インテリアが好きだった学生時代。持ち前の行動力で道を切り開く
2023年にウェルカムに入社した森田尚樹は現在、HAYの統括を務めています。彼のHAYの日本でのありたい姿や目標をキャリアと共に語ります。
森田が建築・インテリアに興味を持ち始めたのは母の影響でした。
「昔から母がインテリア好きで、わたしも幼い頃から家にあったインテリア関係の雑誌を眺めては『自分の好きな空間』を探していました。何かを作ることも好きでしたね。中学生の時に、授業でスチレンボードを使って家の模型を作るという課題があったのですが、1年かけてキッチンやトイレまで細かく作り込むという大変な課題だったにもかかわらず、僕はそれに夢中になりました!凝りすぎて半分も完成しませんでしたが(笑)」
大学進学後は建築・インテリアの世界に熱中し、暇があればその類の本や雑誌を読み知識を深めていきました。
「高校時代からこの世界に興味を持っていたものの、大学では経済学を専攻しました。学生時代の自分を振り返って言うなら『ダメな大学生』。学校では何事にもあまり注力していなかったと思います。そして、大学に行くふりをして洋書屋さんに立ち寄っては建築やインテリア関係の洋書を日がな一日眺めていたり、都内のインテリアショップを回遊したり、蚤の市で会場の隅から隅まで雑貨を物色したりしていました。やっぱり自分は建築・インテリアの世界が好きなんだと思いました」
自身の進む道を確信した森田は就職活動をスタートしました。
「当時、僕が就職したいと思うような会社はリクルート情報誌にはほとんど載っていませんでした。そこで、当時まだ季刊誌だったCasa BRUTUSの巻末に掲出されているインテリアショップに片っ端から電話をかけて新卒で入社したい旨を伝えるところからわたしの就職活動はスタートしました。そして、そのほとんどは『新卒採用を行っていません』と一蹴されるばかりでした」
その後も諦めずに電話をかけ続けた森田は、いくつか採用を行っている企業を見つけます。その中に森田の第一志望としている企業もあったと言います。8年ぶりの新卒採用を行っており、まさに奇跡的だったと振り返る森田。
「たった1年違ったらその枠がなかったと考えると本当にすごいタイミングだと思いました。『なんとしてでも受かりたい!』という一心で採用試験の前には念入りに下準備をしました」
1次・2次選考を通過し、ついに最終試験。最終選考では面接に加え1枚の紙を渡されました。
「白紙に将来やりたいことを書く、という自由課題でした。普通に書いてもつまらないので、自分がデザインに目覚めた商品や、会社に入ってやりたいことなどを物語仕立てにまとめました」
試行錯誤を重ね、オリジナリティー溢れる課題を完成させた森田。その熱意が伝わり、見事採用。憧れていたインテリア会社で社会人生活をスタートします。
個人という存在──人生のターニングポイントとは
第一希望の会社でコントラクトの営業として働き始めた森田。営業を始めて4〜5年目のころ、大きな転機が訪れました。自身の経験上最も大きな案件を受注することができ、社内の売上実績が1位になり、社員投票によって選ばれるその年の年間最優秀社員賞を受賞したのです。
結果を残し、評価をされたことがすごく嬉しいと思えた矢先、1人の先輩から厳しいひと言が飛んできます。
「『これを何年も続けることができたらようやく本物だ』と言われました。最初は嫌なことを言う先輩だなと思いつつ、よく考えたら確かにそうだよなと納得している自分もいたんです。『ここから2年、3年と、この水準を保ってやる!』と必死に頑張りました」
このころは、結果を出すことに貪欲になり、着実に実績を残すことができた反面、仕事と自分をオーバーラップしすぎてしまい、つらい時期だったと語ります。そして新卒として入社して22年間、マネージャー・事業部長などキャリアを積んできた森田。
今までのキャリアを振り返った時、今でも仕事のモチベーションにつながっている、忘れられないエピソードがあります。
「38歳の時に大阪店の店長をしていて、大規模なリニューアルプロジェクトのPJリーダーを務めていました。半年間、毎週のように打ち合わせのために東京と大阪を行き来して体力的にも大変でした。デザイナー・会社・お店のメンバーのそれぞれの想いがあり、それを具現化することに必死で、ものすごくストレスを感じていました」
全員が思い描くお店になるかとても不安だった森田は、仮囲いが外された日、東京から大阪に戻るのが終電の新幹線だったにも関わらずどうしても内装の仕上がりが見たくて、もうみんな帰ってしまった後の深夜のお店に立ち寄りました。
「まだ家具も何も入っておらず、完成していたわけではありませんでした。真っ暗な中、店内のブレーカーを探し電気をつけた時、パッと目の前に思い描いた空間が現れました。『あぁ、いい空間になったな』と、自分のやってきたことが形になったと感極まる瞬間でした」
達成感を森田自身が強く感じたといいます。
「今でも目を瞑ると、その時の光景が鮮明に現れるんです。疲れた時や仕事の方向性に悩んだ時に、このことを思い出し、自分の中で軌道修正を行っています」
その会社を森田は2021年に退職し、プロダクトデザイン事務所でプロジェクトマネージャーとして勤務します。
「ものづくりに近いところで仕事をしていくうちに、自分が本当は『つくる側』の仕事がしたいのだと気づき、退職後に自身のブランド『NODOR(ノードア)』を設立しました」
このブランドを立ち上げたことが森田の人生のターニングポイントでした。
「個人事業主になり、1人で自分のことを考える時間が増えました。会社員だった頃は、休日まで仕事のことを考え、『仕事=自分』という具合にのめり込みすぎて、本当の自分のことを蔑ろにしていた気がします。会社という枠から離れた時に、仕事と自分はイコールではなく、まず個人としての存在があり、『仕事は自分の中の1つの時間の過ごし方』だという大切なことに気づくことができました。」
ブランドを立ち上げてから商品アイデアを考えミシンで作り、自分が満足できるものを生み出せることに喜びを感じていると語る森田。達成感や満足感を感じる中で一つの不安も出てきたといいます。
「組織として動いていないので、出会う人も限られてしまい、自分に入る情報が極端に減ってきたことに焦っていました。自分の好きなモノ作りを続けつつ、家具・インテリアの世界にも身をおきながら両立したいと思うようになり、新しい仕事を探している時にウェルカムに出会ったんです。」
最初の会社で大阪店の店長として働いていたころ、ウェルカムの『DEAN & DELUCA 大阪店』がオープン。その時に『POP UPストア』の開催を依頼して代表の横川 正紀とも会っていた森田。以前から知っていた会社ということもあり、ウェルカムに応募したと言います。採用選考が進む中、ウェルカムに入社しようと思った決め手がありました。
「メンバー同士がカジュアルな関係で、個人としての存在を尊重してくれる雰囲気のよい会社だと思いました。事前に、個人事業を行っていることを伝えたら、面接の時にはインスタグラムやWebサイトを見てくれており、『応援しますよ!』『よかったらメーカーさんを紹介しますよ!』と、入社前にも関わらず背中を押してもらえて嬉しくなりました。
また、ウェルカムは創造的なブランドも多く、多角的なビジネスを手掛けているため、そのメンバーと働くことができたら、新しい発見や人とのつながりができるという期待感もあり、入社を決めました。今でもHAYと自身のブランドの2軸で仕事を続けています」
HAYを通じてお客さまがインテリアを好きになるきっかけになりたい
「HAYというブランドはすでに多くのお客さまから支持されていますが、本国にあるものをそのまま日本に持ってくればいいというわけではありません。どうすれば日本人の暮らしにフィットするのかを常に考えています。日本なりの付加価値をつけてHAYを啓蒙することがわたしたちの仕事です。『HAYの商品を生活の中に取り入れた時、幸せ度が上がる』そんなふうに感じてもらいたいです」
「商品・ブランドへの想いを込めて伝えること」は、HAYだけでなくウェルカム全体でとても大切にしていることで、自分の大切にしている価値観とも共通していると言います。同時に、チームメンバーともっとHAYを盛り上げていきたいと熱い想いを語る森田。
「働くメンバーは本当にHAYが大好きな人が多く、それは仕事のプラスになります。ただブランドの付加価値を高めるような創造的な仕事が出来ている人はまだ少なく、自分も含めてHAYの魅力を伝えきれていないところも。HAYが大好きなだけでなく、そこにさまざまな付加価値を足せるようなメンバーが増えれば、チームとしてのバランスも良くなるし、そうなれるようにチームを牽引していくのが自分の役割だと思います」
チームとして「HAYの魅力を伝えられる存在」として。ブランドとしてはどんな存在になりたいのか尋ねました。
「お客さまにとってHAYが『インテリア選びの入口』のような存在になれたら良いなと思います。インテリアを変えたいけれども何を選んだらいいのかわからない、と感じている人は世の中にたくさんいると思います。プロに頼めばいい時もありますが、やっぱり自分で選んで空間を作っていく方が手軽だし、本来は楽しいと思うんです。『自分でインテリアを選ぶ』というのが楽しいことなのだと多くの人が感じて、インテリア選びがもっと身近になるためのきっかけを、HAYが作れたらすてきだなと思います」
販売ではなく、「付加価値」を高めることが仕事
ウェルカムでは、HAY JAPAN全体を統括している森田。仕事をする上で大切にしている価値観があります。
「仕事を右から左へこなしていくのではなく、そこにどのような意味があるのかを考え、自分たちで付加価値を足していくことが大事。そのために、常に『創意工夫』を考えて仕事をしてほしいとメンバーに伝えています」
HAYは日本に上陸して7年目。多くの海外ブランドが苦戦する中、とても早いスピードで成長をしてきました。
「デザイン性が優れていることに加えて、生産方法や物流フローを工夫することでコストを抑え、『誰にでも手の届くデザイン家具』というインテリア業界の中で新しいジャンルを確立してきました。しかし、HAYの持つ魅力・価値をまだ伝えきれていないとわたしは思います。もっとブランドの魅力・価値を啓蒙し、日本なりの付加価値をつけて展開できれば、HAYはより大きな成長を遂げると思います」
※ 記載内容は2024年4月時点のものです

