「地元」の「地方銀行」を選んだ理由
──まずは、簡単に自己紹介をお願いできますか?
私は市原市で生まれ、木更津市の高校を卒業して都内の大学に進学しましたが、実家から通学していたので、結婚を機に実家を出た現在も含めて、千葉県外で暮らしたことはありません。
母は結婚を機に退職しましたが、父は石油企業の研究職をしていました。理系で細かいところまで几帳面にこなすタイプですが、研究職だけではなく人事などさまざまな仕事をしていたそうなので、「理系の中の文系」という印象です。私もその性格を受け継いでいる気がします。
──学生時代について教えていただけますか?
大学では経営学を専攻し、企業会計や財務分析を学びました。大学入学時は特に強く学びたいこともなかったので、「経済やお金の流れを学んでおこうか」くらいの動機しかありませんでしたが、数学などは比較的好きだったので、「文系の中の理系」を選んだようなところがあります。父には専攻選びでも相談に乗ってもらい、「経営学は何にでも応用が利く」というアドバイスももらっていたので、自分で思っているよりも父の影響を強く受けているのかも知れません。
在学中は自宅と大学の中間あたりにある、大手衣料販売店でアルバイトをしていました。店長さんは、良い意味でアルバイトにもプロ意識を求める人でしたので、今の仕事にも役に立つ経験を積むことができました。学生だけではなく社会人の方も働いていたので、いろいろなバックボーンを持つ人からさまざまなことを学びました。できればお客さまとじかに接する仕事がいいな、と思うようにもなりました。
──どのような就職活動をされましたか?
就職活動は業種も場所も限定しないでさまざまな企業の説明会に参加しましたが、徐々に勉強したことが活かせる業種がいいなと思うようになりました。また、やはり千葉で生まれ育ってきたので、千葉で働いて少しでも地域貢献できればとも思うようになりました。周りにも、地元に戻って地域貢献したいと考えている人は、かなり多かったように記憶しています。
──千葉興業銀行に決められた理由は?
千葉興業銀行に決めた理由は、採用担当の人が私という人間をしっかりと見てくれた印象が強かったからです。銀行には窓口業務以外のイメージがほとんどなかったのですが、お客さまの幸福にも不幸にもずっと寄り添うのが仕事だから、辛いこともあるけどやりがいも強いということを、包み隠さずに話してくれたことにも感銘を受けました。就活生の私に、そこまで深く話をしてくれたのは当行だけでした。
社会に出ても「学び」は続く
──入行後の最初の配属先や業務内容について教えていただけますか?
2014年4月の入行後、自宅からも近い鎌取支店の配属となり、2年間は業務課で窓口業務や預金・出納業務を担当しました。預金だけではなく金融に関わる知識全般を身に付けないといけないので、覚えなければいけないことの多さを知る2年間だったように思います。
鎌取支店は他支店同様にご高齢のお客さまも多いのですが、現役世代、子育て世代の方も多くお住まいの地域にありますので、学校費納入のための口座を開設されたのをきっかけに、人生設計に沿ったご提案をすることもありました。
──取引先課での業務内容を教えていただけますか?
2016年5月からは取引先課に配属となり、店頭で資産運用などのご提案をメインに行うようになりました。同じ年の10月からはコンサルティング課の一員として、個人渉外を担当しました。
当行内では「トスアップ」という表現をするのですが、窓口に来られたお客さまで、資産運用や相続対策についてのより詳しいご相談を求められている方に、窓口から引き継いでご案内させていただくことが多くなりました。まだまだ知識が十分ではなかったので、ご質問をいただいてすぐにお答えできずに、調べてお答えすることで学ばせていただくことが多く、お客さまに育てていただいたと実感しています。
また、お金に関わる相談は家族にもしにくいというお客さまも多く、心配事をお聞きして対策を一緒に考えていくなかで、長年の不安が氷解したというお客さまもいらっしゃいました。虚心坦懐に長い時間をかけてお話を聞くことで、お客さまご自身も言葉にできていなかった悩みが整理できることが多々あり、「聞くこと」の大事さを知りました。
──異動後の業務内容を教えていただけますか?
