートフォリオの営業へステップアップ
──入社から2年が経ち、ストレージ製品専門の組織の中で、インサイドセールスから外勤営業に異動されていますが、このきっかけは?
木鋪 「営業経験ゼロだったのでインサイドセールスを入り口にしましたが、当初から、“より最前線で責任あるロールを経験したい”と考えていました。それが自分にとっては外勤営業のポジションでした。外勤営業になるために、今の自分に何が足りないのか?どうすれば異動のチャンスが掴めるか?について、上司との1on1でも率直に話していたんです。上司は私の想いを知ってくれていたので、ポジションが空いたタイミングで推薦してくれて、異動が実現しました。なりたいキャリアを発信しておけば、やりたいことにチャレンジできる機会は巡ってくると思います」
──さらに今年6月には、ストレージ専門の組織を離れ、フルポートフォリオを提案するアカウントエグゼクティブ(AE)へ異動されましたよね。
木鋪 「ストレージ専門の立場だったころから、お客様のニーズや課題によってはサーバからスイッチまで提案することもありました。フルポートフォリオの提案機会が増えるにつれ、やはり日々の営業活動の段階から、お客様の状況を総合的に把握したいと思ったんです。正式にフルポートフォリオを提案するアカウントエグゼクティブ(AE)の立場に就いたほうが、よりお客様に合った最適なソリューションがわかりますし、責任と自信を持って提案できると思っていました」
──同じ外勤営業でも、製品担当からアカウントエグゼクティブ(AE)に異動して、どんな違いがありましたか?
木鋪 「ケアする範囲の広さに驚きました。ストレージ、サーバ、スイッチだけではなく、パソコンだって提案範疇になります。日頃から意識すべき点が多く、優先順位の付け方が難しいですね。思った以上に忙しいです(笑)」
──チーム内で、アカウントエグゼクティブ(AE)の立ち位置はどういったものですか?
木鋪 「アカウントエグゼクティブ(AE)は、提案・プロジェクト全体の旗振り役の存在。インサイドセールス、テクニカルセールス、プリセールスなど、さまざまな職種の人たちをまとめていく必要があります。また、インサイドセールスは未経験やジュニアメンバーも多いのですが、自分の経験があるからこそ、うまく指示が出せたり、社内の仕組みがわかっているとお客様へすぐ回答できたり、インサイドセールス時代の経験が活きていると感じます」
即レス、+αの提案など、日々のちょっとした積み重ねがを信頼関係の構築につなげる
──APJ MVPやJapan President Awardなど表彰経験も多い木鋪さんですが、悔しい経験もありましたか?
木鋪 「とある競合プレゼンで、私たちの提案に決まっていたところから一転、他社が選ばれる出来事がありました。政治的事情で判断が覆ることに悔しさを覚えましたが、弊社がお客様とのリレーションを築ききれていなかったことも事実ですし、弊社でないと実現できない(弊社だからこそ実現できる)点をしっかり訴求できなかった、という結果でもあります。以降、CxOクラスとのリレーションとプレゼンを徹底しています。提案内容について、どのタイミングで、どの役職の方へ理解いただくのが効果的か、という観点にはかなりこだわっています」
──その経験も踏まえて、お客様とのリレーション構築ではどんなことを意識されていますか?数億円規模の案件になると、特別なポイントもありますか?
木鋪 「案件規模問わず、気をつけるのは日々のちょっとしたことです。早いレスポンスを徹底することや、要求には+αをつけて返事(提案)することなど心がけています。お客様からは、私たちの普段の姿勢が見られていると意識していますし、信頼関係はその積み重ねだと考えています。木鋪であれば何でも相談できる、と思われる担当営業でありたいですね」
──現在はテレコム(通信)業界を担当されていますが、この領域はデル・テクノロジーズが得意とする業界ですよね。
木鋪 「大手通信キャリアの5G基盤に私たちのソリューションが採用されているなど、テレコム業界では多くの実績があります。お客様からの期待値も高く、安定した高品質の製品・ソリューションを導入しないといけないプレッシャーがあります。私の担当社数は2022年8月現在1社のみですが、通信基盤から社内IT基盤に至るまで、扱うテーマは幅広いです。アカウントエグゼクティブ(AE)も複数名体制ですが、ワンチームとして目標数字の達成に向けて協力して取り組んでいます」
目指していたアカウントエグゼクティブになった今──次に叶えたいこと
──インサイドセールスから外勤営業へ、そして製品専門からフルポートフォリオを扱うアカウントエグゼクティブ(AE)へ、と4年間で着実にステップアップされていますが、次はどんな目標を持っていますか?
木鋪 「通信業界のお客様のIT投資は、数年がかりで行われます。先手、先手で戦略的に仕込んでいかなければ、入り込む余地はありません。半期ごとにやってくる自分の営業目標も達成しながら、5年がかりの長期プランも描き、両軸で進めていきたいですね。お客様の中で、私たちがハードウェアベンダーとしてシェアNo.1を取り、かつ、1番信頼できるパートナーとして確立された存在になることが目標です」
──外資系企業の営業職には厳しそうなイメージがありますが、続けられる要因は何でしょうか。
木鋪 「数字の厳しさはありますし、伸び悩んでつらいときもあります(笑)。でも、決して手も届かない、無理な目標を持たされたことはありません。納得感ある数字が設定されていると感じます。続けられる一番の理由は、一緒に案件を進める人たちが、世代を越えて尊敬でき、素敵な人が多いからですね。“人”がやっぱり決め手になります」
──IT営業は、どのような点がおもしろいと感じますか?
木鋪 「新しい技術がどんどん出てくるので、日々勉強が必要。これで完璧というラインがなくて奥深いです。また、生活者として、自分にも影響が及ぶ身近なものをどのようにお客様へ提供していくのか、知ることも提案できることもおもしろいです」
──最後に、直近の目標や意気込みを教えてください。
木鋪 「もうすぐ大型案件の提案が控えています。自分の強みであるストレージの提案もあるので、負けたくないですね!お客様の課題解決はもちろんのこと、なぜ弊社案が他社よりも優れているのか、弊社案でないと実現できないことは何かを明確に伝えながら、私たちの提案を選んでいただけるようにチームで力を合わせてがんばっていきたいです」
