患者様と共に歩む「シェルパ」として──専門薬局だからこそできる深い関わり
横浜市立市民病院の近くに位置する薬樹薬局 三ツ沢。ここで薬剤師として勤務する宮澤は、店舗の特徴について次のように語ります。
「さまざまな診療科目を持つ大規模病院の前という立地から、多様な患者様が来局する薬局です。薬局には薬剤師がパートを含め8名、管理栄養士が1名、そして事務員が6名います。
厚生労働省が定める専門医療機関連携薬局の認定を受けており、がんやHIV、難病など高度なニーズがある患者様にも対応できる体制を整えています」
宮澤は専門薬局としての具体的な取り組みについて、さらに説明を続けます。
「たとえばがん患者様の場合、外来で点滴を受けた後の吐き気止めなど、副作用に関する薬を受け取りに来られます。私たちはレジメン(治療計画書)を確認した上で服薬指導を行います。
その後、吐き気が出やすいタイミングで電話をかけ、服薬状況や症状を確認。必要に応じて病院にフィードバックしたり、支持薬の提案をしたりしています」
がん治療を受けている患者様は全体に占める割合は少ないものの、来局頻度が高く、関わる機会は多くあります。宮澤は、緩和薬物療法認定薬剤師と外来がん治療認定薬剤師の資格を活かし、医療用麻薬を使用する患者様のケアも担当しています。
「痛みの評価をNRSという数値スケールで行い、薬の初回使用から1週間後には電話で状況を確認します。また、他の薬剤師から痛みがうまくコントロールできていない患者様の報告を受け、対応することもあります。別途、終末期の在宅患者様のところへ医療用麻薬を持参して訪問することもあります」
入社当初は薬の説明をする立場という意識が強かった宮澤。しかし、現在では患者様の声を聞くことに心を配っています。
「緩和ケアの学会では、私たちの立場を山登りのシェルパにたとえることがあります。患者様と一緒に歩んでいく存在であり、患者様の意向に寄り添うことを大切にしています」
終末期患者様との出会いが変えた視点──専門性を高める決意と資格への挑戦
宮澤が薬剤師をめざしたのは、理系の素養を活かしながら長く続けられる仕事だと考えたことにあります。
「人の役に立っている実感がある仕事がよいと思い、医療職を選びました。薬剤師は人と対話をしながら、専門性を活かしてその人の力になれる仕事という点に魅力を感じました。
就職は病院か薬局かで迷いましたが、6年生の実習で薬局の雰囲気が自分に合っていると感じたこと、またより自分のペースで自分らしく働ける環境を求めて薬局を選択しました」
薬局の中でも薬樹を選んだ理由は、関東圏を中心とした展開と多職種連携の体制が整っていた点にありました。
「関東圏を中心に展開している会社であり、将来性があると考えました。また、管理栄養士や理学療法士が在籍しており未病にも力を入れている企業であることにも惹かれました。
実際に現在の店舗にはさまざまな資格を持つ社員が在籍しています。管理栄養士のほか、スポーツファーマシストやケアマネジャーの資格を持つ薬剤師もいて、チームでのサポート体制が整っています」
薬剤師となった宮澤にとって転機になったのは、入社5年目に現在の店舗に異動したときでした。宮澤は初めて終末期の患者様の在宅訪問を担当することになったのです。
「患者様の容態が急変することが多く、夜8時頃に急な処方変更で薬を届けに行くこともありました。処方内容が週単位で変更になり、それに追われる形での対応となりました。とくに患者様のご家族の不安が強く、薬について多くの質問を受けました。
医師と患者様の間で治療方針についての認識の差もあり、最終的には慌ただしい状況の中で看取りの時期を迎えることとなりました。私は後悔が残ったのと同時に、緩和ケアの勉強の必要性を強く感じました。医療職として見通しを持って対応することが、患者様の不安軽減にもつながると考えたのです」
緩和ケアの学びを深めることを決意した宮澤は、日本緩和医療学会の研修会への参加や、母校での勉強会への参加を通じて研鑽を重ねます。
「会社からの支援も手厚く、外来がん治療認定薬剤師の資格については病院実習の案内が全社員向けにメールできて、手を挙げれば参加できる体制になっています」
こうして、入社7年目の2019年に緩和薬物療法認定薬剤師の資格を取得。さらに外来がん治療認定薬剤師の資格も取得し、専門性を高めていきました。
傾聴から生まれる信頼関係。「ありがとう」の言葉で実感する“頼られる存在”
