高精度のセンサー技術で、車内の子ども置き去り事故の減少に貢献したい
鄭が在籍するボデーシステム開発部では、子どもの車内置き去りを検知する、ミリ波を活用したレーダーの開発プロジェクトが進行しています。本プロジェクトは、車内での子ども置き去り事故が社会問題化していることを背景に立ち上がりました。炎天下の車内に置き去りにされた乳幼児が、熱中症で命を落とす痛ましい事故は世界中で起きています。
「現在、欧米では車内に置き去りにされた子どもの発見や保護の機能を担うCPD(Child Presence Detection)を装備する動きが進められています。私たちが開発を担当しているのも、この機能です。CPDの装備によって、悲惨な事故の減少に貢献できる、社会的意義の大きいプロジェクト。
また、このCPDを搭載することで、安全性能評価において5つ星を獲得することにもつながります」
アイシンが開発を進めているCPDのセンサーは高周波を使用しており、周囲の明るさや遮断物に影響されないため、子どもの微細な動きまで検知することが可能です。このような高精度なセンサーの開発にはさまざまな課題があります。
「センサーには高い精度が求められると同時に、世界規模のプロジェクトであるため、各国の電波法の要件を満たす必要があります。製造・販売に際しては、電波の特性を調整した上で、調整後の性能も検査しています。
出荷する前に、自社のセンサーの性能を確実に保証することが重要な目標であり、難しいところ。調整と検査の両方を仕様化・手順化して、後の工程につなぐことに取り組んでいます」
プロジェクトチームは、電気系とメカニカル系の約9名のエンジニアで構成されています。鄭は電気系のメンバーとしてチームのサポート役も担っています。
「初めての転職ということもあり、入社直後は少し戸惑う部分もありましたが、周囲のメンバーとコミュニケーションをとることを意識しながら仕事を進めてきました。
チームには経験の浅いメンバーもいるため、そうしたメンバーが困っている時には声をかけ、ミスをした時のフォローや相談にも応じるようにしています。指導することで、私自身の観察力や判断力も向上しているように思います」
製品開発においては、1人では完結できない業務が多く、チームワークが欠かせません。
「毎週グループミーティングを行っています。アイシンには、チーム一丸となって課題解決に取り組む環境があります。みんなで相談しながら試験方法を改善したり、新しい提案を検討したりと、常にコミュニケーションを取りながら開発を進めています。子育てや介護をしているメンバーもいますが、急な休暇が必要な時にはお互いに協力しあって調整しています。
このような柔軟な職場環境が生まれるのは、メンバー間の信頼関係があるからこそ。円滑に仕事を進めていくために、周囲との信頼関係を築くことを優先しています」
社会貢献への想いと子ども置き去り検知センサーの開発に魅力を感じて、アイシンへ
中国出身の鄭は、日本語学校に1年間通った後、日本の大学院に入学し、電磁波工学を専攻。無線電力伝送の分野で、電力伝送の効率向上とアンテナについて研究しました。
「タッチしないで物を検知できる電波技術に興味があったんです。大学院で研究したアンテナに関する知見は、今の仕事でも活かされています。現在開発中のセンサーにも電波を発射するパーツにアンテナを使用しているからです」
卒業後は電機メーカーに就職し、自動車用ミリ波センサー製品の設計・開発に従事。そして2023年夏に、鄭はアイシンへ転職します。アイシンを選んだ理由には、社会貢献への想いがありました。
「ヨーロッパで自動車の安全基準が厳格化される傾向にあります。子ども置き去り検知センサーの市場は今後ますます拡大すると考え、この分野に携わりたいと思ったんです。子どもの安全は、親にとってなによりも代えがたいもの。
アイシンは、他社に先駆けて高精度なセンサーの開発に注力していることに加えて、研究開発への投資や人材確保を積極的に行っている点に魅力を感じました」
前職でのセンサー開発経験を活かし、新たな環境で挑戦することを選んだ鄭。入社当初は、仕事の進め方の違いに戸惑いを感じたこともあると言います。
