初めて夢中になれたものがダンスだった。原点は「オカザイル」
幼少期、いろいろな習い事をしたものの、どれも熱中できなかったというKAI→。運命を変えたのは、テレビの中でがむしゃらにダンスと向き合うお笑い芸人だった。
「ナインティナインの岡村隆史さんです。EXILEとのコラボ企画『オカザイル』のために、忙しい仕事の合間を縫って必死に練習している。そして、多くの人を感動させている姿を見て、ダンスなら自分も夢中になれるかもしれないと思ったんです」
当時10歳だったKAI→は、早速ダンススクールに通い始めた。たちまちその楽しさに魅了されると、家に帰っても踊り続けるほどダンスにのめり込む。
もっとうまくなりたい──さらにレベルの高いスクールに通い始めたKAI→のポテンシャルを引き出したのは、講師の言葉だった。
「スクールを変えたのはダンスを始めて半年くらい。当然、周りは自分よりも上手な子たちばかり。でも、先生が『この子は光るものを持っている』と、コンテストに出場するメンバーに選んでくれたんです。何が光っていたのかは、今でもわかりません。でも、先生には見えていたみたいです。
そこからは、とにかく練習、練習。そうしないと、皆に追いつけませんから。そんな日々を送るうちに、ダンスが自分の軸になっていきました。こんなに夢中になれたものは初めてでした」
エンジニアかダンサーか──導いてくれたのは父の言葉
大学は理工学部に進んだKAI→。エンジニアになるか、プロダンサーになるか──2年生になり、就職活動を考える時期を迎えて、自分の歩むべき道に迷うことも。
「ダンスは好きです。でも、好きなことを仕事にしたら、好きではなくなってしまうんじゃないかと怖くなってしまって……。
自分にとってダンスがすべて。だからこそ、仕事ではなく趣味として続けた方がいいのかもしれないと考えました」
一度は就職することを決めたKAI→の背中を押したのは、父親だった。ボディビルダーだったKAI→の父親は、プロになる夢を諦めて就職した過去があった。
「父に相談したら、『お前が決めたならそれでいいけれど、好きなことを仕事にするっていうのは素晴らしいことだぞ』と言われたんです」
父親からアドバイスをもらったちょうどそのころ、小学校以来のダンス仲間であるTAKUMIから「Legitに入らないか」と声がかかる。
「両親はずっと、僕にダンスを続けてほしいと言ってくれていて。好きなことに没頭できる環境を作ってくれたことに、本当に感謝しています。
そんな父がかけてくれた言葉もあり、『好きなダンスを仕事にする道があってもいいのかもしれない』と思って、TAKUMIの誘いを受けることに決めました」
誰が見ても楽しめるステージとは。プロの壁にもがいた2年間
「自分のすべて」というダンスでプロフェッショナルをめざすため、Dリーガーの道を歩き始めたKAI→だったが、早速壁にぶつかる。
「Legitは、ダンスバトルという個人競技をしてきたメンバーが多いんです。個々のスキルは高いものの、チームとして全員で合わせることに苦労しました。
D.LEAGUE1季目の結果は最下位。2季目もあと一歩のところで CHAMPIONSHIP出場を逃してしまって。でも、その2年はお互いの癖やスキルをみんなでシェアしあって、チームとしてまとまりが出るための努力を重ねました。今では、『Legitはミリ単位で揃っているチーム』と言われているんですよ」
プロとしてダンスを魅せるために乗り越えるべき壁はもう一つ。エンターテインメントとしてどう成立させるかという難題もあった。
「D.LEAGUEは、ダンスにあまり詳しくない人も見にきます。たとえば現代アートのように、“わかる人にはわかる”というのではなかなか伝わりません。
誰が見ても楽しめることと、ダンサーが見てもすごいと思うこと、それを両立させた作品に辿り着くための過酷さを知りました」
D.LEAGUEをきっかけに、ダンサーが主役になれる世界を作る
今では、一糸乱れぬダンスと個性が光るソロダンスの二面性という強みを手にしたLegit。苦労した2年を乗り越えられたのは、「ダンスが好き」という想い。
「好きなことを仕事にしているとはいえ、つらくなることも。そんな時は一度冷静になって、なぜ自分はダンスをしているのかを考えます。行き着く答えは、『ダンスが好きで、もっと多くの人に知ってもらいたい』というシンプルな気持ちなんです」
揺るぎないダンス愛を胸に、チームの目標であるD.LEAGUE CHAMPIONSHIP初制覇に向け邁進するKAI→。もっとダンスの魅力を広げていくために、D.LEAGUEがダンスを知る入り口になることをめざしている。
「ラップバトルのテレビ番組でラップの裾野が広がったように、D.LEAGUEをきっかけにダンスは楽しいんだ、ダンサーってすごいんだと興味を持ってもらえたら。そして、ダンサーがメインで立つステージが当たり前の世界にしていきたいですね。
ダンスって音楽一つでできるものですから、たくさんの人の趣味になってほしいんです」
迷い、もがきながらも周りの人の言葉に背中を押されて歩んできたダンス人生。それは、かけがえのないものだと笑う。
「自分にしかできない経験ができているのかな。結果がゴールではなくて、自分が求めているもの、目標に向かって進んでいくことが大事なんだと思います」
※ 記載内容は2024年4月時点のものです
