「人をまとめる経験」と「研究に打ち込む経験」が形作った、商社という選択
学生時代は、人をまとめる経験と研究に打ち込む経験の両方に力を入れてきました。1つめは、テニスサークルの学生連盟代表としての活動です。関東圏のテニスサークルが参加する組織で、団体戦や個人戦の大会運営を担当していました。大学ごとに考え方や温度感が違う中、各代表と話し合いを重ねながら、全員が納得できる形を模索していく日々でした。この経験から、立場の異なる人を巻き込み、物事を前に進める難しさとおもしろさを学びました。もう1つは、大学院での糖尿病研究です。日々ネズミと向き合いながら実験を繰り返す中で、地道に考え抜く力が鍛えられました。一方で、研究成果が社会に届くまでの距離の遠さも実感し、自分の知識や経験をビジネスとして社会に役立てたいと考えるようになりました。
就職活動では、三つの軸で企業を見ていました。1つめは「海外と関われること」、2つめは自分自身がモノを作るのではなく、モノとモノ、人とモノを結びつける役割であること、3つめは人とのつながりが重視される世界であることです。これらの軸から、商社という業界に強く惹かれていきました。
入社前の豊田通商には、業界6位という立ち位置から、トーメンとの統合を経て5大商社に割って入ろうとする挑戦者のイメージを持っていました。完成された商社というより、これから伸ばしていく余地が大きい会社だと感じていたのです。
入社を決めた理由は主に二つあります。1つめは、会社としての今後の勢いです。完成された組織ではなく、これから形を作っていける点に魅力を感じました。2つめは、OB訪問などを通じて感じた人の良さです。当時、「動物園みたいな会社」と表現している方がいましたが、実際に話を聞く中で、さまざまなバックグラウンドや個性を持った人がうまく混ざり合っている雰囲気を感じました。その多様性の中で、自分も自然体で働けそうだと思えたことが、最終的な決め手になりました。
イメージ通りの環境で、アフリカ×モビリティの仕事をスタート
私は入社以来、一貫してアフリカ地域におけるモビリティ関連の仕事に携わってきました。地域自体は変わっていませんが、その中で担当してきた業務内容は多岐にわたります。具体的には、アフターセールス領域から始まり、M&A、スタートアップ投資、車両営業、さらにはバリューチェーン全体を見渡した事業にも関わってきました。一つの分野に留まるのではなく、状況やフェーズに応じて役割が変わり、そのたび新しい知識や視点が求められる環境でした。駐在先としては入社4年目から南アフリカとアンゴラに合計5年、直近ではフランスとナイジェリアにも駐在し、若手から現場での経験をたくさんさせてもらっています。
入社後に感じたギャップは、正直ほとんどありませんでした。選考やOB訪問を通じて聞いていた通りの会社で、良い意味でイメージ通りだったと感じています。仕事の進め方や人の雰囲気、裁量の大きさなども事前に想像していた範囲内で、大きな違和感はありませんでした。入社後も自然に環境に馴染むことができたのは、選考段階で会社の実像をしっかり伝えてもらっていたからだと思っています。
現場主義で築く信頼関係。アフリカでの経験が変えた「物事への向き合い方」
現在は、アフリカモビリティバリューチェーン事業部の自動車部品グループで、東南部アフリカの統括を担当しています。主なミッションは、アフリカ地域における補給部品の最適な供給ネットワークの構築と、現地販売代理店のオペレーションレベル向上です。部品の供給が滞ると車両の稼働にも直結するため、物流や在庫管理を含めた仕組みづくりが重要になります。また、現地代理店の業務プロセスや人材面の課題にも向き合いながら、全体として安定したバリューチェーンを構築することをめざしています。
異動したてのため、現在の部署での成功体験や苦労はまだこれからという状況です。ただ、これまでのキャリアの中では印象深い経験がいくつかあります。とくに忘れられないのは、ナイジェリアで販売ゼネラルマネジャーとして大型顧客やディーラーとの関係構築に取り組んだ経験です。着任当初は、車両のコンディションや慢性的な在庫不足、価格面などについて厳しい指摘を受けることが多く、罵倒されるような場面も少なくありませんでした。その状況から逃げず、自分たちが置かれている現実を正直に伝えつつ、改善できる点を一つずつ対応していくことを意識しました。また、問題が起きた時だけでなく、日常的にコミュニケーションを取り続けることを大切にしてきました。その積み重ねによって、徐々に相手の反応も変わり、「困った時にはまず相談される存在」になることができました。
学生時代と比べて成長したと感じるのは、物事への向き合い方です。以前は、データや資料を基に「こう思われる」「こうあるべき」と考える、いわばコンサル的なアプローチが中心でした。一方で、仕事を通じて、実際に現地に足を運び、自分の目で見て状況を把握し、手を動かしながら最適解を探し、時にはマニュアルとは異なる、現場に即した策を実行するよう意識しています。机上で考えるだけでなく、現場で起きている事実を踏まえて判断する力が身についたと感じています。この変化は、海外・現地に根差した仕事を経験したからこその成長だと思っています。
「Be the right one」として部品ビジネスを極め、販売代理店の経営へ
短期的には、現在担当している部品ビジネスをさらに深め、部品分野のエキスパートになることに挑戦したいと考えています。物流、在庫、価格設定、現地オペレーションなどを含めて、部品ビジネス全体を立体的に理解し、現場で起きる課題に対して実践的な打ち手を出せる存在になりたいです。まずはこの領域で確かな専門性を身につけ、だれにも負けない「Be the right one」になることが、次のステップにつながると考えています。
中長期的には、その部品ビジネスの知見を生かし、現地の販売代理店の経営に携わることが目標です。現場やオペレーションを理解した上で、人や組織を動かし、事業全体を成長させていける存在になることをめざしています。
これから入社する皆さんには、組織に新しい風を入れられる存在になってほしいと思っています。社長がよく「組織を変えられるのは、よそ者、ばか者、若者だ」と話していましたが、まさにその通りだと感じています。外からの視点を持ち、常識を疑い、失敗を恐れずに一歩踏み出せる人こそが、組織を前に進められます。経験や肩書きよりも、新しい環境に飛び込み、変化を楽しめる姿勢を持った人に、ぜひ仲間になってもらいたいです。