「センサーの開発経験はありましたが、ここでのセンサーの原理は、前職で経験したセンサーの原理とは大きく異なっていました。そのため、センサーの原理から図面まで一から勉強し直す必要があったんです。わからないことはメンバーと積極的にコミュニケーションを取ってキャッチアップしながら、徐々に習得していきました」
チームワークでこそ達成できること。優秀な技術者と手を取りさらなる成長をめざす
入社してから、アイシンならではの業務の進め方にも気づきがありました。アイシンでは、試験業務において、文書作成とレビューのプロセスをとくに重視していて、これは鄭にとっては初めての経験でした。
「試験前の計画書作成、試験中の進捗報告、試験後の報告書作成という流れで、各段階で書類を作成しています。とくに試験前には、メンバー間でレビューを行い、活発な議論に発展することも。このプロセスを通じて、多くのアドバイスを得られますし、自分の考えを補完することができるので非常に助かっています。
このようなプロセスは始めてでしたが、メンバーのフォローもあり、すぐに慣れることができました」
中でも印象に残っているのは、センサーの認証申請です。外部認証機関への提出前に、社内でさまざまな試験を実施する必要がありました。
「1人では対応できない多岐にわたる試験を、チームメンバーそれぞれが担当し、協力して取り組みました。電波強度が基準より強くなった際には、急遽ソフトウェアチームに改修を依頼することもありました。
スケジュールが詰まっている中でも、チームで力を合わせたことで、すべての認証証明書を取得することができたんです」
今回のプロジェクトでは海外企業との共同開発も行っており、新しい技術のため、仕様書の明確化をめざしています。世界の優秀な技術者と切磋琢磨できる環境で、鄭は自身の成長を実感しています。
「毎週、海外のメンバーとミーティングを行う機会があります。言語の違いや時差の問題があり、スケジュール管理が悩ましいところですが、各項目の目標と進捗管理を整理しながら進めています。私の日本語は完璧ではないため、ミーティングでは頭の中で英語、日本語、中国語の3カ国語が行き交っている状態ですね。
そんな中でも、だんだん英語で自分の意見や考えを的確に表現できるようになり、自信がついてきました。グローバルな環境でキャリアアップをめざせること、そして社会に貢献できる製品開発に携われることに、技術者としての大きなやりがいを感じています」
やさしい人々に囲まれた環境で、センサー技術の多方面への応用に力を注ぐ
充実した環境で着実に成長を遂げている鄭には、長期的な展望があります。
「今後は製品開発の技術力を向上させて、将来的にはプロジェクトリーダーを担えるようになりたいです。まずは現在のプロジェクトの成功に貢献できるよう、目の前のお客さまそれぞれの要望に応えることに注力しています」
さまざまな社会課題の解決に取り組むべく、アイシンの技術の応用範囲は広がりを見せています。
「現在開発中のセンサーは、子ども検知にとどまらない可能性を秘めています。たとえばシートベルト締め忘れの検知や、カメラと統合した新しい機能の追加などのニーズもあります。お客さまの潜在的なニーズをできる限り丁寧に把握し、社会的意義の高い製品開発をめざしていきたいです」
アイシンに入社して約1年半。鄭は自身の経験を振り返りながら、新しいメンバーとなる方にメッセージを送ります。
「アイシンには『自動車業界で革新的な製品開発に挑戦したい』という思いで、さまざまな専門分野を持つ人が集まっています。多様性が尊重され、決まった型にとらわれず新しいことに挑戦できる環境があります。
チームワークが肝心なので、コミュニケーション能力が求められる場面が多くありますが、その中で、メンバーが本当にやさしく、親切に助けてくれます。注目と期待を集める分野で、お客さまに寄り添った製品開発をしたいという意欲のある方は、アイシンは最適な環境だと思いますよ」
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
