「先回り力」が特徴の、グローバルメーカーのロジスティックス業務
──Murataさんは日本の物流を担当されていると聞きましたが、具体的にはどんなお仕事をされていますか?
現在はアジアパシフィック地域のフルフィルメント・ロジスティクス組織に所属し、日本の物流を担当しています。海外から日本への輸送、日本国内で商品が適切に動いているかを日々確認しながら、中国やマレーシアなどアジア各国、そしてアメリカ本社とも連携して物流に関するさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。
──“物流が適切に動く”とはどういうことでしょうか。
注文された製品がスケジュールどおりに動く、ということです。遅れが出ることだけに着目しがちですが、遅延も早着も適切ではないんです。
予定どおりに届かなかった場合にはその原因を追究し、解決・対策するのが私たちのミッション。また、コスト削減も重要な観点です。
サービス品質とコストのバランスを取りながら、現状の物流プロセスや配送の在り方を見直し、効率・改善できる余地がないか検証しています。
──日々のモニタリングのほか、どんなプロジェクトに取り組まれていますか?
常にいくつかのプロジェクトを進めていますが、大きなプロジェクトだと物流パートナーの変更、倉庫や配送システムの刷新、システムやプロセス変更に伴うオペレーションの変更や導入などがありました。ここ最近では、2024年問題に備えたバックアップ体制づくりも大きなテーマでしたね。
──以前も物流業界で働かれていたと伺いましたが、世界でビジネスを展開する当社の物流業務に特徴はありますか?
フルフィルメント・ロジスティクス組織で掲げている行動指針があるのですが、現場レベルでとても浸透しているなと感じます。中でも「先回り力」は特徴的だと感じます。
2024年問題が社会的テーマになるずっと前から社内では、止めない物流の在り方が議論されていました。お客さまにとっても私たちのビジネスにとっても、サステナブルなオペレーション体制は不可欠です。
また、IT業界ではスピードも大切なので、何事にもアジャイルで取り掛かることが多いですね。2024年問題以外でも、たとえば地政学的な観点で生産拠点のリスク分散が考慮されるなど、早めのアクションがなされています。
最新技術で物流を正確に、スムーズに進めていく
──日本の物流会社と、外資系の物流会社に何か違いはありますか?
外資系の物流会社は、戦略的パートナーになることをめざしているように感じます。コストダウンの要求を受けた時、ただその通りに進めるのではなく、別のアイデアを提示して課題そのものを解決するアプローチを取ります。
効率や付加価値を上げるために、物流会社側から自主提案することもあります。いわゆる御用聞きではなく、物流観点でビジネスを進めていく提案の姿勢が強いのではないでしょうか。
そして、これは日本の会社が得意とするところですが、日本市場はとくに、現場の臨機応変さやホスピタリティも求められます。ルールを決めすぎてしまうと、結果的にお客さまの満足に応えられないケースも発生します。
担当者との関係性や現場力などのソフトパワーも大切にしたい要素です。
──イノベーションをカルチャーに挙げるデル・テクノロジーズでは、物流領域でどのように技術を活用していますか?
プロセスや作業進捗の可視化、現状把握のためにIT技術を活用しています。先ほどお話した先回り力ともつながりますが、ダッシュボードを見れば目標KPIに対する現状がすぐに分かります。
できるかぎりリアルタイムで把握してタイムリーに打ち手が講じられるよう、システムをさらにアップデートしているところです。
──AI活用など、一歩先のアクションを起こしていく物流業務に進化していきそうですね。
日本の物流業界は、いまだFAXなどの紙文化も残っています。グローバルIT企業の私たちが先頭に立ち、パートナー会社にも最先端技術を使ってもらうように働きかけていきたいですね。
最新の技術力と俊敏性にかかわる現場のソフトパワーとの両輪で、日本の物流を正確かつスムーズに進めていきたいです。
ひとりでは達成しない、ダイナミズムで進める仕事
──お仕事のやりがいはどんな点ですか?
物流会社と事業会社の物流部門どちらも経験しましたが、物流業務は決してひとりで達成できるものではないんです。
海外で生産され、海外から発送され、日本の倉庫に届く。そうして日本のお客さまへ配送される。
国や会社、立場を超えて、ものすごく多くの人たちが関わっているんです。そのダイナミクスな環境が魅力ですね。
──コミュニケーション面でも気を使われますか?
関わるすべての人のおかげで仕事ができているので、感謝の気持ちを忘れないようにしています。そして、相手がどの立場であってもフラットに接するように意識しています。
──国や立場を越えた方々と仕事していると、「現場」そのものの実感がつかみづらそうですね。
確かに、エンドユーザーとの接点は遠く、直接的ではないかもしれません。商品を注文した後はまるで自動的に届くような感覚もあるのではないでしょうか。
社内においても、物流状況の「見える化」や、関係者の声を知る・知ってもらうプロセスを大切にしたいなと感じているところです。
──営業チームのように、物流チームでも目標達成は大変ですか?
コストダウンなど、プロセス改善に磨きをかけ続ける過程はタフさが求められます。倉庫の移転が完了し、一定の課題・改善が完了した後でさらにもう1歩、改善を加えてインパクトを出すというのは、非常に難しいチャレンジだなと毎年感じるところです(笑)。
──大変な中でも、10年近く当社で改善を続けているのですね。
難しいチャレンジといっても、ひとりで頑張るわけではありません。国内外にいる当社のメンバーや物流パートナー会社も一緒になって、ゴールに向かって取り組みます。人が良い環境だから、楽しく続けているとも言えますね。
私はグローバルチームに所属しているので、各国のメンバーそれぞれ抱えている問題や事情は異なりますが、積極的に情報をシェアしてサポートし合っています。日本とは違う商慣習やプロセスを知ることで、新しいアイデアのヒントを得ることも多いんですよ。
2024年問題に向け、めざすのは実態が伴うサステナブルな物流
──最後に、Murataさんご自身は2024年問題に対してどのように感じていますか?
企業としての取り組みだけではなく、個人レベルでも私たち一人ひとりが課題意識を持つべきテーマだと感じています。
他国と比べると、日本は配送への期待値が高く、輸送時の箱の損傷も返品につながることがあります。でも、だからといって過剰に梱包するのはサステナブルではありません。
──エコ観点で捉えれば、現状の日本のサービスは過剰と言えるかもしれませんね。ユーザーの一人ひとりが環境に配慮した配送を受け入れる必要がありますね。
地球に優しいエコの在り方も考えながら、物流業務そのものに対しても「優しい在り方」を考えていきたいと思っているんです。
前述のとおり、物流の仕事はさまざまなステークホルダーが関わり、企業や社会のシステムが絡んで、人と人とのつながりの上で運用できています。エコやサービス観点を満たすために、ただコストを抑えてやってくださいという一点張りでは限界とも言えます。
関係者それぞれの立場で求める水準が違っても、一方的な視点や部分最適で解決しようとするのではなく、お互いに許容し合うことができる世界になってほしいですね。
目標が数字合わせとなるのではなく、実態が伴う活動が大切だと感じます。一人ひとりの考え方が変わり、お客さまも含めみんなで協力しあって、社会活動の中で地球に優しいサステナブルな物流を進めていきたいですね。
「優しい物流とは何か」は、これからも私のテーマです。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです
