世界中の企業に会いに行き、対話を通して信用していただく

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2022年6月現在、北村はメンバーのマネジメントを担いつつ、大きくふたつの業務領域を担当しています。

北村 「ひとつはプロジェクトファイナンス。インフラ設備の建設・運営を行うプロジェクトそのものに融資をする取引で、たとえば太陽光発電所や洋上風力発電所、高速道路、淡水化プラントなどの建設・運営プロジェクトが該当します。こうしたプロジェクトから得られたキャッシュフローを返済の原資にしていることが大きな特徴です。

もうひとつは航空機ファイナンス。エアラインが航空機を購入するために必要な資金を、航空機を担保に融資を行う取引です。航空機ファイナンスに関しては、コロナ禍で航空産業は大きくストレスを受けましたが、ウィズ・アフターコロナの取引に向けた戦略立案や分析をチームで行っており、航空産業の回復をサポートする一翼を担っていきたいと考えています。

一方、プロジェクトファイナンスについては、コロナ禍でも活発な動きは変わりなく続いています。海外の建設会社、電力会社や総合商社、世界各国の金融機関などさまざまな企業からディールのご紹介をいただき、デューデリジェンス(調査)や社内決裁を経て融資を実行します」

もともと農林中央金庫は有価証券投資でスケールメリットを活かした効率的な運用を行っており、有価証券投資の業界内でその存在は認識されてきました。しかし、プロジェクトファイナンス部発足当初は、農林中央金庫の名は認知されていないところからのスタートでした。

北村 「有価証券投資は、たとえば『〇〇の社債・××の国債を買いたい』と思ったら、今日にでも買えるもの。つまり、お客さまとのリレーションがあまり関係ない世界です。一方でお金を貸す・借りるというのは、お互いの信用があって初めて生まれる取引です。『今日、このプロジェクト・企業に融資したい』といって、できるものではありません」

取引相手に信用してもらうためには、まずは農林中央金庫のことを知ってもらわなければなりません。農林中央金庫がどのような考えに基づき、どのようなビジネスをしているかを説明し、安心してもらって初めてディールの相談をいただけます。

北村 「私たちのビジネスは世界各国に出向き、プロジェクト関係者の方々と直接お会いすることが重要です。『百聞は一見に如かず』という言葉の通り、直接お会いすることにより、その方々の人となりやプロジェクトに対する情熱をより深く理解することができるのです。

たとえば、発電所を立ち上げるプロジェクトであれば電力会社、建設会社や総合商社の方々に加えて、プロジェクトの資金まわりをまとめている世界各国の金融機関など、本当に様々な職種の方々とお会いします」

挫折、そしてアメリカへ。自分の意見が求められる環境で飛躍的に成長

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学生時代、経済学部で証券市場の実証分析、ファイナンス理論を学んでいた北村。農林中央金庫に興味を持つようになった背景について、こう振り返ります。

北村 「『一生懸命働くからには、社会貢献につながるような公共性の高い仕事がしたい』と思っていました。加えて、大学で学んでいたファイナンスがおもしろくて。難しい分野ですが、この分野で専門性をつけたいなとも考えたんです。その二点がガチっとハマったのが、この会社でした」

入社後の5年間は農中信託銀行へ出向。次の5年間は本店の債券投資部に戻りますが、そこでの環境が北村のキャリアに大きな影響を及ぼします。農中信託銀行では、国内の証券化商品の管理・組成を、その後の債券投資部では有価証券投資、中でも海外債券をメインとしていました。

北村 「周りには優秀な上司や同僚がゴロゴロいました。特に債券投資部では取引先との面談や業務の多くが英語で行われ、上司はどんどん協議・交渉を行って、ほしい情報や成果物を得ていく。そうした姿を目の当たりにして、自分自身の力のなさを痛感しました」

それまでそういった経験のなかった北村にとって大きな挫折でした。

北村 「行きたかった部署に配属してもらって、やりたい仕事に携わっているにもかかわらず、自分の実力がまったく足りていない。この先10年20年経ったら、もうこの組織から必要とされない存在になってしまうんじゃないかという考えが頭をよぎって、それが私にはどうしても我慢できませんでした」

