若手エンジニアとしての挑戦──要素開発担当への抜擢
パナソニック インダストリー(以下、インダ)が独自工法を用いて開発した「透明導電フィルム FineX(ファインクロス)」。一見すると透き通った1枚のフィルムだが、表面には視認できないレベルに細かい配線が施されている。
「FineXはタッチセンサ用途で開発されましたが、高透明・低抵抗である特徴を活かすことで、タッチセンサ以外の幅広い用途にも柔軟に対応することができます」
ビルや車の窓に貼れば、車内空間や建物の意匠性を損なわずに透明アンテナとして利用できる。また、狙った場所を効率よく温める「狙った場所を効率よく温める透明ヒーター」としても使用でき、環境性能でも優れているという。
井原の任務は「FineX」の要素開発。新規材料の導入検証や顧客要望に応じた材料探索、金属膜の成膜工程の開発から量産化、製品評価までの一連のプロセスを担当する。入社2年目には新テーマを任され、主体的に開発を推進している。
「現在は量産のコストを大きく下げ、生産性を上げるテーマに取り組んでいます。さまざまな材料を取り寄せ、サプライヤ企業と一緒に評価し、最適なものを選び抜きます。昨年から始めたビーカー実験が量産機での実験段階に進み、来年には量産品に使用できるよう開発を進めているところです」
現場で磨かれる実践力──試行錯誤と成長の日々
新規材料の導入では、多くの試行錯誤があった。複数の材料を試しながら最適なものを選定する過程では思い通りにいかないことも多く、壁にぶつかることもあった。そんな時、井原は同じ工程を担当する先輩や上司に相談しながら、工場での製造実験や評価を繰り返すことで乗り越えてきたという。
「上司や先輩との距離が近く、困ったときにはすぐ相談できる環境が大きな支えになりました。毎日ひたすら実験室と製造現場を往復して、考えては挑戦し、相談しては実践し…という日々ですが、とても楽しんでいます」
実験室ではクリアにならなかったことが、製造現場に行って現物の装置を自ら動かすことで見えてくることも多々あるという。何社もの企業から多数の材料を取り寄せ、さまざま試したある日、一つの材料が「バシッとはまった」という。
「なんだか階段を一つ上がったような達成感がありました。大企業でありながら若手にも大きなテーマを任せてくれる。自ら学び、考え、手を動かし、相談し、また考えて…このスタイルが成長を加速させてくれたと感じています」
高専で培った複合的な知識と経験──化学×機械で広がるキャリアの可能性
井原は学生時代を高専で過ごし、本科時代の5年間では化学生物系を選択、専攻科時代の2年間では機械制御系に進んだ。
「本科卒業後に就職か進学かと考え始めていた頃というのが、バイオと機械の融合が話題になっていた時期だったんです。本科で得た化学の知識と機械や制御の両方を知っていたら、強いエンジニアになれるのではないかと考えて、専攻を変えての進学に決めました」
井原の通った高専は、化学であれば有機も無機も学び、材料に関してもレクチャーがあり、幅広い知識を得る機会を提供してくれた。加えて、実験や実習の機会が多かったことが印象に残っているという。
「自分の手で装置を動かし、自ら考えながら学ぶという高専のスタイルが、現在の仕事に直結していると感じています。化学で学んだ知識は材料選定や成膜工程に、機械や制御で学んだ知識は製品評価や設備理解に活かされています。高専での複合的な学びが今の業務に大いに役立っていますし、現場での課題解決や新しい技術への応用力にもつながっていると感じています」
高専を卒業した井原は、地元・岡山県津山にも工場を構えるインダに就職した。
「就職活動をしているときにFineXのことを知ったんです。こんなにも画期的な新しい技術が地元の津山で生み出されたのか!という驚きと、しかもパナソニックグループという大企業が新たな挑戦をしていることにも感銘して。私もここで新たな技術を立ち上げるメンバーになりたいって思って、インダに心惹かれました」
見えないところから、見違える世界に変えていく
高専卒業時には「組織責任者として働く母にあこがれ、自分自身も組織をまとめる存在になってみたい」と思い描いていた。しかしインダで過ごすうちに「自分の担当領域の開発から量産までを一貫して極めて、皆から頼られるスペシャリストになりたい」と、想いは形を変えつつある。知識や経験が豊富な先輩を上回りたい。実験室では得られない現場での体感を誰よりも習得したい。
「負けず嫌いなのかもしれないです。『この製品はこの人に頼れば間違いない』みたいな人になりたい想いが、今は強くなってきました」
インダは若手にチャンスをくれる職場であり、「自分の成長を求める就活生には、ぜひ挑戦してほしい会社」だと井原は推す。主体的に挑戦できる風土と、考えたことをすぐに実践できる環境があったからこそ、成長に最適な職場だと実感している。
「これから入社する後輩たちとも一緒に、さらに新しい技術や製品の開発に挑戦していきたいです。その時に、頼られる存在になっていたいんです」
見えないところから、見違える世界に変えていく──井原はこれからも「化学×機械」「実験室×製造現場」のハイブリッドなバックグラウンドを武器に、 開発から量産に至るまで知見も実現力も極めて、誰からも頼られるスペシャリストとしての道を切り拓いていく。
