水産資源に関わる大きな仕事に邁進。新しい領域に貢献できる喜び
これまで培ってきた自動車センサ技術を応用し、水質センサを開発した日本特殊陶業。センサ技術を用いた水質管理をすることで、環境課題の解決に挑んでいます。
「閉鎖型陸上養殖」のプロジェクトに参画する丸山も、そうした課題に取り組むひとり。
センサ技術とデータを利活用したエビの陸上養殖を通して、水質管理システムの実証実験を行っています。
「私はデータサイエンティストとして、大きく3つの業務を担当しています。データを用いた水質解析、給餌量の予測、そしてAIを活用した生産性向上です。
水質解析では、養殖の担当者から、水質や水温、pH、エビにとって有害なアンモニアなどの値をもらっています。そのデータを使い、エビが成長する要因は何か、エビの生死を分ける要因は何かなどをデータから解析していくのです。
また、計算機技術を用いた給餌量の最適化も行っています。餌の量を間違えると、エビの健康を損なったり、食べきれずに水を汚してしまったりして、排出時に地球環境が悪化してしまいます。エビが順調に成長し、かつ環境にも良く、事業者の餌代も最適化できるアルゴリズムを作成しています。
最後は、AIを活用したエビの体長を自動測定するアプリケーションの作成。真上から写真を撮りアプリにアップロードすると、5尾いたら5尾の体長を表示してくれる機能です。データを扱うだけでなく、AIを用いて誰もがスムーズに養殖の管理ができるよう、アプリの仕組みや精度を日々探究しています」
水質管理の精度を向上させつつ、熟練者が身につけてきたノウハウをシステムに組み込むことで、容易で確実なエビの養殖をめざすプロジェクト。
丸山は、以下のようにやりがいを語ります。
「陸上養殖は、私個人のキャリアとしても携わってこなかった分野ですし、当社にとっても新しい挑戦です。社会課題でもある水資源に関わるような大きな仕事ができていることに、意義を感じています。
また当社はセンサの領域に強みがあり、プロフェッショナルの方たちが大勢います。製造業の深い部分に携わってきたメンバーと一緒に働けることが、自分にとって刺激になっています」
歴史ある企業の中で、新たな一歩を踏み出す瞬間に加わりたい
学生時代は統計学を専攻していた丸山。ビッグデータというワードが世に出てきたタイミングで、遺伝子の統計学を学び、大学院まで進みました。
「元々データサイエンティストをめざしていたんです。だから学生時代にも、データを利活用するためのデータベース、アプリケーション開発などを積極的に学んできました。かつ、将来社会で活躍するためにはビジネススキルも必要だと考え、会計なども学びましたね」
新卒1社目として選んだのは、技術営業の仕事。これからのキャリアを考えた際、顧客折衝を経験し、社会人としての下地を作りたいと考えての進路でした。
「技術的な知見をもとに、お客さまと折衝するというお仕事です。営業として提案をするだけでなく、機械学習のベンチャー企業と協業し、クライアント向けに勉強会やセミナーを開催するなど、幅広い経験を積むことができました。井の中の蛙にならないよう、常に情報収集しながら、学びを深めている期間でしたね」
2年ほど勤務して次の舞台に選んだのは、化粧品会社です。
「学生時代に専攻していた遺伝子の解析統計学をやりたいと思っていたのですが、その分野に当てはまる仕事でした。AIを用いた肌の診断Webアプリの開発を担当し、個人に合わせて肌を解析し、最適なケアを提案する仕組みを作りつつ、ユーザーから集まったアンケートをもとにデータ分析をする業務も担いました」
時代の先端に携わる日々。目まぐるしく変化する時代についていけるような挑戦を続けたいと思って再び転職した先が、日本特殊陶業でした。
「きっかけは、データサイエンティストを募集していたのを見つけ興味を持ったこと。新規プロジェクトとして、エビの陸上養殖という新しいテーマに挑戦できるということでエントリーしました。歴史ある企業というイメージがありましたが、変わらなければという危機感を持ちながら新しい事業に投資している姿勢に惹かれたんです」
データサイエンティストという視点から見た際、日本特殊陶業は魅力的な環境だったと丸山は続けます。
「歴史のある会社には、その分のデータが蓄積されています。陸上養殖だけではなく、もちろんモビリティやメディカル、空調などの領域も網羅されています。それなのにせっかくのデータを解析できる人が少なく、利活用できていない状態だと知りました。ならば私がデータ解析を担当して、社内のスキル育成にも取り組みたいと思った次第です」
旨味向上をめざし、遺伝子構造を解析。海外企業から受ける刺激
