外部との共創をめざし、テレビ出演を果たす。大胆な手法で内外からの注目集まる
現在、厳はNiterra Venturesカンパニー ベンチャーラボ東京課の主任を務めています。
「日本特殊陶業では、エンジン車に使用するスパークプラグ事業が売上の大部分を占めており、EVへの移行が迫る中、新たな挑戦が急務となっています。技術開発部署がシーズ起点での新規事業開発を担うのに対して、2023年4月に設立されたNiterra Venturesカンパニーは既存事業にとらわれない、マーケットニーズ起点での新規事業開発を手がけています。
現在、ベンチャーラボ東京課に所属するメンバーは10名。海外メンバーも在籍する国際色豊かなチームで、それぞれ異なるプロジェクトを担当しています」
厳は防災をテーマにテレビ局と連携した事業開発に取り組み、自らテレビ出演も果たしました。背後には、新規事業創出に対するひとかたならぬ想いがありました。
「Niterra Venturesカンパニー体制となったことで、それまでシリコンバレー、ベルリン、東京と、3つの拠点ごとに進めていた新規事業開発のプロセスが統合され、共通のフレームワークが導入されました。
また、シリコンバレーが中心になって進める医療プロジェクトが上市に向けて準備段階に入りましたが、サポートメンバーとして貢献したいたため、ベンチャーラボ東京課が中心になってプロジェクトを進めたいという想いを強く抱くようになりました。
そんな中、現状を打開し、ベンチャーラボ東京課としての実績をつくりたいと考えて着手したのが、今回のオープンイノベーション。独自に事業を推進しようとすると、どうしても自社技術に依存してしまいます。テレビ番組への出演を決断したのは、それが外部との共創への近道だと考えたからでした。
自社の強みを前面に押し出すだけでは意味がありません。番組では、新規事業開発が思うように進展していない現状を包み隠さず伝えて、協力を仰ぎました」
前例のない大胆な手法で注目を集めた厳。内外から予想を超える反響がありました。
「技術開発部署をはじめとする社内各部からは、『刺激的だった』『登壇者の意見が参考になった』と非常に好意的な反応がありました。新規事業を手がける他の事業部から、『テレビで見ましたよ』と技術に関する相談に心よく応じてもらったケースもありました。社外からの問い合わせも増えていて、当初の目的が達成できたと感じています」
一方、実際に成果を出すのはこれから。取り組むべき課題も感じていると言います。
「当社では、これまで培ってきたコア技術を活用した新規事業の開発に力を入れています。しかし、マーケットニーズを起点としたオープンイノベーションに挑む場合、当社のアセットがうまくはまるケースばかりとは限りません。当社が取り組む意義や価値を考慮しながら、着地点をうまく探っていく必要があると考えています」
新規事業開発は多彩なスキルを活かす“総合格闘技”。専念したくて日本特殊陶業へ
大学卒業後、厳が就職したのは韓国の大手LCDメーカーの日本法人。そこでビジネスパーソンとしての基盤を築きました。
「購買部門で日本の一流メーカーを相手に液晶パネルの部品調達を担当しました。徹底した成果主義のもと、交渉術やコミュニケーション手法、そして学び続ける姿勢の大切さなど、現在に通じるビジネススキルを身につけることができたと思っています。
また、本国から来日したCEOに同行し、大手メーカーとの交渉に参加したことも。トップの考えを学べたことは非常に貴重な経験でした。
当時の日本支社長がよく口にしていた『本質を大切に』という言葉は、自分自身の大切な価値観となっています。キャリアを通じて上辺を取り繕うのではなく、本質的な価値を追求し続けるよう努めてきました」
その後、家電メーカーを経て、化学メーカーに入社した厳。海外営業部門で化学製品の営業を担当した後、廃棄プラスチック製品の再生プロジェクトや公募型のオープンイノベーションなど、新規事業の開発に従事しました。
そんな厳にとって転機となったのが、コロナ禍。在宅勤務する機会が増え、キャリアへの不安からスタートアップへの転職を決意します。
「提案や企画から携わったわけではありませんが、医薬品の配送サービスなどの新規事業開発を担当しました。スタートアップでは、挑戦を阻むものがない自由さがある一方、会社の支援がなく個人が持つネットワークや行動力で戦う必要があります。
またリソースが限られるため、営業をはじめ幅広い業務に対応しなくてはなりません。大企業と異なる環境に身を置いたのは刺激的でしたが、しだいに新規事業の開発に専念したいという気持ちが強くなってきました」
