事業が進むべき未来を描き、ためらわずに声を上げ、推進を促す
西村は、事業推進課兼モータ事業戦略課の課長として、産業デバイス事業部モータビジネスユニットの事業戦略・事業計画の策定に携わる、いわば事業のブレーンとして辣腕を振るっている。
産業デバイス事業部は、さまざまな製造設備に搭載されるサーボモータやセンサ、PLC、自動車や空調設備に搭載されるモータの開発・製造・販売を行っている。2033年に100周年を迎える、歴史と伝統ある事業だ。モータビジネスユニットが開発製造する空調用・車載用モータは国内外のトップメーカーをはじめ、さまざまなお客様のもとに届けられている。
西村が担当する経営企画、事業戦略の仕事には、主に3つの仕事がある。1つめは、5年後、10年後の未来を見据えて、事業戦略を立て、各部門が実行可能な計画へと落とし込むこと。2つめは、実行計画が遅滞なく進んでいるのかフォローし、スタックしていれば課題を発見・分析し、関係各部と対策を行うこと。3つめが、事業部やビジネスユニットの向かうべき方向性を、所属する皆さんが理解して日々の仕事に向き合えるように発信し、組織の基盤を支えること。
「性能向上のための投資や開発の計画を立てるだけにとどまらず、効率的な事業推進のために、社内の仕組みを改革することも重要な仕事です。
たとえば、社内の業務フローに課題があって見積への回答に時間がかかっており、営業が1日でも早くしたいと声を上げても、部門横断で改善をといった動きにはつながりにくい。実務者の皆さんが普段は手を付けられないような課題に対し解決策を示して、実際に成果が上がるところまで持っていくのは、経営企画にしかできない仕事。
日々の業務に埋もれがちな課題を埋もれたままにしないためにも、声を上げることをためらってはいけないし、スピード感を持って取り組まなければ、と心に留めながら業務に臨んでいます」
もの言う営業職から経営企画への転身。新しい視点でチャレンジしたい
就職活動時には、国連の関係機関で働くことも考え、実際にジュネーブへ視察に行ったが、まず予算を確保しないと社会貢献もできないと痛感した。
「それならば」と、自分で利益を稼ぎ、継続的に活動できる営業職に魅力を感じた西村は、2007年に入社。希望通り営業職に配属される。女性総合職として唯一の存在だったが、男女の区別なく対等に高め合える環境だったと振り返る。
「お客様と密にやり取りをして、技術者とゼロから商品を創り出し、数億円単位の売り上げを上げる、ここにたまらないやりがいがありました。肝に銘じていたのが、決して長いものに巻かれないこと。愛想がないと言われたこともありましたが、間違いがあればお客様に対しても、きちんと訂正できる営業でいたいと考えていました。
初めての女性営業という立場もあってか、いろいろな方からアドバイスやご指導をいただく機会が多くありましたが、何が正しいかは自分自身で判断しなければならないと感じていました」
芯が強く妥協しない西村は、社内からもお客様からも信頼を得て、成果を上げていく。そんな西村に転機が訪れたのが2019年。管理職に昇進したタイミングで経営企画への異動を願い出た。
「あらためて自分のキャリアについて考えて、マーケティングや社内の業務フローの改革などを通して、より広い視野で会社に貢献したいと思い至りました。当時抱えていたシステムへの不満に対して、営業という職能でできることには限界があると感じていたんです。
今の仕事はビジネスユニット全体をより良くすることが使命。以前はお客様に向けていた目を内部に向けています。メンバーはやりがいを持って働けているか、もっと活躍してもらうにはどうしたらよいかと常に考えています」
育児休業からの復帰2カ月で課長に。今しかないチャンス、覚悟を決めた
もう1つの転機が訪れたのは2023年。育児休業から復帰して2カ月、子ども2人の育児と仕事のペースをつかもうと奮闘していた西村は、会社から課長職に推薦された。
「正直、『え、今?』という驚きはありました。しかし、子どもが小学生に上がると、保育園に通っている今よりも時間が取りづらくなり、せっかく声を掛けていただいても断らなければならないかもしれない。引き受けるなら今だと覚悟を決めました」
育児休業中のブランクを取り戻すには骨が折れた。とにかく足を運んで教えを請い、業界の知識をアップデートした。部下との向き合い方にも悩んだ。育児はもちろん大変で、目の前のことで精いっぱいだった。1年先、3年先の自分がイメージできないまま仕事を続けてよいのだろうか──。一度立ち止まって自身のキャリアについて考える時間が欲しいと思う西村に、人事部門からあるプログラムの案内が届く。
「プロの講師が1on1でマネジメントコーチとして1年間併走してくれるプログラムです。組織へのモヤモヤや部下への接し方など、自分が抱えている悩みや課題を話すことで、頭が整理されていく感覚でした。1年後など、少し先の未来を想定してビジョンを持つことで、そこに向かうための今があるという認識を持てるようになりました」
見えないところから、見違える世界に変えていく
課長として5人のメンバーをマネジメントする西村は、部下のモチベーションに気を配る。
「経営企画は、評価が難しく、さらに仕事の先行きが見えないことが多い。何が正解かわからない中で、良い仕事をしてもらうには、その人の得意不得意、何が好きで、仕事のどこにやりがいを感じるか、キャラクターを把握する必要があります」
メンバーごとの特性に合わせ、リモートでしっかり時間を取ったり、オフィスで顔を合わせた時に雑談ついでに少し話をしたりと、メンバーの考えていることやめざすところを把握するように心がけていると言う。
「社内の関係各部と連携する時もそう。それぞれの部門が持つ理念や理想を尊重しながらも、変えなければならないところは譲らない。営業時代にお客様一人ひとりの懐に入って、Win-Winな関係を築いてきた経験が生きていると実感しています」
ある時、自分自身がロールモデルになっていることに気づき、以来、後輩たちに何ができるかという「次世代への継承」を年々強く意識するようになった。きっかけは、女性管理職をつとめる社外ゲストのプレゼンテーションをふまえて、参加者がディスカッションを行うプログラムだった。
「自分の経験や考えを人前で語るのは初めてでしたが、1人の女性がプログラムを振り返って『すごく勉強になりました』と述べてくれました。自分がこれまで受け取ったものを、今度は返していく立場になった……。管理職になって影響力が増したのなら、育児休業取得など私自身が女性として働く中で、感じたこと、困ったことは率先して声を上げる必要があると感じています。
私だからこそ気づけることがあるし、経営企画に所属しているから変えていける。誰もが働きやすいビジネスユニットにしていきたいと強く思っています」
ビジネスユニットや部門を引っ張っていく管理職として、今、西村は事業の根幹にある理念の継承に力を入れている。2033年のモータビジネス開始100周年の節目を前に、モータBUがめざしていくビジョン「MR100 Vision」の策定にも中心的な役割を果たした。そこには、どんな想いが込められているのか。
「モータは、要素技術開発を含めると新製品の立上げまで長くて5年、事業を本格的な販売規模に育て上げるには10年ほどかかります。現在の主力製品の基礎技術や理念を築いたのは、私たちの先輩たちなのです。
MR100 Visionには『お客様の革新をモータの進化で支え、共に人と地球に優しい社会を実現する』という言葉があります。一部には『そんなことは、言わなくてもわかってくれている』という反応がありましたが、言語化されていないことから、若い世代が未来に不安を抱く一因となっていました」
見えないところから、見違える世界に変えていく──。ビジネスユニット全体がめざす場所を明確に打ち出し、世代による意識の差をなくして事業に向き合っていきたい。100年目も、そしてこの先も、このビジネスを未来へつなげていきたい。西村は、自らとビジネスのビジョンの実現に向け、次の世代のために働きかけ続けていく。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
