開発した新型のセンサチップ。水圧計に搭載され、南海トラフ海底地震津波観測網に採用
──まずはそれぞれの仕事内容を教えてください。
三橋:駒ヶ根事業所には100人ほどが在籍する製造部門と、私たちを含め10人弱で構成される開発部門があります。私はシリコン振動式圧力センサのキーとなるセンサチップの設計や検証、作製のプロセス開発など、センサチップ開発の全般を担当しています。
この新型チップを搭載した水圧計(津波計)は南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)にも採用されています。地震に伴う津波による海底圧力変動を観測することによって、津波の確実な検知を可能にし、被害の低減につなげたいと考えています。
新型チップのさまざまな応用に向けて開発を進める中で、たとえばより高い精度で測りたいというニーズがあればチップの設計を変えるなど、企画部門からの要望にもとづいて開発していく形です。
金子:私は、シリコン振動式圧力センサの応用開発に携わっています。とくに力を入れているのが、成長市場である水素分野や半導体分野の応用を見据えた圧力センサの開発です。当社にはない技術も多く扱うため、試行錯誤の日々です。
──普段、仕事をする上で大切にしている価値観はありますか?
三橋:開発に携わる中で気になることがあればすぐに実験し、自身の開発が正しく進んでいるか、確かめることを大事にしています。また、学生時代から手を動かすような取り組みが好きで、頭であれこれと考えるよりもまずは行動することも大事にしています。考えるばかりでなく実際にトライしてみることで見えてくるものもたくさんあると思っています。
金子:大学時代に先生から教わった「守破離(しゅはり)」という考え方を大切にしています。当社に当てはめて考えてみると、まずは会社が持つシリコン振動式圧力センサに関する技術を忠実に守り、身につける。そこから問題の解決に向けて新しい方法を試して発展させ、最終的には独自のものを生み出し、確立させる。
私自身は今、「守」と「破」の段階だと思っていて、さまざまな知識を得た上で自分なりに実践を積み重ねている最中です。
縁のなかった長野に根を張り、自然豊かな環境で育児。社員同士で家族ぐるみの交流も
──大学や大学院では何を研究していましたか?
三橋:理学部・理学研究科に所属し、物性物理の分野で超伝導について研究していました。当時から評価系を自分で組み立てて実験したりしていて、そういった部分は今の仕事にも通じていると思います。
金子:工学部・工学研究科で、まさに今関わっているMEMSについて学んでいました。MEMSと弾性波を組み合わせたデバイスや材料評価の研究でした。
──就職活動で重視したことや横河電機を選んだ理由を教えてください。
三橋:私は特定の業界へのこだわりがなく、メーカーを中心に就職活動をしていました。その中で、学生時代に当社の測定器をよく使い、また研究室の先輩が働いているということもあって、当社に親しみを感じたことが入社に結びつきました。グローバルに展開しているという点も好印象でした。
金子:まず、MEMSに関わることができる会社がいいなと思っていました。シリコンは理想的な弾性体で、シリコンだけでできるセンサこそが最強だとも感じていて、シリコン半導体の開発に長けている当社に心惹かれました。
そして、当社の差圧・圧力伝送器DPharpはMEMSの教科書にも出てくるのですが、ある展示会で当社のブースを訪ねた際、エンジニアが数十年にわたって一つの技術を磨き続ける姿にある種伝統工芸の職人魂のようなものを感じ、魅力的だと思いました。就職活動中に他の社員からも話を聞き、その人がとても技術に明るかったことも入社の決め手になりました。
──2人とも入社から一貫して駒ヶ根事業所勤務です。現地での暮らしについて聞かせてください。
三橋:もともと長野との縁はなく、東京勤務を希望していたところ、駒ヶ根事業所に配属になりました。でもその後、駒ヶ根の人と出会って結婚したので、今では駒ヶ根でずっと暮らしていくイメージを持っています。人生、不思議なものです(笑)。
ここでは満員電車に長時間揺られることもなく、自宅から車を5分走らせたら会社に着きます。豊かな自然に囲まれて子育てができる環境が気に入っていて、広い公園やピクニックができる高原、スキー場などさまざまな場所に気軽に遊びに行けるのもいいです。
金子:私も長野とのつながりはありませんでしたが、駒ヶ根で働くメリットをたくさん感じています。家と職場が近くて車で10分なので、残業をしなければ午後5時半に帰宅し、子育てに多くの時間を使えるのがいいです。昼食のために一時帰宅し、また会社に戻って働くということもできます。リモートワークも比較的自由にでき、状況に応じて自宅で報告書をまとめることもあります。
駒ヶ根事業所に勤務する社員の多くは伊那市・駒ヶ根市周辺に住んでいるので、休日の外出先やイベントでご家族と一緒のところをバッタリお会いすることがよくあります。家族ぐるみの付き合いをすることもよくあって、三橋さんの家族とも仲良くさせていただいています。
そのようなビジネスライクではない人間関係がベースにあるアットホームな雰囲気が職場に浸透していて、働きやすさにつながっていると感じています。
横河電機が誇る技術を結集し、かつてない性能の実現に貢献
──働く中で、苦労して乗り越えた経験や自らの成長を感じたことはありましたか?
