社内にもともとあった人事施策のアイデアの種をかたちに
マルホの人事部には、採用・教育研修を担う人材開発グループ、人事制度関係を担う人事企画グループ、労務関係を担う労務管理グループがあります。このうち上杉は、人材開発グループに所属し、グループマネージャーとして9名のメンバーを率いています。
人材開発グループでは以前からさまざまな人事施策を実施してきましたが、上杉がマルホに入社した2021年以降、その動きが加速しています。
「たとえば2022年12月にはエンゲージメントサーベイを、また、2023年7月からは社員が所属部署の業務と並行して他部署の業務も経験できる社内インターン制度(通称・ジョブチャレ)のトライアルを実施。さらに2023年8月からは、社員同士が学び合い、交流するためのプラットフォーム『学むすび』も開設するなど、着々と新たな取り組みが始まっています」
2022年7月から人材開発グループをリードしてきた上杉ですが、施策の種はもともと社内にあったものと強調します。
「エンゲージメントサーベイは前職での導入経験を活かしたものですが、それ以外は、以前から人材開発グループ内に構想があったものや社内有志団体のアイデアをかたちにしたもの、あるいは従来の施策をリニューアルしたものです。入社してからの2年間は、これまで実施に当たってのハードルが高いために二の足を踏んでいたり、現状の業務で手一杯なために後回しになっていたりしたことの実現に努めてきました」
「可能性があるならやってみよう」の精神で実現のためのアプローチを考える
前職の機械部品メーカーでも人事職を務め、大学のキャリアセンターへ足しげく通い、その結果新卒採用のエントリー数を3倍に増やすなど、着実に実績を残した経験を持つ上杉。転職を決意したのは、新しい刺激を求めたからでした。
「これまでとは異なる業界の人事にチャレンジしようと考えたとき、もっともおもしろそうだと感じたのが製薬業界でした。国策や法令などの影響を大きく受ける業界だからこそ、制約がある中で何ができるかを考え、実行するプロセスに興味を持ったからです」
ところが、製薬業界独自のルールや文化の厳格さは想像以上で、入社当初は戸惑いがあったと振り返ります。
「たとえば、前職では採用活動でも自社製品のアピールを当たり前のようにできていましたが、製薬業界ではそれができません。また業界の特性上、『決して間違いが起こってはならない』という厳格なスタンスで皆が業務に臨んでいるため、『とりあえずやってみましょうよ』という態度で人事施策を実行するのは難しく、どのような場面でも冷静かつ論理的な説明が求められます。
とりわけ、初めて実施する人事施策に関しては定量的なメリットを示すのが困難ですし、社内でも上層部に賛同を得るためのハードルはとても高いと感じました。
ただ製薬業界は規制が強いということに起因するのか、当社だけではなく業界全体が同業他社の動向を気にかける傾向があると感じました。そこで、外部環境の変化や他社事例などを示しながら、可能性があるなら、まずはやってみませんかと、提案を行っていきました」
また、グループマネージャーとしてメンバーとの信頼関係を構築するために、上杉はコミュニケーション面での創意工夫も惜しみませんでした。
「コロナ禍での入社となったためオンラインでコミュニケーションする機会が多く、チャットではスタンプや『!』を積極的に使って、温度感のあるやりとりを心がける、といったところからのスタートでした。また、最初に意識して行ったのは、自分の弱みを見せること。『マネージャーだから弱音を吐けない』といった固定観念は捨てて、苦手なことをメンバーに積極的に頼むようにしました。
マネージャーは単なる社内での役割に過ぎません。まずは自分からさらけ出して、互いの強みで弱みを補い合えるチームづくりをめざしました」
施策の導入にとどまらない、本来の目的の実現に向けて
マネージャーとして、上杉にはもうひとつ意識してきたことがあります。それは、メンバーに積極的に仕事を任せ、主体性を引き出すこと。
「最初のころは、社内に送るメールの文面確認を頼まれたり、何かを実施するたびに、『どちらがいいと思いますか?』と相談が寄せられたりしていました。でも私がそれに対応し続ければ、いつまでたってもメンバーは自分で判断できるようになりませんから。
そこで、『あなたならばどっちがいいと思う?Aがいいと思うならそうしてみよう』と伝えるようにしたんです。もちろん、メンバーの判断通りに進むケースばかりではありませんが、彼らがのびのびと意見を伝えられる雰囲気づくりに努めてきました」
こうした取り組みの甲斐もあり、この1年間で確かな変化を実感していると話す上杉。
「一人ひとりが仕事に取り組む姿勢や、メンバー間の関係性が大きく変わりました。また、会議や打ち合わせなどで議論が混とんとしてきたときに、そもそもの目的に立ち返ることのできるメンバーも増えてきたように感じます。
まず自分が周囲に影響を与えられるようにならなければ、会社に良い影響をもたらす存在になることはできないと考えています」
新たな取り組みをいくつも進めてきた上杉ですが、効果測定や見直しといった運用面での課題はいまも感じています。たとえば、マルホで10年間変わることなく実施されてきた研修がありますが、十分な効果測定ができていないために、内容が良いから変える必要がなく続いているのか、本当は変えるべきなのに変えられていないのか、判断が難しいというようなケースも。
「『会社をどんな状態にしたいから、この施策を実施しているのか?』という視点で施策を見直していきたいです。本来は、一つひとつの施策にKPIを置いて効果測定ができればわかりやすいのですが、人事施策は数字に置き換えるのが難しいケースがほとんど。たとえば、『この研修を100人に受けてもらおう』と目的を立てたとしても、強制的に受けてもらうことが正しいとは限りません。
だからこそ、『施策の結果、従業員からこうした言動が多く見られるようになる』といったゴールイメージを事前にみんなで設定して、施策を進めたり見直したりすることが必要だと考えています」
上杉がそう考えるに至った背景にあるのは、入社後に感じた「もったいない」という想いです。
「会社の規模やグループの人数規模からすると、マルホではかなり多くの施策を懸命に実施していて、その熱心な姿勢に入社当初から感心したものでした。
しかしその一方で、実施するので手一杯なために振り返って見直す時間の余裕がなく、ただ継続しているだけのものもあり、これではもったいないと感じたんです。今後は効果測定をしつつ、会社の方向性と結び付けて施策をブラッシュアップしたり、必要性が薄いと判断したものは廃止したりといった改善ができれば、より効果的な施策が実施できるようになると思っています」
体系的に施策の実施を通じて、全社にさらなる好影響を
上杉率いる人材開発グループの新たな取り組みは、全社レベルで好影響を及ぼしてきました。新しく実施した施策の活用も進んでいると言います。
「社内公募制度にも毎回多くの応募がありますし、ジョブチャレのトライアルにもたくさんの方が積極的に応募してくれています。マルホの社内は真摯で仕事熱心な方が多いので、さっそく活用してくれているようです。
また、新しく開始した『学むすび』は、提案段階では勤務時間外に実施する前提で話を進めていたのですが、社長の杉田から『むしろ、これは勤務時間を活用して取り組むべきものでは』との意見をもらうなど、会社全体に前向きな変化が生まれつつあるのを感じています」
確かな手ごたえを感じる中、効果的な施策の導入のためにも上杉がますます力を入れていきたいと考えているのが「なぜマルホにとって、その施策を実施することが必要なのか」ということを、一般的な言葉ではなく、自社の状況に照らしてストーリーで説明することです。
「たとえば『VUCA時代だから』とそれらしいことを言ってしまえば楽ですが、結局抽象的な理解にとどまってしまい、従業員の皆さんが腹落ちして納得できる状態にはなかなかならないと思います。そのため、自社の置かれている環境も踏まえて“マルホらしい”言葉で伝える必要があると考えています」
さらに上杉がめざしているのが、ミッションやバリュー、事業戦略と人事制度や人事施策を連動させることです。
「それぞれの施策の目的を明確にした上で、『こうした状態を実現するために、この施策とこの施策を実施している』という具合に、施策どうしのつながりを体系的に説明できる状態が理想だと思っています」
また、こうした取り組みと並行して、人事として先頭に立ってチャレンジする姿勢を示すことも意識していきたいと意欲を見せます。
「マルホのバリューのひとつである『超えていこう』には、『会社の外に出て行こう』というメッセージも込められています。こうした風土を社内に醸成するためにも、まずは自分が率先して実践しなければなりません。今後は社外の方とのネットワークを構築したり、余裕があれば副業を行ったりもしながら、バリューを体現する姿勢を示していきたいです」
中途入社者ならではの目線で冷静に現状を分析し、周囲を巻き込みながら社内の改善に力を注いできた上杉。そのまなざしと姿勢で、これからもマルホに新風を吹かせていきます。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです
