建設テックにスマートビル、都市インフラDX。統括で意識するのは3事業の「つながり」
私は建設テックやスマートビル、都市インフラDXといった都市空間情報事業を取りまとめ、企画・立案や各プロジェクトの状況確認、是正などを行っています。建設テックでは、労働者不足への対応や働き方改革、安全・安心な労働環境づくりをめざし、お客さまと協業しながらソリューションを展開しています。
中でも当社の象徴的なサービスは、鉄筋検測です。配置される鉄筋について、これまでは何人かの立ち会いのもと、メジャーを使って鉄筋の間隔や本数などを計測し、事務所に帰って計測結果の調書を作成していました。
当社のソリューションは、市販のタブレットとデプスカメラを使って自動的にそれらを計測し、検査結果の調書もその場で自動的に生成できます。計測作業にかかる時間を短縮できることに加え、遠隔での立ち会いも可能になるため、立会検査の負担軽減にもつながります。これは現場の省力・省人化や品質管理の高度化に向け、国土交通省が推進する取り組みでもあります。
スマートビル事業については、フリーアドレス化が進む昨今、誰がどこにいるのかの位置把握や災害時の逃げ遅れの確認など、セキュリティーや防災の観点でニーズが高まっています。当社は2023年、大手ゼネコンとともに合弁会社を設立し、スマートビルの運営支援事業も開始。Wi-Fi利用や会議室予約、空気清浄のほか、電気料金の可視化など、テナントに入ると必要になるものを提供しています。
都市インフラのDXも進めており、インフラの老朽化や保守人員不足に対応すべく、設備保全業務の改革をめざしています。電力会社とともに協創した一例が、作業員が行う巡視点検業務の効率化の支援です。「MMS (モービルマッピングシステム)」を使って取得した3D点群データから、電力柱、通信柱、架線などの点検対象の設備を自動抽出し、設備の位置や高さ、周辺の障害物の状況を一度に確認できるようになります。
例えば、電線に木が覆いかぶさっていないかの確認などが該当します。このようなソリューションの提供は、広域の巡視点検を行う電力会社から「見落としを防ぎ、省人化を進めたい」という意向に応じたものです。
これらの3事業は個別に見えるかもしれませんが、 建設テックは都市、建物造りに関わる人に価値を創造し、都市インフラは都市、建物を持続可能にするためにつなぎ、スマートビルは都市、建物を利用する人を豊かにする──と連なっているのです。私は一つひとつの取り組みが点にならないよう、どのようなコンセプトで進めるかの「指針」を常に意識しています。決めた方向性を実現するために、必要なソリューションを検討したり、議論のかじ取りをしたりしています。まだ市場が確立されていない事業なので、手探りで一歩一歩、階段を上っている最中です。
「タブレットのボタンを押すのも手間」と現場に拒否感。実情に即した提案を肝に銘じる
建設業の「2024年問題」に端を発する建設テック。我々にとっては、業界向けのソリューションを持っていない段階からの挑戦でした。まずは、お客さまとともに業務効率化などの課題を検討。IoTや画像処理、GIS(地理情報システム)など、もともと当社が持っていた強みを生かしつつ、知恵をお借りしながら「協創」を進め、ソリューション化に至ったのです。そして業界全体の課題も少しずつ見えてきたので、きちんと事業という枠組みでやっていこうという流れになりました。
事業の立ち上げ時には苦労もつきものです。当初は、現場の知識や業界の慣習などを十分に理解できず、「IT目線」での提案がお客さまの心に響かないこともありました。
衝撃を受けたのは、タブレットのボタンをいくつか押すだけであっても「手間が増える」と拒否感を示されたことです。たしかに、現場の作業者には手袋をはめていたり、指が太かったりして、ボタンを押しづらい人もいます。そのため負担のない手順を重視し、まずは拒否感を持たれないように心がけました。現場の方々やパートナー企業との交流を通じてドメインナレッジを蓄積していく中で、徐々に現場に即したものに近づけていった形です。
DXにおける最初の壁を乗り越えるためには、まずは実際に使って便利さを実感し、わくわくしていただくことが一番です。我々としても、DXでどんな未来が待っているのかというビジョン、メリットをきちんと伝え、「やってみたい」と関心を持っていただけるようにしなければならないと感じました。
一方で心の支えになっている、印象深い出来事があります。あるゼネコンから「社内のDXを進めたい」との依頼を受けて進める中、その会社の社長がメディアでのインタビューで当社のことを「コンサルテーションにとどまらず、導入後の支援も手厚いので安心して任せられる」とおっしゃってくださったのです。
DXで最も課題になっているのは「定着化」。我々もそれを意識してフォローを続けてきたので、そのような評価を大変うれしく思いました。やはり、お客さまの気持ちにきちんと寄り添って推進すれば良いプロジェクトになるのだと実感しましたし、これからも自信を持って歩んでいけると確信しました。
社内に根づく「挑戦の風土」。アイデアソンやスタートアップ創出制度で社員たちが奮闘
