適用検討から実機試験まで、航空無人機へのAI実装を一気通貫で推進
──現在の部署や役割、業務内容について教えてください。
航空機・飛昇体事業部 航空無人機技術部の中でも、私が所属するミッション・オートノミー設計課は、2025年10月に立ち上がったばかりの新しい組織です。現在は若手を中心に、約17名が在籍しています。
航空無人機とは、パイロットが搭乗しない航空機のことで、主に防衛分野で活用されています。危険な領域にも入り込めることが強みですが、通信が途絶えたり、遠隔操縦が難しくなったりすると、自律判断が必要になるため、ソフトウェア、とくにAIの役割が非常に重要です。
ミッション・オートノミー設計課では、AI技術を無人機にどう適用するかを見極め、学習データの収集やモデルのトレーニング、シミュレーション検証、実機での飛行試験までを一気通貫で担当しています。高度な自律システムを実現することが当課の役割です。
AIは、経験値を積ませることで想定した機能・性能を発揮するため、学習データやシミュレーターをつくり込み、狙った挙動に近づくよう“育てる”ノウハウが必要です。学習後には、想定どおりの判断ができているかを評価し、問題がなければ実機搭載へとつなげていきます。
また、無人機には、アクチュエーターやカメラといった機構・装備品が多数組み込まれています。そのため、AIが出力する指示をどのように受け渡すか、あるいは逆に機体側からの情報をどう入力するかなど、周辺部署とのインターフェース調整がきわめて重要です。
こうしたAI技術の適用検討から学習、評価、そして実機試験、納入までをフルスタックで推進し、チームをリードすることが、主席技師としての私の役割です。
──仕事をする上で大切にしていることはありますか?
最も意識しているのは、コミュニケーションの質です。職場の空気が重いと、どれだけ優秀なメンバーでも本来の力を発揮できません。プレッシャーで引き出すのではなく、仕事を楽しめる雰囲気をつくることが、結果的にアウトプットの質向上につながると感じています。
また、技術者にとって、技術的好奇心が原動力になることが少なくありません。自分自身がワクワクしながら語る姿勢や、「これはおもしろそうだ」と感じてもらえる伝え方を心がけています。
もちろん、プロジェクトには地味で成果が見えづらい仕事もあります。そういうときは、「この作業は将来の布石になる」と、長期的な視点を共有するようにしてきました。
ただ、言葉だけではメンバーの心に響きません。日頃から自分が率先して機械学習の勉強に取り組んだり、コンペティションに挑戦したりして、技術に向き合う態度を行動で示すようにしています。
“人”の魅力が導いたキャリア。無線システム開発で培った経験が技術者としての土台に
──学生時代の研究内容と、就職活動の軸を教えてください。
電気電子工学を専攻し、衛星画像から日射量を予測する太陽光発電システムの研究に取り組みました。社会に貢献したいという想いで選んだテーマでしたが、研究を進める中で、製造コストの高さが実用化の壁になると感じ、キャリアの方向性を見直すことに。就職活動では、ものづくりへの関心から完成品メーカーを中心に見ていました。
ただ、特定の業界や事業内容にこだわりがあったわけではありません。もっとも重視したのは、「その会社で働く人に魅力を感じられるかどうか」でした。
──三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)に興味を抱いたきっかけや、初期配属の部署を志望した理由は?
学生向け採用イベントがきっかけです。登壇されていた社員の方が、トラブルシュートさえも前向きに楽しむようなマインドを持っている方で、「この人と働いてみたい」と強く感じました。ヘリコプタ技術部を志望したのも、その方がヘリコプタ設計を担当されていたからです。
──入社後の仕事内容と、現在の部署に異動した経緯を教えてください。
入社後は約10年間、ヘリコプタの無線システム開発に携わりました。最初に担当したのは救難ヘリです。ヘリコプタでは無線でのコミュニケーションが多いため、多数のアンテナを搭載しています。電波干渉を避けるため、関連部署と調整しつつアンテナの配置を最適化することが主な役割でした。
部隊研修で雪山に降り立ち、救難ヘリによる救助を体験したこともあります。テレビで災害現場に向かう救難ヘリの映像を見ると、アンテナの配置を見ただけで「あの機体は自分が携わったものだ」とわかるので、大きな達成感がありました。
現在の部署への異動を希望したのは、より研究寄りの領域に挑戦したかったからです。哨戒ヘリのネットワーク系システムを担当した際、特許の着想が生まれ、申請したところ承認されたことがありました。アイデアを磨き、形にしていくプロセスにおもしろさを感じ、同じような仕事がしたいと思うようになったのです。
──新しい部署に移って感じたこと、それまでの経験が生きている点を教えてください。
実現したい機能やシステムがあれば、その妥当性を証明するためのエビデンスを集め、実際にプログラムを書いて動かし、デモを見せる。そうした企画から実装・実証までの一連のプロセスは、自分にとてもフィットしていました。
日々の業務では、前部署で学んだ技術課題へのアプローチの仕方が生きていると感じます。周囲を巻き込みながらプロジェクトを進めるスタイルを身につけたことも、大きな強みになっています。
渡米して見えた現在地と進むべき道筋。技術に磨きをかけ、世界水準のAI開発を
──これまでのキャリアの中でとくに印象に残っていることはありますか?
