医療機器メーカー志望から日用品の道へ。健康に貢献するものづくりの考え方
大学では機械工学を専攻し、生体計測や福祉工学を研究するゼミに所属していました。具体的には、電動義手やロボットハンドの性能向上を目的として、物体把持時における爪のひずみに関する研究に取り組んでいました。人の動きを機械で再現し、医療分野で役立つ製品を作ることに興味を持っていたためです。
就職活動では、学生時代の研究テーマとも関連して、人々の健康に役立つものづくりに携わりたいという思いから、医療機器メーカーを中心に企業を探していました。そんな中、大学で開催されたOBによる企業説明会で花王を知り、化学系メーカーである一方、機械・電気系の学部出身者が活躍する場が多いという点に興味を持ちました。
それまで花王については、洗剤やシャンプーなどの日用品で国内シェアが高く、サニタリー用品や化粧品など幅広い分野で製品を展開している企業というイメージを持っていました。面接を通じて、清潔で健やかな毎日を提供するための製品開発や技術開発に力を入れている点、そしてさまざまな分野を専攻した人材が相互に協業できる仕組みがあることを知りました。とくに印象的だったのは、面接で研究員の方が、結果だけでなく「なぜそう考えたのか」「客観的に見るとどうか」といったプロセスを重視する質問をされたことです。
より多くの人々の健康に貢献できる可能性と、研究開発に対する真摯な姿勢に強く惹かれ、花王への入社を決意しました。
コロナ禍に始まった会社生活。デジタル技術を用いた新規技術の開発に着手
入社後の研修は、新型コロナウイルスの影響により、従来とは異なる形で進められました。全社での集合研修やビジネスマナー研修は実施されず、リモートでの研修が中心となりました。部署内での基本的な業務研修や特許関連の研修を受けましたが、オンラインでの議論では、初対面のメンバーとのコミュニケーションに苦労することもありました。相手の考えを十分に理解することが難しく、意思疎通の難しさを実感しました。
配属された部署では、入社時から現在に至るまで一貫して同じテーマに取り組んでいます。具体的には、生産設備のデータを収集し、トラブル改善や生産性向上につながる技術開発を担当しています。温度計、圧力計、重量計などのセンサーの計測値や、品質検査機の検査結果などのデータを収集・解析することで、これまで見えていなかったトラブル時の特徴や傾向を把握することができます。
一方で、先に述べたセンサーや品質検査機では直接測ることができない品質情報も多く存在します。これらの品質は抜き取りによる検査を行う必要があり、全数での検査は不可能です。そこで、そのような品質をAIなどのデジタル技術を用いて間接的に推定する技術の開発を行っています。この技術には品質担保の側面だけでなく、制御に応用することでこれまで造れなかったものが造れるようになる可能性を秘めており、入社時から継続して技術開発を進めています。
入社後に感じた大きな発見は、予想以上に多くの部署のメンバーと接点があることでした。商品開発から生産現場まで、幅広い立場の方々と協力して業務を進める必要があります。それぞれの部署で異なる意見や要望があり、時には齟齬が生じることもあります。そのため、積極的に意見交換を行い、よりベストな選択をめざし議論を重ねることの重要性を学びました。
「造り方」の研究において、現場を知ることの大切さを実感
現在は加工・プロセス開発研究所という「造り方」の研究を行う部署に所属しています。世界に誇れるような生産技術を構築・実装し、豊かな共生世界の実現に貢献することをめざして、日々研究開発に取り組んでいます。
主な業務は、シート加工製品に対する制御技術やシステム開発です。最も印象に残っている成功体験は、「めぐりズム」アイマスクの生産設備に関する改善プロジェクトです。設備データの収集環境を構築し、得られたデータからトラブル発生時の傾向を解析しました。その過程で、生産の担当部署との密な連携も欠かせませんでした。データ分析から一部設備の汚染が大きな影響を与えていることが判明し、担当者と共有し対応を講じることで、 清掃頻度の見直しなどの具体的な対策を実施することができました。
もちろん、苦労や失敗も経験しています。シート加工設備は他の業界に比べて使用しているセンサーの数も多く、加工スピードも非常に速いことが特徴です。当初はそのような高速な加工設備に対し、必要なデータを連続的に集めることができず苦労しました。先輩社員に意見をもらいながら、試行錯誤して取り組んだことを覚えています。
また、制御技術やシステムの開発において最も難しいと感じるのは、製品や設備に関して深く理解し、現場を知ることが必要な点です。開発した技術が製品に悪影響を与えないか、費用対効果は十分か、現場のオペレーターの負担は増えないかなど、多角的な視点での検討が欠かせません。そのため、関連部署や知見の深いメンバーとのコミュニケーションを大切にし、製品についての調査も怠らないように心がけています。
学生時代と比べ、とくに成長を実感するのは、物事を多角的に見る意識が身に付いたことです。また、データ分析の考え方やAI、IoTに関する最新技術の動向、機械学習による解析手法など、設備制御やデジタル技術に関する知見も着実に増えてきました。
多様な製品を扱う花王だからこそできる、次世代のものづくりをめざして
現在、私がとくに注力しているのは、シート加工設備における新しい制御システムの実装です。これまでの生産工程では、人の経験則に頼る部分や、原材料のばらつき、外部からの影響を受けやすい部分がありました。そこで、デジタル技術を活用した自律的な制御システムの導入をめざしています。
このような取り組みを、将来的には私の担当しているシート加工製品以外の分野にも広げていきたいと考えています。花王には多種多様な製品があり、それぞれの分野で新しい可能性が眠っています。例えば、花王のファインファイバー技術は、機械工学と化学・物質工学などのメンバーが協力し合うことで開発された成果の一つです。
花王の大きな魅力は、このように異なる分野のメンバーと気軽にコミュニケーションを取れる社風があることです。新しい発想が生まれやすい環境の中で、さまざまな知見を持つメンバーが交流、協業することで、これまでにない製品や技術が生まれると考えています。
また、社員個人と対話しながら意見を聞く文化が根付いており、フレックスタイム制や有給休暇の取得推進など、社員が働きやすい環境が整っています。その他、さまざまな部活動やサークル活動があり、社員の交流の場になっています。私は休日に社内外の人と趣味であるバスケットボールを楽しんでおり、普段の仕事では関連が少ないメンバーとも関係が築きやすいのは魅力的です。
私たちと一緒に働く仲間には、「どうすればより良くなるか」という探究心を持ち、行動に移すことができる人材を求めています。また、チームワークを大切にし、積極的にコミュニケーションを取れる方であれば、きっと活躍できるはずです。多くの人に使っていただける製品づくりに情熱を注ぎ、自身のアイデアを存分に発揮したい方。そんな方々と共に、より良い未来のものづくりに挑戦していきたいと考えています。

