気候変動分野に関わるようになったのは偶然だった
学生時代に学んだのは、エネルギー分野の定量分析。気候変動に興味を持ったのは、定量分析を得意とする地球環境チームに配属され、〈みずほ〉での仕事を始めてから。
そんな自分が、みずほリサーチ&テクノロジーズの、気候変動に関する「専門性認定制度(コンサルタント)GradeS認定」を取得することになるとは、当時想像もしていませんでした。
元木 「入社当時は、『専門性』という言葉は頭の片隅にもありませんでした。むしろ当時は、高いスキルを持った先輩社員をみながら、『自分はここでやっていけるだろうか。何を得意分野にしたらいいだろうか』と迷ったし不安だった、というのが正直な心境です」
入社から約3年間は環境を専門とする研究者と共にモデル開発に取り組み、「どんな技術を活用すれば、温室効果ガスを何%削減できるか」といった分析を担当。政策の裏付けとなるデータや資料を作成する業務に携わりました。
4年目からは、環境関連税制など政策を立案する側のメンバーに。2012年に日本で初めて導入された炭素税である地球温暖化対策税のプロジェクトリーダーなども経験しています。
元木 「入社から今にいたるまで、環境省など行政の方々とコミュニケーションを取りながら日々業務を進めています。当初は未熟さゆえに、環境省の方から求められる質にも量にも速さにも対応できないこともありました。
環境省が日本の税制のグリーン化について話し合う検討会を立ち上げたときは、2週間に1度の頻度で会議が開催され、1回おおよそ1時間半くらいの打ち合わせで、検討会3回分の議論をしました。資料を間に合わせることに必死でした。当時はとにかく質をあげるより量をこなすことで実力を養った期間だったと思います」
常に今の自分以上の成果を求められ、必死に目の前の仕事を追いかけていく。
元木にとってその日々は、とてもハードでしたが、同時に仕事に責任感を持つに至る、大切な時間でした。
元木 「自分にとって何がやりがいだろう、と考えたときに、2050年も過ごしやすい気温で、空気がきれいで、いい環境で生きられたらいいな、と思って。そういったことに貢献するために、頭を使って考えて、お客さまに『ありがとう』と言っていただけると嬉しいだろうなと思うにいたりました。
実際にそういった仕事に携わり、行政の方からの高い要求にもなんとか応えていけるようになって、『ありがとう』と言っていただけたときは、何よりも嬉しかったです。そういう一つひとつの積み重ねが、今の仕事に責任感を持って取り組むようになった経緯なのだと思います。
そして幸運にも、時代が変わっていく中で、気候変動やカーボンプライシング(炭素排出に価格付けを行う制度)に対する世の中での注目が徐々に高まり、社会や企業からも求められるようになってきました。それが、専門性を磨く機会にもつながっていきました」
認められた専門性。世界的に取り組みが進む、カーボンプライシングを推進
2021年、元木はみずほリサーチ&テクノロジーズにて運用する「専門性認定制度(コンサルタント)」のGradeS(グレードS)に認定されました。専門性認定制度とは、コンサルタントとしての社会的なバリュー(専門家としてどの程度通用する水準にあるか)に着目した「コンサルタントの専門性認定基準」に基づき、内部審査員および外部アドバイザーが申請者の専門性の発揮レベルを審査する制度です。GradeS認定者は専門領域・分野における社内トップレベル人材との位置づけであり、各コンサルタントはその水準を目指して専門性を磨き、自らの市場価値を高めています。
元木 「GradeS認定の取得を目指す中では、それまでの仕事を振り返り、これまで積み上げてきたことの客観的な価値について見直すことになりました。また、後輩やチームとどのようにノウハウを共有するかを含め、自分が貢献できることや、今後のキャリアについても考えました。
『カーボンプライシングに係るコンサルティング』を専門分野・領域として申請し、その専門性を認められたことで、よりいっそう責任感が増したと感じています。認定者としてふさわしい行動をしなければと気を引き締めているところです」
2022年12月現在は、地球環境チームに所属し、主席コンサルタントとして、引き続き環境省をはじめとする官公庁の業務に従事しています。
元木 「脱炭素分野の高度な調査・定量分析スキルを強みとし、国内外の政策担当者や第一線の研究者との強固なネットワークを活用しながら、カーボンプライシングのあり方や活用についての政策立案を支援するのが、私の主な役割です。
業務を通じて気候変動に立ち向かい環境を良くすることで、経済全体や〈みずほ〉のお客さま、そして国民の皆さまにも良い影響を与えられたらという想いで仕事に取り組んでいます」
元木が主に担当しているのは、環境やエネルギーに関する税制、いわゆる“カーボンプライシング”の分野。カーボンプライシングとは、炭素排出を“見える化”して、炭素排出にともなう費用負担を企業に求める制度のことです。
元木 「自動車を走らせたり、鉄やセメントなど素材を作ったりする際にも、エネルギーを消費して炭素がたくさん排出されます。IPCCの報告書で、人間活動による炭素の排出が気候変動の主な要因であるとされましたが、これまでタダであった炭素の排出に値段を付ける新たなルールが必要とされています。
カーボンプライシングが導入されることで、エネルギー消費量の削減やエネルギーの低炭素化につながる代替技術の導入を検討する企業が増えることが期待されています」
カーボンプライシングは、欧米を中心に、韓国や中国も含め世界中で導入されています。また現在は、企業が独自に炭素の排出に価格を付ける “インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)”も普及し始めています。
元木 「国の動きを予測しつつ、前もって取り組みを行う企業が増えています。炭素価格を想定し、気候変動による財務への影響を開示し、リスクに備えることで、投資家に評価される好循環が期待できるからです。私が普段関わるのは主に官公庁ですが、民間レベルの動きが非常に活発化していると日々感じています」
“グループ連携”で広がるアプローチの幅と手法──協働して、より良いサービスを作る
2020年に菅前首相が“カーボンニュートラル宣言”をして以来、さまざまな企業がカーボンプライシングに興味をもつようになりました。近年は〈みずほ〉各社が連携し一丸となって案件に取り組む機会が増えています。
元木 「昨年は、みずほ銀行の営業担当の方と共に、年間で40件ほど企業を訪問し、カーボンプライシングについて説明しました。海外事例を報告したり、価格水準についてご提案したりする中で、インターナルカーボンプライシングの設定を支援してほしいという依頼も出てきています。
民間企業向けコンサルを専門に担当するチームとも密に連携し、お客さまを支援しています。銀行の営業担当の方からは、『お客さまの抱えている経営課題解決に貢献してくれている』と、感謝の言葉をもらうこともあります」
サステナビリティやカーボンプライシングの分野において、みずほリサーチ&テクノロジーズが知見をもっていることへの認知が高まり、近年はスムーズにグループ内の連携が取れています。
元木 「2021年には、みずほ証券が加盟する日本証券業協会と東京大学が共催するシンポジウムに登壇しました。社会貢献ができている実感がありますし、これまで接点のなかったお客さまとのつながりも生まれています。このような機会を通じて、グループ連携にも貢献できればと考えています」
近年はさまざまなコンサルティングファームが気候変動分野に力を入れています。お客さまに〈みずほ〉を選んでいくために、元木が必要だと考えているのは、メンバー個々のさらなる成長によるチーム力の底上げです。
元木 「競争が激化する中でお客さまに選んでもらうためには、ますます良い組織となり、良いサービスを提供しなければなりません。鍵となるのはチーム力。すばらしい若手メンバーがたくさんいるので、技術やノウハウを伝え、専門性をもった個人の力を結集し、皆でより良いサービスを作っていけたらと思っています。
また、私は普段、政策立案支援などの官公庁の業務に従事していますが、民間企業のお客さまから伺った現場の課題やリアルな声を役所に伝えて政策に反映させていくことも、〈みずほ〉の一員として、自分が果たすべき役割と思っています」
「やる」と決めてチャンスをつかめば、キャリアは自ずと開かれていく
プロフェッショナルとして活躍し続ける上で、元木が大切にしているのはアンテナの感度を高めること。
元木 「国内外の情勢には常に敏感でいなくてはなりません。ただ、自分ひとりで新鮮な情報を網羅しキャッチアップするのは限界があるので、幅広い情報ネットワークが欠かせないと思っています。
案件で関わる公的機関の方はもちろん、部署の同僚、みずほ銀行のメンバー、民間企業や国内外の専門家の方などから付加価値の高い情報を得ることで、自分なりに見通しを立てられると考えているからです」
これまでのキャリアを振り返り、「挑戦を積み重ねたからこそ今がある」と語る元木。みずほリサーチ&テクノロジーズの風土や制度こそ、そのステップを支え続けている土台です。
元木 「今振り返ると、若手のころからチャンスにあふれ、やりたいことに挑みやすい環境がありました。私が所属するコンサルティング本部には、チャレンジ投資と呼ばれる制度があります。初期はまだお客さまが付きづらい分野でも、次のビジネスの種を開拓しようという意欲があり、将来性があると判断されれば、投資が行われます。
私はそういった機会を最大限に活用させてもらいました。この会社に入ってよかったと感じている点です」
自身と同じように、なんらかの専門性を磨いていこうとしている社員に対しては、前向きに挑戦してほしいと声援を送ります。
元木 「ときには慎重な判断も必要ですが、『やる』と決意し、行動に移すことが、好機をつかむ上での重要な一歩になるはずです。踏み込んだ先で新しい課題に出会い、それを解決する過程で力がついていくもの。やってみなければ、わからないことがあると考えています。
挑戦を迷っている周りの若手メンバーには、『やってみたら?』と声をかけるようにしていますし、やると決めた人には最大限のサポートをしたいですね」
入社してからの元木の日々は、常に「やる」という言葉に支えられていました。そうして挑戦を重ねていくことで、自分の実力以上のものが求められたとしても、一つひとつ目の前の仕事を乗り越えてきたのです。
そうした日々に裏打ちされた自信が、気候変動分野におけるプロフェッショナルとして、専門性の認定時や認定後に感じるプレッシャーにも負けない、心を支える柱となっています。今後も元木は、その言葉を体現していくはずです。
そんな自分の姿が、専門性を磨くべく努力する、〈みずほ〉の仲間の背中をそっと押せるように。
