現場が変われば、視点が変わる──経験を積み上げマネジメントへ
新潟県新発田市で生まれた私は、父の転勤により新潟、富山、福井、長岡といった複数の地域で幼少期を過ごしました。大学は千葉工業大学の電子工学科に進学しましたが、アメリカンフットボール部の活動に没頭していました。あまりにも部活中心の学生生活だったこともあり、教授には「学部を間違えたんじゃないか」と笑われることもありました(笑)。
当時は、コンピューターや通信技術が大きく進化していた時代だったこともあり、就職活動では電気・回路関連の業界を志望していました。その中で新潟に生産拠点を持つアルプス電気(現・アルプスアルパイン)と出会い、1985年に入社しました。
入社後は、営業職を皮切りに、長岡工場、小出工場(現在は閉鎖)で主に海外顧客担当で各種分析など現場経験を重ねました。小出工場ではビデオテープレコーダー用のVideo Visual ヘッドやVideo Audio ヘッドの製造 品質保証にも関わりました。
やがて、VTR市場の拡大に伴い、ドイツのドルトムント拠点に5年間赴任することになりました。現地では、技術指導や日本との連携、業務管理といったマネジメント全般と顧客窓口を担当。顧客とのQCD交渉を受け、文化や考え方が異なる現地スタッフの意見と、日本側の要望をいかに擦り合わせていくか、模索する日々でした。最終的にVTR市場の縮小とともにプロジェクトは収束を迎え、帰国となりました。
「後回し」はしない。顧客・製品・現場にまっすぐ向き合った日々
帰国後は、ものづくりの基本を現場で学び直し、その経験が評価され、海外顧客向けGMRヘッド(GMR:Giant Magneto-Resistance)、磁気センサー、光コネクター、静電タッチパネルなどの新製品立ち上げプロジェクトに参画。製品設計から営業技術、品質保証など顧客とのダイレクトコミュニケーションに努め、多岐にわたる業務を経験しました。2012年には品質保証部の部長を任されました。
Voice Coil Moter、haptic reactor、TACT Switch™の新製品等、製品化検証や顧客認証の取得対応など、海外顧客との交渉業務も多く、とくに仕様が細かく定められたカスタム品のチェックや説明対応は重要な業務の1つでした。
業務において私が常に意識してきたのは「顧客志向」であることです。顧客のニーズや認証要件を正しく理解し、自社の製品が選ばれるためにはどうすればよいかを常に考え、設計や品質保証に取り組んできました。また、仕事では、うまくいかないことや失敗もありますが、「後回しにしたくなること」ほど、先に手をつけるよう意識し、前向きに取り組む姿勢を大切にしています。
新製品の立ち上げでお客様に認められ、製品化が成功し、市場に出ていく瞬間は最も大きなやりがいを感じました。とくにモバイル関連の製品に多く携わったので、自分が関わった製品が世に出る喜びは格別でした。振り返れば、ドイツ ドルトムントと中国 寧波の海外赴任含め、転勤は11回に及びましたが、その度に新たな業務や環境に身を置くことで、多くの諸先輩、仲間、またお客様と多様な経験を積むことができました。「転勤族」として多くのチャンスに恵まれたことは、私にとって大きな財産です。
再び製造の最前線へ。次世代に技術と誇りをつなぐ、新たなやりがい
2021年に定年を迎え、再雇用となった際、私はこれまで所属していた品質保証部ではなく製造部門への配属を希望しました。これまでのキャリアで多くの変化を経験してきたからこそ、定年後も新しいことに挑戦したいという想いからの決断でした。
現在は製造部に所属し、工程設計や改善、試作準備などを担当しています。直接製造ラインに立つことはありませんが、図面や指示書を現場に展開し、製造プロセスの改善や新製品の展開を支援する役目です。また、これまでの経験で得た知識を後輩たちに伝承し、育成することも重要な役割として意識しています。
かつては部長として管理職の立場にありましたが、現在は現場に戻り、若手のメンバーと共に業務に取り組んでいます。彼らと一緒に新しい技術や知識を学びながら仕事を進めることは、私自身のモチベーションにもつながっており、管理職時代とはまた違ったやりがいを感じています。
また、製品の品質を維持・向上させるためには、新しい情報や技術を取り入れることが不可欠です。工場にいるだけでは得られない情報も、Webやメールなどを活用して積極的に収集し、チーム内に共有しています。
たとえば、私たちがとくに注目しているのがAI分野の市場動向です。この分野の成長は著しく、当工場で製造しているOCDレンズは、毎月300~400万個生産され、市場シェアの約3割を占めるまでになりました。このレンズはAIを支える通信機器の重要な部品であり、自分たちの製品が社会の基盤を支えているという事実は私たちの誇りです。
自分たちの製品が社会で果たす役割や、その需要動向を理解して仕事に取り組むことで、日々のモチベーションも高まります。そしてそれは、イノベーションや人材育成の取り組みとも深く結びついていると実感しています。新しい情報や技術を共有し、次世代へとつないでいくことこそが、事業の持続的な成長に大きな貢献となると考えているからです。
過去を悔やむよりも「今」を楽しむ。リフレッシュをしながら未来へ
プライベートではスポーツを楽しむことが何よりのリフレッシュになっています。大学時代のアメリカンフットボールにはじまり、50歳近くまでラグビーを続けていました。ただ、ラグビーは相手チームや審判も入れると30人以上を集めなければならず、継続が難しくなってしまいました。そこで現在はゴルフやジョギングなど、個人で楽しめるスポーツをしています。
また、英語の勉強にも力を入れています。これまでは「英語は通じればいい」と割り切っていましたが、キャリアを振り返ると、やはり基礎からきちんと学んでおくべきだったと感じるようになりました。現在は、社内の有志で立ち上げた「English同好会」に参加し、隔週で集まって問題集を解くなど、仲間と一緒に学びを深めています。
年齢やキャリアを重ねると過去の失敗や反省点に目が向きがちですが、今は「目の前のことを楽しむ」ことを何よりも大切にしています。以前、同僚から「嫌な自分をずっと見つめていても楽しくない。前向きに考えよう」と言われたことがあり、その言葉がずっと心に残っています。
変化には苦労が伴いますが、前を向いて一歩一歩進んでいけば、自然とその変化も楽しめるようになると実感しています。先のことを考えすぎると不安になることもありますが、「今」を楽しむことが、前向きな気持ちで歩み続ける力になると信じています。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
