リスキリングやリカレント教育など、学び直しに注目が集まっている昨今。企業としても人材育成や競争力強化に向けて、リスキリングにまつわる制度や、従業員が自律的にキャリアを形成できる制度などを取り入れています。
今回は、学び直しの中でも、社会人として働きながら大学院や専門学校へ通い、学んだ方々の経験談をご紹介します。
195名のリスキリング経験者が回答!リスキリングの実態
法人向けDX人材育成サービス「MENTER」を提供するWHITE株式会社(本社::神奈川県横浜市)が、リスキリング(※)経験者195名に対して「リスキリングの実態調査」を実施。
調査レポートによれば、過去にリスキリングを経験したことがある195名に対し、リスキリングをはじめた目的を尋ねたところ「不足している知識やスキルの補足」(42.1%)、「新たな知識やスキルへの興味」(37.9%)といった能動的な理由が上位となりました。
一方で、「会社(上司・人事)からの要請」(14.9%)、「会社での費用補助」(16.4%)といった自発的ではないキッカケの人も1割程度存在する結果となりました。
また、リスキリングの際に利用したものを尋ねたところ、「インターネット検索」(39.1%)や「オンライン学習サービス」(30.4%)といったオンラインサービスが上位にランクインしました。
コロナ禍以降、オンライン学習でスキルアップを行うという選択肢が市民権を得始めていることが想定されます。
■調査データについて
・調査名称:リスキリングに関する実態調査
・調査機関:Fastask
・調査対象:全国のリスキリング経験者
・調査方法: インターネットリサーチ
・調査期間:2023年7月12日〜2023年7月19日
・有効回答数:195件
MBA取得・資格の取得──働きながら学び得たものとは?
WHITE社の調査では、オンラインサービスでのリスキリングが上位にランクインしていましたが、リアルセミナーや学校での学習も決して少ないとは言えません。
そこでここからは、経営学修士(以下、MBA)取得や資格取得をめざし、働きながら大学院や専門学校に通ったことのある方々の経験談をご紹介します。経験者たちは仕事がありながらも、なぜ新たな学びを求めたのでしょうか?また、大学院や専門学校に通うことで、どんな変化があったのでしょうか?
※ 掲載内容は記事公開当時の内容です
▶︎freee株式会社
事業内容:「クラウド会計ソフト freee会計」と「freee人事労務」を提供
・仕事内容:データアナリストとして活躍
・学び直しのきっかけ:
岡田さん 「研究開発のほかに、別の素材メーカーさんからの買い付け業務や顧客折衝など、交渉する場面がたくさんありました。交渉では相手のビジネスを知ることや、自社のコストを意識することは必須です。そこで私は経営的な考え方やロジカルシンキングを身につける必要性を感じ、MBAスクールに入学しました。
授業では経営学や新規サービスの立ち上げのためのビジネス戦略などを学びました。その一つひとつにおもしろさを感じると同時に、自分でゼロからサービスを立ち上げ、ビジネスを回してみたい気持ちが湧いてきたんです」
・変化:
岡田さんは自分の主軸を探して、さらなる転職を考え始めます。脳裏によぎったのは、MBAスクールで触れたデータ分析でした。
岡田さん 「定量データやファクトをもとに経営戦略を考える授業で、定量的なファクトにもとづいて会社の向かう方向性を考えて示すのはおもしろく、すごく説得力があると思いました。
また趣味で企業分析もやっていて、頭のどこかで『データ分析を軸に仕事ができないかな』とも思っていたんです」
そんなタイミングで、freeeからスカウトメールを受け取った岡田さん。カジュアル面談で「未経験ですが、データ分析がやりたいんです」と伝えたことで、アナリティクスで責任者をしていた鎌田 真太郎と出会いました。
→ストーリー:始めるのに遅すぎることはない!経験ゼロから挑戦し、大活躍するデータアナリスト
▶︎イグニション・ポイント株式会社
事業内容:コンサルティング事業、イノベーション事業、インベストメント事業
・仕事内容:コンサルティング事業本部ストラテジーユニットでシニアコンサルタントとして活躍
・学び直しのきっかけ:
──営業職から、事業開発の経験まで幅広く積まれたのですね。
「経験としては非常にありがたい機会ではありましたが、1年半ほどはとても苦しかったです。当時PdMとしては最年少であり、かつ営業の経験しかありませんでしたので、事業推進に対してPdMというポジションからの価値がなかなか出せませんでした。
今の自分に足りない点は何かを考えたとき、経営視点を持っていないことだと思い至りました。そこで、一念発起して経営大学院に通ってMBA(経営学修士)を取得しました」
・変化:
「フルタイムの仕事とかけ持ちで大学院に通うのは本当に大変でした。それでも、週末は朝から夕方までおもしろい授業に身を浸し、夜は活気あるヨーロッパのパブで、目を輝かせながら夢を堂々と語る仲間たちと過ごしていると、だんだんと自分にも変化が現れました。
自分の興味により敏感になりましたし、『自分なんかよりもっとすごい人はたくさんいる』と卑下して興味の種を潰してしまうことも減りました。夢を堂々と宣言することもできるようになりました。そんな変化の最中に、コンサルを志すきっかけとなった『起業』の授業と出会いました」
→ストーリー:「仕事が楽しい」と言えなかった私が、未経験でコンサルタントに転職してみた話
▶︎日産自動車株式会社
事業内容:自動車の製造、販売および関連事業
・仕事内容:自動運転やコネクテッドといった最新の技術領域の法規を担当
・学び直しのきっかけ:
齋木さん 「学生時代、都市での人の流動の解析をテーマに研究をしていたのですが、卒業後も研究を続けたいという気持ちがずっとありました。
工場勤務時代に設備を見ていたことをきっかけに、設備の効率化をテーマにした研究ができれば、研究欲が満たされますし、学びを会社に還元できるとも思いました。そんな私の個人的な想いを職場は受けとめてくれ、仕事を続けながら大学院に通うことができました」
・変化:
齋木さん 「現在はコネクテッドや自動運転を担当していることから、研究テーマも、都市計画との関連性が強いコネクテッドと自動運転に変更しました。平日は会社で実務を積み、休日は研究する過程で論文を読みます。
大学では勤務時間内では知りえないような研究内容を学ぶことができます。学んでいることで初見では理解することが難しい自動車の専門用語が仕事でもわかるようになりました。仕事と大学院の二足の草鞋を履くのは苦しいこともありますが、双方に相乗効果があり、学ぶことが楽しいです」
→ストーリー:工場現場の経験と好奇心でオンリーワンに挑む。日産の技術を法規から支える技術渉外
▶︎農林中央金庫
事業内容:食農ビジネス、リテールビジネス、投資ビジネス
・仕事内容:プロジェクトファイナンス部部長代理を務める
・学び直しのきっかけ:
北村さん 「行きたかった部署に配属してもらって、やりたい仕事に携わっているにもかかわらず、自分の実力がまったく足りていない。この先10年20年経ったら、もうこの組織から必要とされない存在になってしまうんじゃないかという考えが頭をよぎって、それが私にはどうしても我慢できませんでした」
そんな折、目に留まったのがMBA留学制度。このチャンスが、焦っていた北村さんに新たな目標を与えました。2017年に渡米し、その翌年にMBAを取得。この経験が自分を変えたのだと北村さんは語ります。
・変化:
北村さん 「アメリカの大学院では、母国語ではない言語で、常に自分の意見を問われる世界でした。意見を持っていないのは、そこに存在していないのと同じ。常に自分の考え方を整理して、発言しないといけません。一方で、個性も大事にしてくれる国です。『こうあらねばならない』なんて考え方はない。旅行者としてではなく、そこで生活し、学ぶ者として異なるカルチャ―に触れたのも初めてでした」
留学中は、大学教授やダイバーシティに富んだクラスメイト、グローバル企業のエグゼクティブなどに意見をぶつける機会を通して、何度も失敗を経験したといいます。しかし、そうした経験により、どんな立場の相手と話すときも臆せずに、意見を交わせるようになりました。
→ストーリー:人類が直面する課題解決の一翼を担う。MBA留学で再認した、農林中央金庫で働く意義
▶︎富士通株式会社
事業内容:テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューション
・仕事内容:ビジネスプロデューサーとして製造業の事業領域のビジネスを開拓
・学び直しのきっかけ:
井上さん 「2020年9月から、自分が苦手とする論理的思考力を養うため、ビジネススクール(Executive MBA)に週末通い始めました。当時はコロナ禍も相まって、さまざまな会社で変革の兆しが見え始めていたとき。自分なりに頑張ってきたつもりではありましたが同時に限界も感じていました。この変革の波に乗り、自分も変わりたいと思ったのが理由です」
・変化:
井上さん 「ビジネススクールに通い始めて1年ほど経ったころ、知識や理論を学ぶだけでは評論家になって終わる、実践しないと何も変わらないと思うようになりました。何かを変えるプロセスを実務として経験できれば、きっと今後のお客様との活動にも活かせると考え、CDXO DivisionへのJobチャレ‼に手を挙げました」
→ストーリー:「Jobチャレ!!」での経験がチームメンバーの意識も変えた。個人の挑戦が組織変革の力に
▶︎株式会社ポニーキャニオン
事業内容:音楽、教養、文芸、スポーツ、映画、娯楽など各種オーディオ・ビジュアルコンテンツ、及び書籍の企画、制作、販売、映画配給、イベントの企画制作、地方創生事業
・仕事内容:経営本部 経営企画部に在籍し会社の中長期経営戦略、サステナビリティを担当
・学び直しのきっかけ:
山口さん 「ちょうど配信のプラットフォーマーがオリジナルコンテンツを開発したり、グローバルコンテンツ企業が独自の配信プラットフォームを開発したりするなど、映像ビジネスが大きく変わり、それに伴い戦略に変革を迫られていたタイミングでした。
宣伝という立場の私が変えられるのは、戦略の下位である宣伝に関わる戦術だけ。その状況は非常に苦しかったですね。“では、本来どういう経営戦略をとるべきなんだろう”という根本の部分を学びたくて、MBAを取得するため経営大学院に通うことにしたんです」
・変化:
山口さん 「経営戦略とその策定プロセスについて学ぶうちに“なるほど、これが今当社が置かれているビジネス環境なんだ、この視点が当社に欠けているんだ”といろいろなことが見えてくるようになりました。そして在学中だった2020年に経営企画部への異動が決まったんです」
→ストーリー:経営戦略を担い、SDGs戦略プロジェクトを束ねるリーダー。エンタメで実現する社会善
▶︎株式会社みずほフィナンシャルグループ
事業内容:銀行業務、信託業務、証券業務、その他の金融サービスに係る業務を事業ドメイン(事業活動を行う領域)とする総合金融グループ
・仕事内容:浜松町法人第一部の渉外業務課で融資・外為管理の全般を担いながら、人材育成に携わる
・学び直しのきっかけ:
高野さんは、2021年にキャリアコンサルタントの国家資格を取得しています。その背景には、自身が直面したキャリアの迷いがありました。
高野さん 「後輩から『自分のやりたいことがわからない』と相談を受けながら、私も『長く課長職を続けているけれど、今後どうしたいのか』と自問自答していた時期がありました。そんなときに、たまたま社内のキャリアアドバイザーが、キャリア面談の希望者を募集しているというお知らせを見て、どんな仕事なのか興味をもちました。
その仕事内容について調べるうちに、『自分もこうした専門知識を身につけてキャリアの相談に乗ってあげられたら、後輩はもっと安心して話をしてくれるかもしれない』と思うように。この道で専門性を高める選択肢があることに気づきました」
資格を取得するため、高野さんは働きながら専門学校に入学。専門学校には年齢、職業などさまざまな人が集まり、高野さんにとって刺激的な環境でした。オンラインで、毎週土曜日に8時間もの講義を3カ月間受講したのち、筆記と面談形式での試験を受けました。
・変化:
高野さん 「話を聞くときに意識を傾けるべき点や、気持ちよく話してもらうための気遣い、技術を学びながら、『次の面談では、これを意識してみよう』と実践に移してきました。たとえば、相手が話さないときに、口を出さずにしばらく待つことは、そのときの学びから意識的にできるようになったことです。
資格を取得したと社内の仲間に伝えたとき、忙しく働きながらいつの間に資格を取ったのかと驚かれましたが、課員はとても喜んでくれましたし、『自分も頑張ります』とも言ってくれました。私の挑戦が良い意味で後輩にとって刺激になったことが、とてもうれしかったです」
→ストーリー:自分が動いて人の役に立てるのなら。50代で専門性を身につけた私の原動力
経験談を見ていくと、MBAや資格を取得するだけではなく、さまざまな学びがあるようです。働きながら大学院や専門学校に通うことを検討されている方は、検討する上でのヒントにしてみてはいかがでしょうか?
