被写体に魂を込めて向き合う。本人や家族に喜んでもらえる一枚を
フリーランスフォトグラファーである漆間の仕事の中心は、talentbookの記事(ストーリー)に掲載する写真の撮影です。各企業で働く人たちを撮影するため、全国各地を飛び回り、多い時には1カ月で20件ほどを担います。
「自前で撮った写真をtalentbookに載せる企業も多い中、お金をかけてフォトグラファーに依頼し、よりよい記事にしたいと考えてくださるお客さま。その期待に応えたいと強く思っています。
登場するタレント(働く人)の皆さんは、働きぶりを会社に認められ、掲載が決まった方々ですよね。意気に感じて撮影に臨んでくれているご本人を前に、私も魂を込めて向き合いたいと思っています。撮ってもらったことが一生の思い出になるような、そんなひとときにしたいなと」
普段から小説を読んだり音楽を聴いたりするのが好きで、気に入ったフレーズには付箋を貼り、反芻するという漆間。世の中の事象や心の動きを繊細に感じ取り、尊ぶ漆間が、被写体と向き合う時に心がけているのは笑顔を引き出すことです。
「人は、心の底から笑っている自分自身の顔を見る機会ってあまりないですよね。そのとびきりの笑顔を写真に収めたいんです。タレントご本人のほか、家族の皆さんにも喜んでもらえるような一枚にしたくて。
インタビュー原稿を読み、仕事内容や人となりを把握した上で撮影に臨みます。私自身が写真を撮らせていただくことに感謝して、楽しんで向き合うようにしていますね。写真のレタッチ(写真編集)も大切な仕事。『こんなふうに笑ってくれてうれしかったな』などと思い起こし、余韻に浸りながら作業を進め、一枚一枚に思いを乗せています」
失敗しても貧乏でもいい。絶望の淵から舞い戻った写真の道
高校生の頃から使い捨てカメラを持ち歩き、気の向くままに被写体にレンズを向けていた漆間。大学生になると、フォトグラファーを志すようになります。
「アメリカンフットボール部で活動していた当時、初めて買った一眼レフカメラで他チームの試合を撮影し、選手がタックルしている写真を学内の芸術展に応募してみました。すると入賞して、自分には才能があるんじゃないかと思いましたね(笑)。
一方で、アフリカの貧困問題を研究する経済学部のゼミに所属していて。窮状を伝える写真や映像を多く目にする中で、自分もカメラを通して伝える立場になりたいと思ったんです」
報道カメラマンをめざし、新聞社やテレビ番組制作会社などの採用試験を受けるも、及ばず。悩んだ末に商業写真の世界へと方向転換し、写真スタジオのスタッフとして社会人としてのキャリアをスタートさせます。
「半年たって業務に慣れてきた頃、アメフトで痛めた左肩の状態が悪化したんです。手術に踏み切り、リハビリをする中で仕事をこなせなくなって、入社から1年弱で退職することになりました。
その後はリハビリを兼ねて10カ月ほど、引っ越しなどの日雇いの仕事をして食いつなぐ日々。やがて、お金が尽きてきて。風呂なし、共同トイレ、裸電球がひとつぶら下がった部屋で暮らし、カメラも手放しました」
フォトグラファーになることを諦めた漆間。自らの夢にふたをして、一般企業に飛び込むと、営業職として働き始めます。しかし、数カ月で会社を去ることに。
「一生懸命にやったものの思うようにいかず、自分は何者にもなれないと絶望しました。ただ、その中で徐々に開き直ってきたんです。『どうせダメな人生なら、とことん夢を追いかけてみよう』と。
写真の世界は生き残るのが難しい。それはよくわかっていました。でも、このまま夢を捨てて会社員になったとしても、自分は一生、『本当はフォトグラファーになりたかったんだよね』とぼやくんだろうなと思ったんです。それなら、失敗しても貧乏でもいいから、写真の道に戻ろうと決意しました」
笑顔を撮るのがこんなに楽しいなんて。東ティモールの人たちが教えてくれた
写真の道に戻った漆間は、小さな撮影会社で経験を積む一方、米国帰りのファッションフォトグラファーに師事。雑誌の仕事も増えてきた2012年、フリーになりました。転機を迎えたのは、その4年後のことです。
