高校卒業後の進路として「就職」を考える人は決して少なくありません。しかし、通っている高校の学科や環境によっては、進学する同級生が多く、「本当に就職で大丈夫?」「どんな仕事があるの?」と不安を感じることもあるでしょう。
本記事では、高校卒業後に就職するメリットや気をつけたいポイントを整理しつつ、実際に高卒でキャリアを築いた人々の経験談を紹介します。高卒就職のリアルを知り、自分に合った選択を見つけるための参考にしてみてください。
目次
・どのくらいの人が高卒で就職しているの?高卒の就職事情
・高卒で就職するメリット3選
・高卒で就職する上で気をつけたいポイント
・高校卒業後に就職した人はどんなキャリアを歩んでいるのか?先輩の経験談
どのくらいの人が高卒で就職しているの?高卒の就職事情
日本では毎年多くの高校生が、高校卒業後の進路で就職を選択しています。
文部科学省の「令和6年3月高等学校卒業者の就職状況(令和6年3月末現在)に関する調査について」によると、高校卒業後に就職を希望する割合は14%とされています。また、就職希望者のうち実際に就職できたのは、98%となっています。
高卒就職者は、製造業、販売業、サービス業など幅広い業界で活躍しており、多くの企業が高校生向けの求人を用意しています。とくに地元企業では、高卒採用に積極的なケースが多く、地元密着型の働き方を希望する人にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。
高卒で就職するメリット3選
高校卒業後に就職することを検討されている方に向けて、ここでは、高校卒業後に就職するメリットを3つご紹介します。
1. 早く社会経験を積める
大学に進学せずに就職することで、同年代の人よりも早く実務経験を積むことができます。とくに実践的なスキルが求められる職種では、高卒から早期にキャリアをスタートし、社会人経験を多く積む方が有利になることもあります。
また、収入を得て生活費を自己負担することで、早い段階から自立した生活を送ることができます。貯金や投資など、金銭管理のスキルも身につくでしょう。
2. 学費の負担がない
大学や専門学校などへの進学には学費がかかりますが、高卒で就職すればその負担を回避できます。また、働きながら資格取得やスキルアップに励むことで、キャリアアップも可能です。
3. 企業のサポートを受けられる
高卒採用を行う企業の中には、新入社員研修や資格取得支援を充実させているところもあります。企業によっては、働きながら学べる環境を整えており通信制大学の学費補助などの制度を用意している場合もあります。
高卒で就職する上で気をつけたいポイント
高校卒業後に就職することには、多くの魅力がある一方で、事前に知っておくと良い点もあります。ここでは、高卒で就職する場合に意識しておきたいポイントもご紹介します。
1. 初任給が低く感じやすい
一般的に、大学卒と比べると初任給が低めに設定されていることが多いです。
ただし、昇給や資格手当などでカバーできるケースもあります。また、学歴よりも経験やスキルが評価される業界や企業も多く、成果を出せば、学歴に関係なく、待遇を向上させていくこともできるでしょう。
2. キャリアの選択肢が狭まる可能性
高卒での就活は、高校の推薦を通じた活動が主流なため、自分で自由に企業を選ぶ機会が少なくなりやすいです。また、一部の職種では大卒資格が求められたり、昇進の際の条件になったりすることがあります。
しかし、自分自身で求人情報を調べたり、転職しやすい業界を調べたりすることで、将来の選択肢が少ない点はカバーできます。また大学資格や昇進に関しても、実務経験を積みながら通信制大学に通ったり、資格取得したりすることで補えます。
3. 学生生活が短い
高校卒業後すぐに社会人としての責任を持つことになるため、大学生のような自由な時間が少なくなります。一方で、早くから収入を得られることで金銭面での自由度は大学生と比べると高くなりやすいでしょう。
高校卒業後に就職した人はどんなキャリアを歩んでいるのか?7人の経験談
高校卒業後に就職した場合、どんな選択肢やキャリアがあるのか、イメージしづらい方も多いと思います。ここでは、高校卒業後から働き始めた人たちの事例をご紹介します。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
九州旅客鉄道株式会社
事業内容:旅客鉄道事業、海上運送事業、旅客自動車運送事業、旅行業、駐車場業、広告業、損害保険代理業そのほかの保険媒介代理業、旅行用品、飲食料品、酒類、医薬品、化粧品、日用品雑貨などの小売業、旅館業及び飲食店業、不動産の売買、賃貸、仲介及び管理業
▲写真左から、高野浦さん、西山さん、牧嶋さん
現在の仕事内容:
高野浦さん:鉄道事業本部、事業統括部に所属し、人事担当として鉄道分野の人員管理や組織づくりの検討などに従事
西山さん:運転士として、九州新幹線の「つばめ」「みずほ」「さくら」を運転
牧嶋さん:北九州市にある保線区の施設技術係で線路の保線業務に従事
これまでのキャリア / 入社のきっかけ:
高野浦さん 「就職を考えていた時、学校の先生に『JR九州はどう?』と提案してもらったことがきっかけです。もともと通学でJR九州を利用していたので、なんとなく働くイメージもつき、身近な存在だったことが決め手になりました。
2008年に入社後、6年間は駅業務に従事。6年目にリーダー研修を受講したことをきっかけに部署異動し、以後はさまざまな部署で総務・人事の業務に取り組んでいます」
西山さん 「私は人と話すことが好きで接客業務に興味を持ち、2015年に入社しました。入社してまず配属されたのが、JR九州の駅の中でも最大規模の博多駅。同期と切磋琢磨できたほか、駅でお世話になった先輩方が、車掌、運転士とスキルアップしている姿に憧れ、私自身も車掌、在来線の運転士を経験してきました。
加えて、九州の名所を数日かけて巡る寝台列車『ななつ星 in 九州』の公募に応募し、無事合格。乗務員としてお客さまと密に関わり合いながら、九州の魅力に触れられたことが私にとって大きな糧になっています。その後、リーダー研修に参加し、自分のやりたいことを問い詰めた結果、新幹線の運転士に挑戦することを決めました」
牧嶋さん 「『九州を代表する企業に入りたい』という思いから、2016年にJR九州へ入社。もともと高校では電気科に進学していたので、入社後は電気系統に進むつもりでいましたが、研修の際にお世話になった講師が保線専門であったことをきっかけに保線に興味を持ち、この世界に飛び込みました。
保線の仕事はお客さまと直接関わることはありませんが、お客さまが『JR九州=安全』と思って乗車してくださっていること自体が自身の仕事の結果だと思っているので、誇りを持って働けます」
記事リンク:リーダー研修から広がる無限の可能性。「やりたい」のひと言から始まるJR九州での挑戦
京王建設株式会社
事業内容:建築(マンション・宿泊施設・鉄道関連施設など)、土木(道路・造成・鉄道関連施設など)、軌道管理保守
現在の仕事内容:
毎日線路を歩き、悪くなっているところはないか、レールの左右の高低差で揺れが発生しているところがないかなどを確認し必要があれば補修する、軌道保守の仕事を担当
これまでのキャリア/入社のきっかけ:
川浪さんが工業高校を卒業後、京王建設への入社を決めたのは、同じ高校の先輩が京王建設での軌道保守の仕事に携わっていたからでした。
川浪さん 「『線路の中での仕事だから、一歩間違えば大事故にもなるし電車を止めることにもなってしまう。そんな中で、自分たちの手で線路を補修して、安全な運行を守っていくことにやりがいを感じている』という先輩の話に魅力を感じたんです。
私は、元々、工業高校の都市工学で、土木や道路の管理業務について学んでいました。道路の補修や測量などに興味を持っていて、特別に鉄道が好きだったわけではありません。でも、先輩の話を聞いて軌道保守の仕事に就きたいなと思うようになりました」
記事リンク:安全と快適な環境を担保する軌道保守業務──乗客の笑顔を守る若き技術員
スタッフサービス・エンジニアリング
事業内容:機械、電気・電子、情報、化学などの分野における技術者、およびITエンジニアの派遣・紹介事業(常用型派遣)
現在の仕事内容:
3DCADでの図面作成、仕様打ち合わせ、部品手配、マニュアルや社内基準の作成など
これまでのキャリア/入社のきっかけ:
神﨑さん 「高校卒業後の1社目では、資材の配達や店頭販売に関する仕事だけでなく、営業に出かけることもあり、とにかく業務の幅が広く、社会人1年目の私にとっては、覚えることが多くとても大変でした。
また、就職先は家から片道1時間半。少しでも睡眠時間を確保するため、自腹で都市高速に乗って通勤していました。その上初任給も安く、だんだんと働くことがつらく感じるようになっていったんです。それでもできるところまで続けようと頑張ったのですが……。
同期の中では一番最後まで残りましたが、4カ月が限界でした。
(中略)高卒、しかも4カ月で退職した私に、好条件の転職は困難でした。仕方なくガソリンスタンドでアルバイトを始め、途中からは部品メーカーで製造や部品発注の仕事もかけ持ちするようになりました。
しかしダブルワークは体力的にも負担が大きく、常に疲労が抜けない状態で、またしても働き方に不安を感じ始めていました。
そんなとき、仕事で大きな転機が訪れました。部品メーカーで工業高校卒の経歴を買われ、CADでの設計補助を任せてもらえるようになったんです。それをきっかけに「モノづくり」の楽しさを思い出し、仕事は部品メーカー1本に絞りました」
記事リンク:「双子の母」と「エンジニア」を両立できる環境に感謝しています
総合メディカル株式会社
事業内容:医業経営コンサルティング、医療モールの開発・運営、医療機関への医師の紹介、医師の転職・開業支援、医業継承支援、保険調剤・一般薬・介護用品の販売、医療機器などのリース・販売、入院患者向けテレビのレンタル
現在の仕事内容:
そうごう薬局 日下店のRCS(ラウンドケアスタッフ)職として、主に処方箋の受付やデータ入力、薬のピッキングなどの調剤補助、調剤報酬請求を行うほか、医薬品の検品整理、OTC医薬品や備品の管理などを担当
これまでのキャリア/入社のきっかけ:
山光さん 「高校は商業課で、ビジネスやマーケティングを学んでいました。学びを活かせる事務職をめざしていたのですが、アルバイトの経験や学校の販売実習から接客業にも興味を持ち、その2つが両立するような職業があればいいなと考えるようになりました」
さまざまな職種を調べていくうちに見つけたのが、医療事務でした。窓口で接客をしながら、事務も行うことは、山光さんの思い描いていた職にぴったり当てはまるものでした。
山光さん 「学生時代から、周囲に笑顔をほめてもらえることが多かったので、笑顔で元気を与えたり安心したりしていただければと思いましたし、医療に関わる仕事に魅力を感じました。そこで、地元の薬局に片っ端から電話をかけて、求人の状況についてお話を聞いたのですが、高校卒業者を採用してくれるところが見つからず、焦りましたね」
地元から少し視野を広げたときに見つけたのが総合メディカルです。問い合わせすると、「高卒の方でも大丈夫ですからぜひ応募ください」という心強い回答を得られたことから、入社を決意しました。
記事リンク:【新卒採用】高校卒業からの挑戦。笑顔で患者さんとスタッフに安心を届ける薬局事務職をめざして
トヨタ自動車株式会社
事業内容:自動車の生産・販売
現在の仕事内容:
自動車による移動や運搬をスムーズに行うための「モビリティ」全体のセキュリティ対策を推進
これまでのキャリア/入社のきっかけ:
守屋さん 「工業高校を卒業後、工場勤務やITベンチャーでのExcelやWordのサポート業務、サーバー管理など、さまざまな分野の仕事を経験してきました。
その後、サイバー攻撃を監視するエンジニアや、大学院卒業後は内閣官房でサイバー攻撃を調べる役割を務め、2018年にトヨタへ入社しました。
IT業界へ進むきっかけになったのは、『スクールカウンセラーになりたい』という思いです。なぜそうなりたかったのかというと、『子どもの頃にいろんなことを考えられていたらよかったな』という後悔があるんです。
(中略)でも、スクールカウンセラーになるのは高卒では困難でした。そこで、大学に進学する費用を確保するための手段として、当時華やかで給料も良かったIT業界へ行こうと決めました。
いざ働いてみると、業界のおもしろさに気づきました。サイバー攻撃の相手は「人間」です。そのため、何か決まった法則はなく、むしろ、幅広い知識が必要になります。また、やっているうちに人のためにもなる仕事だと、気づきました。
スクールカウンセラーもITの仕事も、仕事である以上、人のためになる点では同じです。新たなやりがいを見つけたこともあり、スクールカウンセラーの道は辞めて、IT業界へどんどんのめり込むようになりました。
