企業変革に欠かせないのは、役員層との直接対話による関係構築
GCSのマネジングディレクターを務める板倉。その業務内容は多岐にわたります。
「部門経営メンバーのひとりとして、部門全体の方向性の立案と実行がメインです。また、今年度はコンサルティングチームのグローバル責任者も務め、グロービス世界5拠点体制での事業モデルの構築に邁進しています。
ほかにも、上位層向けの研修の講師を務めるだけでなく、昨年までは、“G1経営者会議”(『日本経済の中枢を担う経営者が学ぶプラットフォームをつくりたい』との想いからグロービスが立ち上げたカンファレンス)の企画も担っていました」
そんな板倉がここ数年とくに注力してきたのが、役員層との接点強化です。
「5年ほど前から、主にディレクタークラスを中心に役員接点に注力してきましたが、近年は役職にかかわらず、コンサルタント全員が役員との議論ができるよう、機会創出と自己研鑽に励んでいます」
取り組み当初の目的は、役員層に対する同社の認知形成にありました。
「グロービスが提供するサービスは、高額無形商材と呼ばれるものです。前向きな評価をいただくためには、グロービスのサービス価値を、役員層に理解いただく必要があります。というのも、人事担当者の方に価値を感じていただいても、意思決定者である役員層がグロービスを知らないがゆえに、当社を選んでいただけないケースが当時はありました。だから、役員層に直に働きかけることにしたのです」
そして現在は、認知形成からさらに進み、顧客のパートナーに向けた関係性強化を目的にしています。
「組織は人の集合体です。だからこそ、その集合体のリーダーを育成することで、長期的な企業変革に貢献したいとの想いで研修を提供してきました。ただ、企業変革には、将来のリーダーだけでなく、今の組織を創っている経営陣へのアプローチが欠かせません。そのためには、役員層との関係を構築し、パートナーとして、企業の本質課題について深い議論を行うことが必要なのです」
役員層と向き合うことで実力不足を痛感。悔しい経験が成長の糧に
こうして、役員接点への意識は組織全体を通して本格化。板倉自身も多くの役員層とのコミュニケーションを試みます。
しかし、当初は思うようにいかない場面も少なくなかったと言います。
「いざ役員と話をしてみると、相手との視座や視野の違いから、いただいた質問に対して適切に回答できないと感じる時期が長く続きました。それまで役員層と相対する経験があまりなかったこともあり、“お客様 対 サービス提供者”の関係になりがちで、対等な議論ができなかったんです」
いまも板倉の記憶に鮮明に残るふたつの出来事があります。ひとつは、顧客との役員面談の場に、当時の部門長と共に参加したときのことです。
「私の実力では引き出せなかった課題意識を、対話の中で上司がうまく引き出したり、遠慮のない対等な議論をとおして、課題解決の着地点をまとめたりしていく様子を目の当たりにして、圧倒的な差を感じました。自分ではこうは議論できなかった……。あのとき味わった悔しさはいまでもよく覚えています」
ふたつ目は、とある業界での大手企業の会長との会話。“グリーン・デジタルで進化する経営”をテーマに講話を依頼していました。
「打ち合わせ中、会長からふと、『グリーンを追求することが、企業の業績向上に本当につながるのだろうか』と本質的な問いを投げかけられました。グリーンに取り組むことは、バズワードとしていまの時代の常識ということもあり、咄嗟に表面的な回答しかできなかったんです。
でも、その問いの真意は、『企業として投資をする決断の重さ、それを競争力に結びつける責任をどう考えているのか?』というもっと深いものだと、後から気づきました。さらに会長が私の意見に突っ込むのでなく、ただ黙って頷かれたことに、『見透かされた……』と感じ、これもまた悔しい思いをしました」
こうして、相手の世界観の広さと深さを前に冷や汗をかくたびに、自身の現在地を知り自己研鑽に励む板倉。そのトライ&エラーの中で、役員や経営者と向き合う上での心構えも、大きく変わってきたと言います。
「私たちコンサルタントは、実際の経営業務に携わった経験を持っているわけではないので、役員や経営者を雲の上の存在のように捉えてしまうこともあります。しかし、実際に議論を繰り返す中で、彼ら、彼女らもわれわれと同様に悩んでいること、答えがわからない中で前進していることを知ったんです。
それ以降、良い意味で肩の力を抜いてフラットに意見しながら、共に解決への道筋を探ることが、少しずつできるようになっていきました」
リーダー・経営・事業 ——三位一体の変革支援を
役員層との接点増加に応じて、グロービスへの相談内容は広がりをみせています。部門として価値範囲を広げるために心がけてきたのは、「GCSはこれしかやらない」との思い込みを持たないこと。
その一方で、新たに挑戦する領域では、GCSの持ち味を積極的に活かしてきました。
「わたしたちは、選抜リーダー研修だけでなく、中期経営計画策定、経営会議の伴走など、幅広く携わっています。一見まったく異なるアプローチのようですが、いずれもわたしたちが強みとする、“顧客グリップ・設計力・ファシリテーション”という3つのコア技術を応用したものです。
お客様の状況を理解した上で、どうすれば課題解決を実現できるかを考えながらプログラムに落とし込み、ファシリテーションを行う。今後もそうやってグロービスの強みを発揮しながら領域を広げていきたいですね」
こうした一連の取り組みが功を奏し、人材育成や組織改革の相談は増えてきています。しかし、役員との関係構築はまだまだ発展途上。板倉は今後も手を緩めるつもりはありません。
「今後は、世界No.1の『人・組織能力開発』パートナーになることをビジョンに掲げています。そのために、“リーダーの変革・経営の変革・事業の変革”という3つの領域での変革支援を相即不離なかたちで進めていきたいと思っています。
“リーダーの変革”は、われわれの中核ビジネスであり、これまでも実績を積み上げてきたところです。一方で、“経営の変革”や“事業の変革”は、いままさに、介在価値を発揮していくためにアプローチを加速している最中です。だからこそ、わたしたちの組織でこうした関与ができる人材を増やしていく必要があると考えています」
人と組織は変われる──顧客と共に道をつくるプロセスを楽しむ
数年ほど前は、顧客の役員層と話せるのはディレクタークラスのメンバーに限られていましたが、近年はチームリーダークラスのメンバーが役員面談に臨むケースも増えています。
若手のうちから経営視点を養える機会に恵まれるのも、グロービスの魅力のひとつです。
「若手メンバーには、役員面談にただ同席してもらうだけでなく、その面談資料の準備を任せるほか、『このパートは話してみよう』と頼むことで、直接関与してもらう機会を意識しています。また、たとえ同席しなくとも、他メンバーが実施した役員面談の議事録は、部門全体で共有しています。それらを丁寧に読み込むだけでどんな会話が飛び交っているのかを知ることができ、勉強になるはず。これほど経営視点が得られる機会に溢れた環境は、そうないのではないでしょうか」
そんなGCSが企業変革への貢献を実現するためにいま必要なのは、新たな仲間。板倉はこんな言葉で参加を呼びかけます。
「共に働く人に求めるのは、『人と組織は変われる』と本気で信じていること、そして正しい答えのない課題に取り組むことを楽しめるマインドです。GCSの仕事は、お客様の実現したいことを具体的な構想に落とし込み、それを徹底して実行すること。
何が正解なのか誰もわからない以上、ひとつの選択肢をお客様に押し付けたり、逆にお客様からの要望を鵜呑みにしたりしていてはうまくいきません。われわれから提案して顧客と合意形成し、一緒に創っていく。そのプロセスに楽しみを見出せる方にこそ、仲間に加わっていただきたいですね」
顧客の良きパートナーとなり、企業変革にさらなるインパクトを——。
リーダー研修というメインドメインのビジネスが成熟したいまも、グロービスの辞書に“現状維持”という言葉はありません。
日本、そしてグローバルにより良い組織を増やしていくために、板倉はこれからも一途にチャレンジを重ねていきます。