そんな折、目に留まったのがMBA留学制度。このチャンスが、焦っていた北村に新たな目標を与えました。2017年に渡米し、その翌年にMBAを取得。この経験が自分を変えたのだと北村は語ります。

北村 「アメリカの大学院では、母国語ではない言語で、常に自分の意見を問われる世界でした。意見を持っていないのは、そこに存在していないのと同じ。常に自分の考え方を整理して、発言しないといけません。一方で、個性も大事にしてくれる国です。『こうあらねばならない』なんて考え方はない。旅行者としてではなく、そこで生活し、学ぶ者として異なるカルチャ―に触れたのも初めてでした」

留学中は、大学教授やダイバーシティに富んだクラスメイト、グローバル企業のエグゼクティブなどに意見をぶつける機会を通して、何度も失敗を経験したといいます。しかし、そうした経験により、どんな立場の相手と話すときも臆せずに、意見を交わせるようになりました。

農林中央金庫で働く意義と、留学先で出会った人生訓

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大きな成長を経て帰国した北村の心には、強く残っている言葉がありました。

人類が直面する最も困難な課題を解決する──それは留学先で所属していた大学の設立意義を表した言葉です。

北村 「この言葉を聞いたとき、衝撃で体が震えました。世の中にこんなにかっこいいことをいえる人たちがいるということと、それを真剣に信じて研究に取り組んでいる人たちがいることにも痺れたんです。私もその一翼を担いたい、『これを実現できている』と感じられるような仕事をしたい。そんな決意を胸に、農林中央金庫に戻ってきました」

2018年よりプロジェクトファイナンス部へ着任した北村は、大きなビジョンを持って仕事に取り組んでいます。

北村 「たとえば、人類が直面する困難な課題の一つとしてエネルギー問題があります。もちろん、まだまだ課題はありますが、石炭火力発電所などの環境負荷の高い発電方法に頼らずとも、技術的には洋上風力発電所や太陽光発電所といった環境負荷の低い再生可能エネルギーで人類の文化的な生活を維持できる段階まできています。

ただ、技術だけあれば良いわけではない。それを推し進めるための政治や世論、実際に建設を請け負う会社や運営する会社、そしてお金も必要です。お金の部分に関しては、自分自身が銀行員だからこそ、一翼を担うことができる。この仕事も、人類が直面する最も困難な課題を解決するための役割なのだと考えています」

仕事に厳しく、人に優しいカルチャーの再生産。後進育成にかける熱意

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信念をもとにグローバルな活躍を続ける北村。しかし北村は、自分自身のことを「特別な人間」ではないと話します。

北村 「入庫したときの私には特に秀でたものは何もなかったんです。銀行員として必要な金融の知識は、あくまでも学部生の立場で学んだ程度。入庫後は優秀だったのかというと決してそんなことはなく、本当にいろいろな失敗をしてきました」

そんな北村を支え続けたのが、メンバーや上司ら、まわりの人間でした。

北村 「農林中央金庫は、仕事には厳しいですが人には優しいんです。私を突き放した人はひとりもおらず、育つまでずっと見守ってくれた。だからこそ今の私があるんだと思っています」

人を助け、見守り、育てる農林中央金庫のカルチャー。その恩恵を人一倍享受してきた北村は、自らもまた大きな熱量を持って後進の育成に励んでいます。

北村 「私自身がそうしてもらったように、メンバーをサポートして、成長を助け、グローバルに活躍できるようにすることが、今の私の重要なミッションの一つだと思っています。そのために働きやすい環境、そして意見をいいやすいフラットな雰囲気をつくること。『仕事を通じて成長できた』と、ひとりでも多くの人に感じてもらうこと。

そうした地道な草の根運動が、『人類が直面する最も困難な課題を解決すること』を担う組織作りに、つながると信じています」