就職活動の際、企業選びで判断材料の一つとなるのが企業の規模です。規模といっても、従業員数や売上高、ビジネスの規模などさまざまな見方がありますが、「大企業」「中小企業」「ベンチャー企業・スタートアップ企業」での分類が馴染み深いかと思います。
もちろん企業規模は判断軸の一つではあり、自分自身がどんな環境でどんな仕事をしたいのか、またはどんな環境であればより活躍できそうかを知り、適した環境を見つけるのが何よりも重要です。
本記事では、企業規模の分類に加えて、他の就活生はどう考えているのか、大企業、中小企業、ベンチャー企業・スタートアップ企業で働いた経験のある人はどのように感じているのかをご紹介します。
大企業、中堅・中小企業、ベンチャー企業・スタートアップ企業の分類
そもそも、大企業、中小企業、ベンチャー企業・スタートアップ企業は、どのように分類されているのでしょうか?
▶︎大企業(大手企業)
大企業を明確に定義するものはなく、一般的には従業員数や市場でのシェア、ビジネスの規模、知名度などが高い企業が大企業と呼ばれることが多いでしょう。
▶︎中小企業
中小企業は「中小企業基本法」という法律で定義が定められています。定義の基準は資本金または出資の総額と従業員数で、業種により基準数値が異なります(※)。なお、中小企業に該当する場合でも大手企業の傘下に属する場合は、「みなし大企業」とされます。
※ 中小企業の定義
・製造業、建設業、運輸業その他の業種:資本金の総額または出資の総額が3億円以下ならびに常時使用する従業者数が300人以下
・卸売業:資本金の総額または出資の総額が1億円以下ならびに常時使用する従業者数100人以下
・小売業:資本金の総額または出資の総額が5千万円以下ならびに常時使用する従業者数50人以下
・サービス業:資本金の総額または出資の総額が5千万円以下ならびに常時使用する従業者数100人以下
▶︎ベンチャー企業・スタートアップ企業
ベンチャー企業・スタートアップ企業にも明確な定義はなく、どちらも先に紹介した中小企業に該当します。
ベンチャー企業は既存のマーケットやビジネスを活かした事業を行い、自社の資金や銀行などの融資を元手に着実な成長をめざします。一方のスタートアップ企業は新たなビジネスやマーケットを創出するような事業に取り組み、投資家などから資金調達を行い短期間でのサービス拡大・成長をめざすといった違いがあります。
就活生は企業の規模をどのくらい気にかけている?
何を基準に就職先を選ぶかは人それぞれですが、多くの就活生にとって、企業規模は基準としてどのように考えられているのでしょうか?
株式会社ガロアが4年制・短期大学・専門学校を含む学生455名を対象に実施した、 大学生の就職活動・企業選びの実態調査において、仕事内容を踏まえて、企業規模の企業を希望するかを問う設問(Q3)では、「仕事内容にかかわらず大手企業希望」は12%、「仕事内容に関わらず中堅・中小企業希望」は1%、「スタートアップ企業・ベンチャー企業希望」は2%、「企業の規模は意識しない」が13%という結果になり、仕事内容に比べると企業規模の優先順位は下がるようです。
一方で、「仕事内容にかかわらず大手企業希望」「やりたい仕事ができるならば大手企業がよい」という回答は全体の50%となり、大企業への注目は高いようです。
Q3で大企業を選択した方に、「Q4.大手企業の魅力だと感じているところは? 」(n=224)と質問したところ、安定性や待遇の良さを理由とする大学生が多く見られました。とくに「社会的信用度が高い(69%)」という回答が一番多く集まっています。
また、Q3で中小企業を選択した方に、「Q5.中堅・中小企業の魅力だと感じているところは?」(n=144)と質問したところ、「社内のコミュニケーションの取りやすさ」に魅力を感じているという意見が多く寄せられました。
母数は少ないですが、Q3でスタートアップ企業・ベンチャー企業を選択した方に(「Q6.スタートアップ企業・ベンチャー企業希望の魅力と感じているところは?」(n=10)と質問したところ、「上昇志向が高い空間で働けること」や「将来的に起業を考えており、ノウハウを学びたい」といった回答が多く集まりました。
■調査概要
・調査期間:2022年3月9日(水)~2022年03月17日(木)
・調査対象:全国、ガクセイ協賛に登録する約600の学校の学生
・調査方法:インターネット調査
・対象者数:4年制・短期大学・専門学校を含む学生455名
大企業、中小企業、ベンチャー企業・スタートアップ企業を経験しているビジネスパーソンの声
ここからは、転職経験者で大企業、中小企業、ベンチャー企業・スタートアップ企業のいずれか2つを経験しているビジネスパーソンの声をご紹介します。働き方や働くことへの価値観は人それぞれですが、ヒントにしてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
▶︎BRANU株式会社(ブラニュー)
事業内容:建設業向けデジタルトランスフォーメーション事業
・現在の業務内容:パートナーセールスチームで新たな市場開拓を推進
大手IT企業で営業としてさまざまな経験をつめたからこそ、今度はスタートアップで自分の力を試してみたいという気持ちが福井さんにはありました。
