担当部品にとどまらず、クルマ目線で最適な形状や配置を提案する
モーターの接続部品となる端子台や中継バスバーの設計を担当するPTモータ技術部 第3設計室 第4Gグループ。10人ほどのチームで和やかな雰囲気の中で仕事が進められています。
「私たちが担当している端子台や中継バスバー、パワーケーブルは、モーターと他の部品をつなぐ役割を担う部品。アイシンの主力製品であるeAxle(eアクスル)はもちろん、さまざまなモーターに使用できるものを設計しています。
仕事をする時はしっかり集中する空気がありますが、雑談もしやすいバランスの良い雰囲気の部署です」
端子台を設計するにあたっては、各自動車メーカーの車両フロアの形状に合わせた調整が必要となるため、搭載位置の交渉なども山田の役割。交渉時には、これまでの経験が活きていると話します。
「前職では、派遣エンジニアとして自動車メーカーで勤務していたので、他の車両部品に関する知識も持っています。時には自動車メーカーから『ここに置きたい』という少し難しい要望をいただくこともありますが、『そのためには、この部品の位置を変える必要がありますよね』といった交渉ができるのは、その経験のおかげです。
アイシンは部品を担当する会社ですが、車両全体やシステム全体から考える視点を重視しています。それは、最終的にユーザーの元に届くのはクルマであり、コストも含めてクルマ全体で最適化することが大切だからです。私も完成車メーカーと深く議論しながら、クルマ目線で仕事をすることを心がけています」
また、自動車メーカーだけではなく、仕入れ先との関係も大切にしていると続けます。
「仕入れ先の方々があってこそ、私たちの製品は成り立っています。品質を確保するために求める形状や仕様はありますが、仕入れ先が製造に苦労するような状況を作ってしまうと、最終的には当社の品質に影響します。ですから、無理な要求はしないことを心がけています」
派遣会社の思いがけない打診をきっかけに、管理栄養士からキャリアチェンジ
小学生の頃から、医療関係の仕事に就きたいという夢を持っていた山田。しかし、医師や看護師はハードルが高いと感じたこと、解剖などが苦手だったこともあり、別の側面から医療に関われる仕事をめざすことに。
「栄養学であれば私にも取り組みやすい分野だと考え、医療栄養学科に進学したのです。実際には解剖実習などもあったのですが、無事に管理栄養士の資格を取得しました」
卒業後は、長期療養やターミナルケア(終末期医療)を中心とする病院に就職。栄養管理や外来の栄養指導などに従事します。しかし、5年ほど経つと、新たな環境での挑戦を考えるようになります。
「回復が難しい患者さんも多い中で、『自分には何ができるのだろう』と考えて落ち込むことが多かったんです。そこで、ガラッと環境を変えてみようと、人材派遣の会社に登録することにしました」
当初は食品やサプリメントなどの開発職を志望していたものの、たまたまその分野の案件が少ないタイミングだったことが、キャリアを大きく変えるきっかけになりました。
「担当の方に、『この仕事も山田さんの雰囲気に合っていると思いますが、どうですか?』と声をかけてもらったのが、自動車メーカーの仕事。まったく知識はなかったのですが、『研修もあるので大丈夫ですよ』と背中を押されて、『じゃあ、やってみます』と軽い気持ちで承諾しました」
1カ月ほどCADの研修を受け、派遣先の認定試験に合格。エンジン内におけるハーネス(電線配線網)の経路を検討する仕事を担当することになりました。ゼロからのスタートだったので最初は苦労しましたが、出図した図面の試作品ができた時に楽しさを実感できたと振り返ります。
「関係部署と交渉しながらベストな経路を考えていく必要があるため、設計スキルはもちろんコミュニケーション力も必要です。そういった意味では、管理栄養士としてたくさんの患者さんと接してきた経験が活かせました。
また、各部署と交渉しながら決めた経路が試作品として形になった時に、すごく達成感を覚えたのです。これまでとは違う、モノづくりの醍醐味を感じました」
新たな挑戦のためアイシンへ。自動車メーカーでの失敗経験を活かして課題を発見
自動車メーカーで5年間、パワーケーブル関連の業務を経験した後、新たな挑戦を求めて転職を考えるようになります。アイシンを次のステージに選んだのは、現場で接した社員に魅力を感じたことでした。
「同じ自動車メーカーに、アイシンの社員が何人か出向していたんです。仕事にはとても真面目に取り組むけれど気のいい人たちが多いという印象で、その雰囲気が良いなと思いました。
また、アイシンならこれまでの経験を活かしながら別の領域でも貢献できるのではないかと考えたことが入社の決め手です」
2023年に入社すると、3カ月ほどたった頃に携わったプロジェクトで、早速自動車メーカーでの経験を活かせたと振り返ります。
「試作品を評価する際に、設計した試作部品と別部品が干渉してしまうという問題が発生したのです。私が経験していた領域ということもあり、試作部品の検討治具が原因だと即座に特定できました。
評価はやり直すことになったのですが、早めに手を打つことができたのは、それまで何度も失敗してきた経験があったからだと感じました」
現在は、その経験を活かしながら、新たな課題にも取り組んでいます。
「今担当している接続部品は、アイシンでは初の接続仕様になります。設計する際には数字だけでは判断できない部分も多々あるのですが、過去のハーネス設計経験から自分の中である程度の感覚値も持っています。今後は、感覚的な部分を数字として明確にして良ければ良いなと思っています。
まだまだ自分の経験を活かしきれていないと感じるものの、同じような問題が発生する可能性を予測しながら必要な検討事項を洗い出したり、周囲の人たちと相談したりしながら貢献できる部分を広げていきたいと思います」
データで評価を可視化することで、より良いクルマづくりに貢献したい
管理栄養士として培ったコミュニケーション力、そして自動車メーカーで積み重ねたクルマの知見を土台にしながら成長している山田は、アイシンで働くやりがいをこう語ります。
「自分が携わった製品がメディアで公開されたり、完成したクルマを街中で目にしたりすると嬉しいですよね。ミニカーを購入した時に、この中の部品を自分が手掛けたんだと考えるのも楽しいです」
また、入社して見えたアイシンの魅力は、やはり「人」でした。
「小さなミスでもオープンに共有し、皆で改善につなげる文化があると感じます。アイシンは専門性の高い部品を扱っているのですが、困った時には周りの人が手を差し伸べてくれます。
たとえば、試作品を見せながら『ここを改善した方が良いと思うのですが』という話をすると、柔軟に受け入れてアドバイスをくれる人がたくさんいます」
周囲からも、「譲れることと譲れないことを理解した上で、必要なことをきちんと伝える力がある」と評される山田。自らがこれからどんな役割を果たすべきかという目標も明確に定めています。
「アイシンにおける接続部品の開発には、まだまだ改善の余地があります。実際の評価を通じてさまざまなデータを取ることや、最新の解析技術を活用することで、見えていない部分の数字を明確にしていきたいです。そうすることで、コスト削減や、サイズを小さくするなど、より魅力ある製品にしていくことができると思っています。
私自身も、経験値だけで曖昧に判断することはしたくないので、今から取り組んでいきたいと考えています」
もちろん、その取り組みの先には、クルマを使うユーザーへの想いがあります。
「クルマの部品は、お客様の安全に関わる重要な役割を担っています。最終的には、クルマに乗る方が安心して運転できることに貢献するのが私たちの使命。設計者としては、品質だけではなく、エンジンルームを開けた時に不安感を与えないような形状や配置も心がけながら、安心して運転を楽しめるクルマづくりに貢献していきたいですね」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