そして2022年、厳は日本特殊陶業へ。求めていたのは、新規事業開発に注力できる環境でした。
「新規事業の立ち上げに本気で取り組む会社に貢献したい気持ちがありました。実質的な成果が見込めないことに見せかけの努力を傾けるのでなく、本気で挑んでいる会社で勝負したい。そう思ったんです。
日本特殊陶業ではEVへの移行が迫る中、第二の柱となる新規事業の立ち上げが急務となっています。ここでなら、背水の陣で新規事業開発に挑めると感じ、入社を決意しました」
これまで複数の企業でさまざまな業務に携わり、多彩な経験を積んできた厳。新規事業開発に取り組む醍醐味をこんな言葉で表現します。
「営業力、調達力、マーケティング力、そして技術力など、新規事業をゼロから立ち上げるためには、あらゆるスキルが求められます。格闘技でたとえるなら、まさに“総合格闘技”。これまでさまざまなフィールドで培ってきた経験がすべて活かせている実感があります」
本質的な価値を追求してほしい。果敢に挑戦する大切さを伝えたくてTV出演を決意
入社してベンチャーラボ東京課に配属された厳は驚いたことがあると言います。
「課題の掘り下げ、ソリューションの定義、検証、実証という、ニーズを出発点とした一連の開発プロセスを社内の皆さんが熟知していました。ものづくりメーカーでは、現在も技術起点での開発が主流です。そんな中、創業80余年の伝統を誇る日本特殊陶業がアジャイル開発を進めているとは、新鮮な驚きでした。
また、社員の意見を尊重する企業文化が確立されていて、テレビ出演の意向を伝えたときも実現まで非常にスムーズでした。
2023年の12月初旬に開催されたセミナーでテレビ局のプロデューサーと出会い、提案内容をまとめてその月の下旬に社内で説明したところ、すぐに承認され、翌月には収録がスタート。一気に進んだ印象です」
また、同社で新規事業に取り組む中で、以前は感じることがなかったこんなやりがいも。
「ベンチャーラボ東京課は、中途入社者や他部署から異動してきた経験豊富なメンバーが中心です。私にはない視点や知識を学ぶ機会が多く、視野が大きく広がったと感じます。
さらに、年齢や職位を超えて自由に意見を交換できるオープンな議論の場があり、非常に刺激的な環境です」
一方、テレビ出演を決断した背景には、共に新規事業開拓に挑む課の若手社員に良い手本を示したい気持ちもあったと話す厳。メンバーへの想いを次のように綴ります。
「テレビ出演について話したとき、中には『そんなの無理ですよ』と反応する若いメンバーも。意欲があっても、先入観にとらわれて何もしないうちから諦めてしまっているケースが少なくありません。メンバーを引っ張る立場として、前例のないことでも果敢に挑戦し、実現していくことの大切さを伝えたいと考えていました。
この挑戦を通じて『本質的な価値を追求してほしい』というメッセージがメンバーに伝わったことを願っています」
共創を通じた未来のサービスを。ベンチャーラボ東京課から世界へ
厳が入社しておよそ1年半。いま求めるのは、パッションと行動力のある人財です。
「新規事業を立ち上げる過程では、私たちはさまざまな困難に直面します。それらを乗り越え、前進する力が必要です。揺るがない情熱を持ち、挑戦し続けられる方を歓迎します。
とくに、事業会社で新規事業の企画からローンチまでの一連の流れを経験したことがある方であれば、ニーズベース、シーズベースに関係なく、即戦力として活躍できるはずです」
今後もニーズ起点のサービス実現にこだわり続けると厳は言います。
「困り事を抱える人を支援したいという想いが私の新規事業開発の原動力になっています。最近、地震の発生が増えていますが、なぜ被災される方が減らないのか。被害を小さくできないのか。そこに少しでも貢献したいという気持ちがあって、とくに防災関連分野の新規事業開発に力を入れています」
未だ解決されていない大きな社会問題に取り組み、新しいソリューションを創出するためには、多様な技術を有する企業との共創が欠かせません。
「技術や営業を担っているわけではないため、他社と連携する際の障壁が比較的低いことは、私たちベンチャーラボ東京課の大きな強みだと思っています。
オープンイノベーションを通じて新しい事業を生み出す拠点として東京のベンチャーラボを確立することが私の目標です。現在、防災をテーマに社会実装に向けた取り組みを進めていますが、目標の実現にはこうしたプロジェクトを一つひとつ事業化し着実に実績を重ねていくことが大切だと考えています」
ベンチャーラボ東京課を「ここに来れば、新しい何かが生まれる」と期待される場にしていきたいという厳。熱い情熱を原動力に、新しい挑戦へ果敢に挑んで行きます。
※ 記載内容は2024年4月時点のものです
