トップシェア獲得も経験した10年間、新たな部門で感じた富士通の課題
学生時代に阪神・淡路大震災を経験したこともあって、防災関連の事業に取り組んでいる会社を中心に就職活動をしていました。その中で、消防システムの事業を行っていた富士通に興味を持ち、新卒で入社。ただ、配属された部門は希望部門とは違いました。
今年で入社して18年目になりますが、これまで大きく3つのことに携わりました。最初に配属された部門では、サーバ(PRIMERGY)の日本市場向け販売推進を担当。そこで10年ぐらい修行を積みながら、富士通のビジネスの全体像を知りました。その際に、日本市場トップシェアを獲ることに貢献することもできました。
その後は、全社商品のポートフォリオや販売戦略を策定する部門に約3年間在籍。業務に携わっていく中で、富士通はAIやIoTなど成長分野の商品ポートフォリオが弱いという課題意識を持ちました。当時の富士通は、技術面で自前主義の会社でしたが、新しい事業をつくるスピード感はスタートアップに比べると遅かったです。そこで、スタートアップとの共創を進める「FUJITSU ACCELERATOR」の取り組みを始めました。私はその立ち上げ時の初期メンバーです。
富士通との共創──FUJITSU ACCELERATORが目指すこと
FUJITSU ACCELERATORの活動は2015年に始まり、スタートアップと富士通グループ事業部門のビジネスマッチングを主なミッションとして、日々改善しながら取り組んでいます。
立ち上げ当初のメンバーは管理職を含めて5名ほどと、少人数でのスタート。当時はオープンイノベーションへの理解・方法論なども確立されていなかったので、最初の2年ぐらいは手探りでプログラムを設計していました。試行錯誤の結果、事業部のリクエストにも応じつつ事業化の責任を持ってもらうためのルール設計を行い、間延びさせずプログラム期間内でやり切るしくみをつくりました。その形になってから約3年実施し、プログラムはこれまで第8期を迎えました。
FUJITSU ACCELERATOR事務局として、具体的な業務は大きくふたつあります。ひとつ目は事業部のリクエストに沿ったスタートアップを探し、マッチングをして事業の立ち上げに伴走すること。もうひとつは、「こういうビジネスアイデアは世の中から必要とされるよね」という企画を事業部門に持ち込んで形にすること。受動的なものと能動的なものの双方の業務があります。
役割としては、事業部門/スタートアップ/マーケットの調整役です。スタートアップは自分のプロダクトをスケールさせたいから大企業との連携を希望されることが多いのですが、スタートアップと富士通、それぞれの目線が合っているときと合っていないときがあります。また、協業で目指すサービスにおいてマーケットのニーズにマッチしているかが重要です。これらを俯瞰して、第三者的な目線でスタートアップと富士通グループの事業部門双方に持ちかけて事業化してもらう。ここまでが私たちの役割です。
2020年現在関わっている具体的な分野ではAIが多いです。早いものは半年前後で商品化したものもありますが、それはスタートアップのポテンシャルを生かした形で進められるまれなケース。私が関わった中で長いものでは、5年かかってようやく商品化にこぎつけたプロダクトもありました。
また、現在のニーズは「自動化」と「省力化」にあります。アナログなところをデジタル化・機械化し、かつヒューマンエラーをなくす。この分野ではスタートアップの技術もはまりやすいです。
富士通とやるからこそのメリットは、安心して社会実装できること。富士通が支持されてきたのは、「お客様のシステムを止めない」という思想です。スタートアップがつくったユニークなサービスに、富士通の付加価値を加えると共に安心安全に使用できるサービスをグローバルにお届けすることができると思います。
諦めずに成し遂げ続けた──これまでの経験が生み出した独自の価値
これまでの社会人人生を振り返っても、明確に「成功した」と言えることはありません。ですが、明確に言えることは「諦めたことはない」ということです。印象的なのはアイデアの着想から商品化まで5年かかった機械翻訳のプロジェクト。これは自分で持ち込んだ企画で、社内のさまざまな関係者を巻き込みながら進めました。
時間がかかってしまった理由は大きく3つありました。1つ目は、同じ機械翻訳のプロダクトを社内ですでに開発していて、調整に数カ月かけてしまったこと。2つ目は、社内の事業化への判断の調整に時間がかかったこと。富士通の上層部に対し、このプロダクトでもうけられるかを明確に示す必要があったためです。3つ目はスタートアップと組むことでどう競争優位のサービスをつくれるかということ。そこでプロダクトの機能や、品質を向上させるため、富士通グループの全社員13万人が常時使えるサービスにすることで、プロダクトをブラッシュアップしていきました。
新規事業をつくることはさまざまな知見があり体系化されていて、書籍もたくさんあります。ただ、スタートアップ協業による事業開発に関して手本はありませんでした。
さまざまな失敗を繰り返してきましたが、社内調整の中、たとえひとりになってもやり抜くことで、ビジネスアイデアを意地でも型にすることを実践してきました。
そこに関しては、事業開発のキャリアとして自信がついたと思っています。時間がかかる各所との調整をどう短縮させられるかは、私の腕の見せ所であり、この専門性をもっと伸ばしていきたいと考えています。
FUJITSU ACCELERATORが目指すスタートアップとの未来
今後もFUJITSU ACCELERATORでは「スタートアップ協業を早く形にするしくみ」をつくっていきたいと考えています。現在は第8期のプログラムを運営していますが、2020年の夏ごろに第9期の募集開始を予定していて、今はその企画を練っています。第9期ではよりスタートアップとの早期協業の結果が出るように、プログラムの内容をアップデートする予定です。
また、これからも富士通グループの持つリソースやナレッジをうまく使っていきたいですね。FUJITSU ACCELERATOR事務局としても、スタートアップがやりたいと思ったことをすぐ決めて実施できるという理想に向かって取り組んでいきたいです。
現時点では、事業部門がオーナーであり決定権を持っていて。今は間に入って各所とのクッション役になっていますが、将来的には自分たちでジャッジして新しい事業をつくっていけるようになりたいと考えています。
働く上で、誰かの抱えている課題を解決することが“私の”やりがいです。目的やテーマが明確であれば、たとえ時間がかかっても粘り強くやって形にしていく。私は、諦めが悪い男かもしれないですね。

