皆さんは「ポータブルスキル」という言葉をご存じでしょうか。ポータブルスキルとは「持ち運びができるスキル」のことで、時代の流れや社会情勢に左右されにくい、いわばどんな業界・職種でも活かせるスキルのことを指します。具体的な例で言うと、業務遂行のためのスケジュールを立てる「計画力」や周囲とのコミュニケーションの際に求められる「傾聴力」、人材育成に必要な「マネジメント力」などが挙げられます。今回はそのポータブルスキルについて詳しく解説します。
ポータブルスキルとは
冒頭で述べた通り、ポータブルスキルとは業界・業種問わず活かすことができる汎用性の高いスキルのことです。環境や業務内容の変化への適応が必要となる場面で活かすことができる強みであるため、最近では中途採用市場で、とくに異業界・異業種からの採用において重視されます。
反対に、業務遂行のために必要な専門的な技術のことをテクニカルスキルと言いますが、これまでの経験で培った専門的な技術であるため、同業界・同業種からの採用の際に重視されています。
◇ポータブルスキルが注目される背景
そもそも、ポータブルスキルが注目されるようになったのはなぜなのでしょうか。かつては終身雇用という風潮の中で、一度所属した企業に定年を迎えるまで在籍するという意識が強くありましたが、近年では自分のライフプラン、キャリアプランに合わせて転職するという意識に変わりつつあります。よって、自分が望む働き方をめざすために、経験したことのない業界や職種に転職する人が増えているのです。
一方で、いわゆる未経験採用を積極的に行う企業も増えてきています。未経験者は挑戦したいという成長意欲があり、ポテンシャルが高いと言われています。教育環境が整っていれば、新たな知識を吸収しすぐにでも成長していく人も数多くいるでしょう。そこで重要視されるのがポータブルスキルです。専門的な技術(テクニカルスキル)は入社後に培っていくことができますので、転職時の面接では、これまでの経験で培ってきたスキルの中でも今後もすぐに活かすことができるポータブルスキルが重要視されます。
そういった傾向の中で、いつかあるかもしれない転職の機会に備え、自分の市場価値を高めるために、ポータブルスキルを身につけたいと考える人が増加してきました。
◇ポータブルスキルの要素
ポータブルスキルの要素は「仕事のし方」と「人との関わり方」の2つに分けることができます。「仕事のし方」の5つの要素は、課題を正しく把握し、効率よく処理・遂行するために必要なスキルとなります。また、「人との関わり方」の4つの要素は、いわゆるコミュニケーション能力のことで、誰かと仕事をする上で必要なスキルです。
【仕事のし方】
・現状の把握:取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方
・課題の設定:事業、商品、組織、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方
・計画の立案:担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方
・課題の遂行:スケジュール管理や各種調整、業務を進めるうえでの障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方
・状況への対応:予期せぬ状況への対応や責任の取り方【人との関わり方】
・社内対応:経営層・上司・関係部署に対する納得感の高いコミュニケーションや支持の獲得のし方
・社外対応:顧客・社外パートナー等に対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整・合意形成のし方
・上司対応:上司への報告や課題に対する改善に関する意見の述べ方
・部下マネジメント:メンバーの動機付けや育成、持ち味を活かした業務の割り当てのし方
【引用】厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール(職業能力判断ツール) 」
ポータブルスキルの身につけ方
ポータブルスキルは資格のように目に見えるスキルというわけではありません。スキルによっては得意なこと、不得意なことが存在します。まずは現状を把握し、自分がどんなことが得意なのか、反対に苦手なことは何なのかを理解した上で、以下のことに取り組んでみましょう。
◇身につけたいポータブルスキルを定める
すべてのスキルを伸ばそうとすると、すべてが中途半端になってしまう恐れがあるためおすすめできません。今後めざしたいキャリアや将来像に合わせて、伸ばしたいスキルを定め、集中的に身につけていくのが効果的です。とくに課題に感じるスキルを身につけることで、より自身の能力の汎用性が高まります。
◇日々の業務への取り組み方を意識する(目標を持って取り組む)
ポータブルスキルは経験によって培うことができるスキルです。そのため、日々の業務への取り組み方を意識することで、スキルを高めることにつながります。まずは、伸ばしたいスキルに対して今の自分はどうなのか、自身の強みや弱みを挙げて現状を把握します。現状を把握することができたら、挙がった課題に対してどのように取り組んでいけばよいかを目標として定めます。
(例)
伸ばしたいスキル:計画の立案
伸ばしたいスキルに対する強み:計画を立てて仕事に取り組むことができる
伸ばしたいスキルに対する弱み:追加の業務が出てくると(優先順位を判断することができなくなり、)非効率的になってしまう。
このように現状を言語化することで、自分が取り組むべきことが見えてきます。例の場合は、計画を立てて仕事に取り組むことはできますが、イレギュラーな業務が追加されると非効率になってしまいます。その場合は、あらかじめ余裕のあるスケジュールを立てておくことで、弱みを改善できると考えられます。
こうして目標を定め、意識しながら業務に取り組むことで、スキルが身につけられ、よりレベルを高めていくことができます。また、「今日は●●することを意識した」、「〇〇ができた」など、日々の出来事をメモし、後で振り返ることでスキルの向上を実感することができます。スキルは目に見えるものではないので、日々記録し、可視化することで意欲向上にもつながるでしょう。
まとめ
働き方の変化に応じて、汎用性の高いポータブルスキルへの需要が高まっている近年、個人の市場価値を高める動きが見られています。特に未経験の業界や職種への転職では、選考書類や面接では仕事への取り組み方や姿勢、その人自身の人間性、コミュニケーションスキルなど、いわばポータブルスキルが計られるケースも多いです。そのため、自身の経験を経て身につけたポータブルスキルは強みのアピールにもなると言えるでしょう。
さらに、ポータブルスキルは転職だけでなく、キャリアステップを考える上でも必要なスキルになります。普段の仕事への取り組み方や周囲とのコミュニケーションの取り方を見直し、目標を定め、意識することで着実に身につけることができますので、ぜひ理解を深めていってください。