三橋:南海トラフ海底地震津波観測網に採用された水圧計開発では、大きな壁に直面しました。さまざまな試験を経てセンサチップの設計を完了する、その最終段階で問題が起きたのです。そこから部長や私のトレーナー、関係各所の方から協力を得ながら原因調査をし、結果的に解決に至りました。開発部門は小所帯で、何かあればいつでも相談できる環境であることにも救われました。
そしてこの経験から「計算上、こうすれば不良は起きないだろう」と設計段階で計算しておくだけではダメで、実際に手を動かして検証することの重要性を学びました。
金子:私は入社2年目~4年目の時に、DPharpのウェハの生産ラインを大口径化するプロジェクトに携わったことです。その中で、センサの特性を決定づける重要な「エピタキシャル成長工程」があり、小口径から大口径への移行において、形状の合わせ込みには手を焼きました。
というのも、小口径と大口径のウェハでは基板サイズや使う装置、成長レシピなどが違う中、エピタキシャル層の厚さや幅を数十ナノメートルレベルで合わせ、ほぼ同じ特性にするためには非常にデリケートな作業に忍耐強く取り組む必要があります。
ウェハにエピタキシャル層を成膜し、へき開して、断面を電子顕微鏡で確認して考察する。そんな地道な作業を先輩社員や有識者を交えて続けた結果、エピタキシャル成長条件を確立し、目標歩留を達成することができました。一連の取り組みを通じて、「大きな結果を得るためには一歩ずつ着実に粘り強い努力を積み重ねていくことが欠かせない」と気づかされました。
──現在の仕事のやりがいや魅力を教えてください。
三橋:世の中にないような高性能なものを開発することにやりがいを感じています。性能を突き詰めていくと、今までに見たことがない不良に遭遇することがあります。その不良原因を解明した時は、やっててよかったなと思います。
また、MEMS関係で最大規模の国際学会であるTransducersで成果を報告する機会を頂くなど、自分の成長を実感することができると大きなやりがいを感じます。
金子:大きな市場の開拓をめざして、試行錯誤しながらセンサを開発することに仕事の醍醐味を感じています。まだ未知の部分も多いですが、だからこそ可能性に満ちていて、将来的には当社の差圧・圧力伝送器に次ぐような製品を生み出せたらいいなと、今からワクワクしながらイメージを膨らませています。
横河電機の製品をこれまで以上に世界に広め、高精度なセンサで社会を支えたい
──今後はどのような分野や業務にチャレンジしたいですか?
三橋:専門的でユニークな技術を扱う今の仕事に大きな魅力を感じていて、まだまだこの分野で活動し続けたいです。シリコン振動式圧力センサのチップ開発を手がけているのは駒ヶ根事業所だけ。
そういった意味でも非常に重要な拠点と位置づけられていますので、ここでスペシャリストとしてこの分野を託されるような存在になりたいと考えています。
金子:開発者、研究者として実績を積み上げながら、ゆくゆくは企画もできるヒットメーカーとして、世の中の多くの人たちに使っていただけるような製品を生み出していきたいです。今、開発している技術についても、実用化の段階に入った際にはそれをもとに自ら製品を企画したいと思っています。
──現在、就職や転職をめざしている人たちに向けて、アドバイスがあればお願いします。
三橋:駒ヶ根事業所は当社が磨いてきたユニークな技術を扱う人たちが集まっています。そのため、技術が好きでとことん突き詰めていくようなタイプの人がこの仕事に向いているのではないでしょうか。
また、入社前には圧力や振動を測定するためのセンシング技術の基礎知識を身につけておくと、よりスムーズに仕事に臨めると思います。
金子:私も三橋さんの考えに賛成です。あとは日頃からアンテナを高く張り、ささいな変化や違和感に気づくことも大事です。そこから新たな開発の芽をが出てくることもありますので。さらに言えば、学生時代のうちに「仮説を立てて実験し、結果を評価して報告・発表する」という研究の型のようなものも体得しておくと、当社に入ってからも活かせると思います。
──最後に、新しく入社する人たちと共に成し遂げたいことを教えてください。
三橋:どのセンサにおいても、過去に測れなかったものが測れるようになると、新しい世界が見えてくると思っています。今までできなかったことを実現するために、共に手を携えて最先端のセンサ開発に挑戦していきましょう。
金子:当社の中期経営計画では、2030年に向けて「売上高1兆円規模のグループ企業として社会に貢献していくことを目指す」という目標を掲げていますが、既存製品の積み上げだけでは到底、達成できません。
今取り組んでいるセンサの応用開発を実現させ、当社の製品をこれまで以上に世界に広め、高精度なセンサで社会を支える。新しく入社する方々とそんな志を一つにして、目標を実現させていくことを楽しみにしています。
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
