給与や働き方に直結する、責任ある人事の仕事
私は宮城地区で働く全社員の勤怠のとりまとめやチェックなどの管理をしています。アルプスアルパインは宮城県に大きな開発・生産拠点を構えているため、私が担当する社員数は単純計算で国内社員の約4割にもなる3,300人程度になります。
勤怠を担当するとひと言で言っても、社内にはさまざまな雇用形態があり、それぞれ処理の方法が異なるため、複雑な処理が求められます。社員の給与に直結する業務なので、ミスが許されない緊張感があります。
勤怠データの収集も重要な業務の1つですが、これがまた一筋縄ではいきません。勤怠締め日は膨大なデータのチェックが必要で、該当部署の方々や関連部署とも連携が必要になります。また、組織変更に伴う組織図や勤怠システムへの反映も私の担当です。
正確な仕事をするためには、社内規定や労働基準法の知識が不可欠です。内容や言葉が難しく感じることもありますが、なぜそのルールが制定されたのか背景を考えるようになってからは、興味が湧いてきました。上司や詳しい同僚に背景や解釈を確認することで、実際に役立つ知識を身につけていると感じます。
就職までの苦しい道のりと新たな出会い、そして挑戦
私には生まれつき身体障がいがあり、右手に義手をして生活しています。それゆえ就職までの道のりは決して平たんなものではありませんでした。
高校3年生から就職活動を始めたのですが、通っていたのが普通高校だったため学校に来る求人は私に向かないものばかり。友人たちが次々と内定を得る中、私はいっこうに進路が決まらず不安な日々を過ごしていました。先生が求人元に掛け合ってくれることもありましたが、障がいがある人は対象とならないという回答ばかりで、次第に「自分なんて……」という気持ちが強くなっていきました。
結局、就職は決まらず、卒業後は職業能力開発学校に入学しました。障がいのある人たちが仕事に役立つ技術を学ぶ学校で、さまざまな年齢や特性のある人たちと一緒に学んでいました。私はOAビジネス課に入学。事務系の仕事を希望していたというよりは、片手でできて広く応用できる技能はOAだろうという考えからでした。
学校に通って8カ月ほど経った頃、宮城県内で開催された障がい者向けの就職説明会に行きました。これまでの経験から期待を持たずに訪れたある企業ブースで、丁寧に話を聞いてくれる印象の良い社員に出会いました。それがアルプスアルパインでした。
あんな社員がいる会社で私も働きたい。そう思ったもののアルプスアルパインの求人票には経験者が望ましいと書いてありました。就労経験のない私では難しいだろうと半ば諦めながら先生に相談したところ「やってみないとわからない」と後押ししてもらい面接を受けました。そして見事合格。今はなんとあの時に出会った社員と同じ部署で一緒に働いています。
私と同じように障がいを抱えている人は過去の経験から悲観的になっている人も少なくないと思います。でもチャレンジすれば何か変わるかもしれません。諦めず挑めば道は拓けるのだとこの時に学びました。
自分の頑張りが誰かの役に立つと気づいてから変わり始めた
アルプスアルパインに就職が決まったころから後ろ向きだった自分が変わってきたという実感があります。
きっかけの1つは、職業能力開発学校の卒業時、60代のクラスメートがメッセージカードをくれたことです。そこには、一度一般企業での就労を経験している彼だからこその仕事の心得とともに、「みんな応援しているよ」という言葉が添えられていました。自分は1人じゃないと思えたことが心強く、私の頑張りが仲間の励みになると思うとみんなのためにも頑張らなくては、と思うようになりました。
もう1つは仕事を通じて自分を頼ってくれる人が増えたことです。これまで「自分なんて」と思っていた私が、周りから頼られ、誰かの役に立っているという実感が自信へとつながり、前向きに変わりました。同じ課のメンバーだけでなく、他拠点の人からも、「誰が担当かわからないのでまず高橋さんに相談した」と言われると頼ってもらえていると感じ嬉しくなりますね。
居心地のよい職場も私に自信を与えてくれているのかもしれません。同僚は私の障がいを変に気にすることなく接してくれます。どのくらい気にしていないかというと、片手ではできない仕事を頼まれた時に「私、両手は使えなくて……」と伝えると「あ、忘れてた」と返されるくらいです(笑)。
もちろん周りの人たちのフォローやサポートがあってこそ今の私がいるとは理解していますが、必要以上に気を遣われず自然体で働くことができる今の環境は心地よくもっと頑張りたい、という気持ちが湧いてきます。
人に寄りそう、誰かの一歩を応援する──私の役割とめざす姿
今後の目標は、「古川の人事と言えば高橋さん」と周囲に思われることです。先輩たちの中には、困った時に真っ先に名前が浮かぶような頼りがいのある人が多くいますが、私もそんな存在になっていきたいです。
私が変わるきっかけになったのは、人から頼られることで自分の役割を実感できたからです。だからこそ、もっと頼りがいのある人間に成長していきたいと思っています。
そのためにはさらに幅広い分野で経験を積むことが必要と感じています。仕事の中では、不安や困難に直面することもありますが、それもチャンスととらえて未知の領域にも挑戦しながら幅を広げていきたいです。
たとえば他部署から私の担当外の業務について質問を受けることもあります。担当者に回せば早いのですが、自分の学びのためにも対応方法を聞き、知識を広げるようにしています。
きっと、そうやって聞いてくる人の中には、担当者には言いづらいけれど私ならば話しやすいと思ってくれる方もいるのかもしれません。そういった人たちに寄り添えるようになれたらと思っています。
また、何より大切なことは人に興味を持つことだと思っています。「人事と書いて『ひとごと』と読ませるような部署になるな」というのが上司の口癖です。上司の言葉どおり、人のことでも自分事としてとらえることで、気遣いや配慮は生まれると思っているので、人を知り、人に寄り添える人事をめざしていきたいです。私自身に障がいがあるからこそできることもあると思います。
障がい者雇用の人にとって同じ立場の私には相談しやすい部分があるはずです。そうした人たちの声に耳を傾けサポートしていく業務もしてきたいと思っています。会社としてもダイバーシティー&インクルージョンが進んでいることを感じますが、多目的トイレやスロープを設置しただけで終わるのではなく、当事者がどう感じているのかを常に観察し、支援が続いていくような仕組みを作っていくことが必要だと思っています。私も、そのような視点で今後力になれたらと思います。
アルプスアルパインとの出会いは、私を変えてくれました。かつて「自分なんて……」と後ろ向きだった私が、周りに応援され、支えられ、そして頼りにされることで前向きに挑戦できる人間になりました。今度は私が、誰かが前を向いて歩き出すきっかけをつくるような仕事をしていければと思います。自分の経験を活かして、私なりの方法で1人でも多くの社員が「ここで頑張ろう」と思えるような環境をつくっていきたいです。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