日々の業務の中で、宮澤が薬剤師としての役割を強く実感した経験があります。それは、ある終末期の患者様への対応でした。
「その方は、オピオイド系の薬が処方された時、副作用の吐き気で服用を中止したいと薬局に連絡をくださいました。でも痛みもあるので、どうしたらいいか悩んでいる様子でした」
薬剤師として、患者様の痛みを和らげることと、副作用による苦痛軽減の両立をめざして、宮澤は行動を起こしました。
「まず医師と相談し、投与量を少なめからスタートするよう提案。医師も協力的で、他の薬との組み合わせを工夫して、段階的に増やしていけるプランを立てました。その結果、患者様は服薬を継続できるようになりました」
残念ながら、その後入院となり来局されなくなりましたが、その時期までうまく橋渡しができたことに、宮澤は薬剤師としての存在意義を感じています。
「困った時に電話できる人、顔を覚えている人が1人でも増えることが、患者様の安心につながります。患者様を支える家族や医師、看護師などの一員として、薬剤師も頼られる存在になれることが、私にとって働くやりがいになっています」
このような想いから、外来治療中の患者様へのテレフォンフォローにも力を入れている宮澤。服薬状況の確認だけでなく、不安や悩みにも耳を傾けています。
「電話での確認だけでも、患者様に安心していただけることが多いですし、『ありがとう』と言っていただけることも増えました。保険薬局での電話対応には、大きな意義があると実感しています」
緩和ケアの経験を重ねる中で、患者様の気持ちを受け止めることの大切さに気づいたと宮澤は言います。
「緩和ケアを始めてから、患者様の話をよく聞く姿勢が身につきました。『そうですね、それはわかります』と共感の言葉を返すことで、信頼関係を築きやすくなったと感じています」
成長を支える職場環境──子育てと両立しながら、専門性を深める
患者様との信頼関係を大切にする宮澤ですが、その成長を支えているのは、恵まれた職場環境だと言います。多様な専門性を持つ薬剤師や、経験豊かな事務スタッフとともに働いており、宮澤は周囲の先輩から多くを学んでいます。
「HIV専門薬剤師の資格を持つ先輩は、外部の勉強会で積極的に発信活動をされています。また、薬剤師歴の長いベテランスタッフや、事務員の方の患者様への対応力には、感心することが多いです。
たとえば待ち時間が長くなった際の患者様への対応は非常に参考になります。日々刺激を受けながら成長できる環境に感謝しています」
現在は5歳と1歳の子育て中で、時短勤務を選択している宮澤。職場には育児中の社員が複数名おり、互いに理解し合えることにも支えられています。
「子どもの発熱時などは、夫と分担して対応しています。どうしても出席が必要な会議がある時は、子どもを病院に連れて行った後で仕事に戻るなど、柔軟に対応しています。職場の理解があり、とても働きやすい環境です」
今後は、がんと緩和ケアの分野でさらなる専門性を高めていく考えです。
「病院での研修を受け、第一線で働いている薬剤師の先生の知識を吸収していきたいです。そして外来がん治療専門薬剤師の資格取得をめざしています。
また、薬局にある睡眠や悪液質に関する測定機器を活用した取り組みを行い、その成果を学会など外部に発表していきたいと考えています。薬局にできることを広げていきたいですね」
宮澤はスペシャリストコースで働いていることから、社内や地域に向けた勉強会の開催も担当しています。とくに抗がん剤や医療用麻薬に関する知識を他の店舗の薬剤師にも広めることが求められています。
「以前は定期的に勉強会を開催していましたが、2人目の子どもが生まれてからは一時的に中断しています。今後はそういった活動も再開させ、知識の共有にも力を入れていきたいです」
宮澤は未来の仲間となる薬剤師へ、こう語ります。
「薬剤師として大切なのは、必要な情報を伝えるだけでなく、患者様の声に耳を傾け、一人ひとりに寄り添うことです。薬樹では専門医療機関連携薬局や地域連携薬局に関する取り組みを積極的に進めており、患者様のニーズを拾おうとする姿勢を大切にしています。
そのための研修制度も充実しているので、入社後は患者様に寄り添う薬剤師としての姿勢をさらに深めていけます。薬樹で共に成長していける仲間との出会いを楽しみにしています」
※ 記載内容は2025年7月時点のものです

