入社の決め手となったのは、前職時代に見えた三井物産の協業相手をリスペクトする姿勢
新卒で重工業メーカーに入社し、約10年にわたって火力発電プラントのための機器の輸出や、海外の建設現場におけるアドミニストレーション、契約交渉などに携わった髙橋。転職を考え始めたきっかけをこう話します。
「電力のバリューチェーンでいうと、タービンやボイラーなどの機器製造や据付を行い、プラントを運転できるようにするまでがメーカーの所掌。そこから先、プラントの操業や電力の販売などを担うのは三井物産などの商社や電力会社が事業主として行っています。
縁があって入った電力業界。上流だけでなく下流を含むサプライチェーンのすべてを管轄できるような人材になりたいと考えるようになっていきました」
前職時代、多くの商社と仕事をする機会に恵まれたと言う髙橋。中でも、サプライヤーを含めさまざまなステークホルダーへの配慮を欠かさずに仕事をしていたのが三井物産の社員でした。
「建設工事の契約締結後は、事業主は下請け業者に工事を任せることになりますが、利益相反がうまれる場面は少なくなく対立姿勢となることが多いです。そんなときでも、三井物産の人だけは、『あなたたちだからできると思っている』と私たちに敬意を示しながらモチベーションを高め、ポジティブなかたちでプロジェクトを前進させようとしていました。
日々の打ち合わせや交渉の中でもそうした姿勢に触れるうちに三井物産のフィロソフィーに共感を覚え、この会社で働きたいと思うようになっていきました」
2020年の入社後、髙橋が配属されたのは本部長直轄のプロジェクトマネジメント室。本部内の案件良質化を担う部署ですが、中には遅延や予算超過などを理由に立て直しを必要とするものも。それまでメーカーの一員として養ってきた知見が役立ちました。
「本部の課題案件をひと通り見ながら、新しい案件についてもリスク分析の観点で営業組織に助言する役割を任されました。とくに製造・建設現場で何が起きているのかなど、メーカー出身者だからこそ想像が及ぶことが多く、皆さんが持っていないものを補完する役割をもらったことで、持ち味を発揮することができたと思っています」
クリーンエネルギーをブラジルから全世界へ。商社だからこそのおもしろさを実感
1年半ほどプロジェクトマネジメント室に在籍した中で、髙橋がとくに印象的だったと話すのがモロッコの風力発電所建設案件。トラブルが重なっていたプロジェクトを立て直すため、現地に向かいました。
「欧州の電力会社と共に立ち上げたジョイントベンチャーがさまざまなトラブルに直面していました。モロッコ政府から土地の使用許可が下りなかったり、周辺住民からの反対があったり。予定から7年も遅れてしまっていました。
なんとか工事を始められたと思ったら、今度は下請け業者のスキル不足が発覚。アメリカのサプライヤーは納期通りにものを納入してくれないし、頼みの綱だったパートナーには輸入手続きの知見が乏しいというプロジェクトを遂行するには厳しい状態でした」
工事が進められない、必要なものが届かない、届いたとしてもモロッコには輸入できないという、いわば三重苦の状態。そんな事態を、前職の経験を活かして髙橋はわずか2週間の出張期間で立て直すことに成功します。
「私が前職で取り組んでいたのは、サプライヤーやお客様との契約マネジメントや輸出入の調整まわり。その知見を踏まえ、現地のプロジェクトマネージャーたちや三井物産の担当者を集め、新しいアクションプランを提案しました。自分だからこそのバリューを発揮できたと思います」
その後、2021年の12月に髙橋はプロジェクト開発第三部第二営業室へ。現在はブラジルやアルゼンチンのインフラ案件全般を担当しています。
「前職で担当していたのは、中東、北アフリカやアジアなど日本から見て西側にある発展途上国地域。どうせならやったことのないエリアをということで、南米を担当させてもらいました」
業務内容は多岐にわたりますが、いま髙橋が担う大きな役割はふたつ。電力、ガス、物流などにおける新規案件創出と、すでに動いている既存案件の事業会社管理です。
「国土が広く、環境資源が豊富で且つ農業立国でもあるブラジルは、かなり稀有な環境です。現在は、アマゾン川水資源を活かした大型水力発電、産業顧客向けクリーンエネルギーソリューション、海底から出てくる天然ガスを由来としたガス配給を展開していますが、昨今のESGの流れを踏まえ、再生可能エネルギーの開発や農業残渣を有効活用したバイオガスを用いたクリーンエネルギー事業創出も進めています。
ブラジルを拠点としたエネルギー網を全世界につくれたらと、グローバルエナジーセキュリティの観点で物事や事業を考えられるのは商社ならではの醍醐味。また、ブラジルへの投資規模が大きい三井物産だからこそできる取り組みだと思っています」
ハーバード大学院で激論を交わした2週間で感じた三井物産の強みと懐の深さ
入社後に担当した案件を通じて、ファイナンスやマクロエコノミクスなどより広くサプライチェーンを捉えられるようになったと言う髙橋。三井物産にキャリア入社するメリットについてこう語ります。
「三井物産には広大なビジネスの土壌があり、異なるフェーズのさまざまな案件や現場があるため、どんな人が来ても必ず活躍できる場所があります。金融バックグラウンドの人であればファイナンス組成やリファイナンスなどで価値を提供できますし、エンジニアリング会社・メーカー出身の人であればエンジニアリングや設計・建設で苦戦している案件で存在感を発揮できるでしょう。
また、三井物産はデジタルトランスフォーメーションにも注力しており、機械学習、AI、量子コンピューターなどを活用した既存事業のバリューアップを検討するタスクフォースがあります。私もメンバーとして参加していましたが、常識にとらわれない斬新なアイデアが求められていて、社外で経験を積んだからこその視点はそこでも重宝されていました」
三井物産がキャリア採用を積極的に進めてきた背景には、そうやってプロジェクトの現場に化学変化を起こす以外に、組織を変革する狙いもありました。そんな三井物産の考えを象徴する取り組みが、次世代幹部養成講座(グローバル・マネジメント・アカデミー/以後、GMA)です。
GMAとは、アメリカのハーバード・ビジネス・スクールと提携した独自のカリキュラムに沿ってグローバルに活躍できるリーダー候補を育成する場のこと。三井物産の社員はもちろん、関係会社や共に事業に取り組むパートナー会社からも広く参加者を募っていますが、かねてよりMBAに関心を持ち、上司にもその意志を伝えていた髙橋は、本店からの選抜メンバーとしてこれに参加する機会を得ました。
「プログラムは大きくふたつのセッションに分かれていました。ひとつは5月末に国内の研修所で行った1泊2日のセッション。もうひとつがボストンセッションといって、ハーバードの大学院で2週間ほぼ缶詰状態で勉強するというものでした。
パートナー会社の方々と一緒に三井物産の将来像について考えられたところに、今回のGMAの意義があったと理解しています。いずれ経営陣の一角を担うことになるような幹部クラスのメンバーと議論できるなど、非常に魅力的なプログラムでした」
これまで長く現場仕事に取り組んでいた髙橋にとって、会社経営にまで視野を広げてアカデミックに学ぶ内容は、非常に新鮮なものだったと言います。
「ハーバードでは教授が1日当たり4コマほどの授業をしてくれました。授業の内容は『リーダーシップとは何か』『成功する企業はどんなポイントを意識して経営しているのか』『会社のパーパス、ミッション・ビジョン・バリューと個人のそれらをどうつなげるのか』など。
自分がグローバル企業のリーダーになる上で押さえておくべきポイントが詰め込まれていて、聞くことすべてが新鮮でした」
メンバーの中には、三井物産とは直接的な資本関係を持たないパートナー会社の社員の姿も。いわば「異質な他者」と意見を交わすことで得られたものも少なくありませんでした。
「パートナー会社の方の意見は、私たちとまったく視点が違うんです。ハーバードで行われたレクチャーは基本的にインタラクティブなセッションでしたが、私が感心させられた意見の大半はパートナー会社の方から出されたものでした。
たとえば、社内プロセスの進め方に関する議論では、『人を増やした方がいいんじゃない?』『稟議システムを簡素化できないか?』など、聞き覚えのある意見が聞かれがちです。そんな中、パートナー会社の方からは、『規定そのものをなくしたらどうだろう?』といった、私たちの固定観念を覆すような発言がありました。
それに刺激されて、私たちも『このルールは本当に必要か?』『なくなったら何が起きるのか?』と考え始めるという具合です。マインドをリセットさせてくれるようなコメントが多かったと思います」
このように異なる意見や外部の意見を取り入れることを躊躇しないのが三井物産のカルチャー。髙橋はさらにこう続けます。
「まさにこうしたオープンなマインドこそが、当社の強み。あえて社外にさらけ出すことで得られるものがあるとわかっているからこそ、パートナー会社にまで声をかけているわけです。三井物産の懐の深さ、度量の大きさをGMAで強く感じました。
GMAは、現状に満足することなく常に成長しようとする当社が経営理念に掲げる、『挑戦と創造』を体現するプログラムだと思います」
入社後、キャリアイメージがより明確に。挑戦を重ねる先にめざすのは会社経営
負けず嫌いな性格も相まって、もとより成長意欲の高い髙橋。三井物産に入社したことで、キャリアイメージが以前に増してクリアになったと言います。
「ジェネラリストとスペシャリストを掛けわせたT字型のキャリア開発をしていきたいとずっと考えていました。三井物産に入社したことで、もともと持っていた建設現場の経験をベースに、電力、ガス、バイオガス、水素など、横軸を広げてジェネラリストをめざしていく目標がより具体的に描けるようになったと思っています。
また、上司や同僚の懐の深さや学びへの意欲の強さ、お互いをリスペクトする気持ちなどに触れるにつれて、入社前にイメージしていた以上に働きやすい環境があると感じています」
そんな髙橋の上司に当たる室長の宮嶋もまたキャリア入社組のひとり。部下の立場から、ビジネスパーソンとしての宮嶋を髙橋はこう見ています。
「非常にバランスの取れた方で意思決定が速く、下にいる者として非常に助かっています。入社して間もないころはいろいろ苦労があったそうですが、もともと金融やファイナンシャルモデルの知識があり、強みを活かしてきたからこそ今の宮嶋さんがあるのでしょう。
これまで培ってきたスキルを活用しながら、新しい環境でどう自身のバリューを発揮していくべきかをよく理解された上で業務に当たられていて、とても尊敬しています」
まずは新規案件の創出で成果を残すことが今の目標だと話す髙橋。思い描くのは、自己の成長と組織の成長、そして世界への貢献を実現する未来です。
「ブラジルは三井物産としてもとくに注力している国のひとつ。グローバルエナジーセキュリティの観点からも、ブラジルでのビジネスを伸長させていくことが極めて重要です。本部の成長戦略に貢献していきたいと思っています。
またGMAで得られたものが想像以上に大きかったので、いずれMBAにも挑戦するつもりです。
長期的には、会社経営に関わるキャリアパスを想定しています。GMAもMBAもそうですが、リーダーシップをどう取っていくか、どうやって良い会社に仕上げていくかが今の私の関心事。グループ内の事業会社、あるいは本店でも良いですが、現場で学んだことを経営の立場で活かせる環境に将来は身を置いてみたいですね」
※ 記載内容は2023年8月時点のものです
