答えは1つじゃない。選択肢を広げて、患者さんと家族の想いに寄り添う
現在、今江はCHCPホームナーシングの事業推進部マネージャーとして、在宅医療やホスピス、訪問看護に関わる新規事業の立ち上げや、各事業所の営業支援を担っています。今江は日々、現場の職員、地域社会、会社組織、そして医療機関という多くの場所を行き来しながら、関係性を築いています。
「各訪問看護ステーションの管理者である所長さんと連携し、病院の地域連携室や患者相談支援センター、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、クリニックなどを定期的に訪問しています。その中で、医師や看護師、メディカルソーシャルワーカー(MSW)、ケアマネージャーといった方々から、医療の現場でどのような課題が生じているかをヒアリング。
お話の中で、『退院調整に困っている』という課題が見えれば、私たちの訪問看護ステーションでできる関わりや、ホスピスでの受け入れ体制など、具体的な提案を行っています」
数ある業務の中でも、直近の大きなプロジェクトとなったのが、2024年11月にオープンした「つむぐホスピスホーム熊谷」の立ち上げ・運営支援、および入居調整に関する営業支援です。
このホームは、CHCPグループの経営支援先である病院、調剤薬局、歯科医院などと連携し、24時間365日安心できる在宅系サービスを提供することで、グループが掲げる「地域包括ケアモデル」を拡充していくための重要な挑戦でもあります。病院の中で完結してしまいがちな医療リソースに対して、外部の多様な選択肢を提示することで、患者さんやご家族がより良い環境を選択できるようサポートを行ってきました。
「在宅で過ごしたいという願いや、最期の時間を面会制限のないホスピスホームで家族と過ごしたいという多様なニーズに対し、応えられる仕組みを現場から組み立てています。これが正解というものは決して1つではなく、ご家族や患者さんの想い、その時の体調やシチュエーションによって変化するものです。
その中で、病院から提案された1つの選択肢だけでなく、『在宅でできること』や『施設に入った場合の選択肢』を提示することで、ご家族や患者さんが最終的に『これで良かった』と思えるような役割を果たしたいと考えています」
「最善の医療」を異なる視点から模索して、出会った場所
今江のこれまでの歩みは、一般的な医療従事者のキャリアとは少し異なっています。
「大学の外国語学部を卒業後、最初に就職したのは大手小売業でした。現場での接客や店舗運営を経験したのち、医療機器輸入のためのコンサルタント会社へ転職。そこでは、日本初となるAED(自動体外式除細動器)の承認に向けた薬事申請業務という、重要なプロジェクトにも関わりました。
その後も、外資系企業での貿易事務や商業施設のインフォメーション業務など、さまざまな業界で人と関わる仕事に従事してきました」
そんな今江の人生に変化が訪れたのは、次男の出産を控えていた頃のことでした。
「家庭環境の変化をきっかけに、自立して子どもたちを支えていけるよう、『手に職をつけよう』と考えたんです。そこで、まずは医療事務として県立がんセンターに就職しました。働く中で、外来の看護師長さんから『あなたは看護師に向いている』と言葉をかけていただきました。
そのとき、なぜか自分の中にその言葉がスッと入ってきたんです。『私は看護師をめざしていいんだ』と、不思議な導きをいただいたような感覚でした」
こうして進むべき道を見つけた今江。子育てをしながら、看護学校へと通学しました。
「夜20時に就寝して朝3時に起床し、勉強時間を確保する生活を3年間続けました。苦労もありましたが、無事に看護師免許を取得しました」
免許取得後は、病院の内科病棟に7年間勤務し、臨床経験を重ねていきます。3年目からは新人研修を担当、その後学生指導や中途入社者の教育にも関わり、病棟の教育全般を任されるようになりました。しかし、その最中にコロナ禍に直面します。
「病棟内での徹底した面会制限により、大切な家族と会えないまま最期を迎える患者さんやご家族の姿を目の当たりにしました。病院というルールのなかだけでは、救えない想いがあるのではないかと考えるようになったのです」
新たな視点を求めた今江は、ホスピス事業へ転職。地域連携看護師として約3年間勤務し、そこで医療業界の外側からアプローチする魅力を知ることになります。
「医療の世界は、どうしても業界のルールに縛られがちです。異業種での経験がある私にとっては、病院の『当たり前』に違和感を覚えることもありました。患者さんやご家族はもちろん、現場のスタッフ自身も『本当にこれしかないのか』『これが最善なのか』という葛藤を抱えていたんです。
だからこそ、そこに別の視点を入れたかった。民間企業というポジションから医療業界の変革に挑んでいく仕事に、惹かれるようになったのはそれが理由です」
そして、「医療業界の外側から、より自由度高く、より多くの人を救いたい」と考えるようになったときに出会ったのが、CHCPグループでした。ここなら自分の想いを実現できると確信し、今江は入社を決意しました。
人と人、プロとプロをつなぐ。ゼロからの挑戦で見つけたサポートのカタチ
CHCPグループに入社後、今江が最初に任された大きなプロジェクトは、オープンを控えていた「つむぐホスピスホーム熊谷」の立ち上げ業務でした。
「前職でも立ち上げのサポート経験はありましたが、今回のようにゼロベースからプロセスに携わるのは初めてでした。建築業者さんと施設運営のケアプロ在宅医療株式会社(以下ケアプロ)さんと連携して、『壁紙はどうするか』『自動ドアや鍵、家具はどうするか』といった施設作りからやり取りを始めました。
行政への指定申請手続きなども含め、すべてが未知の領域でしたが、新しく知識を吸収していく過程がおもしろかったですね」
オープンに向けて地域への周知活動を行うと同時に、運営を担うケアプロさんのサポートにも取り組みました。
「在宅医療のプロフェッショナルであるケアプロさんと連携しながら、ホスピス運営の立ち上げに取り組みました。私はホスピスでの現場経験を活かし、ケアプロさんと意見を重ねながら、オペレーションの具体化を進めていきました。必要な物品の整理、入居調整の仕組みづくり、訪問診療・訪問薬局の選定など、現場視点をもとに実務面での支援を行いました」
プロジェクトごとにメンバーは変わりますが、今江は自分が先頭に立って引っ張っていくプレイヤーではなく、それぞれのプロフェッショナルがもっとも動きやすく、その能力を発揮できる「場」を整える存在でありたいと考えています。
「医療・介護分野の専門職だけでなく、ヘルスケア業界以外の出身者など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっているため、『人と人、プロとプロをつなげていくこと』が私の役割。みなさんが動きやすくなるように、後方支援に徹しています。
一人ひとりがプロフェッショナルだからこそ、お互いを尊重し合っていて、誰と組んでも仕事がしやすい環境です」
日々の支援の中で、今江の心に深く残っているエピソードがあります。
「ある訪問看護ステーションの所長さんと半年間にわたり同行営業を行いました。その際、所長さんは『ご迷惑をおかけしてしまうから』と遠慮し、資料だけを置いて立ち去っていたんです。そこで、まずは自らの営業スタイルを見てもらいました。
私自身、営業経験があるわけではないので、プレゼンテーションをして売り込むようなことはしません。ただ相手のもとへ赴き、他愛のない世間話をしたり、困りごとをひたすら伺ったりするだけです。病棟時代に自分も同じように困った経験を話し、『ありますよね、そういうこと』と共感を重ねていく。そうした姿を隣で見てもらうことを続けました」
3カ月間同行を続けた結果、所長の行動に変化が表れていきました。自発的に「私も挑戦していいですか?」と手を挙げるようになり、最終的には近隣の訪問看護ステーションに対しても「ご挨拶に行きましょう」と提案するほど、周囲との関係構築を楽しめるようになったと言います。
「最後にその所長さんから『今江さんと出会えてよかった。今は営業が楽しくて仕方がない』という言葉をいただきました。私は所長さんやステーションの素晴らしい部分を、私の言葉で代弁していたに過ぎません。それでも、そのように喜んでいただけた瞬間は、この仕事をしていて本当に良かったと心から実感しました」
これまでの経験が輝く場所で、各地に「最善」を届けていきたい
マネージャーとしての今江の姿勢は、どこまでも謙虚です。しかしその根底には、多彩なキャリアから得た経験が活かされており、自らは一歩引きつつも、組織を動かす役割に手応えを感じていると語ります。
「周囲はプロフェッショナルな方ばかりですので、私自身に特別な技術がなくても、みなさんの力を借りながら業務を推進することができます。
私にとっては、これまで経験してきた小売業での接客、薬事申請での医療知識、貿易事務での調整力、そして病棟での看護経験のすべてが、現在の『プロとプロをつなぐ』という役割に活かされていると感じています。さまざまな場所へ赴き、多くの方々と出会いを重ねられるこの仕事は、私にとって間違いなく『天職』ですね」
今後ともに働く仲間として迎え入れたい人物像について、今江はこう語ります。
「自らが先頭に立って牽引するよりも、周囲の確かな支えとなれる人、そして誰かの行動が実を結んだ成果を一緒に喜べるマインドが大切だと考えています。
CHCPグループには、一人ひとりが自身の意見を率直に発信でき、それに対して互いに真摯に話し合える関係性があります。それぞれのアプローチや個性を尊重し合える集団だからこそ、押し付けがなく、柔軟で働きやすい職場になっているのだと思います」
今江の視線は、すでにその先にある未来を見据えています。
「これからの目標は、関東圏にあるすべての病院や関係機関に足を運ぶことです。『今江さん、ここにも来ているのですね』と言われるくらい徹底的に現場をまわり、多くの方々と出会いを重ねたい。この仕事をしていて本当におもしろいのは、人と人との予期せぬつながりです。
かつての仲間と別の現場で再会したり、地域全体のネットワークを肌で感じられたりする。そのつながりが、私を動かす大きな原動力になっています」
そして、都市部か地方かを問わず、どの地域に暮らしていても患者さんやご家族が同様に質の高い医療や多様な選択肢を受けられる世の中をめざしたいと言います。
「在宅、病院、施設など、特定の場所に縛られるのではなく、どこにいても同等の医療を受けられ、同じような選択肢が提供される社会になってほしいと考えています。地域による選択肢の不公平感を、ビジネスの力で解消していきたいですね」
どこにいても自分らしい最善の医療を選択できる社会の実現に向けて、今江はこれからも架け橋としての道を歩み続けます。
※ 記載内容は2026年6月時点のものです