それから経験したIT業界の仕事はさまざまありますが、特に前職の内閣官房での経験が私にとって大きなターニングポイントになりました。
当時、内閣サイバーセキュリティセンター企画官(現参事官)の上司は、機械工学専攻で『製品安全』や『人命に関わる緊急時の対応』に深い知見と経験を持っていました。そして、その人と話しているうちに、人の生命や安心・安全に関わりサイバーセキュリティの知識が活かせる職場で働きたいと思うようになったんです。その結果、トヨタに入社しました」
記事リンク:全てはお客様の幸せのために。生命や安全を守るセキュリティ運用を担う意義
富士ソフト株式会社
事業内容:業務系ソリューション、組込/制御系テクノロジー、プロダクト・サービス&アウトソーシング
現在の仕事内容:
自動車メーカーやサプライヤー向けの車載システム開発を担当
これまでのキャリア/入社のきっかけ:
工業高校卒業後、ソフトウェア会社に入社してC言語の基礎を学び、そこから車載システムの開発に携わってきた石橋さん。エンジン、ステアリング、シートベルト、エアバッグなど、自動車の電子制御に関わるさまざまな分野について、設計からテストまでを一貫して担当してきた。
石橋さん 「前職では自動車のステレオカメラの開発に携わっていて、富士ソフトと同じプロジェクトで仕事をする機会もありました。ある時、自分で考え提案したシステムが製品に搭載され、実際に動いているところを見られたことで、大きな達成感を味わったんです」
業務内容に手応えを感じる一方、働く環境や収入面で不安を覚えることがあり、規模の大きい会社への転職を考えたと言う。
石橋さん 「富士ソフトに転職を決めた理由は、ステレオカメラの開発にやりがいを感じており、その仕事を続けたいという思いがあったからです。車載システムの開発経験を活かせる環境に惹かれましたね。
また、高卒というバックグラウンドが転職活動時にネックになることもあり、自分の実力をある程度知ってくれていることにも安心感を覚えました」
記事リンク:ユーザー視点を養い車載開発に活かす──富士ソフトだから実現できるスペシャリストへの道
CCIG Unity(旧:北國FHD社員組合)
事業内容:銀行、そのほか銀行法により子会社とすることができる会社の経営管理及びこれに附帯する業務、上記の業務のほか、銀行法により銀行持株会社が行うことができる業務
現在の仕事内容:武蔵ヶ辻支店でフロント受付を担当
これまでのキャリア/入社のきっかけ:
石崎さんは、高校卒業と同時に北國銀行へと入社しました。商業科の学びの中では、数学や簿記など、ひとつの明確な答えが存在するものを追求することが好きでした。
石崎さん 「将来は書類に向き合うような、いわゆる一般的な事務職に就くのだと漠然と考えていました。ですが、先生が銀行に向いているのではないかと当社の学内斡旋を勧めてくれたんです」
硬式テニス部の部長や、学校全体を模擬店舗にする文化祭イベントでは進んで店頭に立つなどした石崎さん。その物怖じしないコミュニケーション力が先生に見込まれたと言います。
「誰とでも話せるというその強みは銀行窓口が向いていると思う。人とコミュニケーションを取る機会の少ない職場ではもったいない」と先生に言われた石崎さんですが、希望した進路ではなかったために、最初は反発心もあったと言います。
石崎さん 「悩みながらも校内選考をパスし、採用面接の結果内定したので、決まったのなら頑張るしかないと腹をくくりました。けれども今となっては、進路選択の際に私の強みを見いだしてくれた先生に感謝しています」
記事リンク:お客さまにより良いサービスの提供を──社内制度の活用でスキルアップ
まとめ
高校卒業後に就職することに、不安を感じる人も少なくないでしょう。しかし、実際に高卒でキャリアを築いている人々の経験からもわかるように、スキルを身につけながらキャリアアップすることは十分可能です。
どんな選択であれ、自分の将来の目標やライフスタイルに合わせて、最適な選択をするのが大切だと思います。この記事が、その選択の参考になれば、嬉しく思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
