FSW技術の未知なる可能性を信じ、多種多様な製品への適用をめざす
トヨタグループで唯一FSW(摩擦撹拌接合)の量産実績を持つアイシン。EV第1生技開発部に所属する丹羽は、既存技術では対応できない電動化部品に対し、それらを実現させるための工法やツール開発を行っています。
「自動車の電動化に伴い、軽量化を目的としたアルミ材の適用が増えつつあります。一般的に金属の接合はアーク放電を使用して溶かしてから接合させますが、アルミ材は溶接が難しい材料の一つ。
そこで注目されているのがFSW。この接合方法は材料を摩擦熱で軟化させて接合するため、熱量が少なく、材料のひずみが少ないのが特長です。材料は溶かすことによって組織が粗大化し、接合部の品質が低下するおそれがありますが、それを解決できる手法がFSW。とくに融点が低いアルミニウムのような接合が容易になります。そこで私は、従来のFSWでは対応できなかった形状や要求強度に応じた工法開発を行っています」
現在、丹羽は10名程度の接合グループの中で、工法開発をメインに主任として業務に従事しています。
「既存技術を製品に落とし込むこともグループの役割です。誰が実施しても品質が均一に保たれ、安定的に生産できる工法を確立するための開発を行っています。
一方、今までできなかったことを可能にする新たな技術開発にも注力。私が参画した時にはFSWの量産化はすでに実現していましたが、当時の話を聞くと、非常に多くの課題があって、何もわからない状態からのスタートはハードルが高かったと言います。皆さんの努力のおかげで、ハードルはぐっと下がりましたし、その中で働くことができてありがたく感じています」
材料のおもしろさに気づいた大学時代。FSW技術を追求するため新たな挑戦に挑む
大学時代は理工学部で材料機能工学を学んでいた丹羽。材料に着目した理由を次のように話します。
「開発のもっともベースとなるものが材料。そこからいろんなものが開発され、新しいものが生み出されることで世の中が変わっていく。そういった材料の可能性に魅力を感じました。
一方で、ミクロな観察ができることも材料のおもしろいところ。一つ手を加えるだけで異なる顔を見せてくれるため、さまざまなアプローチが可能で、工夫次第でいかようにもできるのが楽しいですね。
大学では熱による組織の変化について学びましたが、これは接合技術につながっており、身につけた知識は現在の仕事にも大いに活きています」
卒業後は、インターンシップをきっかけに工作機械メーカーへ入社。そこでも丹羽は、FSWの工法開発を担当していました。
「工作機械を選んだ理由は、ものづくりの『源流』に興味があったから。工作機械の精度が良くなれば、おのずと製品の品質も向上していくので、これは材料と通ずるものがあります。
前職では、先行開発部隊として6年ほど、工作機械におけるFSWの開発に携わりました。これは自ら希望したのですが、もともとFSWの原理を金属材料の表面改質に応用したFSP(摩擦撹拌プロセス)の分析を行っていたことに加えて、新しいことに挑戦していくことに楽しさを感じるタイプだったため、手を挙げたんです。手探りで新しい技術に挑む感覚はワクワクしましたね」
ところが、FSW技術の開発に従事していると、しだいに工作機械の範囲を越えて、さらにFSW技術を深堀りしていきたいと考えるように。転職を決意した丹羽は、その後アイシンと出会います。
「求人情報を見た時に、接合技術と記載された求人はありましたが、“FSW”と明記していたのはアイシンだけでした。ここならFSWの開発に専念できると考え、入社を決意しました」
ヒントは自分の身近なところにある。いろんな人に協力を仰ぎながら実現できた特許出願
2023年、主任としてアイシンに中途入社した丹羽。新たな環境で仕事をしていく中で、気づいた自身の変化についてこう話します。
「入社してから1年が経ち、仕事への姿勢も以前と比べて変化したように思います。前職では自分自身が手を動かすことが多かったのですが、1人でできる範囲や速度には限界があることに気づきました。今ではいろんな方々に協力を仰ぎながら、仕事を進めていこうという姿勢に変わってきています」
