「使いやすさ」を届けるデザインへの道へ
私は北海道出身で、小さいころから絵を描いたり、ものを作ったりすることが好きでした。それが、デザインの分野につながったのは、高校卒業後の進路を考えたときです。
ただ「モノ」をつくるだけでなく、「使いやすさ」をつくるという考え方を知り、強く興味を持ちました。その考えに近い分野が「デザイン」だと感じ、デザイン専攻のある大学への進学を決めました。
学校では、ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を専攻。デザインに重点を置き、使いやすさやものづくりのためのデザインプロセスについて学びました。
当時のさまざまなプロジェクト研究の中で、特殊で今でも印象に残っているのは「公式ゆるキャラのデザイン」。その地域はどんなどころか、市民と一緒にどうやってキャラクターをデザインしていくかを考え実行しました。今でも活躍しているそのキャラクターを目にするたび、“遊び心の大切さ”も思い出させてくれて、たいへん貴重な経験となってます。
就職活動では、移動体験や、車を通じて心地よい体験をデザインできる仕事に就きたいと考えていました。学生時代は、ほぼ毎日のように車を運転しており、1人での移動も、誰かとの移動も好きだったんです。
そのような環境がある会社を探す中で出会ったのが、アルプスアルパインでした。デザイン室が東京本社にあることで、ものづくりに必要なインプットとして流行やさまざまな体験に触れられると感じたため、応募を決めました。
ユーザーの“心地よさ”を追い続けて──こんな移動空間に乗りたいをカタチに
2015年の入社以来、デザイン室に所属しています。
最初の約3年間は、カーナビや、オーディオ機器、アプリの画面デザインなど海外市販商品デザインを担当していました。
具体的に言うと、まず「この商品を使う人たちはどんな人たちか」、「ユーザーはどんな暮らしをしていて、どんなものが好きか」を考えてコンセプトを作ることから始まります。
次に、「こういう機能がある方が喜ぶのでは?」、「どういうテイストがいいのか」を考えて、デザインしていくという流れです。
現在は先行デザインチームに所属し、主に自動車メーカー向け製品のデザイン業務を中心に、民生向けの業務にも携わっています。
私たちは、当社技術を効果的に伝えるために、個々の技術を一つずつ説明するのではなく、さまざまな技術を統合し車室空間そのものをデザインし体験していただくことで、より伝わりやすくなると考えています。
そうしたコンセプトを形にしたものが「デジタルキャビン」であり、展示会やお客様向けの技術展を通じて、その価値を提案・発信しています。
自分のアイデアが次につながる──モノづくりの良さとは
デザイン室のミッションは、「あるべき姿を描き、つくっていく」ことだと考えています。その中で大切にしているのは、お客様から一つひとつの技術について「こんな良い体験ができるのか」と興味を持ってもらえるデザインにすること。それが次の仕事につながるので、大切な役割だと感じています。
そうして、会社の方向性と自社の技術を形に落とし込みながら、机上だけでものづくりをするんじゃなく、実際にプロトタイプをつくって、それを車に取り付けて、自ら体験したり評価をしながら日々アップデートを重ねています。とくに力を入れているのは、自動運転が主流になったときの体験づくりです。自動運転が当たり前になれば、移動時間は映画を見てワクワクしたり、まったりとリラックスしたり、道中の景色や人と触れ合ったり、今まで以上にやれること・やりたいことが拡がりますよね。
たとえば、ライブ映像を楽しむために、スタジアムや会場の雰囲気がほしいという気持ちがあると思います。そうした気持ちをどう表現するかを考え、光や振動、においなどを五感に響く体験づくりを進めています。商品化するためにはどうすればよいか、さまざまな部署と協力して取り組んでいます。
今の仕事でやりがいを感じるのは、画面だけでなく、照明や空間づくりなど多様なことを経験することで、幅広いスキルが身につくこと。また、私たちが描くあるべき姿をお客様に共感していただけることや、逆に「もっとこうしたほうがもっといいものに仕上がるんじゃないか」という意見をいただけることも嬉しいことです。
これまでの仕事の中では、2020年にアメリカで開催されたCES(Consumer Electronics Show)という展示会に向けて、先述の「デジタルキャビン」を制作したことが印象に残っています。
画面だけの世界ではなく、実際にここまで大きなモノを作るのは初めての経験で不安もありつつやりがいを感じながら、検討を重ねに重ね完成させました。その後も、VR技術をつかったり形を変えながらさまざまなキャビンを作り続け、一つの仕事・世界観がアップデートされ、次のアイデアや考え方へとつながっている──そんなモノづくりの良さを実感しています。
「誰かの笑顔」が、私の答え。正解のないデザインに向き合う
私たちには、「いいモノを作りたい」「誰かの体験を豊にしたい」という想いがあります。
だからこそ、仕事でめざしているのは、製品を体験した方や使った方が笑顔になり、喜んでいただけること。それが、私たちにとっての正解だと思っています。ただ、人はそれぞれ生い立ちや歩んできたストーリーが違うため、感じ方も異なります。正解は一つではないし、新しい正解が生まれ続けていくと思います。
そのため、普段から、良い気分や嫌な気分になった理由を本質的に考えるようにしています。まずは自分や周囲に広がる体験から分析し、引き出しを増やすことを心がけています。
私はプライベートでもモノづくりをしています。会社でしかできない規模感と、個人でしか表現できない世界観があるので、それぞれの良さを楽しんでいます。ただ、家でも仕事でもモノづくりをしているとさすがにアイデアが詰まったり、疲れてしまうこともあるので、そんなときはふらっと知らない場所に行ったり、同業や他業の人と会ってみたり、新しい体験をしてリフレッシュしたりしています。
最初の頃は、モノを作り終えた達成感で満足していましたが、今はつくったモノを通してひとの笑顔をみることが、やりがいに変わりました。これからもさまざまな人の想いを大切にしながら、感動や喜びを届けられる体験づくりに挑戦し続けていきたいと思います。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです
