人事、教員、そして障がい者支援へ
──「研修型雇用」という形で、障がいのある人たちへの就業支援プログラムを推進するEndoさんは、どのようなきっかけでこの仕事に就いたのですか?以前は教員だったともお聞きしました。
いつか教員になりたいという夢を持ちながら、大学卒業後まずは民間企業へ就職し、社会人7年目の時に教師になりました。英語を教えるかたわら、学校以外のステークホルダーと協業して、プログラミング学習や農業ビジネスの体験学習といった新しい学びの場も企画しました。民間と学校現場をつなぐことが私の役割だと感じていましたし、おもしろそうなアイデアが浮かぶと、実行したくなってしまう。めずらしい教員だったかもしれませんね(笑)。
ちょうど、担当する生徒が中学3年生になり、受験生となった時、子どもたちにとって1つの節目を迎えることの重みを感じました。そこで企画したのが、「人事と中学生の2on1プログラム」。企業でお勤めの方々に、中学生のキャリアメンターになってもらったんです。じつは、このプログラムに参加してくれた人の中に、当社の障がい者採用(キャリアサポートセンター)の担当者がいて、「私の後任になりませんか」とお話をもらったことがきっかけです。
──子どもたちの教育と、障がいのある大人の育成支援。大きく異なるように思いますが、どうでしたか?
人事として採用と新人研修を担当していましたので、まったく遠いわけではなく共通項があると感じましたし、直観的に、人事経験と学校現場での教育経験を融合させて挑む“苦しい”チャレンジにワクワクしました。生きづらさを抱えるマイノリティの人たちと関わる仕事ですから簡単ではありません。また、障がい当事者の法定雇用率の引き上げは国の要請です。壮大なテーマに挑み、社会課題の解決に向けて私の経験が活かせるなら、やってみたいと思いましたね。
──もともと、人事など対人のお仕事に興味があったのですか?
人事に就いたのはまったくの偶然なんです。マーケティングの調査会社でデータ分析をしていたところ、採用・研修チームへ異動になりました。しかし、いざ人事職を経験してみると不思議なほどに違和感がなかったんです。購買データの分析業務は、情報をもとに将来を見通していく仕事。そして人事業務も、候補者の情報をもとにその方の入社後の活躍を見通して採用・育成していく仕事です。
当時のCEOが“empower and inspire”というキーワードをよく使っていたのですが、私はこれを「勇気と気づき」と理解しました。データ分析、人事、教育、そして現在の障がい者支援……どの立場においても、仕事を通して「勇気と気づき」を与えることが私自身の仕事観の中心にあります。(詳しくはこちら)
障がい者支援の難しさとデル・テクノロジーズの取り組み
──「勇気と気づき」を軸に障がい者採用・支援領域に取り組む今、どのあたりに難しさや課題を感じていますか?
この領域に関わり2年が過ぎましたが、一言で振り返ると「大変」ですね。2024年以降、段階的に障がい者の法定雇用率が引き上がっていくように、障がい者雇用は国が後押しする方針の1つです。数値目標だけではなく、彼ら・彼女らの入社後の活躍を考えれば、さまざまな社会全体の課題も見えてきます。マクロで見れば壮大な仕事ですが、日々の業務をミクロで見ると、いわば対人支援。障がいは個別性が高く、一人ひとりにいきいきと働いてもらうための支援は一筋縄ではいきません。
また、各自が抱える生きづらさに対して、理解や共感の姿勢を示したとしても、その生きづらさを、本人と同じレベルで真にわかることは難しい。私自身、思いやりの不足や支援者としての至らなさに気づくことが多々あります。また、当事者に寄り添い、共感力を持って接する一方、ビジネス環境下で仕事をする上では障がい当事者自身が変化しなければいけないこともあります。
──障がい者雇用の必要性は周知されていても、マジョリティ側に実感があるかというとそうではないように思います。
障がい当事者との関わりが実際になければ、「遠い存在」「私とは違う別世界の話」といった感覚を持ってしまいます。配慮が必要だと頭では理解していても、はたしてどこまで理解し、実行できているでしょうか。だからこそ当社では、障がい当事者が現場に入って一般と同じように仕事に取り組む仕組みをつくっています。障がいのあるなしを超えて、みんなが一緒に働くことで双方の意識や行動が変わっていくと信じています。
──私自身、障がいのある人たちとお仕事する機会を持てた結果、自分の中で印象や感覚が変わりました。
自分の当たり前が当たり前ではないと気づいたり、自分に足りないところを認識したりと、必要なきっかけを与えてくれますよね。私はこの立場に就いて、マイノリティとの触れ合いを通して優しさを学んでいるように感じます。当社の場合、受け入れ側の現場マネージャーが理解してくれているので、彼ら・彼女らをあたたかく迎えられます。今後、もっといろんな部署で障がい当事者の社員を受け入れ、一緒に働いてもらえるよう社内で働きかけているところです。
──キャリアサポートセンターにはどんな特徴がありますか?
