全社で円滑な受注を実現するために。技術者の育成に力を注ぐ
若築建設の建設事業部門担当 常務執行役員を務める宮坂は、本社の営業部長として主に官公庁の営業を統括する立場にあります。
「現在、受注に向けた各支店のサポートを担当しています。国土交通省や防衛省、環境省といった国の機関や、東京都や大阪市などの自治体からスムーズに受注するため、全国の5支店に対して入札までの指導や情報提供を行っています」
若築建設の強みは海上工事ですが、現在は陸上工事や建築工事の比率も高まっています。
「官公庁の大型工事では、技術提案が入札の結果に大きく影響します。地域によって評価基準に特徴が見られるので、そういった情報も含めて対策を練りながら、受注に結びつけています。
また、支店の間で得意分野が異なったり、技術者のスキルにばらつきがあったりすることも。たとえば、ある支店では陸上工事の技術者が少ないといった課題があるので、全体で受注の最適化を図る必要があり、そのために技術者の育成に力を入れています」
技術者の育成については、従来の育成方法から大きく転換を図っています。
「以前は10年かけて一人前をめざすのが主流でした。しかし現在は、働き方改革や人手不足の影響で、より早期の育成が求められています。1つの分野あたり1~2年のローテーションを組んで、5年ほどでいろいろな工種を経験し、6年目から主任クラスとして活躍できるようなキャリアパスを理想としています」
とくに若手の技術者には、さまざまな現場を経験してもらうことが大切だと言います。
「若いうちに官公庁工事、民間工事、陸上工事、海上工事など、できるだけ多くの現場を経験してほしいと考えています。幅広い経験を積むことがノウハウを早く習得することにつながります。そして、そこで築いた人脈が将来の財産になります」
現在、市場において建築分野の需要が高まっており、仕事は着実に増えています。
「数年前から全国の防災対策として、国土強靱化が推進されています。防衛省でも防衛力の強化が重視されていますし、多種多様な面で国の予算がついています。ですので、この先、仕事は増える傾向にあると見込んでいます。
この流れに乗って、とくに建築部門の売り上げのシェア拡大をめざしています。それに対応するため、若手に早い段階から即戦力として活躍してほしいと考えています」
現場での経験を重ねて、空港や災害復旧の大規模プロジェクトをリードする立場に
約40年前、宮坂が入社して最初に配属されたのは姫路の現場でした。当時の状況を振り返ります。
「今では考えられないかもしれませんが、当時、入社式当日の午後にはもう現場に入るのが通例でした。最初の現場は昔の国鉄のお仕事で、姫路水尾川URT(※1)工事。
その事務所は田んぼに囲まれたプレハブ小屋で、1階に事務所、2階に宿泊する部屋がありました。それ以降は、雨の日を除いて休みはほとんどなく、現場に寝泊まりする生活でした」
その後、多くの現場を経験する中で、大きな転機となったのは、1991年に担当した関西空港進入灯点検橋工事で、宮坂は現場主任を務めました。
「飛行機が離着陸する時に見える進入灯を設置するための橋を500mほど新設する工事で、職員5名と協力業者さんの50人ほどで施工しました。当時はまだGPSなどの測量システムがなく、すべての作業を人力で行わなければなりませんでした。
とくに大変だったのは、海上での測量作業。海上に鋼管杭を4本斜めに打って、そこに四角いコンクリートを打設し、その上に橋を架けます。でも夏場は陽炎の影響で、250mほど先の測点を正確に誘導するのが難しいんです。
最終的には私が『ここだ』と決断して、そこを中心にして橋を架けたら、うまく収まりました。1年強の工期でしたが、完成した時に検査官から『ご苦労様でした』と言われた時は感無量でしたね」
大勢の人員を指揮し、大掛かりな工事を完了させた宮坂。1995年の阪神淡路大震災では、復旧作業にも携わりました。
「その時はまだドローンも存在していなくて、被災状況を把握するのに時間がかかりました。当時は平板測量といって被災した構造物を手書きでスケッチするのが基本でしたから。現場では、がれき撤去や警戒作業、テント設営、道路の改修など、緊急対応のあらゆる作業に従事しました」
そして1999年には関西空港2期事業の所長に抜擢されました。しかし、ここでは大きな試練に直面しました。
「現場で船を転覆させるという事故を起こしてしまい、関西空港始まって以来の事故として報道される事態となりました。苦境に立たされましたが、そんな時でも船を提供してくれたり、転覆した船を押してくれるボート業者が来てくれたりと、多くの人に助けられました。人とのつながりの大切さを実感した出来事でしたね」
※1 URT:鉄道または道路を挟んで、発進立坑および到達立坑を設け、トンネル断面を鋼製エレメントで取り囲み、順々にエレメントを推進して躯体を構築するトンネルの施工方法
技術では他社にも負けない。強い信念でプロジェクトの主軸を担う
東京国際空港D滑走路建設工事は、宮坂にとってキャリアの集大成となる大きなプロジェクトでした。
「通常、大規模プロジェクトではリーダーシップを取る会社があります。以前の関西空港の工事では当社もそこに追従する立場でしたが、最初から中枢に入り込まないと納得のいく成果が出せないことを痛感していました。やはり、完了後の達成感も変わってきます」
宮坂はその教訓を活かし、羽田空港の工事では最初から積極的にプロジェクトの意思決定に関わる戦略を取ります。
「会社の規模には大小ありますが、技術者の技術力では絶対に負けていないという自負があったんです。この工事では、地盤の改良にサンドドレーン工法(SD)やサンドコンパクションパイル(SCP)(※2)工法が採用されています。
これらの工法に使用する作業船は、全国でも隻数が限られており、地盤改良エリア全体をひとつの作業エリアとして施工計画を作成します。
当社はサンドドレーン船を所有し、地盤改良は得意分野でした。そこで自社のサンドドレーン船を有効に活用した施工方法を提案し、これが採用されることになりました」
工事は24時間体制で行われ、厳しい工程でした。しかし宮坂の強い信念のもと、プロジェクトは成功を収めます。
この経験は、後の東日本大震災の復興事業でも活かされることになります。宮坂は、東北6県すべての現場を統括する立場として、さまざまな支店からの応援を取りまとめる重要な役割を担いました。
「地震発生後1週間ほどで現地に入りました。阪神淡路大震災からは2度目となる復旧作業で、経験から、災害時の重要な教訓を得ました。災害が発生したら、まずは自分と家族の身の安全を確認することが最優先。そこから身の回りの状況を把握し、復旧計画を立てるのです。
震災復旧工事では、地域事情に詳しくない応援部隊だけで担当する現場も多くありました。そんな状況下での私の任務は、とにかく早く着工させること。着工してしまえば、あとは現場の人が動けます。そのために全力を尽くしました」
宮坂は、これまで培った経験を踏まえて、現場で判断することの重要性についてこう話します。
「トップに立つ人は、部下の疑問や質問に対してマルか、バツか、決断しなければいけません。以前は本人が決めた方がいいと考えていた時期もありましたが、それでは現場が混乱してしまいます。支店長を7年間務めた経験から、最終的な結論を潔く決めることがマネジメントする人の役割だと思っています」
※2 SCP:砂を杭として打設し、砂杭の抵抗で、地盤を強くする工法
後世に役立つ、クリエイティブな仕事。土木のイメージを覆し、多分野から人材を迎える
建設業界の人材採用について、宮坂は時代に合わせた採用方針を取り入れる必要があると考えています。
「最近では、働き方改革が進み建設業界でも残業規制や休暇取得、福利厚生が充実してきました。土木を取り巻く状況やイメージは大きく変わりつつあるのです。そのため当社では土木や建築にこだわらず、当社に関心の高い方を採用したいと考えています。英文科や化学系など、他分野からの採用も検討しています。
とくに女性は、土木系を専攻する時点で明確な目的意識を持っている方が多いという印象があります。以前、ネイリストをしていた女性が入社し、2級土木施工管理技士の資格を取得して頑張っている例もあります」
建設業界の将来についても、宮坂は明確なビジョンを持っています。
「われわれのものづくりには、後世の人々に役立つものを作っているのだという誇りがあります。ですから、とくに若い社員には『あなたは脇役ではなく主役だ』という意識を持ってほしいと思っています。若いうちから誇りと自信を持って仕事に取り組んでほしいのです」
この仕事のおもしろさについて、宮坂は独自の視点を持っています。
「当社が手掛ける仕事は、まったく同じものはありませんし、工事のやり方も異なります。一つひとつがまたとない機会になります。決して定型的な仕事ではなく、クリエイティブな仕事であるという点がおもしろいところです」
過去の実績が何世代にもわたって形として残ることも、この仕事の醍醐味だと話します。
「3年前に、30年以上前に携わった、関西空港の進入灯の現場を訪れる機会がありました。そこで工事の記録として刻まれた銘板を見つけた時は、非常に感慨深いものがありました。
また最初に担当した姫路の現場でも、40年経った今も電車が走っています。自分たちが作ったものが、いつまでもしっかりと社会の役に立っている。それを実感できるのは、この仕事の大きなやりがいであり、魅力だと思います」
建設業でやりがいを持って活躍する若手が増えていくために。宮坂はこれからも若築建設でのものづくりの醍醐味を伝え続けていきます。
※ 記載内容は2025年3月時点のものです