「知り合いのフォトジャーナリストから、21世紀最初の独立国である東ティモールで一緒に写真を撮らないかと誘われたのです。現地の実情をぜひこの目で確認したいと思い、20日間同行させてもらいました。
NGO(非政府組織)が子どもたちに教科書を無料配布する様子や、現地で栽培が盛んなコーヒー豆のフェアトレード実現に向けたプロジェクトなどを撮影しました」
異国の地で、大切なことに気づかされたと言います。
「東ティモールの人たちは、とてもフレンドリーなんです。私がカメラを携えて街を歩いていると『どこに行くんだい。僕のこと、撮っていけよ』とよく声をかけられて。レンズを向ける中で『人の笑顔を撮るのって、こんなに楽しいんだ』と心の底から感じました」
価値観が大きく変わったという漆間。そんな中、知人の紹介で出会ったのがtalentbook株式会社でした。
「若い社員たちのエネルギーに満ちあふれたスタートアップで、社内運動会や社員のポートレートを撮影するうちに、talentbookのサイト向けの撮影も任されるようになったんです。
そこに掲載されているのは、働く人たちの笑顔の写真。まさに東ティモールでの体験に通じる仕事だなと思い、人々の笑顔やリアルな表情を引き出すことにやりがいを感じ始めました」
かつてはファッション業界にしか関心が向かなかったと言いますが、今では「自分の出せる力をすべて出したい」とtalentbookに情熱を傾けています。
「企業の方から『以前撮影された社員が、漆間さんに撮ってもらった写真を、仕事で使うツールのアイコンにしていましたよ』なんていう話を聞くと、とてもうれしいんです。
雑誌なら1カ月、あるいは1週間で店頭から消えていきますが、talentbookの写真は皆さんの手元に長く残ると実感しながら日々撮影しています」
もっと人に会い、人を深く知りたい。talentbookを笑顔で満開に
漆間の仕事は、talentbookだけにとどまりません。企業から依頼を受けて採用サイトや社内報の写真を手がけるほか、車いすバスケットボール選手などのスチール撮影にも携わっています。
「フォトグラファーになるまでにすごく苦労しましたが、実はフォトグラファーであり続けることが難しい。だから、今いただいている仕事をこなすだけではなく、もっといろんな人に会いに行って、人を深く知って、いい写真を撮れるようになりたいですね。
とくに興味があるのが、何者かになろうと努力している人です。仕事に情熱を注いでいる人、アスリート、挫折してもなお夢をかなえようとしている人。エネルギーを燃やし続けている彼らの内面をとらえられるようになったら、talentbookに登場するタレントの魅力をもっと伝えられるんじゃないかな、と」
そして、かなえたい目標や夢がある人に向けて、こんなメッセージを送ります。自らの体験と重ね合わせて。
「目標に向かってもがいていると、時には不安になると思いますが、私は大学時代の恩師の言葉を大事にしてきました。『勝たなくてもいい。自分自身に対して負けていないと言える日々を過ごそう。負けなければ、勝負は続いている』と。
本当にかなえたい目標や夢があるなら、遠回りをしても、周りと比べて自分が惨めに思えても、しがみついてください。挑戦した結果、失敗するかもしれませんが、挑戦しなかった後悔のほうがもっと大きいはず。動きまくって経験を積むことで見えるものは多いと思います」
入り組んだ迷路をさまよった末に、光を見いだした漆間。今、写真人生のど真ん中に、talentbookがあります。
「最近よく、talentbookを眺めては『笑顔で満開にしたいな』と思うんです。
私は人の命を救えるわけでも、病気を治せるわけでもありません。でも、自分が撮影した人の家族や大切な人、たとえば、子どもや孫、ひ孫、やしゃごまでが、その写真を見て『おじいちゃん、おばあちゃんは若い頃も、こんなにすてきだったんだね』と笑い合う日が来たら最高じゃないですか。
私が撮りたいのは、100年後も残り続ける写真です」
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
