机に向かっていてもクルマはできない。失敗から学んだ技術者としてのこだわり
1988年にアイシン精機(※)に入社した大川と、2001年にアイシン・エィ・ダブリュ* に入社した田島。それぞれ、先行開発と量産の両方を経験してきました。
※ 2021年4月にアイシン精機株式会社とアイシン・エィ・ダブリュ株式会社が経営統合し、株式会社アイシンを設立
大川:はじめは、先行開発部門で主に車体系の製品を担当していました。2つの製品を市場に出した後、これから始まる電動化に向けてモーター領域を強化することになり、EV(電気自動車)用のモーター開発の担当に。それ以降、ハイブリットやEVなどに向けた電動化のユニットを担当してきました。
田島:私はずっとトランスミッションの制御ソフト開発を担当してきました。とくにハイブリッドやEVの制御は、先行開発から量産まで経験しています。その間、7年ほど国内の自動車メーカーの中で働いたり、ヨーロッパの自動車メーカーと共に車両開発を行ったりと、貴重な経験をさせてもらいました。
技術者としての軸を持ってキャリアを積んできた大川と田島。失敗も成功も味わってきた中でも、自身の転機となった出来事について、こう振り返ります。
大川:若手の頃、苦労して書き上げた図面をものづくりの現場に渡したところ、量産には向かないと指摘されたことがありました。先行開発として性能を研ぎ澄ますための設計と、安定して生産するための図面では、考え方が異なるんですよね。
だからこそ、先行開発側と生産技術側が早いうちから議論を重ねて、より良いものを世の中に出すにはどこを落としどころにするべきかを探っていくことが大事なのだと実感しました。
田島:若い頃、担当していた制御ソフトに最終段階で不具合が見つかったことがありました。後工程に入り込み、 1台1台ソフトの変更をしたことを覚えています。品質を担保する重要性を痛感したことが、技術力の成長につながりました。
また、ヨーロッパで制御開発リーダーを務めた際には、慣れない英語でのコミュニケーションとシビアな交渉に苦労しました。でも、技術に真剣に向き合う姿勢は皆同じ。技術は共通言語なのだと感じましたし、サポートしてくれた上司の姿勢からマネジメントを学びました。
「失敗から学ぶことの方が多い」と口をそろえる2人。その経験があったからこそ、技術者として大切にしている価値観があります。
大川:コンセプトを明確に定めることです。モーターは原理原則に基づいて動きますが、背反する要素が絡んできますから、すべてで100点をめざすことはできません。
たとえば、小型化することに重きを置くのか、コストを重視するのか。原理原則をベースにしながら、製品の特徴を打ち出すためのコンセプトを大事にしています。 さらに、クルマ全体で見た時に最適であることも重要です。自分の担当ユニットだけではなく、全体を考えて提案できる開発をめざしています。
田島:そういった点からも、「現地」「現物」「現実」が重要です。私は、「机に向かっていてもクルマはできない」というこだわりを大切にしてきました。
シミュレーション技術も進化してきましたが、時には机上の空論だけではなく、バッテリー関連や熱マネジメント、「走る、曲がる、止まる」の統合制御など自分たちで運転して体感する。アイシンには世界中の道を再現したテストコースがありますから、そこで評価して、エンドユーザーに提供できる価値を作っていくことが大事です。
クルマの価値が変わる時代に、スピード&アジャイルで変革を加速
アイシンは、社会の変化に合わせて短期的かつ集中的に課題を解決するために、組織を柔軟に変化させながら対応してきました。これまでDXやカーボンニュートラル推進などに取り組むセンターが設立されてきた中で、電動化を強化していくために設立されたEV推進センターを発展させた組織が第2先行開発部です。
田島:新しいEVで使える製品をどんどん生み出していくために、トライ&エラーでさまざまなことに挑戦することが私たちのミッション。駆動ユニット「eAxle」(イーアクスル)はもちろん、バッテリ周辺技術や制御など、クルマ全体を見た先行開発を行っています。
大川:当社はこれまでオートマチックトランスミッション(AT)が利益の柱となってきました。しかし、これからATの市場は縮小していくと予想されます。そこで、会社の発展のために「電動化」「知能化」を新たな柱とすることをめざしています。
社会やモビリティ業界の変化に対して、適切な危機感を持ちながら大きく変革していくこと。それがアイシンの課題であり、電動化領域で将来に向けた種を作り、大きな木に育てていく部署に渡していくことが第2先行開発部の役割です。
未来に向けた大変革。そのためのキーワードは「スピード&アジャイル」です。
田島:以前から先行開発を担うメンバーは、限られたリソースでアジャイルな開発を行ってきましたが、それをさらに加速させていく必要があります。
というのも、これまでは完成された製品を作ってお客さまに届けることが大きな価値でしたが、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が主流になってきたことで、その価値も大きく変化しているからです。
制御やソフトウェアの価値が高まっている中で、そこに対応できるエンジニアはまだまだ少ない。スキルチェンジを含めた人材育成においても、スピード感が必要です。
クルマの価値が変化する時代。自動車メーカーの目線が変わってきていることも、アイシンがめざす方向に大きく影響しています。
大川:昔は自社のアイデンティティを表すクルマを完成させることが主でしたが、近年は「自分たちのクルマが世の中にどういう影響を与えるのか、どう貢献できるのか」という目線に変わってきています。私たちは、その想いに応えていかなければいけません。
お客さまの目線に合わせ、自動車メーカーに最も近い部品メーカーをめざす
自動車メーカーがより広く高い目線で車づくりに取り組む中、そのニーズにスピード&アジャイルで応えながら、従来のサプライヤーを超えた存在をめざしたいと田島は話します。
田島:自動車業界は、自動車メーカーに直接部品を納入するTier1と呼ばれる総合部品メーカー、総合部品メーカーに部品を納入するTier2、そしてTier3という構造になっています。アイシンはTier1にあたりますが、「Tier0.5」になることもめざしています。Tier0.5とは、自動車メーカーが「ここまで任せられたらありがたい」と思うところをカバーする存在です。
たとえば、統合できるものは統合していって、クルマ全体の制御システムとして納める。私たちがシステムサプライヤーになることで、自動車メーカーはさらにその先を見据えた開発に集中できる。そういった存在になることが私たちの価値だと考えています。
大川:そうですね。自動車メーカーの目線が上がっているからこそ、私たちも自分たちが手がけるユニットから目線を上げて、「クルマとしてあるべき形」として提案する必要があります。これまで以上に「アイシンに任せたい」と言ってもらえるサプライヤーになりたいですね。
Tier0.5をめざして組織を変えている現状は、「社員にとって戸惑うこともあるかもしれない」と大川は話します。そのため、田島は組織運営においてコミュニケーションを大切にしていると言います。
田島:私たちがどこをめざしているのかについて定期的に伝えることはもちろん、1on1で対話するようにしています。200名ほどメンバーがいるので頻繁に実施することは難しいのですが、それぞれの捉え方や困りごとを聞いています。
その際に私から伝えているのは、「レアキャラになってほしい」ということ。世の中の価値観が多様化する中で、皆が違う価値観を持っていることを大事にしたいのです。だからこそ、1on1で一人ひとりの価値観に触れることにこだわりたいと思っています。
大川:先行開発をしていると、「これは本当に必要なのか?」と言われることもあります。それでもチャレンジし続けて、アピールしていくことが重要。へこたれずに挑戦し続けるには、自分が開発しているものを好きになり、情熱を持つことが大切です。1on1で話すと、その情熱に気がつくことがあるんですよね。
もちろん、すべてをかなえることはできませんが、どんな意欲を持っているかを知れば、きっかけを与えることができます。マネージャーたちには、ぜひ皆の想いを知る機会を作ってほしいと思っています。
トライ&エラーを繰り返しながら、情熱を持って新しい感動を生み出してほしい
「レアキャラ」をめざす──そのために必要なことを、2人はこう話します。
田島:積極的に外の世界を見て、コミュニティを作っていってほしいのです。たとえば展示会に行き、そこで知り合いを作ったり、大学と連携して先端研究をしている人たちと話したり。いろいろな人と出会うことで、新しい発想が生まれます。
大川:アイシンは真面目で素直な人が多いんです。わからないことがあれば、きちんと調べて考えて、自分の中で落とし所をちゃんと見つける。
でも、王道だけでは突破できないこともあります。外の世界を見たら、「こんな突破方法もあるんだ」と気がつくことがあるはずです。
田島:熱い想いがあれば、驚くほど自由に挑戦させてもらえることもアイシンの魅力。よほどのリスクがなければ、手を挙げた人を止めることはありません。ジョブローテーションのような形で「来月から新しい業務に挑戦しよう」といったこともしています。そのくらい現場レベルでスピード感を持って動いていることもアイシンの強みの一つです。
挑戦を後押しする立場でもある大川と田島。これから入社する人も含め、アイシンという舞台で情熱を持って何かを生み出してほしいと語ります。
田島:第2先行開発部は、電動化、知能化に関わる幅広い開発領域があります。「自分の手でクルマを変えていきたい」と思っている人にはもってこいの部署です。人から言われてやるのではなく、自分で何かを作り出していきたいという想いをこの部署でかなえてほしいと思っています。
大川:自分の想いを具体的な形にしてクルマに乗せて評価して、ダメだったらまた作り直してブラッシュアップして。その繰り返しをしながら、世の中の役に立つ仕事、誰かに感動を与えられる仕事をしてほしいですね。
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
