大手銀行から「もう一度挑戦したい」とFC今治へ
FC今治の運営会社である「今治.夢スポーツ」で経営企画室長として働く飛田は、新卒で三井住友銀行に入社し、16年間銀行員として勤めた経験を持ちます。
「転職のきっかけはコロナ禍でした。自分の人生を考えた時にもう一度挑戦したいと思って2021年に入社をしました」
大学時代に愛媛に遊びに行き良い場所と感じていたことと、FC今治の会長である岡田武史氏がサッカーも地域も盛り上げる活動を見ていたことが大きく影響したと話します。
「入社直後から関わったのは、以前から進んでいた新たなホームスタジアムとなる『アシックス里山スタジアム』の建設プロジェクトでした。『2030年までにJ1で優勝争いするチームになる』という目標を掲げ、実現のためにはJ2、J1で定められた要件をクリアするスタジアムが必須だったからです」
資金調達もこれからというタイミングで、前職のキャリアを生かしながら、1つずつ問題に取り組んでいきました。
「スタジアム建設プロジェクトの大きなポイントの1つが、今回、シャレン!で賞を受賞した、社会福祉法人来島会と一緒に複合福祉施設『コミュニティビレッジきとなる』を建てる計画でした」
物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創り
スタジアム内に複合福祉施設をつくろうと計画した背景には、今治.夢スポーツの企業理念があります。2014年に元サッカー日本代表である岡田 武史が同社の代表になり、「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」と理念を定め、新たなスタートを切りました。
「社員全員が企業理念を空で言えるほどに社内やチームに浸透しています。サッカーを核としながらも地域創生や教育事業を行っています」
また、アシックス里山スタジアムは“民営”のスタジアムであり、Jリーグのホーム試合は年間20日間程度のため、残りの約345日をどう運営していくか考える必要があります。
「その時に企業理念の“心の豊かさ”を体現する場所にしようと考えました。365日の賑わい作りを進める、そこには老若男女も障がいのある人もない人も関係なく、誰もが自分の居場所があると思ってもらえるようなインクルーシブな場所にしたい」
その想いが起点となり、以前からFC今治のパートナーだった来島会と計画を進めることが決まりました。
閉ざされた福祉施設のイメージから、境界をなくしていきたい
計画がスタートする前から来島会とFC今治の交流は始まっており、ピッチでの散歩会やチームカラーの花壇づくりなどが行われ、足許の3年間では約70回、延べ1,050名が参加したと言います。
昨年、スタジアムは無事に竣工しました。「コミュニティビレッジきとなる」も開かれ、「就労移行支援」「自立訓練(生活訓練)」「放課後等デイサービス」の3つの福祉活動を行っています。施設の隣には、FC今治が運営する里山サロンというカフェがあり、テラス席の水やりやカップへのスタンプなど、連携しながら就労支援を実施しています。
「もともと、来島会さんとは食事に行ったりする距離の近い関係でした。その中で『福祉施設はどうしても閉ざされたイメージがあるから、その境界を溶かすことをやりたい』と話が挙がっていました。それを少しずつ実現できていると感じています」
岡田会長のリーダーシップと、9年間積み上げてきた信頼関係
総工費約40億円というスタジアムが無事に完成し、シャレン!で受賞する取り組みを行うことができたのも「強烈なリーダーシップをもった岡田会長という存在と、FC今治ファミリーと築いた9年間があったからこそ実現した」と飛田は話します。
「岡田会長がオーナーとなり、リスタートしたFC今治は四国リーグから始まりました。リスタート直後はまだまだ地元の応援も限られていた中で、岡田会長を中心に地域に根差した活動や教育事業などを進めていった結果、徐々に地元の方々や地元企業などのさまざまなステークホルダーのサポートを得ることができました。9年間積み上げてきた信頼関係がベースにあってのものだと思っています」
今後は、さまざまな社会福祉法人とも連携して輪を広げていく活動をしていくと同時に、新たなコミュニティづくりの挑戦を目標に掲げます。
「共に助け合うコミュニティをつくりたいです。顔の見える関係性で、困っている人がいたら助け合えるような場所です。5月にアシックスさんがスタジアムのネーミングライツを取得したので、この取り組みを一緒にやっていこうと話しています」
里山ファームやランニング、芸術などさまざまな分野で取り組んでいくと言います。これからも“心の豊かさを大切にする社会創り”が広がっていくことでしょう。
(文章:廣田喜昭)
※ 記載内容は2024年5月時点のものです