そこでHR領域のSaaSプロダクトを提供するスタートアップ企業へ転職。大手で有形商品を販売する営業マンから、ベンチャーで無形商品を扱う営業マンへと転身を遂げます。
福井さん「商品を販売するというより、世の中にある当たり前のものを作っていく、自分たちで市場を切り拓いていく段階に携わることに面白みを感じましたね」
平均年齢が若く、上司も部下もフラットな関係で前職と大きく異なる環境でした。年齢や勤続年数ではなく、成果を基準に給料・昇進を決めるスタイルが福井さんに火をつけます。
→ストーリー:orではなくandの姿勢で諦めない。努力を続けるBRANUのパートナーセールス
▶︎INTLOOP株式会社
事業内容:事業戦略・業務改革コンサルティング、ITコンサルティング、プロジェクトマネジメント支援、プロフェッショナル人材支援・人材紹介、新規事業開発・営業推進支援、海外進出・販路開拓支援
・現在の業務内容:コンサルティング事業本部に所属し、シニアコンサルタントとして活躍
自分の殻を破るために、大企業からベンチャー企業への大胆なシフトチェンジ。不安はなかったのでしょうか。
岸本さん 「そもそも、大きな会社に転職するつもりはまったくありませんでした。なぜなら、前職では、大きな学びを得られた一方、いわゆる“調整業務”を任されることも多く、“主体的に早いスピードで業務を進めていきたい”と考えたからです。であれば、むしろ小さい会社の方が思いを実現できそうだ、と思ったんです」
→ストーリー:時代の波に乗る必要人材であり続ける秘訣──DXで世界を変える醍醐味とは?
▶︎株式会社かんぽ生命保険
事業内容:生命保険業
・現在の業務内容:朝霞郵便局かんぽサービス部で営業を担当
大手重機メーカーから転職したのは、海外進出や不動産活用など幅広い分野で中小企業のコンサルティングを行うベンチャー企業。主に不動産活用をご提案するため、企業への飛び込み営業やテレアポなどを担当し、企業を片っ端から回っていったと振り返ります。
清水さん 「本格的に営業を行うのは初めてなので、わからないことだらけ。大企業への営業は、まず受付で門前払いになり、名刺を受け取っていただく機会すらなかなかありません。当時まだ設立したばかりのベンチャー企業だったので、なおさらですね」
ベンチャー企業の営業活動では、できることならなんでも時間を惜しまずチャレンジしたと言う清水さん。初めての営業で多くのことを学びました。
清水さん 「まずは人脈づくりとして、経営者セミナーや商工会議所が主催する研修などに昼夜を問わず参加しました。企業にいきなり訪問するのではなく、少しでも接点を作って、紹介者から一言添えてもらうだけで印象が全く違います。営業をする上で人とのつながりは本当に大事だなと何度も思いました」
ベンチャー企業から郵政グループに転職することを選んだのは、今後の自身のキャリアや生き方を考えたときに、自分の将来が見えなかったからだ、と清水は話します。
清水さん 「ベンチャー企業でこのまま、死に物狂いで働く生活を定年退職まで続けていけるのか、と不安な気持ちが芽生えてきました。自分のワークライフバランスを考えたときに、しっかりとした会社基盤があり、福利厚生面でも充実している企業で働きたいと考えるようになっていました。
そんな折、郵政グループの募集要項を見つけて応募しました。応募したときは正直、年齢を重ねてしまったから厳しいだろうと諦め半分でしたが、ありがたいことに採用していただけたので、挑戦してよかったなと思っています」
→ストーリー:営業の原点に立ち返りながら、お客さまに「語り継いで」いただける社員を目指して
▶︎日本シグマックス株式会社
事業内容:全国の医療機関に整形外科向けの各種固定材料、医療機器を製造販売するほか、スポーツ事業(スポーツ用サポート・ケア製品の製造販売)、ウェルネス事業(日常生活向けサポート・ケア製品の製造販売)も展開
・業務内容:商品企画開発部開発2課で、医療機器をはじめとする機械商品の開発に携わる
勉強に忙殺される学生時代を経て、塚原さんが選んだ1社目の就職先は、中堅の医療機器メーカーでした。
塚原さん 「就職活動では大手企業も受けましたが、中小企業で働きたかったんです。自分の目で全体を見ることができる規模の方が私には合っている気がしました。
入社後は、介護医療系の機器開発に従事。転職するまでの3年間、幅広い経験を積みました。三現主義の大切さを学んだのも、このときです。製品ができる過程から納品まで同行させてもらい、一連の現場を見ることができた。開発担当でありながら、お客様とつながることができる環境は、実は貴重だと思うんです。ものづくりのノウハウだけではなく、お客様に対する考え方も学ぶことができた経験は、大切な財産です」
ものづくりを多角的に見られる貴重な立場で経験を積んだ塚原さん。転職のきっかけは、機械系の製品に力を入れていこうとしていたシグマックスと出会ったことでした。
→ストーリー:ものづくりの原点は、現場・現実・現物にあり──部門の垣根を越えてニーズに応える
▶︎日本電気株式会社(NEC)
事業内容:ITサービス事業、社会インフラ事業
・現在の業務内容:新規事業開発を推進するかたわら、これまでのキャリアでの経験や視点を活かし職場変革活動にも携わる
具呂さん 「そんな私のファーストキャリアとなったのは、ホスティング事業やWebサービス事業などを手がける企業でした。社員数が200人ほどの中小企業だったので、約11年在籍する中でコーポレートも含めすべての本部を回るなど、幅広い業務を経験しました。
そのため、やりきったという想いとともに、長く在籍することで自分の意見が通りすぎる点にも危機感を抱いていました。また「果たして自分は外の世界で通用する人材なんだろうか?」と漠然とした不安もあり、スキルアップを理由に転職を考えるようになりました。
2社目に選んだのはDXサービスを提供するメガベンチャー。扱う商材は変わりましたが、前職で培ったノウハウを大いに活かすことできて成績は上々。ただ、人が成長する先に事業成長があると考えていた私にとって、どちらかというと事業成長を重視するその会社の組織文化になじむことができませんでした。
次第に会社と足並みが揃わなくなるのを感じて転職を決意。1回目の転職活動時にオファーをもらっていたNECの人事の方にそのタイミングで声をかけたところ、とんとん拍子で話が進み、選考を受けることに」
→ストーリー:ビジネスと組織にイノベーションを──「身近な人を幸せに」の精神で事業開発に挑む
新卒1社目にベンチャー企業やスタートアップ企業を選んだ人の経験談
調査結果では少数派であった、ベンチャー企業・スタートアップ企業への就職。新卒で就職する際にベンチャー企業・スタートアップ企業を選択した先輩たちは、どんな理由で選択したのでしょうか?
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
▶︎株式会社NEWONE
事業内容:コンサルティング、企業研修・組織開発、新卒採用支援事業、起業支援、シェアードサービス
・現在の業務内容:主に打ち合わせのためのテレアポや、開発業務、研修プログラムの作成など全般的にさまざまな仕事を担当
高藤さん「就活生へは、『社会的に認められている会社と、自分が入るべき会社は必ずしも一緒ではない』ということを伝えたいです。
私は、大学院の友達の多くが有名企業へと入る中で、ベンチャー企業である当社に入社しました。そんな状況でなんの妥協もすることなく入れたのは、当社では自分のやりたいことができるという確信があったからだと思っています。
必ずしも、大企業だからと言って自分にあっているというわけではないので、自分がやりたいことをしっかり考えた上でそれが一番実現できるところをめざせたら一番良いのではないかなと思っています」
→ストーリー:「仕事にワクワクできる」そんな自分と向き合うために──NEWONE新卒社員の本音とは
▶︎Ridgelinez株式会社
事業内容:お客様の根源的な課題を構造化しめざす姿を描き、価値創造を起点に国内外のさまざまなパートナーや最適なテクノロジーを活用して、事業変革の実現を支援
・現在の業務内容:Industry Groupに所属し、主に流通・小売業のお客様へのコンサルティングを担当
Arata Fさん 「じつは新卒で入社したのは別の会社で、ハンズオン型のコンサルティングを行うベンチャー企業でした。社員が40人ほどの小さな会社で、お客様も小規模なBtoC企業が中心。新人でもプロジェクトを自力で完遂することが求められる一方、研修でしっかり学ぶというよりも、周りに聞きながら自力で解決し仕事を覚えていくような環境でした。そのような環境で働いていたぶん、早くから仕事への責任感を持てたように思います」
→ストーリー:お客様やチームの仲間から「また一緒に仕事がしたい」と思ってもらえる存在になる
▶︎株式会社フレクト
事業内容:クラウドインテグレーションサービス、Cariotサービス
・現在の業務内容:ITエンジニアとして大手総合商社の物流プラットフォーム案件に携わる
学生時代は、官僚を志し法学部に進んだ雨森さんでしたが、就職活動するころには考えが一転。1社目では、若手のうちから裁量権が与えられ、やりたいことを自由にできる環境を求めてベンチャー企業に就職しました。
雨森さん 「それまで敷かれたレールの上を歩いてきたところがあったので、レールから外れて何か大きなことをしてみたいと漠然と考えていました。そこでまず身につけたいと考えたのが、主体的に行動するためのマインドセット。自分を追い込むつもりであえて大企業を避け、挑戦できそうと感じた環境を選びました」
→ストーリー:文系出身、未経験、第二新卒で技術者に──自由度の高い環境だから描ける成長の未来図
組織やビジネスの規模やフェーズごとに得意なこと苦手なこと、強み弱みがあるため、規模の大きさは一つの基準になりえます。しかし、企業の規模による違いについてご紹介してきましたが、大企業であってもベンチャー企業のようなカルチャーを持っていたり、中小企業やベンチャー、スタートアップであっても、福利厚生などを含め働く環境が充実していたりもします。
そのため、自分はどんな環境で働きたいのかやどんな仕事をしたいのか、どんなカルチャーで働きたいのかを明確にした上で、規模ごとの特徴を踏まえて企業を調べると、マッチした企業に出会いやすくなるかもしれません。
