自社の知的財産権を守るだけではなく、知的財産権を活用することで、企業の競争力や価値向上にも大きく関わっている知財担当者。「特許」や「商標」などについてはなんとなく知っているものの、知財担当者は普段どのような仕事をしているのかを知らないという方もいるのではないでしょうか?
本記事では、知財担当者の仕事内容について、また実際に知財担当として働く人々のやりがいをご紹介していきます。就職活動の情報収集にぜひ活用してみてください。
「知財」担当者の仕事とは?
知的財産権は特許権、著作権、商標権、意匠権に分類され、新しい発明や技術、文学や音楽、美術などの著作物、ブランドや商標、デザインなどが対象になるため、知財担当者はメーカー業や情報通信業、アパレル業や食糧・飲料業、医療系やエネルギー・環境業など幅広い業種・業界で活躍しています。
企業の規模や業態によって、分業しているケースや業務の幅が異なることもありますが、ここでは一般的な知財の業務を簡単にご紹介します。
▶︎知財担当者の業務
・知財戦略の策定
知的財産権は権利を取得し、自社の発明や技術を守るだけではなく、権利を活かすことで市場での競争力や優位性を高めることができます。そのためにも、知的財産権を管理するための知財(特許)ポートフォリオを作成・管理したり、自社の経営戦略や市場の動向を踏まえて知的財産権をどのように活かしていくのかなどの戦略を策定したりしていきます。
・発明の発掘
社内の研究開発部門をはじめとする従業員と連携し、新たな発明や新たな技術について情報収集をし、特許の取得が可能か調査・検討を行います。
・特許/商標/意匠登録の手続きや権利化
特許登録の申請に必要な書類の作成や手続き、特許権が付与(権利化)されるまでの対応なども行います。また、特許以外にも商標や意匠登録などの手続きも知財担当者が対応します。なお、特許、商標を維持するためには、維持費を支払って権利を更新する必要があるため、こうした管理も行います。
・知的財産権にまつわる契約書の作成や交渉
知的財産権の活かし方の中には、知的財産権をライセンスし、ライセンス契約による収入を得ることや、技術移転契約を結び、技術やノウハウを提供すること、ブランドやビジネスモデルをフランチャイズすることなどが挙げられます。こうした契約時の契約書類の作成や交渉を行うのも知財担当者の役割です。このほかにも知的財産権にまつわる契約は多数あり、法務部門と連携しながら対応していきます。
・他社の特許の調査/分析
他社が所有している特許を調査・分析することで他社の戦略を知ることは、自社の知財戦略を策定する上でも重要です。また、他社が自社の特許を侵害していないか、逆に自社製品やサービスが他社の特許を侵害することがないようにする上でも大切です。また、調査/分析により、自社が特許を取得する可能性を見出すことも可能です。
・紛争対応
他社から自社のもつ知的財産権を侵害された場合、法的手続きなどの訴訟の準備、交渉などを行います。また、ライセンス契約などで紛争が発生した際にも対応を行います。
・知的財産権にまつわる教育
従業員に対して、知的財産権に関する教育や情報提供などを行います。
こうした業務は企業内部だけではなく、外部の弁理士や特許事務所などとも連携して業務が行われます。
知財担当者の仕事の魅力
・ビジネス戦略に貢献できる
知的財産権という資産を活かすことで、企業や商品・サービスの競争力や市場価値を高めることができます。
・法律/技術/ビジネスと幅広い知識を身につけることができる
法律について専門性を高められるだけではなく、特許の対象になる技術などについてもしっかりと理解する必要があります。また、ビジネス戦略上でも重要な仕事であるため、専門性を高めながら幅広い知識や経験を身につけることが可能です。
・グローバルに働くことができる
知的財産権は著作権を除き各国で権利化する必要があるため、海外でも知的財産権を保護するためには別途手続きや権利化が必要になり、グローバルな視点が求められることもあります。また、ライセンス契約や紛争対応などで海外企業とも交渉が必要になることもあるでしょう。
・創造性のある仕事ができる
知的財産権を取得する上では、企画段階から知財担当者が参加し、他社の特許取得状況について情報提供したり知財に関するアドバイスをしたりすることもあります。また、知財ポートフォリオを作成したり、技術移転契約、アライアンス契約などに向けて新たなビジネスチャンスを得るために思考したり、ビジネス戦略に貢献するために思考したりといった機会もあります。
・企業やサービス/製品/技術などを守ることができる
自社の従業員が苦労して生み出したものを守ることができるのが知財担当者です。こうした部分にやりがいを感じる方も多いのではないでしょうか。
・学び続けることができる
法律や制度は変化し続けますし、競合他社の特許取得情報なども常にキャッチアップし続ける必要があります。また、技術にもトレンドがありますし、法律や技術など幅広く学び続けることが大切です。
知財担当として働く方々の実際の仕事とやりがい
実際に知財担当者として働く方々は、具体的にはどのような業務をしていて、どんなやりがいを感じているのでしょうか?実際に働く方々の声をピックアップしました。
※記載の情報は記事公開当時の内容です。
▶︎オリンパス株式会社
事業内容:内視鏡事業、治療機器事業、科学事業 等
・仕事内容:内視鏡システムの光源技術、画像処理技術およびプラットフォームを開発する部署の知的財産を担当
・やりがい:
五十嵐さん 「内視鏡をはじめとする医療機器を取り扱うことから、間接的であっても、患者様の健康や人生に関われていることに誇りを持って仕事に取り組んでいます。
一方、大きな責任も感じています。もし当社の内視鏡が他社の特許を侵害し、結果として当社の内視鏡が使えなくなってしまった場合、患者様に大変な迷惑をかけることになります。医療機器の特許侵害によるリスクの大きさは計り知れません。人命に関わっているとの意識を常に持って仕事と向き合うように心がけています」
→ストーリー:発明の価値を深堀りし、オリンパスの技術を守る──医療事業の知財活動に携わる責任
▶︎株式会社デンソー
事業内容:自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカー
・仕事内容:知財部に所属し、自動車業界における通信関連の特許問題の解決のために奮闘
・やりがい:
阪田さん 「知財を守ることは、技術を守ること。技術を守ることは、その技術を作ってくれた人や、そこに関わる人々の生活を守ることになります。つまり、われわれ知財の仕事は、自分の会社の利益だけではなく、産業や社会にも貢献できる仕事といえます」
→ストーリー:“攻め”の姿勢で事業と社会の発展に寄与。知的財産の最前線で戦うエキスパートの信念
▶︎日本電気株式会社(NEC)
事業内容:社会公共、社会基盤、エンタープライズ、ネットワークサービス、グローバル
・仕事内容:データサイエンス関連、AI領域の知的財産業務・特許出願を担当
・やりがい:
西本さん 「自分が担当した技術がはじめて製品として発表されたときや、担当した特許出願がはじめて登録をされたときは、本当に嬉しかったですね。自分で育てた子どもが成人したかのような喜びを感じました。
最初に特許を申請してから登録になるまでの期間は、時間がかかるケースもあるため、成長の実感はじわりじわりとしたものでしたが、周囲の助けを得ながら、一歩一歩着実に前進をしてきたと感じています」
→ストーリー:言葉の力で技術を守り、世の中に発明を送り出す──NECの知財担当の魅力
▶︎株式会社 明治
事業内容:牛乳・乳製品、菓子、食品の製造販売等
・仕事内容:研究本部知財戦略部の専任部長
・やりがい:
ウォルトンさん 「中でも印象に残っているのが、明治独自の粉ミルク成型技術を活用した事業提携が実現し、ヨーロッパでの販売が開始されたことです。明治では研究開発に力を入れてきました。その結晶ともいえる高い研究力・技術力が国内だけでなく、海外でも認められることはとてもすばらしいことだと思っています。
私自身、その交渉にあたっては最初から最後まで関与し、共同作業などの面で貢献しました。テストマーケティングに2年を要するなど、交渉が成立するまでには紆余曲折ありましたが、今後の展開に弾みをつける上で良いきっかけになったと自負しています。
交渉役を務めていてやりがいを感じるのは、意志の疎通に成功したときです。たとえば、明治の代表として、こちらの状況、大切にしている点、知りたい点、伝えたい点などを説明し、それが正しく伝わり理解が得られたときは大きな喜びを覚えます」
→ストーリー:明治の技術を世界とつなぐ橋渡し役に。日本型キャリアを歩んだ私だからできることを
今回ご紹介したストーリーでは、実際にどのような業務を担当しているのか、これまでどのようにキャリアを積んできたのかなどが詳しく語られています。知財にまつわる仕事に興味を持たれている方はストーリーをヒントにどんな企業でどのように活躍したいかというイメージを膨らませてみてはいかがでしょうか?