2017年10月には浜野支店に異動となりました。鎌取と同じコンサルティング課でしたが、浜野支店では古くから口座をお持ちのお客さまが多く、来店されてお話しすることよりもこちらから伺うことが多くなりました。前任の課長代理が担当していたお客さまを引き継いで、相当に知識を持たれたお客さまも少なくなかったので、こちらの知識不足を再認識しました。
少なくとも前任者並みの知識を身に付けたいと、ファイナンシャルプランナー(FP)の勉強を始めたのもこの頃です。とはいえプライベートの時間も大事にしたかったので、平日は夜に2時間しっかり勉強して、土日は切り替えて自分のために使おうと決めてやっていました。学生時代ほど時間に自由がない社会人が社外で何かを学ぶには、メリハリを付ける工夫が重要だと思います。
「振り返り」は最高の教材
──人事部での仕事を教えていただけますか?
2020年4月から人事部人材開発室の副調査役となりました。お客さま対応はとてもやりがいのある仕事で、長く携わって極めたいと思う一方で、別の視野から地方銀行のあり方を考えてみたいとも思っていたので、自分としては良いタイミングでの異動だと感じました。
とはいえ、内定から2年目までの行員に向けた育成プログラムを企画し、運営する役割は、これまでの店舗での仕事とはまったく別のものでした。年次が上がってくると自分の業務と並行して後輩行員の育成もするので、経験則に頼らずに言葉にして伝えることは意識していたのですが、人材開発室では新入行員全体を見ながら一人ひとりにもアプローチしなければならないので、手探りの連続でした。
異動のタイミングとコロナ禍による緊急事態宣言が重なったために、集合研修だったものをオンラインに切り替えなければならず、その点でも苦労しました。
また、当行では2022年から、新入行員に半年間の研修プログラムを実施するようになりました。それまでは数週間の研修期間が終わると店舗に配属され、実地で多くのことを学んでいたのですが、社会変化のスピードが高まるなか、地方銀行が担う役割もどんどん変化しています。
当行のビジネスモデルの軸であるコンサルティングの強化のためには、行員一人ひとりの思考力の向上が欠かせません。そのため、入行時から思考力の土台となる「読解力・理解力・文章力」を養成するプログラムを研修に加え、研修期間を半年としました。このプログラムは現在も、受講した新入行員からのフィードバックを取り入れつつ、改善とアップデートを続けています。その立ち上げに関われたことは、とても幸運だったと感じています。
──研修を運営する仕事を通じてどのような気づきや学びがありましたか?
研修に携わって実感したのは、「振り返り」作業の重要性です。その日ごとに目標を立てて、一日の終りにその達成度を振り返る作業は、すぐに実地に入ると忙しさのなかでおろそかになりがちです。研修開始時は漠然と目標を立てていた新入行員たちが、半年後には次につなげるための目標設定と反省を行っていて、意識が変わるプロセスを見る思いがしました。
「その後も振り返りが習慣になりました」と言ってくれる行員も多く、本当に嬉しいですし、継続していることがすごいなと思いますね。人事部で試行錯誤を重ねた3年間は、本当に濃密な3年でしたね。
「聞くこと」からすべてが始まる
──現在の業務内容を教えていただけますか?
2023年1月からは蘇我支店コンサルティング課の課長代理として、再び個人渉外を担当するようになりました。個人渉外を担当するのは以前と同様ですが、その後課長を拝命し部下を持つことになり、育成や行動管理も行っています。
また、蘇我支店そのものは個人顧客の案件を扱っているのですが、課長として法人のお客さまも担当するようになりました。たとえば運転資金のご融資や、事業承継についてもヒアリングをして、課題や悩みを整理することも行っています。ヒアリングを重ねてソリューションを策定し、本部にトスアップしたり、法人の案件を扱う千葉支店にお繋ぎしたりしています。
──コミュニケーションで大切にしていることは何ですか?
個人と法人とで規模や制度は違う点もありますが、実際にやってみると向き合い方は同じだと感じることが多いですね。営業担当であれ、リタイアされたご高齢のお客さまであれ、経営者であれ、結局は皆さま一人の個人ですので、しっかりとお話を聞いて、悩みに寄り添うことには変わりありません。
これは人事部のときも同じですが、お客さまであれ新入行員であれ、「聞くこと」を積み重ねて、場合によっては言語化されていなかった悩みをしっかりと言葉にした上で、その解決を一緒に考えられたときに、最もやりがいを感じます。これからも「聞くこと」に磨きをかけ、お客さまからも部下からも信頼され、最初に相談を持ちかけられる存在になりたいと思っています。
取材・撮影 柳瀬徹
