空間に体験を織り交ぜる──コンピュテーショナルデザインで新たな価値を生み出す
クリエイティブ本部コンテンツ・インテグレーションセンター(※1)のクリエイティブ・ディレクション部に所属する吉田。「体験」を伴うような空間づくりを得意としています。
「単に空間をデザインするだけではなく、体験を伴うコンテンツと組み合わせたり、デジタル演出を入れたりと、テクノロジーやプログラミングなどのデジタル技術と融合した空間づくりをしています。企業ミュージアムもあれば、アートワークや渋谷スクランブルスクエアの展望施設『SHIBUYA SKY』、7月25日にまちびらきをした『Shibuya Sakura Stage』の賑わいや文化発信を担う環境演出作品など、さまざまなスケールや領域のプロジェクトに横断的に携わっています。
私の場合は、社外のクリエイティブチームやアーティストなどとチームを組んで仕事をすることも多いですね。今もいくつか平行してプロジェクトに取り組んでいます」
中でも、吉田が得意とするのは「コンピュテーショナルデザイン」です。
「コンピュテーショナルデザインは、デザインの仕組みをプログラムすることで、構造や機能など複雑な条件を解きながらデザインを生成する手法です。人間の手を使うより、時間を短縮するという使い方もできますし、人のチカラだけでは再現できないような精度の高いカタチをつくり出すこともできます。
コンピューターだから誰でも同じものができると思われるかもしれませんが、実はプログラムをする人の作家性やオリジナリティが反映されるので、別のデザイナーが同じ手法を使っても同じ結果にはならないんです。そこが面白さでもあります」
コンピュテーショナルデザインを駆使した空間体験を今も追及し続けている吉田。同時に乃村工藝社グループのイノベーション・ラボラトリー「NOMLAB(ノムラボ)」(2024年秋サイトリニューアル予定)にも参画しています。
「NOMLABでは、クライアントワークでのソフト開発等はもちろん、いくつかの研究テーマを設定して、社外のクリエイターと協力しながらインタラクションや制御を用いた新しい表現装置などのプロトタイプ開発にも挑戦しています。
私は2017年のNOMLAB発足当時からチームに加わり、一時離脱していた時期もありましたが、2024年から再びチームに合流しました。
始めは2~3人の部活動のような小さな集まりでしたが、今は規模も大きくなってきました。普段の仕事では、最終的なモノは協力社さんに作ってもらうことが多いのですが、NOMLABでは自分たちで手を動かして『ものづくり』ができるので、モノの仕組みがわかるなど勉強になることが多くてとても楽しいです。
ここでメディアや制御装置等を組み合わせた空間の可能性を探っているうちに、テクノロジーと空間を融合させたものを創りたいという気持ちが徐々に高まってきて、今の仕事につながっている感じです」
※1 コンテンツ・インテグレーションセンター (Content Integration Center:空想実装集団)は、コンテンツへの深い理解を起点に、心躍るような「空想」を新たな体験価値へ変換し、あらゆる空間へ、そして社会へ「実装」させていく乃村工藝社のクリエイティブチームです
「ものづくりに携わりたい」漠然とした思いで飛び込んだ乃村工藝社での挑戦と学び
吉田と建築・デザインとの出会いはまさに運命的。学生時代の出会いが、吉田を建築の世界へと誘いました。
「アルバイト先に大学院で建築を学んでいる方がいて、たまたま彼のポートフォリオを見せてもらう機会があったんです。そこには尖った壁や斜めの壁など、普通の建物では見られないような特徴的なデザインの建物がたくさん載っていて。
『こんなにも自由な建物が作れるのか』と感動しました。その出来事をきっかけに、大学・大学院と建築を学ぶようになりました」
もともとパソコンを使った作業が好きだったと語る吉田。大学院では建築都市システムの研究室で、コンピュテーショナルデザインを学びます。
「就職活動のころ、実はやりたいことがはっきりとは決まっていなかったんです。乃村工藝社に応募したのも、研究室の友人の影響でした。ただ、もともと建築よりスパンが短く、少人数のメンバーで意思決定ができるディスプレイの世界に適性を感じていましたし、とにかく『ものづくりに携わりたい』という漠然とした気持ちで入社しました」
そんな吉田が、乃村工藝社の魅力を感じたのは入社後だと語ります。
「入社当初は、上司の指導に四苦八苦しながら、がむしゃらに頑張っていました。中でも印象に残っているのが、自社の役員フロアにある応接室の改装プロジェクトですね。『乃村工藝社』を深く考える貴重な体験になりました」
プロジェクトでは、乃村工藝社の「藝」の字にならって「アートとものづくりの融合」を目指したと語る吉田。会社の一大プロジェクトということもあり、方針の決定には苦労したと言います。
「さまざまなお客さまをお招きする応接室だからこそ、経営層や管理部門、営業部門などさまざまな部署や立場の方々と話し合う機会があり、乃村工藝社の多様性を知る良い機会になりました。
また、仕事の面でも非常に勉強になる3年間でした。デザインの技術やクオリティだけでなく、会議の進め方、資料の作り方、議事録の取り方など、仕事の基礎を徹底的に叩き込まれました」
この時ほど大変な時期はなかったと笑う吉田。その上で当時の経験が、後の業務に活きていると語ります。
「この後くらいからNOMLABでの活動をはじめ、自分の得意分野でもあるコンピュテーショナルデザインを活かせる仕事に携われるようになりました。
入社当初はアシスタント業務をがむしゃらに頑張っていましたが、おかげで仕事の基礎力も身につき、徐々に主体的に動けるようになりました。仕事を自分事として捉えられるようになり、自分の作った空間が社会にどんな影響を与えられるかなどを考えるようになったのは成長ですね」
社外のアーティスト・クリエイターから受ける刺激。常に驚かされるアイデアの数々
社外のアーティストやクリエイティブチームと共にプロジェクトを進めていくことが多い吉田。彼ら、彼女らとの共創に楽しさを感じています。
「クリエイティブ面で常にさまざまな刺激をもらっています。そもそも思考方法がまったく違うので、社内では絶対出てこないような提案が出てくるなど、毎回驚かされますね。
映像やビジュアルのプロフェッショナルと働くことも多く、素晴らしいアウトプットの数々に毎回感心しながら仕事をしています。付き合いの長いアーティストさんも多いので、最近は会社を超えたチームとして、みんなで良いものをつくろうという意識が強いです」
さまざまなステークホルダーと共に働く中で心がけていることについて、こう語ります。
「とくにアーティストさんと仕事をする時に感じるのですが、彼ら、彼女らの求めるものは想像をはるかに超えていて、実現するのが難しいと感じることも少なくありません。だからこそ私自身が提案するものも、できる限り磨き上げて、最高レベルまで質を高めて出すことを心がけています。
それに、提案の仕方も工夫しています。空間デザインではパースを使うことが多いですが、私は映像を作ってプレゼンテーションするなど、デザインやアイデアの内容が伝わりやすい手法をとるよう心がけています」
常にアンテナを高く張り、世の中のクリエイターの作品をインプットすることも大切にしていると語る吉田。
「とくに素晴らしいと思うのは、生涯にわたって一つの手法を磨き続けているアーティストの方ですね。初期はそこまで印象的でなかったものも、長年時間をかけて磨き上げていくと誰もが目を引くような素晴らしい作品になったりするものです。
人が一つのことを突き詰めると、こんなに素晴らしいものができあがるのかと感動しますし、自分の未熟さを感じて『もっと頑張らなければ』と思います」
自由な働き方と真剣なものづくりが融合する場所──乃村工藝社の魅力とは
入社から10年が経った今、乃村工藝社に対する想いを語ります。
「当社は自由で個性的な社員が多く、ルールや責任はありながらも働き方が自由なところが魅力だと思います。デザイナーにもしっかりと決定権があり、真剣にものづくりに取り組めるところが好きですね。
しかし、私自身は会社の名前に寄りかかることなく、いつでも自分のスキルで食べていけるようにしておきたいと思いながら仕事をしています。そういう気持ちで働く社員が多い方が、結果として強い会社になると思うんです」
乃村工藝社に愛着を感じながらも、自立的なキャリアを意識する吉田。同社の雰囲気についてこう語ります。
「デザインをする時って、頭で考えてからデザインを生み出すと思われがちですが、当社には『考えるよりまず描く、手を動かしながら考える』というタイプのデザイナーが多く、私自身も入社当初大きな影響を受けました。ですからアクティブな方、フットワークの軽い方は当社に向いているのではないかと思います」
吉田自身の今後の展望についても想いをはせます。
「今の自分は、これまでやってきたことの延長線上にいると思っているので、これからも目の前のプロジェクトを精いっぱいこなしていったその先に、新しい道が開けるのではないでしょうか。
世の中の素晴らしいクリエイターの作品を見ると、自分の至らなさを悔しく思うこともありますが、そんな中でも諦めずにつくり続けることに意味があると思っています」
淡々としていながらも、常に熱意を持って一つひとつのプロジェクトに取り組む吉田。これからも周囲の刺激を受けながら自身の感性を磨き、すてきな空間体験を生み出し続けます。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです
