国際的な場で、研究力・技術力の発信をサポート。情報マネジメントが交渉成功の鍵
私が所属する研究本部知財戦略部では、研究情報や特許商標など、知財に関するあらゆるものを管理しています。部署の名前にもある通り、将来的にどんな研究が必要になっていくかを戦略的に考えることも業務の一部です。
それと並行して、明治のイノベーティブな研究力・技術開発力を海外に向けて発信することにも携わってきました。近年は国際協力がますます重要になってきているので、さまざまな企業、大学などとの共同研究を行う取り組みにも積極的です。
また、国際酪農連盟やGDPなどの国際団体にも、明治の代表として、日本のセクターの代表として参加しています。とくに国際酪農連盟では執行役員のような立ち位置で委員会メンバーに加わり、高品質で安全な製品の持続可能な調達を目指して、盛んに情報や意見の交換を行ってきました。
海外の企業や団体とコミュニケーションする上で気をつけているのは、日本のビジネスの進め方についてまずきちんと理解してもらうこと。日本企業は、念入りに考え、周到に準備してから行動に移すのが一般的です。失敗が少ない反面、意思決定に時間がかかる傾向があります。
ところが、海外ではスピードを重視されることが多い。返事が遅いことで「何か問題があったのでは」と不安を感じさせてしまうケースもあり、文化や価値観の違いが、交渉する上での重要なポイントになっています。
そのため私は、日本の感覚と海外の感覚が違うことや、意思決定に時間がかかる日本企業のシステム上の理由などを説明し、理解を得るよう努めてきました。交渉の内容そのものも重要ですが、そうした交渉相手との情報マネジメントがとても大切だと思っています。
研究員から、海外の企業や団体との橋渡し役へ。日本型なキャリア形成が強みに
私が来日したのは1991年。アメリカの大学で博士の学位を取得後、日本の旧科学技術庁から研究費の助成を受け、ポストドクターとして理化学研究所に迎えられました。その後、旧通産省のプロジェクトに参加したことをきっかけに明治の方々とも仕事をするようになり、入社することになったんです。
私の専門は化学で、大学の研究室の仲間のほとんどは製薬会社に勤めています。そんな中、私が選んだのは、明治でした。健康食品に興味があったのもありますが、さまざまな社員と知り合う中で、安心して働ける企業だと確信したのが理由です。
明治は、法令順守意識がとても高く、コンプライアンスの観点からいってもきわめて優良な企業です。国際的に見ても誇れる水準だと感じました。
そして、何よりも「人の魅力」ですね。問題を抱えている人に手を差し伸べようとするなど、人柄の良い人がとても多いと感じました。直接話したり相手の意見を聞いたりして問題を解決していく“人対人”の文化がある。とても良い環境だったので、ここで働こうと決めました。
入社当初は研究員として働いていました。その後、研究・情報管理や知的財産などに関わるようになり、業務の幅が広がるにつれて、少しずつ社外と交渉するような仕事が増えていきました。
私は海外人財としては珍しいキャリアを歩んできたと思います。海外では何度も転職する人が多いですし、決まったポジションで仕事をするのが普通ですが、私は日本の方々と同じようにキャリアを積んできました。日本の企業に入って、転職することなく、さまざまなポジションを経験しながら、今があります。
日本企業特有の制度や慣習を肌で感じてきたことが自分の強みとなり、今の仕事に大いに役立っていると感じています。とても貴重でおもしろい経験ができました。
明治独自の技術を活用した事業提携がヨーロッパで実現。社内における存在意義を実感
明治の技術は、世界のさまざまな国々で活用されています。私がこれまでに関わった仕事の中で、とくに有意義だと感じているのが、そうした明治の高い技術力を海外に紹介し展開していく仕事です。
中でも印象に残っているのが、明治独自の粉ミルク成型技術を活用した事業提携が実現し、ヨーロッパでの販売が開始されたことです。明治では研究開発に力を入れてきました。その結晶ともいえる高い研究力・技術力が国内だけでなく、海外でも認められることはとてもすばらしいことだと思っています。
私自身、その交渉にあたっては最初から最後まで関与し、共同作業などの面で貢献しました。テストマーケティングに2年を要するなど、交渉が成立するまでには紆余曲折ありましたが、今後の展開に弾みをつける上で良いきっかけになったと自負しています。
交渉役を務めていてやりがいを感じるのは、意志の疎通に成功したときです。たとえば、明治の代表として、こちらの状況、大切にしている点、知りたい点、伝えたい点などを説明し、それが正しく伝わり理解が得られたときは大きな喜びを覚えます。
海外の企業や団体との情報交換、意見交換する上で、明治で長く働いてきた私だからこそ伝えられることがあり、また外国人である私だからこそ受け取ることができる想いがあると思っています。少し極端な言い方ですが、特異なバックグランドとキャリアを持つ私にしかできないことなのかもしれません。
海外で働いていたなら、きっとこうはなっていませんでした。日本のことも、明治のことも好きだからこそここで働いていますが、自分にふさわしい特別な役割を果たせていると感じています。
より強い明治を目指し、ダイバーシティ経営の実現を
世界を舞台にする国際的な企業として、創造的で活力ある組織作りをしていくためには、異なる人財、異なる意見、異なる文化を理解し、尊重することが欠かせません。多様な人財を積極的に採用し、多様な考えを意思決定に反映していかなければ、これからの競争を生き抜いていくことはできないでしょう。
海外に拠点を置くグループ企業の後に続くかたちで、明治本体も少しずつ変わろうとしているのを感じます。たとえば、女性の登用。女性の多様な働き方を支援する制度や研修が充実してきたことで、以前に比べて、役職者の女性の数が増えてきました。これはとても良い傾向だと思っています。
外国人の採用に関しては、日本と海外のキャリア観の違いがあるため、難しさはありますが、変化の兆しが見えてきました。明治に限ったことではありませんが、今後ますます企業としてチャレンジしていくべき点だと思います。
日本に興味がある外国人の方にも積極的にトライしてもらいたいですね。
日本には、期間を限定して働くことができる外国人のためのプログラムがあります。知識やスキルを身につけるのに、必ずしも正社員である必要はありません。短い間であっても、日本でしか得られない知識や経験を積めば、自国の中で橋渡しとして活躍する機会も出てくるでしょう。そうなれば、日本にも自国にも利益をもたらすことができる人財になれます。
さまざまな経験をしながら、ぜひ「自分だからこそできる」という力を見つけていってほしいです。