まだ入社して間もないにもかかわらず、丹羽は早くも大きな成果を実現しています。
「とくに印象に残っているのは、この一年間で特許を4件出願できたことですね。チャレンジングな取り組みでしたが、周りの方々の協力もあり、スピード感を持って開発を進めることができました。
培ってきた経験をベースに新しい技術が組み合わさることで良い結果を生み出すことができたため、あらためてインプットの大切さを実感しましたね」
これまで数々の特許出願を行ってきた丹羽には、常に心がけていることがあると言います。
「過去にアウトプットで苦労したことがあり、その時に知人から『小さなことでもいいから使いにくいと感じることを見つけ、それをどうやって解決するか考えるようにするといいよ』とアドバイスをもらいました。特許というと、世の中にない画期的なものを開発するイメージが強かったんです。
しかし、そうではなくて身の回りにある困り事を解決するだけでも特許になるものもある。そう気づいてからは、あまり難しく考えなくなったことでアウトプットがしやすくなりました。業務改善の一種というような意識で取り組むようにしています」
続けて、アイシンで働く魅力についてこう語ります。
「自分の意見が通りやすいため、スピード感を持って開発に取り組めることですね。皆さんが協力的に動いてくれるおかげで、自分がやりたいことが実現できる。これがアイシンの魅力であり、自分のやりがいにもつながっていると思います。
ただ逆を言えば、『こういうことがやりたいです』と発言することが大事なので、能動的に行動できる人や新しいことへのチャレンジ精神が旺盛な人が活躍できる場所でもあります」
先が見えないからこそ新たな挑戦を。マルチマテリアル化を見据えて技術の幅を広げる
今後はFSW技術だけでなく、接合技術にもよりいっそう注力していきたい。そう話す丹羽には、ありたい姿があると言います。
「これまでFSWに特化した開発に携わってきましたが、今後はレーザー溶接や抵抗溶接、カシメ接合など、接合技術についての学びも深め、スキルをさらに向上させていきたいです。設計部署から『この製品をどう接合したらよいか』と相談された際も、材質の組み合わせや形状に応じて、最適な接合方法を提案できる存在になれたらと思っています。
自動車が電動化することによって、進展すると言われているのがマルチマテリアル化。これは適切な部位に適切な材料を配置していく考え方で、そうなると金属同士の接合だけではなく、CFRP(炭素繊維複合材料)のような異種接合も求められるようになります。
それに対応するためにも、より広い視野を持って、新しいことに積極的に挑戦し、どんな材料でも接合できるようになることも今後の目標です」
新しいことに挑戦する楽しさについて、自身の性格を踏まえてこう語ります。
「私はとにかく新しいことにチャレンジすることが好きで、たとえば、趣味で始めたプログラミングのスキルを活かし、Pythonを使用して業務の効率化を図ったり、または生成AIを取り入れてみたり。日々、新しいことに挑戦しています。
またプライベートでは趣味のドラムを叩くことも。アイシンでは入社後からいろんなことに挑戦させてもらえるため、私の性格にもマッチしていますし、非常に働きやすい環境だと思っています」
最後に、開発者として新たな挑戦を考えている仲間に向けてメッセージを送ります。
「自動車業界は今、大きな変革期を迎えています。5年先、10年先が見通しにくい状況ですが、それこそが新しいことに挑戦する絶好のチャンスだと捉えています。新しい技術に挑むのはワクワクしますし、FSWに出会った時も同じ感覚でした。
ただ一つの分野に特化していても製品は良くなっていかないため、今後もいろんなことにチャレンジしたいですし、同じ想いを持つ方と一緒に働けたらいいですね。意欲さえあれば分野は関係ないですから、自動車分野が未経験の方も大歓迎です」
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
