専門チームで支える在宅医療、日々の工夫と多職種連携の大切さ
横浜市内、主に旭区・保土ヶ谷区・港北区を担当エリアとする薬樹の妙蓮寺ラウンドチームは、薬剤師4名からなる在宅専門のチームです。ここでチームリーダーを務める本橋は、1日10件前後の訪問を行いながら、新規患者様の割り振りやチームマネジメントを担当しています。
「在宅専門チームでは、患者様への薬の配達だけでなく、その後の服薬管理も重要な業務です。『今できることを最大限にやる』という意識を常に持ち、患者様一人ひとりに合わせた工夫を心がけています」
医師の往診や訪問看護師、ヘルパーなど、多くの専門職が関わる在宅医療の現場。そのなかで薬剤師にも独自の役割があります。
また、各患者様への訪問頻度は症状により異なり、2週間に1回が基本ですが、認知症の重い方は毎週訪問するなど、柔軟に対応。月間で400〜500件の訪問実績があり、チーム全体で在宅医療を支えています。
「私たち薬剤師の業務で大切なのは多職種との連携です。数カ月に1回開催されるサービス担当者会議では、患者様一人ひとりについて、医師、看護師、ヘルパーなど、関わる全ての職種が集まって話し合います。より良い環境づくりのために、薬剤師としての提案も行っています」
入社時、小児科メインの店舗で働くことを希望していたという本橋。しかし、在宅専門チームに配属されてからは、新たな気づきを得ています。
「在宅医療というと責任の重大さを感じられるかもしれませんが、実際は患者様の生活スタイルも多種多様で、自身でお買い物に行けるほど活動的な方もいらっしゃいます。患者様それぞれの状況に合わせ、きめ細かなケアを提供できることが、在宅専門チームの強みだと実感しています」
月に1回開催される社内のグループミーティングでは、他地域の在宅チームとZoomで繋がり、事例共有や課題解決を行っています。
「通常の薬局では週1〜2件程度の在宅訪問かと思いますが、薬樹の専門チームでは1人が1日最低5件程度を担当します。集中的に経験を積めることで、短期間でスキルアップができる環境が整っていますし、それが患者様へのより良いケアにつながっていると実感しています」
幼い頃の経験が導いた薬剤師への道。思わぬ異動から広がった視野、在宅医療への使命感
本橋は、薬剤師を目指したきっかけについて、幼い頃の経験を振り返ります。
「小学生の時に病気に罹った際、ほんの小さな薬を飲んでスッと熱が下がったことに驚き、私はこの薬を作る人になりたいと思いました。それが医療業界、ひいては薬剤師を志すきっかけでしたね」
その後、家族の影響も大きかったといいます。
「母が持病持ちで、よく病院に通っていました。その時に信頼できる薬剤師の方に出会い、母がその薬剤師さんから色々と教えてもらって嬉しかったと話すのを聞いて。薬を渡すだけでなく、気持ちの面でもサポートできる存在になれるのは薬剤師という仕事なのかもしれない、と考えるようになりました」
しかし、薬剤師への道のりは平坦ではありませんでした。大学卒業時に薬剤師国家試験で不合格となり、就職活動の時期と重なる中で、先の見えない不安を抱えた経験もありました。
「卒業は決まっていたにも関わらず国家試験に落ちた時は、本当にどうしようと思いました。あと数点という僅差だったんです。けれども、薬樹が『大丈夫だよ』と言ってくださり、採用はそのままに」
無事に翌年、国家試験に合格し、晴れて薬剤師としてのキャリアをスタートさせた本橋。最初は希望通り、小児科の目の前にある薬局で数年間の経験を積みました。しかし、3年ほど働いた後に予想外の出来事が待っていました。
「小児科がメインの薬局で働いていたので、てっきりこのまま小児科関連の薬局で店長を目指すものと思っていたところ、まさかの在宅専門チームへの異動が決まりました。当然、最初は戸惑うことも多かったです」
しかし、その戸惑いは次第に使命感へと変わっていきます。
「超高齢社会において在宅医療は必要不可欠なもの。若いうちにこの経験ができることは、むしろチャンスだと考えるようになりました。医師や看護師、ヘルパーさんが求めていることを理解し、医療現場のさまざまなニーズを知ることができる。今、積んでいるこの経験は、将来どんな場面でも活きてくると確信しています」
患者様に寄り添う服薬サポート。薬剤師としての工夫と役割
在宅専門チームとして、患者様に関わる医師や看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど多職種と密接に協力しながら患者様のケアに取り組む本橋。
「私たちは訪問してお薬を配達することはできますが、その後のことは患者様に任せなければなりません。そのため、どうやって薬をうまく飲んでいただくかを必死に考えて、工夫をして、自分ができる最大限のことをしようと常に考えています」
ある時、医師から抗ウイルス薬を持参するよう指示を受けました。薬が大きく、服用が困難な患者様だったため、その場で飲んでいただくことにしました。
「普段であればカレンダーにセットして『飲んでおいてください』と終わる方なのですが、今回は錠剤が大きく飲みづらそうでしたので、どれくらいの大きさなら飲めるか聞き取りをして、その場で錠剤を半分に割って試していただきました。すると、『これなら飲めますね』と喜んでいただけたんです。患者様の生活に合わせた服薬方法を提案できるのは、私たち薬剤師ならではの役割です」
多職種との連携は、時に予期せぬ形で信頼関係を築くきっかけにもなります。他社の患者様について、ケアマネジャーから薬の管理方法について相談を受けた経験も、本橋にとっては印象深かったと言います。
「他社の患者様なので本来は担当している薬局に相談していただきたい気持ちはありましたが、これまでのケアマネジャーさんとの関係性もありましたし、とても困っているなかで、本橋にしか相談できなかった、とのことで相談に乗らせていただいたんです。
私ができることを精一杯させていただいたところ、その後、その患者様が当社の担当となり、今も継続してケアをさせていただいています」
このような経験を通じて、本橋は多職種連携の重要性を実感しています。
「外来の薬局では医師との関わりが中心でしたが、在宅ではケアマネジャーやヘルパー、看護師との連携が不可欠。むしろ関わらないと仕事ができないほど密接な関係性が求められます。それが外来から在宅に変わって意識的にも大きく変化した点ですね」
患者様だけでなく、医療従事者からも相談したいと思ってもらえる、頼られる存在に。
本橋が大切にしているのは、前向きでポジティブな姿勢。病気を抱える患者様と接する中で、そのキャラクターが活かせていると自分でも感じている日々です。
「基本的に私はポジティブなので、患者様に対してもできるだけポジティブでいただけるように工夫しています。私たちが関わる方は当然ですが病気の方が多いわけで、どうしても気持ちが落ち込む方だって多くなるのは当然のこと。けれども、こちらもマイナスの発言を一緒にしてしまったら、やはり患者様も私たちもどんどん気持ちが滅入ってしまう。
そのため、患者様のお話を聞きつつ、なるべくプラス転換したり、受け止める発言を心掛けますし、それによって患者様を元気づけることができればと思っているんです」
この姿勢は患者様にも確かに伝わっていると、手応えを感じている本橋。今後の目標は、より多くの人から頼られる存在になることと言います。
「おばあちゃんと孫のような雰囲気で、まずは話し相手になって、楽しい話ができるようになると、次は私が訪問するのを楽しみにしてくださっている方もいらっしゃいます。とても嬉しいことですね。
引き続き、この人に、つまり、本橋に相談したいなと思ってもらえるような存在でいたいと思っています。もちろんこれは対象が患者様だけではなく、ケアマネジャーさん、ヘルパーさん、保健師さん、医師など、いろんな方から『本橋だったら何か答えてくれるだろう』と思えるような存在になりたいと考えています」
入社前は患者様との関わりだけを考えていた本橋。しかし、在宅専任チームで働く中で、多職種との連携の重要性を実感し、相談される対象も広がっていきました。
「働き始めた頃は患者様にほとんどの意識を集中させていたのですが、今は患者様のみならず、関係各所すべて、というところまで意識が広がって来ています。
先ほどの話にあったヘルパーさんから相談を受けて対応させていただいたのも、まさに私が介在すれば改善できそう、と思ったことをやってみた結果でしかなかったですから。これからも目の前の方に向けて何ができるのか、考えていきたいです」
本橋は、これからも患者様やその家族、医療従事者から信頼される存在として、在宅医療チームの現場で活躍していきます。
※ 記載内容は2025年6月時点のものです

