人事部は「経営と現場の架け橋」。ESとCSの好循環で高次元のウェルビーイングを実現
銀行を取り巻く環境にはさまざまな変化があり、それに応じて経営戦略も常に変化していきます。人事部を率いる身である私の仕事は、「経営戦略=経営の意思」と「現場」をつなぐ架け橋になることです。具体的には北海道銀行の親会社「ほくほくフィナンシャルグループ」で2023年に制定した「人的資本経営方針」、また2025年度にスタートした第6次中期経営計画「NEXT STAGE」の「多様な人材が活躍し活力あふれる企業文化の定着」をテーマにした、新たな時代の人事施策検討を進めることです。
行内での人事部の重要な役割は、経営戦略を具体的施策に落とし込み、職員一人ひとりに浸透させることです。その際、大切にしているのは、職員が安心して働ける喜び(ES)と、お客さまから求められる喜び(CS)の両立です。職員が経営戦略を理解し、各自が努力・切磋琢磨しスキルを上げ、お客さまの課題解決を実現、頼りにされる喜びを味わう。こういった好循環を生み出すことでやりがいと心理的安全性を向上させ、ひいては組織全体のウェルビーイングを高めるため、処遇の改善や各種施策を実施しています。
現在、人事部には25名ほどのメンバーが在籍。かつて、30代の頃に自分が人事部に在籍した際よりもメンバーの数は増えています。これは、職員一人ひとりに寄り添う必要性がより高まっているためです。たとえば、年1回、道内外の全店舗を人事部員が訪問(臨店)し、所属する全職員との面談を実施。所属職員の意見やキャリア希望をヒアリングして、個々のキャリア形成や銀行全体の施策に反映させることは人事部の重要なミッションです。また直接の対話で人事部と現場の距離感を縮め、より親しみを持ち意見を聞かせてもらいたいとの想いもあります。さらにこうした臨店時には、本部施策の浸透を目的に人事部主催の勉強会を実施することも。昨年度は「1on1ミーティング」をテーマに、その目的や進め方についての勉強会を開催しました。
また、社内イントラ上では「人事部通信」を毎週若手人事部員が持ち回りで担当し発行。これは、より気軽に人事部業務や施策を知ってもらうことが目的で、若手人事部員の発案で始まったものなんです。過去にとらわれない柔軟な発想での発信が、好評を得ています。
その結果、北海道銀行は2024年11月の週刊東洋経済「働きがいがある銀行ランキング」で国内金融機関第1位、そして利用者が選ぶアメリカForbes誌「World's Best Banks 2025」で全世界385行・国内金融機関30行に選ばれる快挙を達成しました。これまでの各種施策の方向性の正しさを確認できた次第です。
「風通しの良い」伝統の風土はそのままに。全体最適を軸に納得感のある人事を
北海道銀行の特徴として「風通しの良い社風」が挙げられます。現場の支店長たちも人事部を信頼し、人事部職員に対し気軽に相談をしてくれます。また、役員と各職員の距離が近いことも特徴で、当行を訪れるお客さまやキャリア採用で入行した職員も「この風通しの良さは道銀の誇れる強みだ」と口をそろえて話してくれます。このような環境の中で、職場での心理的安全性をいかにして高めていくかということを、常に意識しています。
人事部における重要な判断基準は「全体最適」。何より働く職員一人ひとりの納得感が大切です。一部局所的な対応にとどまらず、公平性・客観性を重視した人的資本の配置、施策展開の徹底をすること、これに尽きます。
人事部の仕事の本質は「いかに強い組織を作るか」にあります。なぜこの施策を実施するのか、その根拠や考え方をしっかりと現場に受け止めてもらう必要があり、そのため常に職員の声を大切にしていく姿勢が重要なのです。
また、新しい取り組みを生み出しながら、北海道銀行全体が、ダイバーシティへの取り組みはもちろん、DXやサステナビリティへの対応など、時代に合わせて成長していく必要もあります。未来予測が難しい時代ではありますが、進取創造の精神で取り組んでいます。
このように全体最適を意識しながら、職員一人ひとりに寄り添い、時代変化に即した新たな施策を打ち出し続けることこそが、人事部長である私の責務だとあらためて認識しているところです。
自ら学び、自ら成長する──“自学の風”が育てる北海道銀行で働く者の未来
私が北海道銀行に入行したのは1993年のこと。当時複数の金融機関を受験しましたが、北海道銀行に入行したのは「人事部職員の気さくな雰囲気」が決め手でした。金融機関の仕事自体は堅苦しいだろうということは学生時代からあらかじめ覚悟していたのですが、当時の人事部職員の話しやすい雰囲気に触れ、「この雰囲気の会社なら自分もうまくやっていけるかもしれない」と感じられたことを、今でも鮮明に覚えています。そして入行から現在に至るまで、その印象はまったく変わることがありません。恐らく、今の学生の方々にとっても、想像以上に風通しの良い職場であるはずです。
総合職として入行後は、札幌市内支店に配属。ベテランの先輩テラーに交じり窓口業務を経験しました。「銀行は1円合わないと帰宅できない」とよく言われますが、私も新人時代に自分のミスでそのような状況に直面することもありました。そんな中でもとくに印象的だったのは接客での経験。当時、新人の私にできることは「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の元気な挨拶くらいでしたが、その姿勢は地域の方々の記憶に残っていたようで、数年後に渉外係として外回りに出た際「あなた、窓口で元気に挨拶していた子だよね」と声をかけていただいたのです。この経験から、北海道銀行ならではといえる地域密着の姿勢の重要性、そして自分の一つひとつの小さな活動が次のアクションにつながっていくことを実感しました。
その後、釧路支店勤務を経て、29歳から37歳までの8年間は人事部で勤務しましたが、当時の経験が私の基盤となっています。ちょうど、道内最大手行の経営破綻など、金融機関を取り巻く経営環境が本当に厳しい時代でしたが、道民の皆さんからは「道銀さん頑張って」と熱い応援を多くいただきました。生き残るための経営再建策として、経営健全化計画の策定と履行、エリア統括店制度導入による店舗機能の集約化、店舗内店舗(ブランチインブランチ)開始などの店舗機能集約化を断行。金融機関としては先駆的な取り組みを次から次へと行い、若輩者の私も人事部代表として施策立案に従事しました。
人事部時代、とくに印象深いのは職員組合との交渉です。経営改善策を矢継ぎ早に打つ中、職員のモチベーション維持が大きな課題となっていました。組合の委員長とは「よりよい銀行を作ろう」と朝まで激論を交わすこともありました。長期的視点で合理化の必要性を説明しながら、組織全体への伝え方を真剣に考え抜く日々。30代前半の担当者でしたが、経営との重要会議にも多く参加し、説明や発言機会も与えられました。この経験は何事にも代えがたく、そして、北海道銀行の風通しの良さを実感する経験でもありました。
また新しい取り組みにも積極的に挑戦させてもらいました。若手の人材育成では「融資 虎の穴研修会」という独自研修プログラムを立ち上げたことが印象に残っています。座学研修に加え、受講者が本部に回付した実際の融資稟議書を通じて、審査担当者が直接若手を指導する、というとても実践的な内容で、当時としては画期的。金融業界全国紙も取材に来たほどです。さらに「ステップアップセミナー」という業務時間終了後の自己啓発セミナーも立ち上げ、本州の地銀他行からも「参考にしたい」と注目を集めました。北海道銀行には伝統的に「他行のやっていないことを率先してやる」という開拓精神が根付いています。カードローンの「ラピッド」や「道民のATM」の商品開発もそのあらわれ。若い頃から新しい仕組みづくりに携わった経験は、現在の人事部長としての考え方にも大きく影響しています。
現在の人事部長になる前に、2度の支店長経験もしていますが、とくに北広島支店長時代には、深い思い出があります。
支店長の武器は「情報量」に尽きます。とくに行政や地域経済界との連携は欠かせません。この街が何を考え、何をめざし、何を欲しているのか。銀行の中で黙って座っていては何もわかりません。テーマを持ち、ひたすら訪問、情報交換を通じ、肌感覚でその街の温度を感じられるようになる必要があります。時は石破大臣のもと「地方創生」が叫ばれていた頃。北広島市も日本ハム・ボールパーク誘致を通じ「究極の地方創生を実現する」との熱気に包まれた時で、当行も微力ながら企業誘致や情報提供などを通じ、地方創生のお手伝いをさせていただきました。
一方、支店の職員には「市内の金融機関で同じ係の担当者には負けない」ことをスローガンとし、私も自らに「他行の支店長には情報量で負けない」ことを課しました。北海道銀行の設立趣旨でもある「地域共栄」を職員に体感し、地銀職員としてのやりがいを得てもらうような活動も行いました。その結果、お取引先数も増加、また、休日の街のイベントには、職員が家族連れで自主的に参加するようになり、行政やお取引先から、当行の姿勢に共感するとのお声をいただくことができました。
当時の行政幹部やお取引先の方々とは、今でも親交が続いています。本当にありがたいことですよね。
“どさんこバンク”の志を胸に。「北海道が好き」という才能を活かし育てる使命を担う
北海道銀行は、階層別を軸に充実した教育体系を用意していることが強みです。
入行時に「総合職」「特定職」からコースを選択でき、総合職は法人業務・個人業務のすベてを経験します。
今年度の育成方針としては、入行後3年間を基礎教育期間、5年間を総合教育期間と位置付け、この期間中は上司との1on1ミーティングや人事部面談を通じて個人の希望や適性を把握、幅広い業務経験を通じて自身の得意分野を見出せる体系を構築しました。
また同時に、北海道銀行では創業当時から「自学の風(じがくのふう)」という考え方があります。自分で積極的に学び、成長していくという姿勢を表現したもので、新入行員の入行式や研修会では必ず伝えている、大切にしている理念です。
銀行は「人が商品」なので、教育体系も毎年見直しを行い整備しています。人事部としては、職員が自発的に学び成長できる環境、そして新たなことにどんどん挑戦できる環境を、惜しむことなく提供していきたいと考えています。
最近では「お試しインターンシップ」制度を新たに導入。これはたとえば人事部での3日間業務体験など、支店で働く職員が各本部の実際の業務を出張研修形式で気軽に経験できるものです。また、新たな業務への挑戦機会提供のため「Theジョブチェン!」という制度も新設、「座学での業務知識習得、実際の法人営業部での外回り体験、キャリアチェンジ後のサポート研修」など、段階的に手厚いサポート体制を整えることで、個人渉外係から法人渉外係などへのキャリアチェンジに挑戦することも積極的に支援しています。
私は北海道銀行で働く上で必要な資質として、3つの基本的な要素があると考えています。
1つめは「誠実」な人間性。これは成長やお客さまとの関係性構築に影響する基本的な資質です。
2つめは組織に対するコミットメントで、自分の役割を具現化できる実行力。
3つめは自律的であること。与えられるだけではなく自分で考えて行動できることです。
そして、何より重要なことは「北海道が大好きで貢献したい」という熱い想いです。
近年はDX・SX(サスティナビリティ・トランスフォーメーション)、コンサルやストラクチャードファイナンス、弁護士など幅広い分野で、専門性の高いキャリア採用を積極的に行っています。ここで興味深いのは、旅行での来道経験、または温暖化による本州の厳しい気候変動を避け、よりよい住環境を求め、北海道に縁もゆかりもない方々からの応募が増えていることです。実際に入行後は、北海道の自然環境や子育て環境に満足される方が多く、ワークライフバランスの面でも北海道で働くことの魅力が高まっています。実は私も東京生まれ埼玉育ちの道外出身者、親の仕事の都合で引っ越しを経験し、高校の途中から編入しましたが北海道が大好きになりそのまま就職した人間です。心から北海道が大好きで、気持ちはすっかり「どさんこ」です。
北海道銀行は1951年の創業以来「地域密着」「地域共栄」を経営理念に掲げ、道民の皆さまと共に成長してきました。
2003年には「どさんこバンク」を宣言し、地域に根差した金融機関としての姿勢を明確にしてきました。これからも時代変化に対応しつつ、北海道の発展に貢献できる人材の育成に人事部として注力していきたいと考えています。
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