建設テック事業を推し進めてきた当社には、他社にない特長があると思っています。建設現場の業務効率化だけでなく、現場や基幹システムのデータなどを収集、統合、分析することで、データドリブン経営(データをもとにした意思決定で成果を上げる経営手法)を支援できる点です。
建設業は、我々のIT業界と類似した道をたどっているように感じています。IT業界もかつては工程の管理を手書きで行い、なかなかデータを収集できずに苦労しましたが、今ではデータ統合ができる基盤を備え、データドリブンな世界にたどり着きました。ソフトウェアをつくるのか建物を築くのかという違いはあれど、建設業も同じような世界への到達をめざしており、その道のりを我々が支えていきたいと考えています。
また、プロジェクトを推進するためのPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)、品質保証や調達といった支援組織が充実していることや、海外のトレンド商材などを発掘する組織をシリコンバレーに持っていることも当社の強みです。
この組織は建設に特化したソリューションがないかをリサーチし、日本でも使えそうなら連携して展開します。海外で著名な製品・サービスであっても、日本においては、ITに対するお客さまのニーズが海外とは異なるなどの背景から、必ずしもニーズに適用できるとは限らないため、その都度見極めながら検討を進めているところです。
他にはないソリューションの提供をめざす当社には、新規事業の立ち上げなどに挑戦する風土が根づいています。持続可能な社会や経営基盤強化へ貢献する企業活動、社員が自ら新規事業を考える「アイデアソン」の取り組みや、SX視点で社会課題解決に挑み、シリコンバレーで起業をめざす「スタートアップ創出制度」といった機会が用意されています。
このような取り組みの中で、事業化まで到達できるケースは多くありませんが、それでも新事業のプロセスを習得できますし、そもそも誰にでもチャンスがあるということを肌で感じられます。社員の意識改革が進む中、我々にアドバイスを求めてくる社員もいます。一緒になっていいものを生み出そうとする彼ら、彼女らの姿を見た時にはとても頼もしく感じますし、将来がいっそう楽しみになりますね。
この仕事は、難局を迎えても変化をチャンスと捉え、常識にとらわれず自由な発想で進められる人が向いているのではないでしょうか。建設テックでもそうですが、知らない業界に事業展開する際に「無理」と諦めていては前進できません。ビジネスや市場であらゆるものがめまぐるしく変化し、将来の予測が難しい「VUCAの時代」といわれる中、「こういうやり方ならできるのでは」と積極的に取り組むことが肝要です。課題から逃げず、ソリューションで解決するのが我々の使命だと思っています。
社員やお客さま、パートナー企業との「一体感」の醸成が、プロジェクト成功の鍵
仕事を進める上で、大事にしている価値観があります。それはビジョンやミッションについて、社員だけでなくお客さまやパートナー企業を含めた全員で共有、理解し、一体感を持ってプロジェクトを推進することです。我々も単なる管理職として監視するだけでなく、先頭を立って進むべき道筋を示しながら、「一緒にやっていこうよ」と部下を鼓舞するように心がけています。
プロジェクトの進捗を確認する会議では、我々が確認や指摘をして終わるのではなく、「こういうふうにやったらいいんじゃないか。お客さまと話す機会があるのなら一緒に行くから」などと話しながら一緒になって走りますし、良い取り組みをした部下を褒めることも忘れません。そのような日々の積み重ねを、怠ってはいけないと思っています。
ステークホルダーとの一体感醸成も重要です。ともすればパートナー企業は下請けのように見られがちですが、上下関係はなく、互いに対等な立場でプロジェクトを推進していく意識を持つべきです。お客さまに対しても物を納めて終わりではなく、以後もニーズに応え続け、我々が組織全体でお客さまの課題に向き合っているという姿勢を貫くよう、肝に銘じています。それこそが、プロジェクト成功の鍵です。
サステナブルシティビジネス事業部のビジョンは「地球環境に考慮し、安心・安全で快適な暮らしを実現する」です。今後もお客さまやパートナー企業との協創によって、ITの知見とドメインナレッジを融合させて課題を解決し、建設業の方々がより豊かになる事業に発展させていきたいと考えています。
建設業では現在、紙や電話、口頭といったアナログ作業のデジタル化やクラウド化が中心で、DXが本格化するのはこれからです。データのデジタル化を進める上での最大のハードルは、データを集める仕掛けがなかなかないということ。個々のツールはたくさんあるものの、サイロ化(それぞれが孤立し、システムや情報が連携されていない状態)されているのです。
データの収集さえできれば、あとは分析などのデータ利活用は当社の得意領域。今はその前段階の障壁を打破すべく、データ収集のソリューションをつくるか、それとも海外のトレンド商材などを発掘する組織を通じて良いソリューションを持ってくるかなど、解決策を粘り強く検討しています。データから将来起こりうることを予想した上で、リスクを回避する──。そんな世界の実現をめざし、我々はさらに挑戦を加速させていきます。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです
