「社会貢献」から「社会連携」へ、きっかけはある選手の呼びかけ
現在、アルビレックス新潟のマーケティング部社会連携担当として日々業務に取り組んでいる村山。約20年間、同クラブに勤務し、チーム編成や選手の契約管理、マーケティング、広報などさまざまな業務を担ってきました。そんな村山が社会連携に関わることになったのは2019年ごろ。広報職と兼務しながらクラブのホームタウンに関する業務と社会連携活動に関わることになり、自治体などと協力して、さまざまな取り組みを行ってきました。
「2018年からJリーグで『シャレン!』が始まりましたが、当時はホームタウンと社会連携との違いが理解できていませんでした」
村山はこう話します。その後、広報職を離れ、社会連携の専任になると、社会連携とは何かを少しずつ理解していきました。
アルビレックス新潟でディフェンダーとしてプレーしていた田上 大地選手(2020~2023年:アルビレックス新潟、2024年~:ファジアーノ岡山)の存在も、理解を深めるきっかけの一つでした。“ニイガタガミカタ”プロジェクトは、2022年1月の新チーム始動日、村山のもとに田上選手が自作した企画書を持参したことから始まりました。その時、村山は「非常に驚いた」と言います。
田上 大地選手と伴走し、社会連携活動を実現
プロジェクトを立ち上げるにあたり、村山は田上選手と共に、活動内容を検討するためのアンケートを実施。集まった500件以上の回答すべてに目を通し、一部の回答者にオンラインでヒアリングを行い、実態の調査と情報収集に努めました。その上で再度慎重に検討し、活動内容の軸を「フードドライブ(家庭で消費しきれない食品を持ち寄り、地域の福祉施設などに寄付する活動)」「児童養護施設訪問」「ホームゲームへの招待」に決定。
活動を始めると少しずつ地域での賛同者が増え、フードドライブではパートナー企業の生活協同組合コープデリにいがた、ホームタウン田上町とのリレーションが実現。さらに、同じくパートナー企業である株式会社ドコモCS新潟支店、有限会社寺嶋旗幕染工場の協力を得て、ゲートフラッグ作りをはじめとするアクティビティ付きの親子観戦バスツアーを実施するなど、活動の幅が広がっていきました。児童養護施設の訪問では、田上選手の登場に子どもたちは大はしゃぎ。一緒に遊びながら交流を深めていったと言います。
選手の呼びかけで活動の幅が大きく広がった
2022年、新型ウイルス感染症の大流行による行動制限があった期間も、田上選手はホームゲームに招待した子どもたちにメッセージ入りのサイン色紙を届けるなど、できることを続けていました。
翌2023年には「ひとり親家庭の子どもたちに自分で育てた野菜を収穫して食べる体験をしてほしい」という想いから、田上選手は農業にチャレンジ。採れた野菜を「道の駅たがみ」で販売すると地域の方やファン・サポーターの皆様から好評を博し、完売。売り上げは新潟県フードバンク連絡協議会、パートナー企業である株式会社セブン-イレブン・ジャパン、新潟県が立ち上げた「あしながサンタX’masプロジェクト2023」に全額寄付しました。
プロジェクトの立ち上げに当たって、村山は「移籍などで田上選手が新潟を離れる日が来ても、このプロジェクトは継続させたい」と考えていました。
「この活動をできるだけ継続し、田上選手の想いをつないでいきたいと考え、プロジェクト名に“ニイガタガミカタ”と付けました。子どもたちに寄り添いたいという田上選手の名字と、文字通り『新潟が味方』でありたいという想いを込めたんです。
このプロジェクトは、田上選手の想いと熱意を、できるだけ反映させながら進めてきました。選手の自主性が新しい取り組みを生み、自ら発信し、地域の人の共感を得て、さらに発展していく様子を見ていて私自身も楽しかったです。SNSでもファンやサポーターの皆様からも、ポジティブな声が届きました」
プロジェクトの本質を見失わず、想いをつなぐ活動を継続したい
地域の方から多くの共感を集めた“ニイガタガミカタ”プロジェクトは、「2024Jリーグシャレン!アウォーズ」でファン・サポーター選考賞を受賞。
「何事においても継続が一番難しい。でも、継続が目的になってしまうとプロジェクト本来の意味を見失ってしまいます。田上選手の想いをつなぎ、活動の主旨を忘れないように取り組んでいきたいです」
“ニイガタガミカタ”の立ち上げから運営までを振り返る村山。
最後に、「シャレン!」活動のポイントについて教えてくれました。
「シャレン!の活動にはそれぞれの地域に合ったさまざまな方法があるはず。私たちの場合は、選手自身が新潟の地域性を理解し、地域への想いをピッチ以外で表現してくれた点が共感を集めたのだと思います」
クラブと選手が一丸となった取り組みは、Jリーグと各地域のより良い未来につながっていくのではないでしょうか。
(文章:高橋 奈巳)
※ 記載内容は2024年5月時点のものです

