アジア太平洋地域のサステナブルファイナンス責任者として
2021年9月にみずほ証券の海外子会社であるみずほセキュリティーズアジアリミテッド(Mizuho Securities Asia Limited)に入社して以降、Ivyは「アジア太平洋地域サステナブルファイナンス責任者 (Head of Sustainable Finance, Asia Pacific)」として、香港を拠点にアジア太平洋地域全体のサステナブルファイナンスおよび全般的なESG(注1)施策や活動を推進しています。
グリーンファイナンスなどESGビジネスの開発を主導する一方で、政府関係者をはじめとする官民の幅広いキーステークホルダーと積極的に連携しながら、ESGの枠組みや脱炭素戦略、サステナビリティロードマップに関する提言を行っています。
アジア太平洋地域を統括する「アジア太平洋地域サステナブルファイナンス責任者」としての仕事は多岐にわたります。
Ivy 「社内では域内のサステナブルビジネス推進や全体的な戦略立案を主導する一方、社外においてはグリーンファイナンスの各国・地域内のタクソノミ(分類)に関する市中協議など、サステナブル金融市場の健全性を担保する業界横断的な活動に参加しています。
また、イベントやウェビナーを通じての知識の共有や、業界団体主導のリサーチプロジェクトにも貢献しています。採用や人材育成も重要な仕事です」
ジャーナリストからサステナブルファイナンスの世界に
IvyがESG投資とかかわる機会を持ったのはいまからおよそ10数年前、金融専門の記者として活動していたときでした。
大学ではジャーナリズムを専攻し、卒業後は香港経済誌の記者となりましたが、その直後となる2008年にリーマンショックが発生。金融機関のあり方が見直される契機となりました。
Ivy 「金融を通じて社会を良くする、という考え方に魅力を感じました。そこで、スキルアップも兼ねて英国に社会人留学し、サステナビリティの修士号を取得しました。その際にさまざまな国際会議やイベントに参加し、当時の国連事務総長だった潘基文(Ban Ki-moon)氏の発言、『誰一人取り残さない──No one will be left behind(持続可能な開発のための2030アジェンダ)』等を直に聞くことができました。
そうした経験をしたことで、サステナビリティという分野にますます関心を抱くようになりました。修士号取得後はいくつかの国際的なNGOやシンクタンクに在籍し、気候変動に加えて、『資金洗浄対策』、『児童の人権・教育』といったさまざまなサステナビリティに関する課題に取り組みました」
〈みずほ〉に入社する前は、グリーンファイナンスやサステナブルファイナンスを先導する国際的なNPOであるClimate Bonds Initiative (CBI) に在籍していたIvy。
そこでの5年間は、東アジア地域の責任者としてビジネス機会開発や政策アドバイザリーに携わるかたわら、中国本土におけるCBI支部開設や、日韓中の主要なステークホルダーとの関係構築に奔走します。
Ivy 「この仕事の醍醐味は、巨額の資金を動員して、気候変動や水ストレス、食料安全保障といった人類の生存にかかわる問題や、基本的人権の尊重や社会インフラの整備、ジェンダー平等といった国連のSDG目標の達成に貢献できることにあります。これらの問題に対処するには、何兆ドルにも上る資金ギャップを民間セクターの力で埋める必要があり、金融機関の役割が欠かせません。
もちろん、この業務ならではの困難もあります。特に、変化し続けるESG関連規制や政策動向を把握するために、常に勉強し続ける必要があります。また、金融仲介機関としては、顧客にとって最適なソリューションを提供しながらも、サステナブル金融市場の健全性を損なわないバランス感覚が求められます」
中国では、中央銀行や政府主導の非公開協議にも参加し、そこで国際的な好事例(ベストプラクティス)を紹介するとともに、グローバル基準とのギャップを解消する方策について提言する機会を得ました。現地のグリーンファイナンス政策や規制に対する深い理解を持つことで、お客さまに対してより実情に合った的確なソリューションを提供することができるようになった、と言います。
Ivy 「元々、メディア学・ジャーナリズムを専攻していました。金融、サステナビリティの分野は、社会人になって初めて踏み込んだ領域でしたが、さまざまな人とのご縁があってこの仕事にたどり着くことができました。
大学の専攻分野でキャリアのすべてが決まることはありません。大学はあくまでも自分のやりたいことに近づくための土台です。とはいえ、社会人になってから偶然にもESGというライフワークに出会えたのはラッキーだったと思っています」
さらなる可能性を求めて
その後、自分の可能性を広げたいと思い、NGOからメガバンクに転職します。
Ivy 「〈みずほ〉に入社した直接のきっかけはヘッドハンティングですが 、それ以前から〈みずほ〉という日本の金融機関については知っていました。
アジア太平洋地域に強いプレゼンスを持っていること、サステナビリティに関して包括的なアプローチをしていることから、これまでの経験が生かせ、かつさらに大きな仕事ができると考えました。偶然にも次のキャリアステップを考えていた矢先にその話がきたのです。縁があったのだと思います」
〈みずほ〉はESG分野における金融業界の先駆者として、2003年に「エクエーター原則 (Equator Principles)」(注2)をアジアの金融機関として初めて採択したほか、2017年には「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)」(注3)に参加。2020年には邦銀で初めてTCFDレポートを発行し、気候リスク軽減や気候変動対策に関する体系的な情報開示を始めました。
Ivy 「〈みずほ〉に対する最初の印象は、プロセス重視で健全性を大切にする金融機関であるということ。この印象は今でも変わっていません。それ以上に、多彩な人材が集まるオープンな風土の金融機関であったのはうれしい発見でした。
入社前には勤務地である香港だけでなく、シンガポール、ロンドンをはじめとする各地域の責任者とオンライン面談する機会がありました。私が典型的な金融機関出身者でないにもかかわらず、サステナブルファイナンス責任者の候補者として面接してくれたオープンな社風、多様な経歴の人材を積極的に登用する懐の深さを感じました」
オープンに、しなやかに
Ivyが2021年9月に〈みずほ〉に入社した当初、新型コロナの感染再拡大により原則全面的在宅勤務となっていました。しかし、面接時からのコミュニケーションもあって、〈みずほ〉にはすぐに馴染めたと言います。
Ivy 「同じ目的意識を持つ人と一緒に仕事をしていることが、自分にとっての何よりのモチベーションとなっています。〈みずほ〉の強みはお客さまと良好な信頼・協力関係が築けていること。また、コンプライアンスを遵守する風土もあらゆる場面において根づいています。これは金融機関として、リスク管理の面では欠かせないことです。
一方で、課題も認識しています。金融業界全体に共通することですが、もっとアジャイルに、積極的に変化に対応し、新しい時代を創っていく姿勢が必要だと考えています」
地域をまとめるリーダーであるIvy。リーダーとして、かねてより心がけていることがあります。
Ivy 「リーダーとして自分は非常に恵まれていると思います。前職では優れたロールモデルが何人もいて、リーダーとしてのあるべき姿を学ぶことができました。特に大切なのは、地位と声の大きさではなく、『共感』と『ビジョン』で人を動かすこと。同じ目的と価値を共有し、信頼と尊敬に基づく強いチームを作っていくリーダーを目指しています。
社外のステークホルダーとの関係づくりにおいても同様です。さまざまな文化的背景と関心を持つ人々と協力するには、『傾聴』と『オープンマインド』の姿勢が重要です。
私自身がコミュニケーションをとる際に意識している『ESG』があります。ESGとはもちろんEnvironment/Social/Governance(環境・社会・ガバナンス)の略ですが、私の場合は『Empathize (相手の立場を理解する)』、『Share (ナレッジを共有する)』、『Goals (共感できるゴールを設定する)』の3つです。
『お互いを尊重する』、『文化的な違いに配慮する』、『先入観を持たない』というのは基本的なことですが、日常のやり取りの中ではつい忘れがちです。それを忘れないための『ESG』でもあります」
最後に、今後の抱負について次のように語ります。
Ivy 「サステナビリティ目標の達成と低炭素社会への移行は長距離マラソンのようなものです。〈みずほ〉がお客さまにとって信頼できるパートナー、かつ頼りになるアドバイザーとして大きな目標に向かって一緒に走り続けられるような組織づくりをしていきたいと考えています。
組織の中で成長したい人にとって〈みずほ〉は理想的な職場だと感じています。キャリア開発をサポートする制度もあり、協調的な環境で優秀な社員と多くのことを学び合うことができます。それに、〈みずほ〉は成果に対して必ず報いてくれる会社であると信じています」
力強い言葉で、〈みずほ〉の仲間に対して「一緒に頑張っていきましょう」とエールを送るIvy。真っすぐにビジョンを語る彼女の姿は、頼もしいリーダーそのものでした。
ユニークなバックグラウンドを持ち、常に学び続けるリーダーは、〈みずほ〉のアジア太平洋地域におけるサステナビリティビジネスの存在感をますます高めていくことでしょう。
(注1) ESG:Environment (環境)、Social (社会)、Governance (ガバナンス)の略称
(注2) エクエーター原則 (Equator Principles):金融機関が大規模な開発や建設を伴うプロジェクトに参加する場合に、当該プロジェクトが自然環境や地域社会に与える影響に十分配慮して実施されることを確認するための枠組み
(注3) 「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)」:企業の気候変動への取組みや影響に関する財務情報についての開示のための枠組み
