次世代車両を支える接合技術を進化させる。若手に委ねられる大きな裁量と責任
生産・SCM部門 車両生産技術開発本部の生産技術研究開発センター。ここで、次世代車両の土台となる技術開発を行うというミッションを担っているのが、石井が働く先行要素技術開発課です。
「5〜10年後の実用化をめざして技術の種を育てる先行要素技術開発を行っています。その中で私が所属するのが、複数の部品を1つにつなぎ合わせる接合技術の進化に挑むグループ。
現在、車両製造で主流となっている、金属に電流を流して溶接する抵抗スポット溶接のほか、将来の実用化を見据えたさまざまな技術を扱う中で、私はレーザーを扱う接合技術や、材料を溶かさずにつなぐ固相接合を担当しています。これらは車両の軽量化や、異なる素材を組み合わせるマルチマテリアル化に欠かせない技術です」
素材の進化に合わせ、接合の手法も大きな変革が求められています。
「アルミルーフ採用による軽量化など、素材の変化を支えるのが接合です。たとえばレーザーブレージングと呼ばれる接合技術を利用することで、ルーフの継ぎ目を覆う『モヒカン』と呼ばれる部品を不要にできれば、原価低減に貢献できます。
私はレーザーを扱う接合技術と固相接合の2つのテーマを担当していますが、先輩たちはさらに多くのテーマを持ち、新たな手法について日々検討を重ねています」
入社3年目という若さながら、担当するプロジェクトの主導権は石井に委ねられています。
「新しい技術を開発する時はまず部長に提案するのですが、提案から最終報告まで一連の流れを1人で担当します。大きな責任がありますが、任されていることがありがたく、大きなやりがいです」
重要な責務を果たすため、石井が最も大切にしているのは、コミュニケーションだと語ります。
「少しでも迷った時は、知見を持つ先輩や上司、専門領域のエキスパートなどに相談しながら進めるようにしています。その際に意識しているのは、自分の考えを持った上で質問する姿勢です。それに対して細かくフィードバックをもらうことで、業務の手戻りを防ぎ、結果的に効率的な開発を進めることができます。ベテランの先輩が『気軽に声をかけて』と言ってくれる風通しの良さも、質問のしやすさにつながっています」
人の温かさに惹かれ日産へ。1年間の研修と実体験で、自身の道を見極める
石井のクルマへの情熱は、幼少期にまでさかのぼります。
「親がクルマ好きだったこともあり、子どもの頃からミニカーで遊んだりゲームをしたりと、クルマは常に身近な存在でした。大学進学の際も『いつか自動車業界に携わりたい』という想いがありました」
大学では機械システムを専攻し、大学院では材料系の研究室で接合技術の研究に没頭します。
「とにかく自動車に関わりたいという一心で研究室を選び、接合技術の道に足を踏み入れました。研究していたのは超音波接合でしたが、当時は接合にこれほど深く関わることになるとは思ってもみなかったです」
就職活動での軸は、自動車業界で、学んだ材料系の接合技術を活かせること。第一希望は自動車メーカーで、複数企業のインターンシップを経験した上で環境や社風を重視し、日産への入社を決めました。
「大学院時代に日産と共同研究をしていた経緯もあり、今の部署の雰囲気を知っていたことが大きかったです。とくに当時の上司がとても気さくで、就活の相談にも親身に乗ってくれました。日産のような大きな企業が学生1人に対してここまで丁寧に向き合ってくれるのかと感動し、絶対に入社したいという気持ちが固まりました」
2023年の入社後は、半年間の徹底した基礎教育が始まります。
「全社での研修の後、工場のライン体験や同期との装置製作を通じて、モノづくりの基礎を学びました。その後は自身の取り組みたい領域に合わせて実務研修へと進みます。組み立て、プレス、車体、塗装、樹脂という選択肢の中で、私は接合技術の研究開発をするため、車体を選択しました。
2カ月ほど教育を受けた後、治具設計、工法開発、先行技術開発、新車試作の現場対応などを1週間ずつ経験し、最終的にどの部署に行きたいかを検討します。私は当初から接合グループを希望していましたが、研修を受ける中で希望を変更した同期もいましたし、知らなかった部署について、実体験を通じて学べたことは大きな学びになりました。
配属希望はできるだけ考慮してもらえますが、希望者が多ければ選抜が行われます。今の部署も非常に人気があったため、希望が通った時は嬉しかったですね。自分が本当に行きたい部署を約1年かけてじっくり見極められたこともありがたかったです」
社内初導入の最新技術担当に抜擢。ゼロから検証を重ね、チームで頼られる存在に
こうして先行要素技術開発課の接合グループに正式配属された石井。フレッシャーズリーダー(FL)と呼ばれる新入社員の教育担当社員のアシスタント業務を通じ、実務の基礎を固めることからスタートしました。
「最初は抵抗スポット溶接に関する業務の補佐がメインでした。自分1人で手を動かせば完結していた学生時代と異なり、会社では実際に手を動かす実験班と、工法を検討する技術班に分かれています。円滑に実験を進めるには、実験班のメンバーに意図を正しく伝える必要がありますが、私の説明不足で工程に遅れを生じさせてしまったことも。組織で開発を行う難しさを痛感しました。
そこで、『このように説明しようと思うのですが、不足している情報はありますか?』と自分の考えをもとにFLに相談して、アドバイスを受けて軌道修正する。このサイクルを繰り返すことで、仕事をスムーズに動かす要領をつかんでいきました」
入社2年目、石井に大きな転機が訪れます。社内で初めて導入する新技術の主担当に抜擢されたのです。
「EJOWELDはアルミと鉄という異なる素材を接合する最新技術で、 当時の日産には実績がありませんでした。部長への提案から立ち上げまでの2カ月ほどはFLの力を借りましたが、その後は私1人に任されることに。
実験を繰り返すうちに、メカニズムから設備の細かな使い方まで、私がチームで一番詳しくなり、『担当した新技術については石井に聞けば大丈夫だ』と頼られるようになったことは大きなやりがいを感じました」
素材にアルミを採用することは車体の軽量化につながり、燃費向上に直結します。この技術には部長クラスの役職者からも大きな期待が寄せられていました。
「主担当として、最終報告までに実験をどう組み立てるべきか、ゼロから考え抜く必要がありました。なんとか期待に応えたいと先輩やFLとも相談を重ね、最終的には目標項目をすべてやり遂げ、いつでも量産車へ適用可能な技術の知見として完成させることができました。
この経験を通じ、課題の設定やスケジュール管理など、業務の進め方が一気に身についた実感があります。指示されたことを行う段階から、自ら計画を立ててプロジェクトを推進するステージへ上がれたことは大きな成長でした」
技術者としての確かな手応えとともに、石井は日産の先行開発ならではの醍醐味をこう語ります。
「まだ世の中に公表されていない車種の開発を行うことは、みんなが知らない未来を創る技術を自分たちが形にしているというワクワク感があります。『これが5年後、10年後のスタンダードになるんだ』と考えながら向き合えることが何よりのモチベーションです」
探究心を胸に挑む博士号への道。接合研究のエキスパートという高みをめざす
巨大な組織の中でも、若手がのびのびと挑戦できる日産の舞台。活躍できる人物像について、石井は自身の経験を踏まえて分析します。
「コミュニケーション力も大切ですが、実験に失敗した時にその原因を徹底的に追究できる人こそがこの仕事に向いていると思います。単に『できなかったから違う条件でやろう』と考えるのではなく、なぜその条件が必要なのかを理由付きで考察できる探究心が不可欠です。
私自身、エキスパートの皆さんから自分では気づかなかった視点でフィードバックをもらうことで、研究スキルが向上している実感があります。優秀な先輩たちから多くを学べる環境で専門性を高められることが純粋に楽しいですね」
こうした成長を支えるのは、役職や年齢の垣根を超えたフラットなコミュニケーション環境だと言います。
「上司との距離が非常に近いのは、当社の大きな魅力です。上司や、接合技術の全責任を担うエキスパートリーダーとも密に話をすることができます。手厚いサポートがあるからこそ、私たち若手も未知の領域に安心して飛び込んでいくことができます」
石井の挑戦は、社内だけにとどまりません。2026年度からは「社会人ドクター」として、さらなる高みを追究します。
「某大学の接合研究の場で、博士号取得に3年間挑戦します。日産と某大学の共同研究が始まることを機に、上司が私を推薦してくれました。通常業務と並行してやりきれるかという不安もありますが、それ以上にワクワクする気持ちの方が大きいです。博士号を取得できれば大きな強みになりますし、将来は接合技術のエキスパートとして頼りにされると思います。社内でも前例の少ない道ですが、大きく成長できるよう全力で取り組むつもりです。
また、かつて私が先輩に多くのことを教えてもらったように、FLとして後輩を指導することにも楽しさを感じています。接合技術という専門性を武器に現場を牽引しながら、マネジメントにも携わることが将来の理想の姿です。5年後、10年後のスタンダードを創る喜びとそれを裏打ちする技術。その両方を後輩たちへ伝えていける存在になりたいと思っています」
※ 記載内容は2026年3月時点のものです