私が入社した時に、キャリアサポートセンター独自のビジョン・ミッションをつくりました。メンバー全員そして関係者が共通項として納得しているので、何かトラブルが起きた時にも、ビジョン・ミッションに立ち返って、1つになって進んでいける実感がありますね。
また、運営側には障がい当事者であり本プログラムの卒業生であるShinno(ストーリーはこちら)が存在している点もユニークだと言えます。当事者だからこそ話しやすいこともありますし、メンバーが安心して相談できる。ビジョン・ミッションと合わせて、行動指針も4段階で定めています。個々の状態に応じてカリキュラムをカスタマイズしながら支援できるので、入社した人は自身のペースでチャレンジを続けています。
D&Iを自分事化する
──D&Iという言葉が一定の認知度を得て当たり前の概念になってきたように感じますが、Endoさんはどのように感じていますか?
障がい当事者支援の仕事をするようになってから、じつは世の中で言われるD&Iに疑念を持つようになったんです。「D」(ダイバーシティ)への注目度が高く、多様な人が集まればイノベーションが生まれるとさえ言われます。しかし、本当にそうでしょうか。個別性が高い障がい当事者たちと日々接して、ダイバーシティをただ増やすだけではまとまらないという経験を持ちました。「みんな違って、みんな大変だ」となってしまえば、多様ゆえに収拾がつかない。
ここで大切なのは、「まぁそういうものだよね」と言って包み込む「I」(インクル―ジョン)のハイライトなんです。多様性は1つめのステップでありながら、それ自体が指針ではありません。ばらばらのものをどうしていくか……それを問うための「I」の姿勢を磨くことでビジネスはドライブするのではないでしょうか。
──概念上わかりづらいインクルーシブとは対照的に、ダイバーシティは数値化できるためわかりやすく、注目が一点に寄ってしまったのかもしれませんね。
その人の属性にかかわらず、「さまざまな人がいる状態が当たり前」となるのが理想の状態。理想を実現するためには、障がい当事者の法定雇用率、当社が掲げる女性社員50%といった数値目標も機能するだろうと考えます。
自分と他者の違いを受け入れること、そもそも、違いに気づく感度を上げるためには、異質性との触れ合いは不可欠です。外資系企業であれば、言語や国籍がわかりやすい異質性ですが、社員のほとんどが日本人である日本企業であれば、障がい当事者たちがインクルーシブな環境をつくる上でチェンジメーカーになり得る存在だと思っています。
キャリアという道の歩みに必要なもの
──教える立場に長く就くEndoさんは、キャリアにおいてどんなアドバイスをすることが多いですか?
キャリアを「ミチ」で捉える例が好きですね。一歩を踏み出せば、それが道となっていく。先のことは未知だけれど、まずは一歩ずつ進んでみようと伝えることが多いですね。
──先のことはわからないのに、数年後のキャリアビジョンを問われることって多くありませんか?つい、「わからない!」と言ってしまいます……。
未来を予想するのではなく、「こうなったらいいなぁ」を考えるのはどうでしょうか。社会起点で、世の中にある“不”をなくしたい・解決したいと発想したり、あるいは、自分の人生・今いる世界がこうなっていたらおもしろそうだと発想してみたり。何か感じることがあるはずですよ。
──民間企業と学校教員。異なる2つの経験を振り返って、どのように感じていますか?
マネジメントは、教育現場に多くのヒントがつまっているように感じます。どうすれば人は動かされるか、教員をする中でたくさん学ぶことができました。また、人事評価と教育評価の設計にも親和性があります。民間企業と学校教員のコラボレーションや、人の往来がもっと起こるとすてきだなと感じます。
──Endoさんが推進する現在のキャリアサポートセンターも3年目を迎えますが、今の仕事で目標はありますか?
キャリアサポートセンターに入社した社員の複数名が、現場部門へ異動してその部門の仕事に取り組んでいます。つくりあげたコンセプトとビジョン、ミッション、行動指針に沿って、現場へ送り出したメンバーたちが変わらずいきいき働けるよう支援を続けたいですね。
私のキャリアが今度どんな方向へ進むにせよ、一人ひとりが持っている好奇心、やってみたい想いが阻まれている社会課題や壁をなくし、それぞれが抱える生きづらさをみんなで分かちあいながら世の中に価値を生み出す社会をつくっていきたいですね。
※ 記載内容は2024年3月時点のものです
※ 参考:当社の障がい者採用「キャリアサポートセンター」詳細はこちらをご覧ください