2025年の夏に渡米したことが印象に残っています。AI技術の先進国であるアメリカのシミュレーターを実際に使い、技術水準を自分たちの目で確かめることが目的でした。これまで自分たちが積み上げてきたAI技術と大きなギャップはなく、むしろ優位性を感じる部分も確認できました。
一方で、強化すべき領域があったのも事実です。そこにしっかりキャッチアップしなければ、世界のスピードについていけないことを痛感しました。
その後は、現地からエンジニアを招いてAI開発環境の導入トレーニングを実施し、その環境を活用したAI開発を本格的に進めてきました。無人機に搭載して飛行実証を重ね、12月には彼らの立ち会いのもとで飛行試験を実施しました。その時の様子をまとめた動画が以下です。
https://youtu.be/-RXglbnLlzM?si=xwF1VVajEvhQwe3z
AI開発から飛行試験までの一連のステップをわずか8週間で完了し、現地エンジニアから「これまでで最速」と賞賛をいただき、自分たちが積み上げてきたAI技術に確信が持てました。
今回の渡米には、数名の新入社員も同行しました。高いモチベーションと大きな伸びしろを持つ彼らの成長速度は想像以上で、帰国後は1年目とは思えない密度で活躍してくれています。
──AI技術に率先して取り組んできて、どのような手ごたえを感じていますか?
地道に最新技術をキャッチアップし続けてきた甲斐あって、社内から「AIのことなら片岡へ」と、相談件数が一気に増えました。同じ事業部だけでなく、艦船の事業部などからもアドバイスを求められるようになり、これまで積み上げてきたものが確かな価値になってきたと実感しています。
──現在の仕事のやりがいを教えてください。
最新技術の知見を得ながら、それをリアルなプロダクトに落とし込んでいけることにおもしろさを感じています。シミュレーター上で動かし、検証したソフトウェアをハードウェアに展開し、実際に無人機を飛ばすなど、学ぶだけで終わらず、一連のサイクルを高速で回せるのは、技術者にとって大きな魅力です。
また、AIの開発から搭載・飛行までを数週間単位で実現するなど、プロジェクトのスピード感が非常に速いこともやりがいにつながっています。これは、三菱重工が長年にわたりAI技術の研究や飛行実証を積み重ねてきたからこそ。上層部の先見性に支えられた環境だと強く感じています。
人を大切にする風土で、一人称で仕事に向き合う。積み重ねた知識と経験を次世代へ
──三菱重工で働く魅力をどんなところに感じていますか?
三菱重工はコアバリューのひとつに“自律”を掲げ、一人ひとりが自分の役割を理解し、一人称で仕事に向き合う姿勢を大切にしています。求められているのは、ボトムアップ型の働き方です。大企業ならではの安定した基盤がありながら、スタートアップのように裁量を任せてもらえる点に魅力を感じています。
また、入社前に抱いていた「人を大切にする会社」という印象は、働き始めてからも変わっていません。私が入社した当時は厳しい指導もありましたが、そのおかげで今の自分があると、当時のメンターともよく話しています。
福利厚生も年々アップデートされてきました。私自身、育休を取得しましたが、最近は男性社員の取得率も高まっており、カルチャーが時代に合わせて進化しているのを実感しています。
──今後の目標を教えてください。
新しい技術を学び続けたい気持ちは依然としてありますが、最近は人を育てることにも関心を持つようになりました。プロジェクトには、専門性を突き詰めるフェーズもあれば、現実解に落とし込む判断が必要な場面もあります。そうしたバランス感覚を持ちながら、スペシャリストよりもジェネラリストの視点で、若いメンバーに知識や経験を継承し、組織をより強くしていけたらと考えています。
──就職活動中の学生に向けてメッセージをいただけますか?
自分が心から楽しめる環境でこそ、人は最大限の力を発揮できます。だからこそ、まずは自分の直感を信じて、進路を見極めてほしいと思います。三菱重工が実施しているインターンは、それを確かめる絶好の機会です。積極的に活用してみてください。
また、三菱重工を検討されている方の中には、機械系、電気電子系出身の方も多いことでしょう。学生時代に学んだ知識は強力な武器になる一方で、新卒採用で重視されるのは、専門性よりも「これまで何に取り組み、どう乗り越えてきたか」です。
社会人生活では、環境変化に耐えられる体力やメンタルの強さが求められますが、幅広い経験はその土台になります。人との関わり、海外での体験など、時間に余裕のある今だからこそできることに、どんどん挑戦してください。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです

