働きやすい。でも、このままでいいのだろうか
2024年にスタッフサービス・エンジニアリングへ入社し、配属された派遣先で担当していたのは、部品の代替品選定や評価業務でした。製品に使われている部品が生産中止になった際に、代替品を選定・評価する仕事です。電気の知識は必要でしたが、私がこれまで経験してきた回路設計とは少し違う業務でした。
実は配属初日から違和感を抱いていました。回路設計で使うツールについて確認したところ、「私たちは設計することはありませんよ」と言われたんです。
もちろん、配属前に業務内容について説明は受けていたため、納得して配属先で働き始めました。ですが、その言葉を聞いた時に「自分がやりたい方向とは少し違うかもしれない」と感じたのを覚えています。
ゆくゆくは設計に関わる機会もあるだろうと思っていたのですが、実際は調査や資料作成が中心で、1カ月ほど経った頃には「このままずっと続くのかな」と感じるようになっていました。
もちろん、職場環境そのものに不満があったわけではありません。人間関係は良好でしたし、在宅勤務もできました。それでも、自分の中にはずっと変わらない思いがありました。
やっぱり回路設計がやりたい。
経験を積みたいというより、これまで培ってきたスキルを活かせる仕事がしたかったんです。
私は昔から考えることが好きなんです。知らないことがわかるようになるのも好きですし、自分で考えた回路が思い通りに動いた時の達成感も好きです。だから回路設計が好きなんでしょうね。
今でも「もっと上流工程に携わりたい」という気持ちはあります。どういうことを実現したいのか、そのためには何を使い、どんな方式がいいのか。そういうところから考える仕事にも興味があります。
62歳という年齢を考えれば、もっと負荷の少ない仕事を選ぶ考え方もあると思います。ただ、1日のかなりの時間を仕事に使うわけですから、やっぱり楽しくないと嫌なんです。
働きやすい環境ではありましたが、自分が心から楽しいと思える仕事ではない。このまま続けるのか、それとも環境を変えるのか。そんなことを考えていた時に知ったのが、キャリア自己申告制度でした。
キャリア自己申告で「希望を伝える」という選択
この制度を知ったのは、会社から届いたメールがきっかけでした。正直なところ、最初は「どこまで、何をしてくれるんだろう」と思いました。
ただ、その頃の私はもう一度回路設計の仕事に携わりたいという思いを強く持っていました。だから、とりあえず出してみようと思ったんです。
一番伝えたかったのは、「回路設計がやりたい」ということでした。これまで電気分野で仕様検討から設計、評価まで経験してきたことや、その経験の中で培ってきた自分の強みについても書きました。
提出すること自体に迷いはありませんでした。ただ、「これを出してどうなるんだろう」という気持ちはありました。
でも、出さなければ今の状況は何も変わらないと思ったんです。出すことで、少なくとも自分の思いを伝えることはできますから。
キャリア自己申告書を書く時は、自分なりに少し工夫しました。今の仕事について書くよりも、自分が何をやりたいのかが伝わるようにしたかったんです。自分の考えを整理しながら書いていくうちに、改めて自分のキャリアについて考える機会にもなりました。
そして何より、自分の希望を伝える機会があることに価値を感じていました。
この制度に出会ったことで、「働き続けながら、自分のキャリアの希望を伝える」という選択肢があることに気づけました。
私が望んでいたのは、スタッフサービス・エンジニアリングの社員のまま派遣先を変えて、もう一度回路設計の仕事に携わることでした。その希望を会社に伝えることで、何か変わるかもしれないと思いました。その時は、この先どうなるのか分かりませんでしたが、それでも、自分の希望を伝えることができたのは大きかったと思います。
チャンスが訪れた時、希望がつながった
申告書を提出して、すぐに何かが変わったわけではありません。
面談で希望を伝える機会もありましたが、希望に合う案件との出会いには時間がかかります。しばらくの間は「回路設計が出来るいい派遣先はないかな」「何か動きがあるといいな」そんなことを思いながら働いていました。在宅勤務ができて、残業も少ない。働く環境としては恵まれていたので、時間が経つにつれて、「もうここでいいかな」という気持ちも出てきます。
62歳という年齢を考えると、このまま働き続ける方がいいのかもしれない。そんな気持ちもあり、半分諦めていた部分もあったと思います。
それでも、「回路設計がやりたい」という想いは消えませんでした。
そんな中、思いがけない出来事がありました。派遣先の業務縮小により、契約終了が決まったのです。
正直、落ち込みました。自分が契約終了の対象になるとは思っていなかったですし、次の派遣先が決まらなかったらどうしよう?という不安から、本気で転職を考え始めました。
その頃にはもう、「回路設計にこだわっている場合ではない」と思うほど、余裕がありませんでした。とにかく次の仕事を見つけてほしい。そんな気持ちだったと思います。
それまでキャリア自己申告や面談で回路設計への思いを伝えていましたが、この時はその希望が実現するとは思っていませんでした。だからこそ、紹介された仕事内容を聞いた時は驚きました。
それが今の派遣先です。仕事内容を聞いた瞬間、「面白そうだな」と思いました。それは、希望していた回路設計の業務だったからです。
ただ、扱うのはイメージセンサーやカメラ関連の技術で私にとっては未経験の分野。本当にできるかなという不安もありましたが、それ以上に、念願だった回路設計の仕事に携われることへのワクワクの方が大きかったんです。
実際に働き始めると、初めて聞く用語が次々出てきます。毎日のように調べながら仕事をしていますが、それも面白いんです。「こんなにわからないだ」「これも調べなきゃ 」そんな毎日ですが、最初に浮かんだ気持ちは「やっぱり面白い」でした。
以前は、仕事に物足りなさを感じることもありましたが、今は違います。出社前から、「今日はこれをやろう」「あれも理解しないといけないな」と考えています。
回路設計は、自分で考えた回路が思い通りに動いた時だけでなく、思い通りに動かない時も面白いんです。「なんでだろう?」と原因を追いかけながら試行錯誤する。その時間も含めて、やはり私は回路設計が好きなんだと思います。
振り返ると、自分の希望を伝えていたことには意味があったと思います。すぐに結果が出たわけではありませんが、自分の思いを伝えていたからこそ、チャンスが訪れたんだと感じています。
「申告しておいてよかったなぁ」—次の挑戦に向けて歩み続けるエンジニア
あの時の申告だけで今回の派遣先変更が実現したとは思っていません。
派遣先の業務縮小という出来事もありましたし、担当営業のサポートもありました。タイミングよく今の案件があったことも大きかったのかなと思っています。いろいろなことが重なった結果、今の仕事に出会えたのだと思います。
だからこそ、あの時、思い切って申告してよかったと思っています。
出していなければ、自分が本当にやりたい仕事への思いは伝わらず、スタッフサービス・エンジニアリングを辞めていたかもしれません。
自分の希望を伝える機会があったことは、私にとって大きかったと思います。
今回の経験を通して感じたのは、派遣先だけがキャリアではないということです。
以前の派遣先で経験したことも、今取り組んでいる回路設計の仕事も、どちらも私のキャリアの一部です。 スタッフサービス・エンジニアリングで働きながら、さまざまな経験を積み重ねていく。そんなキャリアの築き方もあるのだと思います。
そして、今の仕事がゴールとも思っていません。
今後、もっと上流工程にも挑戦してみたいですし、新しい技術にもまだまだ触れていきたいですね。
62歳になった今でも、まだやってみたいことがあります。
「いつまでできるかはわかりません。でも、需要がある限りはやりたい」
それが今の率直な気持ちです。
当時の自分に声をかけるとしたら、きっとこう言うと思います。
「申告しといて良かったなぁ」と。
そんな経験をしたからこそ、今、キャリアについて悩んでいる人がいるなら、私はこう伝えたいです。
「挑戦してみたいことがある」 と思っている人には、まず自分の思いを伝えてみてほしいと思います。
人によっては、面と向かって話すのが苦手だったり、自分の気持ちをうまく言葉にできなかったりすることもあると思います。私にとっては、キャリア自己申告制度が、そうした思いを伝えるきっかけになりました。
「まずは出してみたらいいと思います。あまり期待しすぎずに。私も最初は半信半疑でしたから。でも行動しなければ何も始まりません。出さなければ状況は変わりません」
その一歩が、新しい可能性につながることもあるかもしれません。
※記載内容は2026年10月時点のものです
