現場に寄り添うから見えるウナギの成長。日本有数の産地で磨く誠実な営業のカタチ
私は現在、中部水産営業部に所属し、日本有数のウナギ生産地である愛知県の一色地区や静岡県の浜松地区を担当しています。私たちのミッションは、ウナギ用飼料のシェア維持と拡大。営業部は部長を含めて10人ほどの組織ですが、最近は20代の若手が半分を占めるようになり、たいへん活気ある雰囲気の中で切磋琢磨しています。
日にもよりますが1日の仕事の流れは、早い時は朝4時ごろに自宅を出発します。5時ごろから始まるエサやりの現場に立ち会い、エサの食いつき具合や水の濁りを確認することは、飼料メーカーとして大事なポイント。エサの練り具合が少しでも硬すぎると、ウナギが食べこぼして水が濁り、生育環境を悪化させてしまいます。生産者さまと「少し粘りを調整しましょうか」と会話を交わすこのときが、飼料の品質を維持するための重要な情報源となっています。
その後は午前中、生産者さまのところを回り、何もなければそれで終業となる日もありますし、事務処理があれば会社に戻って少し作業を行います。時差出勤なので働き時間は調整できますね。
生産者さまとの信頼を深めるため、時には池の中に入り、出荷作業を共にすることもあります。網を引いてウナギを囲い、出荷サイズを選別する作業は力を使いますが、実際に池に入るからこそ、自分たちのエサで育ったウナギの太さを手に取り、「生育の手応え」を肌で感じることができます。
予想より太く育っていれば生産者さまと共に喜び、そうでなければ次への改善策を練る。そうした時間を共有することが、深い信頼の土台となります。
お客さまによって求められることは変化しますが、私が最も大事にしているのは相手との距離感。少しずつ顔を覚えてもらい、誠実に向き合い続ける。その積み重ねが、強固な信頼関係の構築につながるのだと信じています。
専門性を越えた人間関係が鍵。現場で気づいた「家族」のような関係を築く営業の醍醐味
子どものころ、川遊びで捕まえた魚を飼育し、「どうすれば早く、大きく育てられるか」を考えるのが好きで、それが魚に興味を持つきっかけとなりました。大学では魚への興味をさらに突き詰め、魚の腸内発酵に関する研究に没頭しました。就職活動で日清丸紅飼料を選んだのは、水産飼料でトップシェアを誇り、多様な人脈と知見を有している点に魅力を感じたからです。
自分がこれまで培ってきた専門性を活かし、スマートに課題を解決していく──入社前は、そんなかっこいい営業像をイメージしていました。営業担当といえば資料を持って商談するものと思い込んでいましたが、実際には現場で長靴を履いて、お茶を飲みながら世間話をするときの方が長いことも。
最初は戸惑うこともありましたが、専門知識を振りかざす前に、まずは1人の人間として認められる必要がある。一見、遠回りに見えるこの時間が、実は何よりも大切な商談なのだと気づかされ、しだいにそれが楽しみに変わっていきました。
慣れるまでは大変でしたが、それを乗り越えさせてくれたのは、周囲の温かいフォローでした。当時、若手の私を気にかけて「代わりに現場に行ってやるから、少し休め」と負担を軽減してくれたり、親身に相談に乗ってくれたりしました。
また、自分なりに考えた工夫も効果を発揮しました。私は営業ノートを作り、生産者さまとの何気ない会話を記録したのです。好きな漫画、家族の話、こだわり。次の訪問までに予習をして、「昨日あの漫画読みましたよ!」と声をかける。そんな小さな積み重ねを繰り返すうちに、しだいに生産者さまと打ち解けていくのを感じました。
最終的なゴールは、その生産者さまの一員、いわば「家族」のような存在になることです。生産者さまは命がけで魚を育てています。その苦楽を共にし、「阿部が言うなら試してみよう」と言ってもらえる関係を築く。慣れてしまえば、むしろ「家族の役に立ちたい」という純粋な気持ちに変わっていきました。今振り返れば、あのとき感じたギャップは、人としての深みを増すための試練だったのだと感じています。
2年間の訪問が実を結ぶまで。自分のやり方を信じた先にあった、心が動く瞬間の喜び
営業担当として忘れられない出来事があります。担当を引き継いだ直後、ある大口の生産者さまが他社の飼料メーカーへ切り替えられたのです。
自身の力不足が悔しくてなりませんでした。しかし、決して諦めはしませんでした。2週間に1回、とくに用件がなくとも訪問を継続。気まずさを感じる日もありましたが、「必ず戻ってきてくれる」と信じて足を運び続けました。
その間、徹底したのは「プロファイリング」。会話の糸口を見つけるために趣味を勉強し、困りごとがあれば自分の知識を総動員してアドバイスをしました。ウナギの体調が悪いと聞けば顕微鏡を持って駆けつけ、寄生虫の有無をチェックする。飼料のサンプルを地道に持ち込み、成長具合を確認していただく。たとえ他社の飼料を使っていても、私はアプローチを続けていきました。
そして2年間、通い続けた結果、「阿部さんだから、また日清丸紅に戻すよ」という言葉をいただくことができました。メーカーの切り替えは、生産者さまにとって大きな決断を伴うもの。餌の流通には複数の販売店が関わっていることが多く、時には魚の出荷先と餌の購入先がセットになっているケースも珍しくありません。
このような商流や関係性を整理してまで、阿部という人間を信頼してくださったことに、深い感謝と大きな達成感を覚えました。数字上の成果はもちろんですが、一人のパートナーとして認められたことが、何よりも励みになりました。
この仕事のやりがいは、生産者さまの心が動き、飼料を買っていただいた瞬間にあります。飼料の購入という形で自分のやり方が間違っていなかったのだと認められたときの実感は、何物にも代えられません。大変なことはありますが、この瞬間の喜びがあれば、すべて報われるような気がします。
誠実に向き合うと、生産者に会うのが楽しく、待ち遠しくなる仕事
今後の目標は、目の前の生産者さまを大切にしながら、営業成績を着実に維持し、少しずつ伸ばしていくこと。その積み重ねを通じて、将来は後輩の相談に親身に乗れるような、頼られる存在になりたいと考えています。
私がそう思うようになったのは、尊敬する上司の存在がいて、とくに課長は他社の方からも高く評価されるほど、業界内でも一目置かれた存在です。課長は初対面の方に対しても、礼儀を守りながら、距離感を縮めていくことができ、私にとって最高のお手本。こうした姿勢を参考にしながら、一歩ずつ近づけるよう努めていきたいです。
この仕事で何より大切なのは、目の前の相手とまっすぐ向き合う「誠実さ」。 大学で学んだ専門知識ももちろん武器になりますが、それ以上に、「約束を守る」「相手の話を丁寧に聞く」といった、人としての基本的な姿勢を一番大切にしています。
慣れるまでは戸惑うこともあるかもしれませんが、困ったときは先輩たちが全力でフォローしますし、会社全体で新人をゆっくり育てていく準備は整っています。焦らず、一歩ずつ進んでいくことができるのです。
この仕事は関係性ができてしまえば、極端に言うと「まるで生産者さまのところに遊びに行っている」感覚になれる魅力的な仕事です。いっしょにご飯を食べ、世間話に花を咲かせ、たまに仕事を手伝う。その延長線上にビジネスがあるのです。「おしゃべりをしているだけ」と言ったら少し語弊があるかもしれませんが、人と話すのが好きな方にとっては、これほど楽しい仕事はありません。
何より、日本の食文化を支えるウナギという繊細な魚に関わり、生産者さまと強い絆で結ばれる経験は、代えがたい財産になります。努力した分だけ、生産者さまから「ありがとう」と認められる。そんなやりがいを求めている方と、ぜひいっしょに働きたいですね。一歩踏み出した先には、想像以上に温かい世界が待っています。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
