キャリアの転機では、これまでの経験が通用するのか、新しい環境になじめるのか、不安や迷いを感じるものです。一方で、過去の経験を活かしながら新たな知識や役割を身につけることで、キャリアの可能性を広げることもできます。
2004年の入社以来、異動を重ねながらオペレーション、経理・財務、人事、組織マネジメントと幅広い経験を積み、現在はHRサービス部の副部長としてグループ会社のHRプロジェクトを統括する神原純一さん。
一方、IT人材派遣会社で複数の開発現場を経験した後、2026年に野村ビジネスサービスへキャリア入社し、現在は変革プロジェクト室でシステム開発やチームづくりに携わる橋本駿建さん。
開発経験を土台に、証券業務や業務改善、DX推進へと役割を広げようとする橋本さんと、異動や新部署の立ち上げを通じて自らキャリアを切り拓いてきた神原さん。異なるキャリアを歩んできた二人は、メンタリングプログラムでメンターとメンティーとして出会いました。
対話を重ねるなかで見えてきた、キャリアをリスタートする意味、新しい環境への向き合い方、そしてこれからの挑戦について語ります。
まずは、お互いの印象から教えてください。
神原:初回のセッションでは、業務の話に入る前に、お互いの経歴や興味、これまでの経験について話しました。そこで、学生時代に同じスポーツを経験していたことがわかり、共通点が見つかったんです。
仕事の話をする前に自然と共感できる話題が出てきたことで、「橋本さんとは率直に話し合える関係を築けそうだ」と感じました。メンタリングは、人と人との関係性が土台になるものだと思っていたので、最初に距離を縮められたことは大きかったですね。
橋本:私も、最初に感じたのは「話しやすい」ということでした。普段の業務ではなかなか接点のない立場の方だったので、異なる視点から話を聞いていただけることに期待していました。
神原さんは、こちらの話を丁寧に聞きながら質問を重ねてくださったので、自分の中でぼんやりしていた考えや、これから取り組みたいことが少しずつ言葉になっていきました。
神原さんはメンターとして、どのようなことを意識していましたか?
神原:一番意識していたのは、自分の考えを押しつけないことです。メンターという立場になると、「こうした方がいい」「自分の場合はこうだった」と、すぐに答えを示したくなることがあります。
でも、それでは橋本さん自身が考える機会を奪ってしまうかもしれません。だからこそ、まずは話を聞くこと、そして答えを急がないことを大切にしていました。
橋本さんが迷っている様子を見ると、すぐに手を差し伸べたくなることもありました。ただ、そこで少し待ち、本人が自分の言葉で考えを整理していく時間を持つことが、長い目で見た信頼関係につながると考えていました。
橋本:その姿勢は、対話のなかでも感じていました。何かを一方的に教えていただくというより、質問を通じて自分で考えられるように導いてくださった印象です。
話しているうちに、「自分はこう考えていたんだ」と気づくことがありました。答えをいただくのではなく、自分の考えを整理する時間になっていたと思います。
神原さんのキャリアにおいて、特に仕事観やキャリアを変えた異動について教えてください。
神原:特に印象に残っているのは、NISA事務センター(※現横浜支店)の新部署開設に携わった異動です。
それまでの私は、既存部署の一スタッフとして、決められた業務を正確かつ確実に遂行することが求められていました。しかし、新部署の立ち上げでは、業務の進め方や組織のあり方がまだ固まっていません。新しい業務や業務フローを設計し、関係者と調整しながら、一つひとつ形にしていく必要がありました。
異動前と異動後では、求められる役割が大きく変わりました。既存の仕組みのなかで確実に業務を行う役割から、自ら働きかけ、新しい業務や組織をつくる役割になったのです。
不安や迷いはもちろんありました。それでも、周囲の方に話を聞き、情報を集め、考えながら動くことで、少しずつ前に進めることができました。この経験を通じて、「誰かが決めてくれるのを待つのではなく、自ら働きかけて決めていく」という姿勢が身につきました。現在の仕事にもつながる、大きな転機だったと思います。
「まず聞く」ことで乗り越えた具体的な出来事を教えてください。
神原:NISA事務センターの立ち上げ時には、新しい組織で行う業務内容や業務フローが、まだ明確になっていませんでした。特に、新組織で行うNISA業務の全体像が不明確で、どのような流れで業務を進めるのかを把握する必要がありました。
そこで、関連業務を担当していた社員や派遣スタッフに、まず話を聞きました。聞く前には、「自分たちが担う業務は、全体のなかでどの位置にあるのか」「前後の業務とどのようにつながっているのか」という疑問を持っていました。
複数の方に話を聞くことで、それぞれの業務や前後のつながりが見えてきました。一人の方の話だけではわからなかった全体像を把握でき、部分的な効率ではなく、業務全体の最適化を考えられるようになったのです。
この経験から、現在もまず情報を集め、物事の概要やキーポイントを把握することを意識しています。何も考えずに聞くのではなく、自分なりの疑問や仮説を持って聞くことで、相手の話をより深く理解し、次の行動につなげられると考えています。
橋本さんの、転職を決断したきっかけを教えてください。
橋本:転職前は、派遣社員として業務改善やDX推進に携わるなかで、より長期的に会社の変化に関わりたいと感じたことがきっかけです。それまでの仕事では、複数の開発現場で要件定義から設計、開発、テストまで幅広く経験してきました。一方で、システムを作って終わりではなく、その後の運用や改善にも継続的に関わりたいという思いが強くなっていきました。
正社員登用のお話をいただき、これまでの経験を活かして、より主体的に会社の変化に貢献したいと考え、転職を決めました。
私にとって今回のキャリアチェンジは、これまでの経験を捨ててゼロから始めることではありません。開発経験を土台にしながら、業務知識や関係者との調整力を身につけ、自分の可能性を広げるための挑戦だと捉えています。
転職前に感じていた不安や迷いは何でしたか。それでも決断した理由は何ですか?
橋本:証券業務や金融商品に関する知識が十分ではないことに不安がありました。これまで経験してきたITや開発の知識だけで、新しい環境で期待される役割を果たせるのか、迷いもありました。
一方で、業務を理解しながら成長できる環境だと感じたため、これまでの開発経験を活かして挑戦したいと思いました。
新しい知識が必要であることは確かですが、わからないことを学び、周囲と認識を合わせながら進めることで成長できる。そう考え、挑戦することを決めました。
入社後、前職との違いに戸惑った場面と、それを乗り越えた方法を教えてください。
橋本:前職では、開発業務そのものに集中する場面が多かったのですが、現在は開発だけでなく、証券業務の内容やシステムを利用する方の状況を理解したうえで考える必要があります。その点に違いを感じました。
機能を実装するだけではなく、「誰が、どのような業務で使うのか」「どのような課題を解決したいのか」を理解しなければ、役立つシステムにはなりません。
わからないことは早めに確認し、関係者と認識を合わせながら、少しずつ業務理解を深めています。まずは周囲の方が大切にしている考え方や、仕事の進め方を理解することを意識しました。
そのうえで、自分の経験を活かせる場面では提案を行う。受け身で学ぶだけではなく、学びながら貢献することを心がけています。
橋本さんは、メンタリングを通じてどのような気づきを得ましたか?
橋本:私はこれまで、IT人材派遣会社で複数のプロジェクトに参画し、要件定義から設計、開発、テストまで幅広く経験してきました。
その一方で、「システムを作って終わり」ではなく、その後の運用や改善にも長く関わりたいという思いが強くなり、当社への転職を決めました。
メンタリングでは、これまでITと業務の両方に関わってきた経験が、今後の業務改善やDX推進にも活かせるのではないかと気づきました。自分では「まだ学ぶべきことが多い」と考えていましたが、課題を整理し、周囲と協力しながらより良い進め方を考えることも、自分の強みになり得るのだと捉えられるようになりました。
神原:橋本さんは、開発技術だけでなく、「何のために作るのか」という目的を大切にしていますよね。そこは、私が仕事で意識してきたこととも通じる部分があると感じています。
業務を進めるとき、目の前の作業だけを見るのではなく、その先にいる人や組織にどんな価値を届けるのかを考えることは重要です。橋本さんの話を聞くなかで、業務とITをつなぐ役割を担おうとしていることがよくわかりました。
現在のお二人の仕事について教えてください。
橋本:現在は、変革プロジェクト室でローコードプラットフォームを活用したシステム開発に携わっています。要件の確認から設計、開発、テストまで、これまでの経験を活かして進めています。
前職で一連の開発工程を経験してきたことは、現在の仕事でも活きています。目の前の工程だけでなく、後の工程で必要になる確認事項や影響を見据えながら、関係者と認識を合わせて進められるからです。
また、開発そのものに加えて、チームの進捗や課題の整理、メンバー間の情報共有、必要に応じた調整も担当しています。自分の担当業務だけでなく、チーム全体が円滑に仕事を進められる環境を整えることを意識しています。
相談や連携をしやすい環境を整えることで、チーム全体で円滑に開発を進められるよう努めています。
特に大切にしているのは、関係者の考えや前提を丁寧に確認し、認識をそろえることです。依頼する側、利用する側、開発する側では、それぞれ見えている課題が異なることがあります。だからこそ、要件だけでなく、「何のために作るのか」という目的を共有して進めるようにしています。
神原:私は現在、HRサービス部の副部長として、グループ会社のHR業務に関する複数のプロジェクトを推進・統括しています。部長とともに部全体を管理・運営するとともに、各プロジェクトが着実に前進するよう、横断的に取り組んでいます。
2004年の入社以来、横浜支店でのオペレーション業務、本社での経理・財務、人事業務、新規部署の立ち上げ、人事制度の企画や採用・研修など、さまざまな領域を経験してきました。
振り返ると、異動のたびに視野が広がり、現在の仕事につながる経験が積み重なってきたと感じます。新しい環境に入るたび、まず周囲に聞き、自分なりの考えや疑問を持って仕事に向き合うことを大切にしてきました。
現在のHRサービス部副部長として、これまでの経験が活きている場面はありますか?
神原:人事システムの変更に伴い、HRサービス部の運営体制や業務フローを変更する必要があったときに、これまでの経験が活きました。
単に社内の仕組みを変更するだけではなく、その変更を、サービスの利用者であるグループ会社の人事部に受け入れていただく必要がありました。HRサービス部として実現したいことと、グループ会社の人事部が求めていることをすり合わせなければ、スムーズには進みません。
その際には、前任部署の人事部で培った経験に加え、これまでに築いてきたグループ会社の人事部メンバーとの関係性が役立ちました。相手の業務や置かれている状況を想像しながら話を聞き、こちらの考えも伝えることで、異なる立場の方々の間を取り持つことができたと思います。
結果として、議論や意思決定を前に進めることができ、関係者間の大きな衝突や混乱を招くことなく、プロジェクトを進められました。
これまでの異動で得た業務知識や仕事の進め方、人とのつながりは、現在の役割の土台になっています。異なる部署や立場を経験してきたからこそ、相手の事情を想像し、双方にとって納得感のある進め方を考えられるのだと思います。
「まず聞く」と「目的を共有する」。仕事の進め方に共通点がありますね。
神原:そうですね。私は新しい部署や業務に移るたびに、まず周囲に聞くことを心がけてきました。ただ、何も考えずに聞くのではなく、自分なりの疑問や仮説を持ったうえで質問することが大切だと思っています。
相手の話を聞くことで、その業務の背景や、これまでの経緯が見えてきます。そのうえで、自分の経験から役立てることはないかを考える。そうした姿勢が、新しい環境に適応するうえで助けになってきました。
橋本:私も、わからないことを早めに質問・相談することを大切にしています。開発では、問題を一人で抱え込むと、後から大きな遅れにつながることがあります。
ただ質問するだけではなく、相手の考えや業務上の背景を理解し、「何を実現したいのか」を確認することが重要です。目的が共有できていれば、途中で課題が出てきても、より良い方法を一緒に考えられます。
「何のために作るのか」を意識するようになってからは、機能だけを見るのではなく、誰のどのような業務を良くしたいのかを考えるようになりました。要件を確認する際も、利用する方の状況や業務上の課題を意識し、より役立つ形を考えながら進められるようになりました。
神原:その点は、私が大切にしている「どうしたらできるか」という考え方にもつながります。課題に直面したとき、「難しいから無理だ」と考えるのではなく、「どうすれば前に進められるか」を考える。
もちろん、何でも一人で解決する必要はありません。周囲に聞き、知恵を借りながら、できる方法を探していくことが大切です。
神原さんは、メンタリングを通じて自身にも変化があったそうですね。
神原:はい。メンターとして橋本さんの話を聞くなかで、相手の視点を想像する幅が広がりました。
「この人は、今の状況をこう感じているのかもしれない」「こういう悩みを抱えているのかもしれない」と考える機会が増えたんです。その変化は、橋本さんだけでなく、普段関わっている部下や後輩と接するときにも活きています。
メンターは支援する立場ですが、実際には自分も多くの気づきを得ています。誰かの言葉に耳を傾け、その人の視点に寄り添う経験は、自分自身の見方や感受性を豊かにしてくれるのだと実感しました。
橋本:私から見ても、神原さんは話しやすい場をつくってくださっていました。何か正解を求められているような感覚がなく、安心して自分の考えを話すことができました。
メンタリングでは、普段の業務のようにすぐ結論を出す必要がありません。少し立ち止まって、自分が何を考えているのか、これから何をしたいのかを整理できる。そうした時間を持てたこと自体が、大きな意味を持っていたと思います。
転職を通じて、自分の強みをどのように捉え直しましたか?
橋本:周囲と認識を合わせながら進める力と、新しい環境で必要なことを学び続ける姿勢が、自分の強みだと感じています。以前は、証券業務や金融商品に関する知識が不足していることに目が向き、「まだ学ぶべきことが多い」と考えていました。しかし、わからないことを確認し、関係者の話を聞きながら理解を深めていくこと自体が、新しい環境で価値を発揮するための力になると気づきました。
今後は、ITと業務の両面を理解し、関係者をつなげられる存在を目指したいです。
今後のキャリアについて、どのように考えていますか?
橋本:まずは、現在携わっている開発業務を通じて経験を積み、将来的な開発チームの内製化に貢献できる人材になりたいと考えています。
内製化を進めるには、技術的な知識だけでは十分ではありません。業務上の課題を整理し、関係者と目的や要件を確認し、チーム内で知識や進め方を共有する必要があります。
特定の人だけがわかる、あるいは特定の人しか対応できない状態をつくらず、チームで継続的に開発・改善できる基盤を整えていきたいです。
将来的には、開発に加えて運用やインフラ、証券業務についても学びたいと思っています。システムの企画から利用・改善までを幅広く捉え、業務とITの両方を理解できる人材になることが目標です。
神原:私自身は、業務に関する専門性をさらに高めることと、組織マネジメントの経験を積むことを目標にしています。
専門性があるからこそ、チームをより良い方向へ導くことができますし、マネジメントを経験することで、自分の専門的な視点もさらに深まると思っています。この二つを両立させ、互いに高め合う好循環をつくっていきたいです。
キャリアは必ずしも一直線ではありません。私も異動のたびに不安や迷いがありました。それでも、「どうしたらできるか」と問い続けてきたことで、新しい役割に挑戦してこられたのだと思います。
最後に、これから新しい環境へ挑戦する方へメッセージをお願いします。
神原:不安や迷いを感じるのは当然です。それは、真剣に向き合っている証拠でもあります。
ただ、完璧な準備が整うまで待っていると、動き出すタイミングを逃してしまうこともあります。まず一歩踏み出し、そこから考えていく。難しいことに直面したときも、やらない理由を探すのではなく、「どうしたらできるか」を考えてみてください。
新しい環境に入ったときは、まず周囲に聞いてみることです。何がわからないのかを整理し、関係する人から情報を集めることで、物事の全体像や重要なポイントが見えてきます。そこから、自分なりの考えを持って動き出せばよいと思います。
橋本:新しい環境では、これまでの経験だけではわからないことも多く、戸惑うと思います。まずは、その環境での仕事の進め方や、周囲の方が大切にしている考え方を理解しようとする姿勢が、信頼を積み重ねる第一歩になります。
そのうえで、受け身で学ぶだけでなく、これまでの経験を活かせる場面では、自分なりの工夫や提案をしていくことも大切です。
私にとってキャリアチェンジは、自分の可能性を広げるための挑戦です。これまで培ってきた開発経験を土台にしながら、業務知識や関係者との調整力も身につけ、より多くの人や組織に役立つ仕事ができるようになりたいと思っています。
「何のために必要なのか」という問いを持ち続けながら、一歩ずつ成長していきたいです。
神原:橋本さんとのメンタリングを通じて、私自身も新しい視点を得ることができました。これからもお互いの経験や考えを共有しながら、それぞれの立場で挑戦を続けていきたいですね。
橋本:はい。神原さんから学んだ「まず聞く」姿勢を大切にしながら、目的を見失わず、周囲と協力して前に進める人材を目指していきたいです。
これまでの経験を力に変えながら、新しい環境で学び続け、担う役割を広げていきたいと思います。
※ 記載内容は2026年8月時点のものです。