入社後、閉鎖型陸上養殖のプロジェクトに加わった丸山は、検証を重ねていくフェーズに貢献していきます。
「あらゆる条件の水槽でテストをして、エビの成長に差があるのかを見ていきました。数値をもとに統計学の視点で客観的な評価を下し、最適な環境を洗い出すのがミッションです。私が入社するまでは、チームとしてデータの取りまとめ、表・グラフ化はできていたものの、評価がうまくできていない状況でした。私の知見が役に立ち、適切な評価を下せるようになったのは、チームに貢献できたようでうれしかったです。チームの皆さんは私の意見を真摯に聞いてくれて、どんどん吸収してくれました」
手応えを感じながらプロジェクトを推し進める日々。その中で、とくに印象に残っていることがあります。
「栄養学とデータサイエンスに強みを持っている海外の会社と連携して、どんな餌だとエビの旨味成分が向上するのかを見ていきました。遺伝子のアミノ酸構造を調べながら、こういった条件で育成するとタンパク質、アミノ酸、旨味成分がこれだけ上がる……というデータを確立。前職の化粧品会社で、肌のシワに起因する遺伝子解析をやっていたので、今まで培ってきた能力を横展開できたかたちです」
その後、学んだ技術を自社で実現できるよう模索しました。
「京都大学が作成したデータベースを活用し『遺伝子の構造的に塩分濃度を高めると旨味成分が出やすい』などの情報を精査しました。データの見方を学ぶことができたので、バナメイエビではなく他の魚などでも解析ができます。自分にとって、ひとつの財産になったと思います」
旨味成分への探究は、まだ道半ばです。
「外部の会社に、自分たちの育てたエビを冷凍保存した状態で渡し、旨味成分を解析してもらうなど、研究を進めています。車海老の味に近づいたなどの変化を可視化できるのがおもしろいところ。味を自分たちで客観的に評価できるレベルにたどりつきましたが、これからも旨味の可能性を探っていきたいですね」
陸上養殖で得たノウハウを、メディカルやモビリティなどの分野にも展開したい
長らくものづくりを主軸に置いてきた日本特殊陶業。新しいアプリケーションを開発したり、新規サービスを展開したりといった取り組みは、まだ始まったばかりです。
「実際これまで、当社では多くの領域がベンダー頼みになっていました。だからこそ、私のような中途で入ってきたメンバーは重宝されます。データサイエンティストはもちろん、アプリケーション開発ができる方、クラウドサービスなどの設計ができる方も思う存分にスキルを発揮できる環境だと思います」
新たなメンバーが参画する上で、丸山は働きやすさを魅力にあげます。
「歴史ある企業ながら柔軟な制度があるんです。リモートワークもできますし、通勤に2時間以上かかる方は遠隔地での出社も可能。私も出社とリモートを使い分けながら勤務しています。これまでの働き方を変えつつも、新しいことに挑戦したい方にとってはおすすめな環境です」
そんな丸山が胸に描いている、今後の展望とは。
「短期的な目標としては、AIや画像処理技術を活かしたアプリケーションを新たに作っていきたいです。もちろんお客さまのニーズを調査しなければいけないのですが、需要があった場合には、パソコンだけではなくiPhoneやAndroidなどでも開発し、実装していければと思っています。
中長期の目標は、携わるジャンルを広げること。私自身いろんな分野に興味がある人間なので、陸上養殖だけではなく、メディカルやモビリティなどといった分野にも挑戦して、データ解析のスキルを活用したいですね。また、データ解析ができる技術者が比較的少ないという現状があるので、社内の教育・育成という面でも貢献できたらうれしいです」
働き方の面でも実現したい夢があります。
「ちょっと大きな話にはなりますが、データを活用することで日本のワークライフバランスを整えていきたいです。日本はまだまだ週5日、8時間の勤務が主流ですが、ヨーロッパなどでは勤務時間を短縮できています。ソフトウェアで人々の生活を良くしていこうという方針のもと、リモート勤務も日本より浸透しています。
日本の場合、ものづくりという部分でどうしても出社が必要という背景もあるかもしれないですが、それぞれが住みやすい場所を選んで働き、スローライフが送れるようになるといいなと思うんです。平均寿命が長い国だからこそ、スローライフが叶うともっと過ごしやすくなっていくのではないでしょうか。私の作った技術で、働き方の変化に少しでも貢献できたらうれしいですね」
尽きない興味を原動力に、自らの技術レベルを追求する丸山。これからも周囲を巻き込みながら、まだ見ぬ領域を切り拓いていきます。
※ 取材内容は2024年2月時点のものです
